スマホを持つクロノ
■〜トルース村の裏山〜
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(まさかマールも襲われて?
だとしたらマールは走ってにげた?)
クロノは魔物から逃げた。
(マールはどこにいるのだろうか?)
山からはガルディア城が見えた。
方角的に山を降りれば千年際会場敷地の裏側に出る位置のはず。この位置ならマールも道に迷う事もないだろう。
しかし、見えない。千年際会場もリーネの鐘もない。
町の風景が現代と比べて見すぼらしい。
大昔にある様な水車小屋や牧場、井戸。
まるで過去にタイムトラベルしたかの様な光景。
建ち並ぶ民家。人の出入りの激しい建物に目がいった。
クロノはその建物に入った。人々は一斉にこちらを見た。
〜トルース村の宿屋〜
原作においてトルースの宿屋では物語の重要な話が聞ける。
宿屋の1階の酒場では、さらわれてしまった王妃の話が聞ける。兵士と会話してるとフラグかたち、冒険家のトマが現れる。トマに1杯おごると西にできたマノリア修道院が怪しいという情報が手に入る。
この物語においては少し状況が違う。
兵士「ついに行方不明だったリーネ様が見つかった。さあ、飲むぞー!」
リーネとそっくりなマールを見間違え、リーネの捜索が打ち切られた。
兵士は仕事が終わった安堵から昼間から酒を飲んでいた。
クロノは酒場のマスターにスマホに映るマールの写真を見せた。
「この女性を知りませんか?」
酒場のマスターはスマホを見るなり恐怖に顔を歪ませ、声を荒げた。
「ま、魔族!? お前、魔術で人をこの板の中に閉じ込めたな!」
クロノにはサッパリ意味が分からなかった。
魔族?魔術? 何を言っているのこの人は?
原作においてマノリア教会の中では人間に成りすました魔族がいた。この物語では人間に成りすます魔族について、人々は大きな恐怖を感じて生きている。クロノの赤い髪色、現代的な変わった服装。それを見て、周囲の人々はクロノを警戒していた。
酒場のマスターは警笛を吹いた。笛の音が鳴り響き、外から中から男達がぞろぞろと現れた。どの男達も農機具や剣を持ち、クロノに敵意を向けている。
「みんな取り押さえろ!」
○
クロノはロープでグルグル巻きにされ、納屋に放り込まれていた。
口も聞けない様にされる。
「これで大丈夫だろう―」
呪文の存在。村人は魔族が術を唱えて魔法を使うことを警戒していた。
外では人々が「魔族が街に現れた!」と騒がしくしている。
「私に殺させろ!」
家族を魔族に拉致された者や、子供を魔族に食べられた者の声。復讐に取り憑かれた者達がクロノの命を狙っていた。
クロノに槍を向け、監視する男が2人。
しばらくすると、ギシギシという音が迫ってくる気配がし、監視する男と入れ替わる様に鎧姿の男が納屋に入ってきた。
男はクロノのスマホを手に持っている。
「おい、魔族! これは一体なんなんだ? 人をこの中に閉じ込めたのか?」
クロノは首を横に振って「違う」意志を表明した。
クロノは写真の撮影のやり方を教えようと、手招きしようとしたが…
「まさか、これを渡せというのか? 渡した途端、私を板の中に封じ込めるつもりだろう!」
男はクロノに剣を当てた。
「正体を表わさないと今すぐに、殺す。」
「いや、直ぐには殺さん。散々痛い目に合わせて…」
男は剣をクロノの首に強く押し当てた。
その時、外が騒がしくなる。
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■
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納屋の戸が勢い良く開き、ドレス姿の女が現れた。
「この者は魔族ではありません!」
女が言うと、男は跪き、外にいる兵士や町人も膝ずいた。
兵士
「王妃様、恐れながら、この者はこのような不可解な物を所持し…
王妃
「それは魔族がこの者に与えたもの。この者を罠に嵌めようとせんとしたのです。」
王妃
「この者は王宮の大切な従者、この者を即刻開放せよ。それからしばし、この者と2人になりたい。席をはずせ!
兵士は踵を返し、納屋から離れた。
しばらく、沈黙し、王妃は突然、腹を抱えて笑いだした。
「クロノってば顔が面白いー!」
鳩が豆鉄砲を食らった顔をしていたクロノ
「私だよ。マールだよ。」
「おかしいよね〜。私、この街に来て、いきなり王妃に間違われて無理やり王宮に連れていかれて、ドレス着させられて…
そしたら赤い髪をした魔族が出たって街で大騒ぎになってるって話を聞いて、私すっ飛んできたの。
私、一方的に間違われたんだから、ちょっとくらい王妃に成りすましてもいいよね。」
クロノは魔族に間違われて殺されそうになった。魔族について疑問が晴れなない
マール
「私もあんまり良く判らないのだけど…
とにかくここで長話するのあれだし、王宮に行こう。」
クロノ達は馬車に乗り、ガルディアの森を抜けていった。
〜王妃の部屋〜
マールは400年前、日付7月1日のリーネの日誌をクロノに見せた。日誌には魔族の脅威に晒されている国の情勢が書かれていた。
一年前から魔族との大規模な戦争が続いていて多くの死者を出している等が書かれていた。
マール
「私達が知っている歴史には魔族なんて存在しない。だからきっとここはガルディアに似た異世界なんだと思う。」
マール
「クロノ、大丈夫だよ。きっと天才ルッカが助けに来てくれるよ。
「でも、またクロノみたいに町の人達に捕まったら大変だから。私達が飛び出してきた山に戻ってみよう。ルッカを待っていようよ。」
マールがそう言って外に出ようとした瞬間、光り包まれ消えた。
クロノは夢でも見ているのかと思い込み、ベットに座り横になった。
安定しない思考を物思いにふけることで解消しようとした。
異世界に来てマールが消えた。
タイムスリップしてマールが消えた。
王妃と間違われてマールが消えた。
本物の王妃は一体何処に行ったのだろうか?
クロノはそれらの疑問を頭の隅に置き、
マールの言葉を思い出していた。ルッカも自身と同じ様に魔族に間違えられるかもしれない。
ルッカがこの世界に来るかもしれない可能性を考慮し、クロノは最初にこの世界に出現した場所(山)へと戻った。
山では魔物に襲われるかもしれない。
道中、家々に備えつけられた松明の棒を拝借し、山へ登った。
クロノはゲート前に潜む魔物達を追い払った。それ程強い相手ではないようで怪我を負いたくない魔物達はクロノから逃げる様に去っていった。
一時間程待っていると空間が避け、その穴から荷物を背負ったルッカが現れた。
「なるほど…。次元の穴の中はこんな風になっているのね…」
マイペースのルッカはドローンを上空に飛ばした。
ガルディアの城下を映像で見て、状況を察知した。だが…
「え? マール? 誰のこと?」
「クロノの前には誰もテレポートにチャレンジしなかったわよ? みんなビビって挑戦しないからクロノがデモンストレーションして見せたのでしょう?」
ルッカを遮る様にクロノは今日あった出来事を伝えた。
ルッカは魔族等の話は半信半疑で聞いていたが、王妃に関して考えを述べた。
「ありえるとすればリーネの子孫がマールだった場合ね。リーネが殺され、未来に生まれる筈だったマールが存在しないことになって消滅した…。光る現象とか謎だらけだけど…」
二人は山を降り、失踪したリーネ王妃について調べる為に酒場に聞き込み入った。
「お、お前は昼間の怪しい奴!」
クロノは男達に取り囲まれた。
「あの時は、王妃様の知り合いとは知らず、無礼を働いた。だがあの後、王妃様はまた行方不明に…。王妃様は部屋から忽然と消えなさった。しかも、王妃様の部屋から最後に出てきたのは、お前らしいじゃないか! やっぱりお前は魔族なんじゃないのか! 王妃様を騙して、誘拐したんじゃ!
ルッカ
「貴方の話、さっきから聞いてるけど、ちっともサイエンスを感じないわ!
男
「な、なんだ、お前は!
ルッカ
「いい? 誘拐犯人が堂々と酒場にくる訳ないでしょ? 王妃様は部屋のドアから出たんじゃないわ。窓の外から出た。そうとしか考えられないわ。
男
「確かにそうだが…。王妃様の寝室は5階にあるのだぞ? そこから出たというのか?
ルッカ
「魔族は空を飛べるんじゃなくて? 5階から連れ去られるなんて造作もないことじゃなくて?
男
「確かにそうだが…
だがこの男は昼間、板の中に女性を入れていたのだぞ?
王妃様を板に封印して持ち去ったのではないのか!
男達はパニックを起こした。
ルッカ
「ほらこれ、よく見て! 人が写っているでしょ? これは写真といって、19世紀最大の発明品とも言えるものよ?」
男達は封印されなかった事に安心したのか、ルッカの講義を聞き始めた。
男
「女、これを一体どこで手に入れたんだ。
ルッカ
「ネット注文ね。自宅に居ながらにして、手に入れたわ。19800円よ?
男
(全く意味が分からない!)
「おんな! やはりキサマ魔族! 訳の判らぬ呪文を唱えて、何かをやらかす気だな!
ルッカ
「私が魔族だったら何? 私を殺すの?
男
「認めるのかキサマ!
ルッカ
「しょうがないわね…
ルッカ
「これでどう? 危ない物だと疑うものを私が処分してあげたわよ。
男
「キサマ!今のは大切な物ではなかったのか!?
ルッカ
「そうよ!大切なものよ!
男
「ならなぜ壊す必要がある!
ルッカ
「貴方達が私を信用しないからじゃない! だから私が壊してあげたのよ!
男
「わ、わからない。この女、訳がわからない…
クロノは話を戻した。いずれによリーネは行方不明。捜索しなければならない。
男
「確かにそうだ。こんな事している場合じゃない…
ルッカ
「ここ最近、変わった事はないかしら?
男「最近…。(お前達以上に変わった事など…。そういえば最近、教会の帰り道に失踪する人が多いな…。)
「最近、誰も居ないのに教会からピアノの音が鳴るな…」
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■マノリア修道院
原作設定通りの魔物が登場します。
教会内にはミアンヌという蛇女の魔物がいて修道女(シスター)4人に変幻しています。
原作においてはオルガンの前にいるシスター長に話しかけるとフラグか立ち、画面中央にリーネの髪飾りが出現し、それを見つける事でクロノ達は襲われる。
この物語においてミアンヌは『賢い生き物』という設定になっています。リーネの髪飾りを床に落として気付かないなんていうヘマはしない。
また原作ではミアンヌは4体出現しますが、この物語では5体目がいます。
教会の内部構造については描写を省きます。気になる方はゲームの攻略サイト等で確認しておくと分かりやすいかもしれない。
作者はこの回を書くために参考資料として以下のサイトを利用しました。
http://chrn.opatil.com/story/c03.html
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男に案内され、教会へ向かった。
教会ではシスターが祈りを捧げていて、パイプオルガンの前にはシスター長がいる。
ルッカ
「シスター、聞きたい事があるのだけど、貴方魔族ですか?」
シスター長
「え? どういう事でございましょうか。
ルッカはシスターの顔面を撮影し、画質を高解像度モードにした。
「人間を真似するといっても、完璧に真似る事はできないはず。だとしたら、人間に特有でない魔族特有の痕跡があるはずでしょう。」
「例えばこれ、人間は縦線目には成りません。縦線目になるのは爬虫類やネコ科の動物で…
ルッカが講義をしているとシスター長は既に本性を表していた。下半身が蛇で上半身が人間の化け物に変化していく。
蛇魔族
「キサマ今何をした! 私に奇っ怪なものを見せ、呪文の様なもの唱えた! 私に何を…何をしたー!」
蛇魔族は怒り狂い大口を開け、ルッカが被ってるヘルメットにかぶり付いた。
クロノはルッカの命知らずな態度に青ざめつつ、松明の棒を振るった。
ここへ案内した男は悲鳴を上げながら出口から逃げようとするが、シスター4人が通せんぼした。
クロノは火の着いてない松明棒をふんぶん振り回すも、蛇特有の動きの速さで捉えきれない
ルッカはリュックついている防犯ブザーを鳴らした。
突然のサイレンに蛇達は動揺し耳を塞いだ。
聴いてはいけない危険なものだと思い込んでいた。
ルッカの目算では、防犯ブザーを聴いて誰かが助けにくる事を期待していた。犯人の居場所が街に周知されるなら迂闊な事はできなくなる。リーネを人質に取る事はあっても殺しはしないだろうと。
クロノ達の前に現れたのは武器を持ったカエルの化け物だった。ルッカは恐怖で雄叫びをあげた。
耳を塞いだ魔族達を見るなり、カエルは駆け寄り、一刀両断した。
次々に魔族を一刀両断していく。
ルッカはサイレンの様に雄叫びをあげた。
カエル
「おい、 安心しろ。もう終わったぞ」
ルッカはカエルと目があい、もう一度雄叫びをあげた。
カエルは他に敵がいるのかと思い込み、周りを見渡した。
ーグレンー
私は王宮騎士グレン。リーネ王妃の捜索にあたっていた。街ではルッカとクロノの二人組が話題になっていって、二人は王妃を探しに教会に向かったという。
教会が誘拐犯のアジト? まさか…。
そう思いながらも、私は2人が気になり追いかけた。
「やけに教会が騒がしい…」
特にやかましいのはヘルメットを被った女だった。
女はてっきり魔族を見て悲鳴をあげているのかと思いきや、まさか私のカエル姿に驚いて悲鳴を上げていたのだ。
その気持ちは判るが命の恩人に対して無礼な女よ。
仮にも国で一番強い剣士のこの私が、こんな蛇女よりも気持ち悪い等という。この女のセンスを疑うところである。
巷では私は「ぷにぷにしてカワイイ! その長いベロで巻かれたい!」と言われる程に人気者なのだぞ。
と、愚痴をこぼしていても仕方がない。とにかくこの教会に魔族がいた事実。リーネ様を知っているのかもしれない。
「おい、蛇女! 死にたくなければリーネ様の居所を言え!」
一体だけは殺さずに生かしていた。その魔族はカエルに剣を向けられると蛇に睨まれたカエルの様に動けなくなっていた。
ールッカー
「何が国一番のイケてるアイドル剣士よ。どう見てもカエルの化け物じゃないのよ。。ヘビ女の魔族と大差がないわ」
カエル
「さっきも言ったであろう。私は訳あって魔族に呪いかけられ、この姿にされたのだ。少しは不憫に思ったらどうだ。
ルッカ
「モテモテだと自慢していたのはどこのだあれ?
カエル
「それはあくまでも一部のマニアに対してだけだ。」
クロノ「二人共口論している場合ではありません。蛇女を脅してリーネの居場所を聞き出すチャンスだと思います」
クロノの提案を聞いたカエル。蛇女に脅しをかけた。
カエル「素直に吐けば命だけは助けてやろう。」
蛇女「言えば仲間から命を狙われてしまう。」
カエル「なら今すぐに死ぬか?」
蛇女「駄目だ…。私には答えられない。私を保護すると約束しろ。」
カエル「ガルディアの温情に期待するのだな…」
蛇女「ガルディアは駄目だ。ガルディアはもう既に…」
蛇女によるとガルディアの城下の人々、王宮内部の従者、兵士の多数が既に魔族にすり替わっているのだという。そんな場所で保護されても処刑されるしか無いという。
カエル「リーネ様は無事なのか?
蛇女「…」
カエル「…分かった。お前の身柄は俺の隠れ家で保護する。だからさっさとリーネ様の居場所を言え!」
蛇女が教会のオルガンを弾くと、壁しかなかった場所にカラクリ式の扉が現れた。
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■アジト内
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カエル「おい蛇女! 中の構造はどうなってる?
蛇女「入って直ぐに三体の魔族がいる。」
カエルは扉を1センチ開けて中の様子を見た。蛇女の言う通り3体の見張りの魔族がいた。
カエル「このまま入れば気付かれてしまうな…
。おい、蛇女! 裏切ったら真っ先にお前から殺すからな。」
カエルは蛇女をシスターに変身させ、懐に忍びんだ。
シスターのスカートの中に潜み込み、見張り魔族のいるフロアをやり過ごして次の部屋に入った。
原作においては正面階段に2体の蛇の見張りがいる。階段に登らず、一階をフロアの奥を抜けた先にヤクラの部屋がある。この物語は原作通りのマップ構造と魔物の配置設定に沿う。
階段から一階を監視している蛇達を無視して一階を進もうとすると…
「おい、ミアンヌ! そこで止まれ。」
「お前の持ち場はそっちじゃないだろう? なぜ、ここにいる?」
蛇女「ヤクラ様に至急お伝えしたいことが…」
蛇「報告は我らが伝える事になっている筈だろう? 要件を言え」
カエルはミアンヌに蛇達に近付く様に合図をした。
蛇『さっき、やかましい音が聞こえたが…。外で何かあったのか?』
ミアンヌが答えに詰まってると、蛇達は魔族以外の匂いが漂っている事に気付いた。
蛇「貴様、仕事中にカエルでも食べたのか?」
蛇魔族は近付き、シスターの身体をあちこち嗅ぐ。
カエルの射程に入る蛇達。剣を突き出し気道を刺す。
声を出せずに倒れた蛇。だがもう一体の蛇は仲間が倒れる光景を目撃した。
声を出そうとした瞬間、カエルの舌が伸び気道を塞いた。そのまま首を絞め落とされる。
遺体が見つかりに難い様に階段の手すりを死角に利用して隠すカエル。
2階のフロアには見張りはいない。
カエルは2階からジャンプした。一階奥の扉を守っている魔族2体の元へ飛び降りる。
舌で一体の気道塞ぐと共に、もう一体の喉を剣で塞ぐ。
そして遺体が見つからない様に壁際の柱の影に隠した。
カエルはジャンプして2階にいるミアンヌを回収すると一階に飛び降りると扉を開いた。
蛇女「この先がどういう構造になっているのか私も知らない…」
扉の先はガランとしていた。原作でいうところのセーブポイントにあたる場所である。
フロアの先にある扉を1センチ開き覗く。
部屋の床にはトラップ様の針が敷きつめられている。トラップの先では鎧を着た魔族が3体、テーブルを囲んで話し込んでいる。
蛇女「あ、あれは私の写真…」
原作では【ひみつのミアンヌ・ブロマイド】というアイテムがあった。要するに盗撮写真である。
写真の技術がない時代設定だが、魔族の超能力で念写ができたという事。魔族達は、蛇女のセクシーな写真を見て、酒の肴にしていた。
蛇女はシスターの姿からミアンヌの姿に戻り、カエルを置き去りにして中へ入った。
「おーミアンヌじゃないか! ちょうどお前の話をしていた所だ」
三人の魔族はトラップを解き、ミアンヌを招きいれた。
魔族「珍しいなぁ。お前がこっちのフロアに来るなんて…」
ミアンヌ「ヤクラ様に緊急の用事があって伝言を伝えに来たの。でもこちらには来たことないから迷っちゃって…」
魔族「ヤクラ様に用か…。だったらまずここでオルガンを弾かなきゃならん。」
魔族はミアンヌの為にオルガンを弾き、ヤクラの部屋に続くロックを解除した。
魔族「この部屋から出て右の階段を降りて真っ直ぐ行けばヤクラ様の部屋の前だ。」
「ありがとう」
「ねえ? ミアンヌちゃん、今度一緒にデートしようよ。」
「そうね…考えとくわ」
ミアンヌは部屋を出てカエルを回収し、ヤクラの部屋に向かった。
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■〜ヤクラの部屋〜
この回について、あらゆるパターンを書いてみましたが、どれもしっくりしませんでした。唯一マシだと思うものを投稿しますが、原作の設定にこれまで以上に大幅な変更を加えてます。
ファンとしてはヤクラにはデロデロを口癖の様に言わせたかったし、クロノとカエルのエックス斬りのシーンを入れたかった。
設定をいじり過ぎて、そういうに流れに持ち込めなくなりました…
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カエルは扉を1センチ開けて中を覗いた。
寝台に寝かされたリーネがいて、その周りに魔法陣が描かれている。
巨大なゴキブリ様の魔物、ヤクラが呪文を唱えていた。
カエル「おい蛇女! 奴は一体、何をしているのだ?」
ミアンヌは答えに詰まった。リーネに成りすますだけなら、あんなに大きな魔法陣までは必要がない。恐らくヤクラはリーネの記憶を探っている。見た目だけ成りすますだけではガルディアを支配するのは完璧ではない。ヤクラはリーネとしての記憶を丸ごと自身にコピーしようとしていた。
ミアンヌはノックをした。
ヤクラは呪文に唱えるのに夢中でノックに気付かない。
「ヤクラ様、ミアンヌでございます」
返事はない。
カエルに指図され、ゆっくりと中に入ったミアンヌ。
カエルの間合いに入るまで、ゆっくりと近付く。
ヤクラはミアンヌの存在に気付いたが、呪文を唱えるのを辞めない。
カエルの射程にヤクラが入った時
ヤクラの呪文が唱え終え、リーネの姿へと変身した。
偽物とはいえリーネの姿をしているヤクラ。カエルは攻撃を躊躇う。
ヤクラから笑みがこぼれる。
リーネの姿と記憶を確保したヤクラ。ヤクラの計画ではこれから堂々と王宮に潜入し、リーネとして生きる。そして王と寝る時が来たら、その寝屋で王の姿と記憶を手に入れる。自身がガルディアの王となり、ガルディアの支配者となる。
「どうしたミアンヌ? 何か一階であったのか?」
ヤクラは笑いながら問う。
ヤクラにとっては、その件はどうでも良かった。
既にリーネの記憶と姿は奪った。
今更人間が攻め込んで来ようが、リーネに逃げられてしまおうが構わない。
ヤクラはゴキブリ様の生き物。壁を這いずるのは容易であり、王妃の寝室まで登るのも容易である。今リーネに逃げられたとしても、いつでもリーネを排除できる。
ヤクラは達成感と満足感に酔いしれると、術を解き、元のゴキブリ様の姿に戻った。
カエルの攻撃がヤクラの喉に入る。
急所を狙った一撃。だが、ゴキブリ様にて殻に覆われていたヤクラ。致命傷にはならなかった。
ヤクラは今の状況を悟ったと同時に怒りが沸々と湧いてくる。
裏切り者ミアンヌ。
ヤクラの視線がミアンヌに移動する。
ヤクラに恐れて動けなくなっていたミアンヌ。
カエルはヤクラの視線を察知し、ミアンヌの前に出た。
ヤクラの牙のカエルの剣が弾き合う。カエルはヤクラの巨体に押されて、壁に追い詰められた。
カエル「蛇女! 逃げろ!」
ミアンヌは我に戻り、走り出した。だがヤクラはゴキブリ様の生き物。巨大さを含めると最高速度は時速500km程あり、対してカエルの速度は半分程度。200kmしかなかった。
ヤクラならミアンヌを秒殺する事ができたが、建物の構造上、部屋の出入口は人間サイズだった。
ヤクラがミアンヌを襲う為には人間サイズに変幻しなければならない。
人間サイズになる場合、戦闘力が大幅にダウンしカエルに押し負けてしまう。
ヤクラはその巨体を活かして扉へ突撃した。
魔族の情報を人間に洩らす恐れのあるミアンヌ。その対応に迫られたヤクラ。
ヤクラは壁に穴を開けながらミアンヌを探し始めた…
ークロノー
クロノはカエルからバッジを受け取っていた。カエルの持つバッジは騎士の中で最も位の高い者に送られるものだった。
ルッカ「これを持って王宮へ行けば騎士団長に会える。マノリア修道院へ突入する様に伝えてくれ…か」
ルッカ「はっきり言ってそれつまらない。この物語の主人公は私なのよ!」
ルッカは酒場で出会った男にバッジを渡して代わりを頼んだ。
つまりクロノ達は教会内のアジトに潜入していた。
入り口の側にいる3体の白い見張り魔族。ルッカは、シスターの衣装で顔を隠し、堂々と先へ進んだ。
クロノも修道女の衣装に身を包むと命知らずなルッカの後に続いた。
二人は、正面階段で倒れてる2体の魔族をまたぐと、2階、正面の扉を開けた。
部屋では魔族達が変幻する練習をしていた。
クロノ達は道を間違えた。
部屋を出て2階、奥の扉に入る。
部屋には偽ガルディア21世とリーネ、兵士が1人いた。
魔族「お前たち、魔王様への祈りなら順番待ちだぞ。」
魔族達は魔王の銅像に祈りを捧げていた。祈りの間は定員オーバーで順番待ちをしていた魔族達
クロノ達は道を間違えた。
部屋を出て一階を様子を眺めると倒れた見張りを見つけた。
「多分、カエルはあそこまでジャンプしたのね…。私達には飛び降りるのは無理そう…」
先に進むのを諦め、引き返そうとした時、ヤクラによる壁を突き破る音が響く。
「何かヤバイことが起きている様な…」
大きな揺れと破壊音。教会を支える柱は維持できず倒壊しようとしていた。
一階の扉が開き、ミアンヌが走って出てくる。
クロノ達はミアンヌの後を追う様に脱出を試みたが、壁を突き破り、ヤクラが現れた。
ヤクラは巨体故に、2階にいるシスターの衣を着たクロノ達と目が合った。
巨大ゴキブリを見たルッカは失神しそうになる。
「おい!お前達、こいつらは裏切り者だ。確保ろ!」
苦し紛れに防犯ブザーを鳴らすルッカだが、各部屋から魔族が集まり、クロノ達は捕らえられてしまった。
クロノ達は教会の地下室へと連れていかれた。
○
ヤクラ「さあ、最初はどれにしようか…」
アイアンメイデンにノコギリ、天井に吊るされた鎖の数々。
そこには多様な拷問器具が用意されていて、クロノ達はミアンヌから何を聞かされたのか吐かされようとしていた。
ミアンヌもまた人間に何を話したのか吐かされようとしていた。
ヤクラ「もうすぐここに騎士達がくるだろう。そうなったら我々は逃げるが、それまで言わねば命はないぞ…」
吐いても吐かなくも殺す予定…
クロノ達の知る事は少ない。洗いざらい話せばあっという間に殺されてしまうだろう。
ルッカ「このリュック見てください! これ未来の世界の道具が沢山あるんですよ? こんな住みにくい時代で暮らすより、未来に行きましょう。そうすればその怒りも消えて無くなりますよ? ほら! クロノも何か気の利いた事を言って!」
ヤクラ「ミライの道具?」
ヤクラはミライを土地名だと勘違いし、ルッカの荷物を漁った。
「それはドローンといってね。スイッチの所を押すとね、空に浮かぶの。」
ヤクラはコントローラーを操作してドローンを浮かせた。
「なぬ! これは凄い!」
ヤクラは子供の様にはしゃいだ。
「この様な魔具、ミライにはもっとあるのか?」
「ええ、あるわ。もっと凄いものが沢山…」
「ミライという場所、今からそこに案内しろ。」
ヤクラと魔族達は人間の姿に化け、教会から外へ出た。ルッカを先頭にゲートのある場所、トルース山へ向かった。
道中、騎士団とすれ違うがものの、ルッカはどうする事もできなかった。
○
クロノは居残りである。ルッカを言いなりにする為の人質としてミアンヌと共に残された。
魔族の男「ミアンヌちゃん…。まさか魔族を裏切るだなんて…」
ミアンヌ「あれはしょうがなかったのよ。カエルに脅されて手を貸すしかなかったのよ。」
魔族の男「カエル騎士のことか…。
魔族の男
(そもそも魔王様が気まぐれに呪いなんてかけるから…。それさえなければ今頃ミアンヌとオレは二人でデートを…)
ミアンヌは魔族の男にそっと耳打ちをした。
「私、カエル騎士と取引したの。安全な隠れ家を用意してくれる代わりに言いなりになったの。ねえ? 二人でそこに行かない?」
ミアンヌからのお誘い。男はヤクラのいない今がチャンスだと思った。
男は地下室から出ると、とある部屋のタンスの引き出しを開けた。引き出しにはガルディアの大臣がつめ込まれているが、男は大臣の事はどうでも良かった。
大臣が押し込められた引き出しの奥には、鋼鉄の刀がある。原作だと刀も大臣もこれみよがきしに宝箱に入っているが、それだとリアリティが無いということで…
男は刀を4本、腰に携え、ミアンヌの元へ向かった。
一本は自分の為、一本はミアンヌに為。一本はクロノに…。
敵を撹乱してミアンヌと共に逃げやすくする為にクロノに…
もう一本は折れた場合のスペアとして。
○
カエルは2階窓をぶち破り、リーネを抱えて飛び降りていた。
騎士団長と合流し、リーネを預け、クロノ達の元へ戻ろうとした時、ルッカとすれ違った。
ルッカの様子がおかしい。
大勢の人を引き連れている。
カエル「ルッカ、お前達も助かったのか?
ルッカは声を出す事ができなかった。周りにいる者全てが魔族であり、脅されている事を伝えるのは難しい。
ルッカはウインクで合図をした。
カエル「どうした? まさかオレに惚れたか?」
ルッカは繰り返しウインクをした。
カエル「ところで赤い髪の…クロノの姿が見えない様だが…」
その頃、クロノは日本刀を持ち走っていた。
ミアンヌカップルの逃亡劇に巻き込まれる形で、クロノは教会からの脱出に成功し、ルッカを追いかけていた。
クロノは人間に化けたヤクラの姿を覚えている。
迷わずルッカの隣にいる人間を刺した。
人間の姿をしている内は戦闘力が落ちる設定。ヤクラはクロノの攻撃で致命的なダメージを負った。
ヤクラは元の姿に戻って戦おうとするものの、直ぐ目の前には王宮騎士ナンバーワンのカエルの存在。
手負いのまま戦っても手こずるだけ。
ヤクラはルッカを口に加えると
手近な家に登り、屋根を飛び移りながらトルース山へ向かった。木々の真上を駆け抜ける。
ルッカの絶叫がやまびことなり、山々に響き渡る…
○
「おい!人間。お前の言っていた場所はこの辺りか?」
ヤクラの激しい動きとヤクラの口の匂いに、気絶していたルッカ。
「何にもないじゃないか!」
ヤクラは怒っていた。トルース山にミライという隠れ里があるものと思っていた。
魔力的な結界が張られ、人々の侵入を拒む魔族の土地があるものと思っていた。
だが、意識を張り巡らしても、周囲に結界が作られている様な魔力は感知できない。
「隠されたミライという場所…。ここじゃないのか??」
ヤクラはルッカのリュックを探った。
ヤクラは色々な道具のスイッチを押した。
ハンダコテ。虫よけスプレー、オイルスプレー。パソコン。
ヤクラはゲートホルダーのスイッチを押した。
ヤクラを吸い込む為の大きなゲートが開いた。
「な、なんだこれは!?」
ヤクラは驚き、手からゲートホルダーを落とした。
ヤクラの巨体のみがゲート吸い込まれる。
「で、でられーん!」
ヤクラは西暦2020年。ガルディア歴1000年の時代に降臨した。
もしヤクラが暴れ周り高速で動き回るなら人類になす術がないかもしれない。
だが、そうはならなかった。
マスコミは次元の穴に向かったルッカが、人命救助して帰ってくる。その事を期待してインタビューする準備をしていた。
世界は次元の穴から突如現れた異型の生物にパニックを起こした。
ヤクラは大量のカメラのフラッシュを浴びた。
ヤクラ自身、最初はヒビっていたが、自己紹介をし、敵意が無い事を表明した。
ヤクラはミライの土地が魔族達の世界だと思っていた。魔族として振る舞えば、全てうまくいくと。
マイクを向けられたヤクラは答えた。
「私はガルディアのトルース山からここに来ました。ミライの魔具を是非拝見したくて、伺わせて戴きました。」
喋る巨大ゴキブリ。ヤクラは果たして人類の脅威となるのか? 2020年は多様性が求められる時代。どんな形をしていても対話する力さえあれば人として認められるはず。
もしかしたら現代ではアイドル的なゴキブリとして芸能界に居場所があるかもしれない。
だがそんな夢も虚しく、ヤクラには軍隊が出動した。麻酔銃がいくつも打ち込まれ、研究施設へと運ばれていった…
○
一方、クロノとカエルは魔族と戦っていた。
ヤクラが正体を見せたのをキッカケにその他の魔族も本性を表した。
カエル達が応戦していると騎士達が集まり、魔族は逃げ出した。
クロノはルッカを追いかけて山へと向かった。 道中、馬車に乗ったマールが現れる。
マールは消滅していた間の記憶が無かった。クロノが一人でトルース山に向ったと思い、マールも向かっていた。
ーゲート前ー
気絶したルッカはブルーの小さいオッサン(ジャリー3体)に抱えられていた。ルッカはヨダレまみれになっていて、オッサンらの棲家へと運ばれている途中だった。
クロノ達が一足遅ければ『ルッカ行方不明』となっただろう。作者的にはその展開もありだと思うが、読者が飽きている気配がして没案にし、早く完結に向かわせようする。
目を覚したルッカ。ヤクラの口内に包まれていたことは悪い夢だと思い、前向きに生きようとしていた。しかしヨダレまみれにて、その気持ちも萎えてしまう…
ルッカ
「私達、お国の為にかなり頑張ったよね…。」
マール
「きっとリーネ救出のご褒美が貰えるかも」
目に光が宿るルッカ。
「そうよ! 当然の権利だわ!」
ルッカは駆け足で山を降りた…
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