クロノファン2020

主に二次創作置き場

アレンジクロノ


この物語は原作設定と大きく異なります。年代設定は暦2020年。マールはクロノと偶然出会う訳ではなく、自らクロノにぶつかりに行きます。

第1話

「キャッ!」

リーネの鐘の下で、マールは友達候補を探していた。

王族としてのしきたりで、平民とは友達になれないのが悩みだったマール。ドラマや漫画の様な熱い青春と友情と憧れていたマールは、ついに狙いをつけ飛び込んだ。

 

マールは女優バリの演技をし、さもぶつけられたような態度でクロノへとぶつかった。

 

さり気なくペンダントを落とし、探している振りをして、あえてクロノに拾わせる。そうすることで「拾ってくれてありがとう!」を自然に言うことができ、名乗りやすくなる。

 

ぶつかった罪悪感による惹きつけ効果と恩着せ優越感効果の連携技を見事に利用したマールは、クロノを手中に収め、エスコートさせまくる。

正直いうと調子こいてた。だからこんな事になったのかもしれない。

 

「ここ、どこ…?」

 

マールがいたのは千年祭会場の裏山のトルース山だった。

 

事故なのか、単にテレポートに失敗したのか、、千年祭会場から離れた場所に転送されたマール。

 

「王宮が見えるから、そんなに遠くまでは飛ばされてないようね…」

 

クロノや会場のみんなが心配しているかもしれない。

マールは駆け足で山を降りた。

 

 

 

 

 

 

ークロノー

 


-

マールはそこに向かったに違いない。マールとは5分と間を開けてないから、急いで降りれば合流できるかもしれない。クロノはいそいそと山を下った。

山を降りると千年際会場敷地の裏側に出る位置だろうから、この位置ならマールも道に迷う事もないだろう

しかし、見えない。千年際会場がない。
リーネの鐘はある。ここにルッカや見物人が多くは居たはずなのに誰もいない。

夢でも見ているのか。自宅に帰ってみるも、家がない。家がないどころか、街自体おかしい。
大昔にある様な水車小屋や牧場、井戸。
まるで過去にタイムトラベルしたかの様な光景。

クロノは落ちてる新聞を拾った。
日付、ガルティア歴600年。クロノは400年前にタイムスリップしていた。


新聞の広告欄には大きく『ガルディア兵募集中と書いてある。

「おい、あんちゃん。いい加減返してくれよ。拾ってくれたのは嬉しいけどさ…」

クロノは新聞を貸してくれた気の良さそうな男に、 スマホに映るマールの写真を見せた。

「あんちゃん!、なんだこの鉄板!? 人が中に入ってるぞ!? おーいおーい!」

写真の技術すらまだ無い戦国時代の人間にスマホを見せたらどんなリアクションをするのか、クロノ自身想像はつかなかったが、マールを探すのに他に効率の良いやり方を思いつかなかった。

「さてはお前、魔族だな! 魔術で人をこの板の中に閉じ込めたな!」

クロノにはサッパリ意味が分からなかった。
魔族とは何? 何を言っているのこの人は?

「分からないふりしてとぼけるつもりか!さては人に成りすます魔族か!」

男は警笛を吹いた。民家に笛の音が鳴り響き、男達がぞろぞろと現れた。どの男達も農機具や剣を持ち、クロノに敵意を向けている。民家では男達を心配そうに見つめている女子供がいる。

「みんな取り押さえろ!」

クロノは突然の事で思わずしゃがみこんでしまった。



クロノはロープでグルグル巻きにされ、納屋に放り込まれていた。
外では人々が、「魔族が街に現れた!」と騒がしくしていた。

クロノに槍を向け、監視する男が2人。
しばらくすると、ギシギシという音が迫ってくる気配がし、監視する男と入れ替わる様に鎧姿の男が納屋に入ってきた。

男はクロノのスマホを手に持っている。

「おい、魔族! これは一体なんなんだ? 人をこの中に閉じ込めたのか?」

クロノは現代のスマホについて説明した。

「離れた人と話せる道具? 写真を撮る装置? …」

この時代ではスマホは繋がらない。

「はあ? 未来から来ただと? 意味の分からないことを…嘘を言うと為にならんぞ!」

クロノは写真の撮影のやり方を教えた。

「魔族の言葉に従うと思っているのか? 私に何かをさせて、私もこの中に閉じ込めるつもりなのだろう!」


男はクロノに剣を当てた。
「目的はなんだ! カネか? 人さらいか?」


「言わなければ痛い思いをするぞ」


「正体を見せないというなら…」

男は剣をクロノの首に強く押し当てた。

その時、外が騒がしくなる。

納屋の戸が勢い良く開き、ドレス姿の女が現れた。

「この者は魔族ではありません!」

女が言うと、男は跪き、外にいる兵士や町人も膝ずいた。

兵士
「王妃様、恐れながら、この者はこのような不可解な物を所持し…

王妃
「それは魔族がこの者に与えたもの。この者を罠に嵌めようとせんとしたのです。」

王妃
「この者は王宮の大切な従者、この者を即刻開放せよ。それからしばし、この者と2人になりたい。席をはずせ!

兵士は踵を返し、納屋から離れた。

しばらく、沈黙し、王妃は突然、腹を抱えて笑いだした。

「クロノってば顔が面白いー!」

鳩が豆鉄砲を食らった顔をしていたクロノ


「はぁはぁはぁ。めちゃ緊張した! とにかく、落ち着こう私。

「私だよ。マールだよ。」


「おかしいよね〜。私、この街に来て、いきなり王妃に間違われて無理やり王宮に連れていかれて、ドレス着させられて…
 そしたら赤い髪をした魔族が出たって街で大騒ぎになってるって話を聞いて、私すっ飛んできたの。
 私、一方的に間違われたんだから、ちょっとくらい王妃に成りすましてもいいよね。」

クロノは魔族に間違われて殺されそうになった。魔族について疑問が晴れなない

マール
「私も見た訳じゃないから、良く判らないのだけど…
 とにかくここで長話するのあれだし、王宮に行こう。」

マールに連れられクロノは王宮に向かった。




〜王妃の部屋〜

マールは400年前、日付7月1日の新聞をクロノに見せた。現代では使われない活版印刷調で独特の紙質の新聞。その中には南部魔族軍と戦争記事か書かれていた。

【魔族は人間よもり身体能力が高く、魔法や妖術を使い、人間に成りすましたりする。魔族は人間を食べる種もいて、誘拐や略奪等をする。魔族国家は東西南にあり、人間世界と戦争をしている。】

マール
「私達が知っている歴史には魔族なんて存在しない。だからきっとここはガルディアに似た異世界なんだと思う。」

クロノはふるえていた。400年前にタイムスリップしたかと思ったら、別世界に転移していたのだから。
元の世界に帰る方法があるのか、心配になった。

マール
「クロノ、大丈夫だよ。きっと天才ルッカが助けに来てくれるよ。


マール
「でも、またクロノみたいに町の人達に捕まったら大変だから。私達が飛び出してきた山に戻ってみよう。ルッカを待っていようよ。

マールがそう言って外に出ようとした瞬間、光り包まれた。

困惑するマールとクロノ。
クロノがマールに触れようとするとすり抜けた。
マールはクロノの前から消滅した。

クロノは夢でも見ているのかと思い込み、ベットに座り横になった。
安定しない思考を物思いにふけることで解消しようとした。

異世界に来てマールが消えた。
タイムスリップしてマールが消えた。
王妃と間違われてマールが消えた。
本物の王妃は一体何処に行ったのだろうか?

クロノはそれらの疑問を頭の隅に置き、
マールの言葉を思い出していた。ルッカも自身と同じ様に魔族に間違えられるかもしれない。

ルッカがこの世界に来るかもしれない可能性を考慮し、クロノは最初にこの世界に出現した場所(山)へと戻った。



ルッカ

「あのバカ、カッコつけて無茶しやがって…」
ルッカは悔やんでいた。クロノを実験に協力さえさせなければ、あの様な事故に巻き込ませることはなかった。
最悪死んだかもしれない。ルッカは放心状態でマスコミにカメラを向けられていた。

マイクを向けられ、事故原因のコメントを求められ、デリカシーのない言葉が浴びせられる。
ルッカにはその言葉は耳にも届いていなかった。
ルッカはクロノが消失した場所に落ちているペンダントを眺めていた。



ークロノー

一時間程待っていると空間が避け、その穴からドローンが現れた。
ドローンにはロープとカメラが取り付けれていて、クロノの顔が撮影された。しばらくするとドローンが引き戻され、またしばらくすると、ドローンが戻ってきた。

ドローンにはメモが貼り付けてあった。
「クロノへ。ドローンの紐を身体に巻きつけて。引っ張り上げるから。」

クロノはロープを身体に巻きつけると、ロープを引いて合図をした。空間の裂け目をゆっくり進んで行った。

クロノが元の世界に帰るとマスコミからフラッシュを大量に浴びた。
マスコミは【少年が次元の穴が吸い込まれ死亡!】という記事を【少年が次元の穴に吸い込まれるが生還!】という記事に差し替える為に、忙しくしていた。


ルッカ
「…この様にある特殊な波長を出す装置を使えば空間の歪は開き続けます。これによる消費電費は実質0であり、任意の目的地までワープすることができるのです。であるからして、この研究の注目されるべきポイントは次元の歪同士の繋がりがどの座標と結ばれるのか関係性を特定し…」


ルッカはまるで事故の全てが終わったの様なスピーチをし、会場を諌めていた。
マールの存在を忘れているかのように。


ルッカの家〜

「え? マール? 誰のこと?」

「クロノの前には誰もテレポートにチャレンジしなかったわよ? みんなビビって挑戦しないからクロノがデモンストレーションして見せたのでしょう?」

「それにしてもクロノ、変わったペンダント持っていたわよね。あれが事故の原因になった訳だけど、あのペンダントがあったお陰で帰ってこれたのよ。もしあれがゲートの向こう側に行ってたら、今頃クロノは見知らぬ土地で…


「ペンダントに使われている鉱石の波長がゲートを開くキーになってたから、その波長を再現するだけだったから簡単だったけど…不思議よね…あのペンダントだけはゲートに飲み込まれないのだもの。クロノが残したあのペンダント、一体何なの? 


おしゃべりなルッカを遮る様にクロノは今日あった出来事を伝えた。

ルッカは魔族等の話は半信半疑で聞いていたが、王妃に関して考えを述べた。

「400年前の王妃といえば、リーネ.マンデラね。歴史ネットによるとリーネマンデラは王妃に即位後、盗賊に襲われて誘拐される。、当時護衛をしていた7人の兵士は盗賊に殺されるか行方不明になっている。

興味深いのは、リーネ王妃が誘拐されて3日後に盗賊のアジトから逃げ出し、街をふらふらしているところを兵士達に保護されるも、なぜがその日にもう一度、行方不明になり、3日後、、盗賊のアジトから脱走し王宮に戻ったという。盗賊のアジトとされていたのが聖マノリア教会
で、盗賊団はリーネ誘拐前に教会を占拠し、シスターと神父を皆殺しにしたという。リーネは教会の隠し部屋に幽閉されていて、盗賊団は王家への金品要求、人質交渉の道具としてリーネを利用するつもりだったと、後に捕まる盗賊団のメンバーから証言が得られた…」

ルッカ
「マールとリーネの顔が瓜二つで、リーネと間違われ、マールは王宮に入った。その後、クロノの前から光に包まれてマールは消えた…
ありえるとすればリーネの子孫がマールだった場合ね。リーネが殺され、未来に生まれる筈だったマールが存在しないことになって消滅した…

光る謎とか色々と疑問点があるけど、クロノのいう魔族の話も、もしかしたらこの誘拐事件に関連してくるかもね…

魔族が人間に化けられるというなら、リーネを誘拐した後、リーネの顔を研究してそっくりに化ける事が考えられるわ。リーネに化けた魔族が王宮に入り込む計画があって、その計画途中で、リーネとそっくりなマールが街をウロウロしていて、王宮に保護されてクロノの前で消失した。その3日後にリーネに扮した魔族が王宮に戻ってくる。」

「魔族にとってリーネの顔を研究し終わるのが今から3日後として、リーネが殺されるのもその日という事になるかしら…」

クロノは立ちあがった。

「ちょっとどうするのクロノ! まさかあのゲートをくぐって助けに行く気? 

クロノは頷いた。

「その顔はマジね。なら今すぐにでも準備しないと。3日後にリーネが死ぬと言ったけど、推測でしかないもの。今すぐに行動しないとね。」


ルッカは大きなリュックに色々詰め始めた。

「勿論私も行くわよ! 異世界? タイムスリップ? サイエンスで解けない謎はないわ!」


ルッカはアンティークとして飾られていた刀をクロノに渡した。

「向こうの世界は銃刀法違反なんてないんでしょ? だったらどれだけ武装してても文句は言われないわ!」


ルッカとクロノはゲートへと飛び込んだ。



夜、山中。2人は懐中電灯を頼りに進んだ。

電気を消すと全く何も何も見えなくる。月明かりさえない林の中を降りていく。

街には各所に松明があり、山を降りると懐中電灯が無くとも道に迷う事は無かった。

2人は酒場に入りマノリア教会の場所を聞き込みをした。

「お、お前は昼間の怪しい奴!」

クロノは男達に取り囲まれた。

「あの時は、王妃様の知り合いとは知らず、無礼を働いた。だがあの後、王妃様はまた行方不明に…。王妃様は部屋から忽然と消えなさった。しかも、王妃様の部屋から最後に出てきたのは、お前らしいじゃないか! やっぱりお前は魔族なんじゃないのか! 王妃様を騙して、誘拐したんじゃ!


ルッカ
「貴方の話、さっきから聞いてるけど、ちっともサイエンスを感じないわ!



「な、なんだ、お前は!


ルッカ
「いい? 誘拐犯人が堂々と酒場にくる訳ないでしょ? 王妃様は部屋のドアから出たんじゃないわ。窓の外から出た。そうとしか考えられないわ。


「確かにそうだが…。王妃様の寝室は5階にあるのだぞ? そこから出たというのか?

ルッカ
「魔族は空を飛べるんじゃなくて? 5階から連れ去られるなんて造作もないことじゃなくて?


「確かにそうだが…
 だがこの男は昼間、板の中に女性を入れていたのだぞ?
 王妃様を板に封印して持ち去ったのではないのか!

ルッカスマホを取り出して撮影した。


男達はパニックを起こした。


ルッカ
「ほらこれ、よく見て! 人が写っているでしょ? これは写真といって、19世紀最大の発明品とも言えるものよ?」

男達は封印されなかった事に安心したのか、ルッカの講義を聞き始めた。

ルッカは男達にスマホを渡してイジらせた。


「女、これを一体どこで手に入れたんだ。

ルッカ
「ネット注文ね。自宅に居ながらにして、手に入れたわ。19800円よ?


(全く意味が分からない!)
「おんな! やはりキサマ魔族! 訳の判らぬ呪文を唱えて、何かをやらかす気だな!

ルッカ
「私が魔族だったら何? 私を殺すの?


「認めるのかキサマ! 

ルッカ
「しょうがないわね…

ルッカスマホを折った。

ルッカ
「これでどう? 危ない物だと疑うものを私が処分してあげたわよ。


「キサマ!今のは大切な物ではなかったのか!? 

ルッカ
「そうよ!大切なものよ!


「ならなぜ壊す必要がある!

ルッカ
「貴方達が私を信用しないからじゃない! だから私が壊してあげたのよ!


「わ、わからない。この女、訳がわからない…


クロノは話を戻した。いずれによリーネは行方不明。捜索しなければならない。



「確かにそうだ。こんな事している場合じゃない…

ルッカ
「ここ最近、変わった事はないかしら? 特に教会辺で


「そういえば、最近、教会に誰もいないのにピアノの音が鳴るな…




男に案内され、教会へ向かった。

教会ではシスターが祈りを捧げていて、ピアノの前にはシスター長がいる。

ルッカ
「シスター、聞きたい事があるのだけど、貴方魔族ですか?」


シスター長
「え? どういう事でございましょうか。

ルッカ
「このスマホで撮影すると本性が見えるんですよ。


ルッカはシスターの顔面を撮影し、画質を高解像度モードにした。

「人間を真似するといっても、完璧に真似る事はできないはず。だとしたら、人間に特有でない魔族特有の痕跡があるはずでしょう。」

「例えばこれ、人間は縦線目には成りません。縦線目になるのは爬虫類やネコ科の動物で…


ルッカが講義をしているとシスター長は既に本性を表していた。下半身が蛇で上半身が人間の化け物に変化していく。

蛇魔族
「キサマ今何をした! 私に奇っ怪なものを見せ、呪文の様なもの唱えた! 私に何を…何をしたー!」

蛇魔族は怒り狂い大口を開け、ルッカが被ってるヘルメットにかぶり付いた。

クロノはルッカの命知らずな態度に青ざめつつ、刀を抜き振るった。

ここへ案内した男は悲鳴を上げながら出口から逃げようとするが、シスター4人が通せんぼした。

クロノは剣道をたしなむが、真剣は始めてだった。ふんぶん振り回すも、蛇特有の動きの速さで捉えきれない。
蛇特有の動きで壁を伝い、天井にへばりつくシスター長。
口から硫酸の様な毒液を吐き出した。
肩に掛かると服が焼ける様に溶けていく。

クロノ達はとてつもなくピンチだった。


ルッカはリュックついている防犯ブザーを鳴らした。

突然のサイレンに蛇達は動揺し耳を塞いだ。
聴いてはいけない危険なものだと思い込んでいた。

ルッカの目算では、防犯ブザーを聴いて誰かが助けにくる事を期待していた。犯人の居場所が街に周知されるなら、魔族も迂闊な事はできなくなる。リーネを人質に取る事はあっても殺しはしないだろう。

ルッカの前に現れたのは武器を持ったカエルの化け物だった。ルッカは恐怖で雄叫びをあげた。

カエルは耳を塞いだ魔族達を見るなり、駆け寄り、一刀両断した。
次々に魔族を一刀両断していく。

ルッカはサイレンの様に雄叫びをあげた。

カエル
「おい、 安心しろ。もう終わったぞ」

ルッカはカエルと目があい、もう一度雄叫びをあげた。

カエルは他に敵がいるのかと思い込み、周りを見渡した。


ーグレンー

私は王宮騎士グレン。リーネ王妃の捜索にあたっていた。街ではルッカとクロノの二人組が話題になっていって、二人は王妃を探しに教会に向かったという。
まさかそんな所にいる訳がない。
そう思いながらも、私は2人が気になり追いかけた。



「やけに教会が騒がしい…」

特にやかましいのはヘルメットを被った女だった。
女はてっきり魔族を見て悲鳴をあげているのかと思いきや、まさか私のカエル姿に驚いて悲鳴を上げていたのだ。
その気持ちは判るが命の恩人に対して無礼な女よ。

仮にも国で一番強い剣士のこの私が、こんな蛇女よりも気持ち悪い等という。この女のセンスを疑うところである。
巷では私は「ぷにぷにしてカワイイ! その長いベロで巻かれたい!」と言われる程に人気者なのだぞ。

と、愚痴をこぼしていても仕方がない。とにかくこの教会に魔族がいた事実。リーネ様を知っているのかもしれない。

「おい、蛇女! 死にたくなければリーネ様の居所を言え!」



ルッカ
「何が国一番のイケてるアイドル剣士よ。どう見てもカエルの化け物じゃないのよ。。ヘビ女の魔族と大差がないわ」

カエル
「さっきも言ったであろう。私は訳あって魔族に呪いかけられ、この姿にされたのだ。少しは不憫に思ったらどうだ。

ルッカ
「モテモテだと自慢していたのはどこのだあれ?

カエル
「それはあくまでも一部のマニアに対してだけだ。」


クロノは二人の口論を止めに入った。
蛇女を脅してリーネの居場所を聞き出すチャンスである。そう言ってたしなめると、息のあった蛇女にカエルが脅しをかけた。

蛇女が教会のピアノを弾くと、壁しかなかった場所にカラクリ式の扉が現れた。

ルッカはリュックに入れていたロープを取り出し、クロノ達に渡した。

蛇女が動けない様にグルグルに縛った。カエルを先頭に隠し扉を開けると、6畳程の部屋があるが、誰もいない。足元がしなり、底の板が薄い。調べると地下へと続く階段が見つかる。

階段を降りると、寝台にリーネが寝かされ、もう一人のリーネが立ってこちらを見ていた。

もう一人のリーネは笑いながら、顔形が崩れていく。ドレス姿のリーネの形は大きく膨張し、3m級の茶色のゴキブリの様な姿に変わり、カエルに襲い掛かった。

ゴキブリの牙とカエルの剣が弾き合い、カエルは壁に追い詰められる。

クロノは意を決して、刀を振るうが、硬い殻に弾き返されてしまう。

「クロノ!」

ルッカはリュックから工業用オイルスプレーを取り出してクロノに渡した。

クロノはルッカの指図のままゴキブリにスプレーかけた。

ゴキブリに変化はない。

「クロノ、いいから空になるまでそのまま続けて」

ルッカは教会の灯りに使われてるローソクを手に持っていた。

クロノはそれを受け取り恐る恐るゴキブリに火をつけた。

ゴキブリはオシリから勢い良く燃えた。変温動物なのか、直ぐには燃えてる事に気付かずに、下半身の動きが鈍くなっていく。

ゴキブリ魔族
「な、なんだ…何が起きてる…

ゴキブリは火を消そうと地面にゴロゴロ回ろうとするが、3mの巨体だと狭い地下室内をゴロゴロと回れない。
ゴキブリはリーネの姿に変身して地面をゴロゴロと回った。
火は消えず、周りを巻き込み、地下室は燃え始めた。
カエルは寝台までジャンプすると、寝ているリーネを抱えて飛んだ。
階段を登り、教会から出ていく。

程なくして火ダルマになったリーネゴキブリが教会を飛びだし、井戸の中に飛び込んだ。
井戸から這い上がると、巨大なゴキブリの姿に戻り、林に向けて逃げた。木に登り、森の真上を駆けながら、山へと消えた。

クロノ達は井戸の水で教会の消火をした。


ーマールー

マールはリーネの部屋にいた。
消えていた頃の記憶は無かったマール。さっきまでクロノと部屋にいたはずで、昼間であったはず。外を見ると兵士達が騒がしくしていた。
「もしかして、クロノがまた捕まったのでは?」
マールは急いで部屋を出た。


城内ではマールが行方不明とされ、慌ただしくしていた。

「リ、リーネ様!? 

リーネの部屋を守っている兵士は困惑していた。昼間に密室の部屋から忽然と消えた王妃が、今また忽然と現れたのだ。

「リーネ様! 一体今まで何処にいらしていたのですか! 王宮はリーネ様を探して大変な騒ぎになっています!」

兵士は廊下にいる従者にリーネの無事を報告し、従者は急いで王に知らせに行った。


「さあ、王妃様も、王様の元へ」

兵士達に連れられ、マールは訳がわからないまま、一階広間へ行く。

広間ではガルディア王21世とリーネ王妃が王座に座り、クロノ、ルッカ、カエル、町の男に、リーネ救出の感謝の言葉を述べられようとしていた。

マールがそこに鉢合わせする。

王族、大臣、兵士達の動きが止まった。

少しの間があった後、マールとリーネを兵士達が取り囲み、剣を向けた。

兵士
「王妃様、申し訳ありませぬ!」



「まさか、大臣…どちらかが、偽物ということか?

大臣
「魔族がどちらかに成りすましているとすれば、王妃様しか知らぬ質問をすれば…

マールは質問に答えられない。

ただのそっくりさん。そう説明しても、マールを開放してくれる空気ではなかった。
たとえそれが真実だとしても、王家はマールを容疑者として扱い、幽閉し、監視し、王家としての保身を図ろうとする。また未来の説明をすると歴史が大きく変化するかもしれない。

クロノ達はそれでも未来について説明した。
持っている未来のアイテム、タイムトラベルしたゲートの存在。
数日時間を要したが、リーネの子孫がマールだという真実をこの時代の大臣が未来に行き知る事でクロノ達の身柄が開放された。



〜元の時代〜


元の時代に戻るとクロノとルッカ、マールはそこが元いた世界でない事に直ぐに気付いた

ガルディア王国千年祭はあるものの、ルッカが発明したテレポート装着はなかった。クロノ達はゲートから出た瞬間、電気ショックを受けて倒れた。

黒のスーツを纏う男達はショックガンで狙いを定めていた。ゲートから出てきた瞬間のクロノ達を確保する為に。

クロノ達が400年前に持ち込んだ未来の技術は現代の技術を大きく発展させていた。
その一方で歴史は大きく変わり、クロノ、マール、ルッカはこの世界に生まれていない状態になっていた。

男達の目的はクロノ達を確保し、テレポート技術を開発させる事だった。
技術発展した未来とはいえ、テレポート技術は作れなかったガルディア。時越えの技術とテレポート技術で経済競争で他国に抜きんでんとする為に、極秘裏にクロノ達は幽閉された。

ルッカ
「馬鹿よね…クロノ達を人質にして私に作らせるなんてしなくても作るわよ。この世に無い物を生み出すのがサイエンティストというものよ。」


ガルディアの極秘組織はクロノ達に過去世界に戻って歴史を変えて欲しくはない。万が一の脱走に備えて千年祭のゲートは鉄の壁で覆われた。

ルッカには仮説があった。ゲートに通ずる時空の歪はテレポート装着の事故によって生み出されたものではく、元々自然界にあったものではないかと。自分達は偶然にそれを見つけただけではないかと。

ルッカはテレポート装着を作る事に並行してゲートを探し出す装置も開発した。

ルッカは森の中にゲートを見つけて飛び込んだ。

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――――――――――――――――――――――――――――



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「クロノ、今すぐに戻るわよ! カエルやリーネより早く王宮に行き、マールを連れて帰るの!」


クロノ達は城まで走った。

マール
「あ、クロノ! 無事だったんだね!  それにルッカも来てくれたんだね!  

ルッカ
「細かい事を話している暇はないの。このままここ居たら嫌な予感しかいない。ゲートもいつ消えるかわからない。早く帰るわよ!」

クロノはマールの手を引いて走った。



〜ゲート前〜

マール「私!ドレス持ってきちゃった。」


ルッカ「記念に貰っておけばいいじゃないの?」

クロノ達が元の世界に戻ると、強いライトに照らされ、前から見えなくなる。

目を凝らすと、ヘリが目の前にあり、ガルディア軍人が二人立っている。

白ひげの大臣が二人の間から現れた。

マール
「じい、どうしてここが…

大臣
「マール様、探しましたぞ…。ささ、王宮へかえりましょうぞ」

マール
「じい…私…

大臣
「置き手紙の件なら心配する必要は在りませんぞ。王様もマール様が帰って来られるのであれば、他に何もいらぬと仰られておる。


マール
「クロノ、私、実は家出してきたんだ。王宮のしきたり嫌になってそれで…
 今日は楽しかった。色々とあったけど、ありがとう。
 ルッカも助けに来てくれてありがとう。
 またいつか会おうね…」


マール
「あ、そうだ。私のペンダントのことだけど…

ルッカ
「それなら私の自宅にて厳重に保管しております(嘘です。作業台に無造作に放置されてます。)。これから持って参りましょうか?

マール
「いえ、その様な手間を掛ける訳には…

大臣
「マール様、あとでジイやが取りに参りますので。

マールはクロノ達に別れを告げるとヘリで飛び去って行った。



ルッカ
「さすが王族…家出娘の出迎え方がパネェわ…


「クロノ、覚えておきなさい。あのヘリにいずれ貴方も乗る事になるのだから。」



ルッカ「玉の輿のチャンスよ、クロノ。まめに連絡することよ?

「え? マールの連絡先を知らない? マールは携帯電話を持ってなかった?

ルッカ「ヘリは持てど携帯は持たない。王族は一般人とはとことんズレてるわね…

「さあ、私達も帰りましょうか。」


ルッカのブースは非常線が張られていいて、警察が警備をしていた。
クロノとマールは次元の穴に吸い込まれてルッカがそれを助けに向かった事になっていた。
ルッカの帰りを待っていたマスコミがどっと押し寄せた。


ルッカ
「今日これ、3回目なんですけど…


マスコミ
「次元の穴には何があったのデスか! 何処に通じていたのですか! やはり異世界に!」

ルッカ異世界についてもタイムトラベルについても答えなかった。

マスコミ各社は
『次元の穴に吸い込まれた二名男女、行方不明!! しかも吸い込まれた女性は王室のマールディア王女だった! ルッカ博士、二人を助けに向かうも帰って来ない!』という記事を

『次元の穴に吸い込まれた二名男女、ルッカ博士により無事生還す! しかも吸い込まれた女性は王室のマールディア王女だった!』という記事に差し替える準備で大忙しだった。



車内、クロノはガクガク震えていた。
魔族に襲われ、硫酸を浴びたり、戦った事を思い出していた。

ルッカ
「それにしても魔族って何だったのかしらね…。マールが消えた事といい、400年前の時代と今に繋がりが無い訳ではないと思うのだけど…


ルッカは、400年前の新聞をリュックから取り出す様にクロノに促した。
クロノは後部座席に置いたリュックをゴソゴソする。


〜クロノの家〜

ジナ
「まあ、ルッカちゃん。今日は本当に凄い日だったわね〜。世界に中継された超次元転送マシンの実力! ルッカはちゃんはこれから先、世界中の企業や投資家からもてはやされる事になるわね。

ジナ
「ほら、クロノも今日のあれがテレビに写ってるわ。ほら! 次元の穴にキュイーンと吸い込まれる!

ルッカ
「あの時は流石に腰が抜けたわ。クロノがあんな命知らずな人間だとは思わなかったし、


ジナ
ルッカちゃん、あの後、顔面蒼白よね。クロノが女の子を助けに行っちゃうんだもの。ジェラシー感じちゃうわよね〜

ルッカ
「お、おばさん! 何へんな事を言ってるんですか! 私は単なる幼馴染です。

ジナ
「そういって、顔を赤くするところ。クロノと一緒で昔から嘘が下手よね〜

ルッカ
「ち、違いますって! おばさん、トンチンカンな見方しないでください! 私が顔面蒼白してるのは、単にクロノが死んだかもしれないと思っただけで。

ジナ
「そーなーのー?

ルッカ
「そうです! あの時は事故を受けれられなくてパニックしてて。平静を取り戻すのに精一杯だったんです。

ジナ
「そんなにパニックしてたの? あんまりそういうふうには見えなかったけど…

ルッカ
「清水の舞台から飛び降りるじゃないですけど、欄干にでも立ってる様な気分でしたね…。

ジナ
「いつも冷静沈着なルッカちゃんが、そこまで…

ルッカ
「あの時は本当にやばかったです。まあ、でもクロノが落としたペンダントを見つけて、発明のブレイクスルーになると思って、その後は割りと平常心に戻ったというか。好奇心に突き動されてどうにかなったというか。

ジナ
「クロノのお陰で平常心を取り戻した訳か…

ルッカ
「おばさん…またそういう言い方を、

ジナ
ルッカちゃんは、クロノの最有力お嫁さん候補なんですからね。おばさんは期待しているわよ。ルッカちゃんにも選ぶ権利はあると思うけど、おばさんは、クロノの嫁にはルッカちゃん一択しかないと思っているの

ルッカ
「はいはい、分かりましたよ。クロノを選択肢の一番下の方に置いときますんで。

ジナ
「ところで今日は泊まっていかないの?

ルッカ
「流石にもう大人なんで…それに近所なので帰りますよ。

ジナ
「えー。久しぶりにルッカちゃんと一緒に寝んねしたいよー

ルッカ
「おばさん、私もいい加減に大人なので、人様のお母様ともうそういう関係には…


ジナ
「えー。


その頃、クロノは新聞記事を読み込んでいた。
記事内容を要約すると

○西部魔族の特殊能力、人に化ける能力を持ち、その力で近隣の国々が制圧された模様あり。表面的には人による独裁政権に見えるが、内情では人間を食べる為の家畜にした植民地政策をしていると報告あり

○西魔族はガルディア本土でも各所に目撃され、官民一体となって対策し要警戒をすること。

○南部魔王軍は相変わらずガルディア本土に向けて挑発行動をしている。もし東西北の魔族が手を組んで合同で進行されると今のガルディアには勝機はない。兵人員を早急に増やす事が急務とされる。

○リーネ王妃が失踪して3日目。兵員1000名を使い人海戦術で捜索するも手がかりなし。失踪当日、リーネ王妃は護衛7人を連れて山中を散歩中に従者4名、護衛7人と共に行方不明となる。魔族による仕業だとすれば国の維新に係わる大問題であると共に、魔族がガルディア本土に潜伏している事も意味する。西魔族に対する警戒をより一層に強くしなければならない。



ーマールー

大臣
「ところでマール様、次元の穴に吸い込まれた先は何処に繋がっておられたのですかな? じいはマール様が帰って来られてからというもの、その事ばかり考えてしまうのです。」


マール
ルッカにはゲートの先を内緒にしろって言われたのだけど実はね、私達、異世界に行ってたの。信じられないと思うけど私達400年前のガルディアで魔族…といっても私は見た訳じゃないのだけど、クロノ達が魔族と戦って私を助け出してくれたの。

大臣
「ま、まぞく? まさかその様なものが、過去の世界に居るなんてことある訳が…

マール
「そうよね…。だからきっとあの世界はこの世界とは違う、パラレルワールドみたいなものだと思うの。でも凄くない? 異世界なんだよ? ファンタジーだよ。

大臣
「では、そのお召し物もその異世界から持って来たという…


大臣は震える手でどこかに緊急のメッセージを飛ばした。

大臣
「ま、マールディア様…落ち着いて聞いて欲しい事があるのですが…。決して誰にも言ってはならぬと約束できますかな…。 


大臣は真剣な顔で過去の歴史をマールに語った。

400年前にガルディア及び世界の殆どの国々が、人に化ける西側魔族によって侵略され統治されたこと。魔族は人間を食料として確保する為に、魔族の存在そのものを歴史から隠蔽し、表面的には人間にとって暮らしやすい社会を作ったこと。
西側魔族は人間を独占する為に、東南北魔族の情報を人間側に売り渡し、人間と共にそれらの魔族を滅ぼしたこと等を説明した。

この歴史は権力ある一部の人間しか知らず、もし、知るはずのない者が、魔族の歴史を公に語るなら、その者に身に危険が及びかねず。マールも例外ではなく、決して語らない様に念を押した。

マール
「ちょっと待って、じゃあ、クロノやルッカはどうなるの? 絶対に魔族の事を喋らない様にこの事を教えてあげないといけないんじゃ。

大臣
「安心して下さい。今、王家の秘密の組織(黒の組織)がクロノさん達を保護しに向かっております。



ークロノ自宅ー

ヘリの騒音が響く。
クロノ達は家の外に出てマールの到着を出迎えた。

ルッカ
「マール様、一体どうなれたのですか? ペンダントの事でしたら私の自宅に…

マール
「そうじゃないの…

マールは王家の秘密の組織が到着するのを待っていられなかった。直接、危険を伝えにやってきた。

クロノ達が現状を理解する頃、
マールと大臣、クロノ、ルッカはテーブルでジナの用意をしたお茶を飲んでいた。

大臣が茶をすする、ジナは奥の部屋から煎餅を持ってきた。

大臣は煎餅をボリボリ食いながら説明した。

「…であるからして、権力者やその周囲には人間に成りすました魔族が多くて、彼らは権力者やその親族を人質に取り、政治を裏で操っています。
彼らは夜な夜な国家権力を使い、人をさらいをして、人間を食料としているのです。

ルッカ
「そんな馬鹿な! いくら国家権力が関わってても、そうそう人が居なくなったら、周りの人間は気付くでしょう?

大臣
「ですから、魔族達はターゲットを絞っているのです。友人や身内がいなかったり、失踪しても誰も気にも留めない者を選別しているのです。


ルッカは失踪届けの統計を調べた。
ガルディア国内だけで、年間の行方不明者の件数が10万件を超えている事に気付いた。

ルッカ
「そ、そんな…。こんなにも人が居なくなってるのに、誰も気にも留めないの…

大臣
「失踪した住人の居たアパートの管理人等が、便宜的に失踪届けの手続きを警察にするだけで、警察も深くは捜索しません。魔族は催眠術を使ったり、人の記憶を消したり、魔法を使ったりもできるので、警察は事件があったことすら認知しません。

ルッカ
「なんで大臣はそんなにも詳しいの? 王家はこの事を知っているの?

大臣
「マール様を含めて王家は一切関与していません。関与しているのは…」

大臣の先祖は400年前の時代から、魔族に王族を人質にとられ、人間誘拐の仕事をさせられていた。その仕事は現代にまで続いていて大臣は人さらいの実行及び責任者をしていた。

マール
「そ、そんな…ジイやが、人殺しに加担を…

大臣
「申し訳ございません。マール様や王家の者を守るには他に方法がありませんでした。

ルッカ
「…未だに信じられない。

クロノはだかしかしと思った。
自分達はゲートを使って過去に行く事ができる。そこで魔族に勝って歴史を変えてしまえば…


マール
「そうだよ!クロノの言う通りだよ。私達で世界を変えちゃえばいい!

ルッカ
「…なるほど…。ただ指をくわえて魔族を蛮行を黙認する必要はない訳か…


三人は立ち上がった。


大臣「ま、まさかマール様も行くのですか!  

マール「当然よ! だって私はこの国の王女。民を守るのは当たり前ことよ!

大臣はマールの言葉聞いて覚悟を決めた。

大臣「マール様が公務を放棄し、王宮を不在にすること…なんとかして誤魔化しましょう。ですが行かれる前に王様に無事な顔だけは…

マール
「わかったわ! クロノ、マール、私は一旦帰るけど、また後で来るから。

マールはそう言って王宮へと戻っていった。

だが、大臣はマールを幽閉した。
子供を危険な地に行かせる訳にはいかない。マールを王宮に帰らせる為に話を合わせただけだった。

大臣は王家の秘密の部隊に過去に向かわせる様に手配した。

だが、その日、秘密の部隊は過去に行く事なく、血に染まった。
人間に成りすました魔族が大臣の周りに張り付いていた。
大臣は魔族達から脅され、罰として、クロノと親、ルッカとその親族を差し出す様に要求をした。


ルッカ自宅ー

ルッカ「なんだか嫌な予感がするわね…」

ルッカは気がかりだった。王家の大臣は400年にも渡り、人さらいの仕事をさせられていた。それまで魔族に一切抵抗せず、常に従順であったはずが無い。何らかの抵抗を試みるも、失敗し続けた結果の400年であるはず。


ルッカはクロノの家に電話した。
万が一に備え、直ぐにでもジナを連れて家を出られる用意をする様にと。



ーマールー


大臣は青ざめていた。魔族の指示でクロノ達を生贄に捧げなければならなかった大臣はクロノ達を捕獲する事に失敗した。その償いにマールを生贄に差し出す事を要求された。

マールが居なくなっても、魔族がマールに成り済まし、マールとして生きれる。人の記憶を操る魔族がいて、周囲の人間は誰一人として偽マールに疑問を持たない様にできるそう。

大臣は王とマールにゲートから逃げる様に促し、ルッカのゲートホルダーを渡した。

カツラを被せ、一般人に成りすまし、邸宅の庭の門から出ようとすると、従者達が引き止めた。従者達はトカゲの様な魔族に変化すると、襲ってきた。

大臣はピストルを使い応戦し、二人を逃がそうとするが、あえなく食べられてしまう。

広大な敷地の庭で魔族による王族狩りが始まった。

二人は外へ出る道がない。隠れる様に逃げた。

トカゲは迫る。

庭にあるプランター。植物達のお陰で、ギリギリ、トカゲの死角に隠れていた二人。

もう逃げられないと絶望したとき。
視界が歪んだ。 
目の間に空間の揺らいでいる事に気付く。

ゲートホルダーを使い、二人は未来の世界へと飛んでいった。


一方、クロノ達は中世600年のガルディアに保護を求めた。
リーネ救出の縁もあって、クロノ家、ルッカ家の待遇は平民よりも、扱いが良かったが、タダで世話になるのには気が引けた。

クロノは王宮の兵士に志願し、ジナは給仕に、ルッカとタバンは魔族との戦争に向けて武器や防具、生活必需品を作る事に。
足の不自由なララはリーネの話相手に。 

元の時代に帰る事はできなかった。
ルッカがこの時代に逃げてくる前、魔族は人間の姿をして堂々とインターホンを鳴らした。モニターの解像度を高くすれば目の形からそれが魔族である事を推察したルッカは、ドアを開けた瞬間に撲殺し、家族を車に乗せて、クロノの家に向かった。

クロノもルッカのアドバイスに習い、魔族を倒していたが、ルッカが倒した魔族もクロノが倒した魔族も肉体が再生し起き上がった、

クロノとジナを車に載せ千年祭のゲートへ向かうが、二匹の魔族は空を飛びながら、追いかけてきた。
武器も持たず、魔法でエネルギー弾を飛ばして、クロノ達を攻撃してくる。

止む負えず千年祭会場にクルマごと突っ込んで、中世へと逃れてきた。

ルッカのブースから車が消失したことは防犯カメラ等に残り、次元の穴に逃げた事は魔族側にバレている事が推測された。
ゲートから戻ると待ち伏せされているかもしれない。

クルマは山を降りる事ができず、当初は葉っぱ等で隠していたが、対魔族戦に使えるかもしれないとし、ガルディア軍が、山から持って降りた。


クロノ達が中世に来て直後、南部魔族がガルディアに向けて進行を開始した。1週間後、
魔族将軍ビネガーは1万を超えるの生き物の骨や屍を操り、本土を繋ぐ国境の橋まできた。

本土で戦う兵士達はタバンとルッカの作った火炎放射器と砲弾を使い戦った。
ビネガーは屍を集め30mを超える巨人を生み出して前線で戦う兵士をなぎ倒した。
ビネガーの魔力が尽きて去る頃にはガルディア兵士は3000人を超える死者を出した。




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