クロノファン2020

主に二次創作置き場

気の強いルッカと弱気のクロノ

■気の強いルッカと纏まらぬストーリー



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DC1000年、アシュティアコーポレーションはテレポート装置を開発した。
試験段階は終わり製品化の為の公開プレゼンテーションを建国千年祭でやることになり、開発に携わった教授ルッカとその助手クロノは企業やマスコミに対してデモンストレーションを行っていた。

物質転送のお披露目が終わり人間の転送を助手クロノがやってみせた。
会場は拍手に包まれ、観客からもデモンストレーションの参加者を募った。
参加者の多くは企業やマスコミであったが、一般も一部混じっていた。

マール
「よ、よろしくお願いします〜」

大勢の前で少し緊張しているマール。おそるおそるテレポート台に乗った。
前の参加者がやり終わり、後ろの参加者が待っている。機械への不安もだが順番待ちの流れも気にしてるマールは好奇心だけでそこに居た。

クロノがマールと知り合ったのは今朝だった。
千年祭に出店している企業の中に当日のバイトの面接を持ちかけている空気の読めてないマールを発見し、心配になり話しかけた。

マールは家出少女で今日住むところも確保してない不憫な女の子だった。オカネも持ち合わせておらず、親については一切語らない。後で警察に連れて行くつもりでクロノはその日一日マールを自分のそばにいるようにエスコートしていた。そんなマールは好奇心に釣られてテレポート装置に座った。

クロノは作動スイッチを押した。

マールが首にかけていた金属に問題があったのか、装置が異状音を鳴らし始めた。

制御装置の電源をオフにしても止まらない。

電気が通っていない筈はずの装置が動き続けた。


会場がざわめく中、大きな閃光が走った。
眼前の空間が裂け、蒼黒い穴が現れた。

マールはその穴にあらがいながら吸い込まれ消えた。
「誰かたすけて!」という言葉を残して。


会場はざわついた。
「きっと演出の一つだ」「何かの冗談でしょ? マジックショーだよ」「実験は失敗して死んだんだよ。」
人々は憶測でパニックを起こしていた。

クロノはただ事じゃないことが起きたと理解した。
実験ではありえない事だった。あらゆる金属を試して万が一にもそういった異常なトラブルが起こらない様に配慮していた。

このままでは祭典の継続すら危うい。人が死んだかもしれない。


「助手! あんたの出番よ!」

助手のクロノはルッカ教授に弱みでもにぎられているのだろうか。
クロノは少女がその場に残したペンダントを持ち、起動スイッチを押した。

クロノはマールと同じく蒼黒い穴に吸い込まれた。

死んだ気になれば人は何でもできるというが、クロノの心は既に死んでいた。ギャンブルで作った借金が1000万円以上あり、それと向き合う日々に疲れ、自身の命に対して自暴自棄になっていた。

クロノはゲートを越え、400年前の時代にタイムスリップしたが、その事実にクロノが気付いたとき、クロノはラッキーだと思った。この時代なら借金取りは追ってこない。

たがクロノの考えは甘かった。ルッカ(借金取り)が時越えの道具を持って追いかけてきた。


ルッカ
「さあ、帰るわよ。あの娘はどこ?

クロノは首を横に振る

ルッカ
「どういうこと? まさか見失ったってこと?

ルッカ
「なんでよ! あの娘がゲートに消えてから直ぐに向かった筈でしょ? 見失うなんて貴方、一体何をしてたの!

クロノは記憶を辿った。
確かにこの時代に来た直後にマールの姿は見た。
マールだけじゃない、青色の小さいオッサンも見た。青色の小さいオッサンがクロノの前方を走り、その前方をマールが走っていた。
クロノは幻覚を見た事を思い出した。


ルッカ
「私も見たわ。ブルーの小さいオッサン…でも、あれは幻覚じゃなかった…。だって私を見るなりかぶりついてきのだから…


ルッカ
「ど変態のオッサンよ! 山には、ど変態のオッサンがうようよしてた! きっとマールはそのオッサンから逃げて、はぐれちゃったんだと思うわ。」


クロノ達は手分けして探した。
携帯に保存していたマールの写真を使い、街で聞き込み調査をした。

ルッカ
「え? リーネ王妃だって?」

マールの写真を見るなり、人々は王妃だという。

ルッカ
「どういうこと? もしかしてリーネ王妃と間違えれられて城に連れて行かれたんじゃ…

クロノ達は城に向かった。
道中、ブルーのオッサンを思い出してしまうルッカ

「あのキモいの何だったのかしら? どう見ても人間じゃなかった。街の人はあれを魔族と言ってたけど、魔族って何なの? この時代の新聞読んだけど、魔族と人間が戦争しているっていう。ありえないファンタジーだわ。これが幻覚じゃないなら、世界史は魔族の存在を隠蔽しているということになるわね…


〜城〜

門番
「おい、お前達、そこで止まれ!」

門番達がクロノを通さなかった。

門番はルッカの麻酔銃で次々と倒れた。



〜城内〜

ルッカは邪魔になりそうな者を次々と麻酔銃で眠らせた。


マール
「あ、クロノさん!」

マール
「クロノさん、私、王妃様と間違われたみたいで…

「でも違うんです。私、王妃様じゃないんです!」

マールは光に包まれ消失した。


ルッカ
「これは一体…」


その隙にクロノは走って逃げた。ルッカ(借金取り)が過去の時代へ来れるとしても、法律は味方しないだろう。逃げ切きることができると判断した。

クロノは目立つ街に逃げるのを避け、山沿い森沿いを進んだ。教会を見つけ神に祈った。

「たすけてー!」

教会から叫びが聞こえた。

その声に驚いてクロノは教会に入った。周りを見渡すが、助けを求めている人はおらず、いるのは跪いて神に祈りを捧げるシスター達だけだった。

「たすけてー!」
再び叫び声がした。

確かに聞こえたが、シスター達は聞こえていない様子。

クロノは声がする方向へ進んだ。
壁際までくる。
壁がユラユラ動いている。

触れると紙の様な材質だった。
下から奥の部屋が見える。
クロノは伏せた格好で紙を抜けて行った。

白い悪魔みたいものを見たクロノ

踵を返すと、シスターがベビ女に変身した。

取り囲まれる。

「たべちゃう?
「たべちゃおう!

クロノは蛇女と悪魔に抱えられて教会の奥へと連れさられた。

口は塞がれ、助けは呼べない。


クロノは食台に乗せられた。

ナイフとホークでギコギコされる。



ルッカの視点〜

「クロノが考えること事なんてお見通しよ。どうせ街を避けながら逃げるはず。山森沿いを抜けて、そしてこの教会見つけて神様に祈る。普段、信心深くないくせに、その場の空気に流されるのよ。」

ルッカが教会に入った頃、そこには誰も居なかった。いたのはカエルだった。

カエルと目が合う。

ルッカ
「貴方は魔族? それとも幻覚?」

カエル
「ご冗談を…。それがしは、ガルディア騎士、名をグレンだ。リーネ王妃が誘拐されたいう話を聞きつけて、街中を探しておる最中だ。お主は何か心当たりはないか?」


ルッカ
「そうね…。(マールが消えた現場を誰も目撃してないから誘拐されたって事になっているのね…)

カエル
「城内に見知らぬ女と男がやってきたという目撃情報はあったのだが…

ルッカ
「それは私のことよ。

カエル
「なぬ!

カエルは剣をルッカに向けた。

ルッカ
「でも誘拐したのは私じゃないわよ。本当の犯人なら疑われる様な事をわざわざ言わないでしょ。

カエル
「確かに…なら犯人はどこの誰なんだ?

ルッカ
「ここに来る前、街の人が言ってたわ。教会に行ったきり帰って来ない人が最近何人もいるって。

カエル
「そうなのか?

ルッカ
「役所は教会の帰り道に魔族に襲われたんじゃないかと言って教会を捜査する事はなかったみたいだけどね。

カエル
「やくしょ…? 官署のことか?」

カエルは教会を調べ始めた。

壁に触れると空気の振動から人の気配を感じた。
足元から少し空気の流れを感じる。

めくると、魔族と目が合う

すかさず一体仕留めるカエル。

すかさず奥に進み、敵の背後にゆっくり忍びより、ベロで敵の気道を塞ぎ、剣を刺す。
悲鳴を出す前に絶命する魔族。

階段を降りると見張りの魔族が2体。

カエルは侵入したのがバレるのを恐れた。


ルッカが麻酔銃で魔族2体を眠らせた。

カエル
「女、今のは一体…

ルッカ
「サイエンスよ、

カエル
「さ? さいえんす? まあいい、掩護してくれるのは有り難い。



ルッカとカエルは奥に進み、リーネ王妃とデロデロ言う怪物に出会った。


ヤクラ
「デロデロ〜まさか正体をみや…」

ズサ!

ドス!
コロン

カエル
「ご無事でなによりです。リーネ様

ルッカ
(ほんと、あの娘にそっくりね…。むしろそっくり過ぎなんじゃ…」

ルッカはマールが消えた原因に気付いた。


ルッカ
「かくかくしかじか」


クロノはルッカの考察を聞いて理解した。ルッカからは死んでも逃げられないのだと。

クロノ達は急いで王宮に戻った。ルッカの考察が正しければ、マールが消えたポイントに出現する筈だと

門番
「お、お前らはあの時の不審者!」

ルッカは麻酔銃を構えた。

「しまった! 麻酔銃の弾がもうない!」

クロノ達は取り押さえられ、城の檻に入れられた。

割愛



〜王広間〜

マールとルッカ、クロノが並んでる。

リーネ
ルッカさん、この度は有り難うごさいました。

「マールさん、本当に私と瓜二つ…。人違いとはいえ、私と間違われて誘拐される危険もあったかもしれません。今後は誤解される様な振る舞いは改める様にお願いしますね…

リーネ
「クロノさん…借りたカネはちゃんと返すように…





クロノ達は現代に戻った。


観客
「「お、おー!もどってきたぞ!」)

マスコミは【テレポート事故により、3名死亡か?行方不明?】の記事を【テレポート事故、ルッカ教授が二名を救う!】記事に差し替える様に忙しく立ちまわった。

ルッカはマスコに過去の時代へ行った件は伏せた。
過去で、金を手に入れ、物価の高い現代で売れば儲かる。金儲けの情報をやすやすと人に教える訳にはいかなかった。

ルッカ
「クロノ! どういう訳かこの国の姫様は一般人に成りすましてるわ。貴方は彼女をしっかりエスコートして信頼を勝ち取ること。あわよくば玉の輿に乗り、私に借金を返すこと! 分かった? 分かったらちゃちゃと行く! マールが姫だってバレたら王宮に戻されて、玉の輿に乗るチャンスは無くなるんだからね! くれぐれもバレない様にするのよ!」


クロノはマールを自宅に連れて帰った。

しばらくすると、マール王女の失踪届けが警察に出され、クロノは未成年誘拐の罪で逮捕された。ルッカはそれを見てみぬ振りをした。
ルッカに脅されてやったことだと証言するも、ルッカには痛くも痒くも無かった。金を転がして無尽蔵にカネを得る。そのことだけに意識を向けていた。




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■2話



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過去に行けるなら未来にも行ける筈。未来にいけば、まだ見ぬサイエンスが判る筈。ルッカはゲートの仕組みを研究し、【ゲートのある場所には空間の揺らぎがあるかも節】を元にドローンカメラで探索した。王宮の敷地、庭でそれを発見した。

おいそれと入る事はできない。
逮捕されるだろう。
カネには困ってないが、クロノの借金はまだある。
クロノに逮捕覚悟でゲートに飛び込んで貰うしかなかった。


クロノは荒廃した未来を知った。ラヴォスが原因で1000年後に文明は滅びてしまう。

そんな先のことどうでも良かった。
未来からルッカにとって何らかの利益になるものを持ち帰らないと、クロノの借金は減らない。

クロノは動かないロボを担いで、現代へと戻った。
ロボを敷地内から出せずにウロウロしていると逮捕された。

二度目の逮捕、執行猶予はつかないかもしれない。

ルッカはロボを復活させた。

1000年先のロボを手に入れたルッカだが、ロボの内部の仕組みを理解するのは困難だった。

未来に行って情報を取って来ないといけない。
一人で行くには危険が伴う。

頑張ったら1億貰える約束でクロノを呼び出したルッカ
クロノと一緒にマールも来た。
自身を匿ったせいで逮捕されて職を失ったクロノに償いをしたいマール。クロノの仕事を手伝いたい。


三人は未来へと向かった。

ロボが工場を案内し、ドームに電力を供給できる様にしてくれるそう。そこでコンピューターをいじれば、世界の事が良くわかる。

閉ざされた扉が通電して開き、クロノ達は時の最果てに。

ゲートをくぐっていると、中世に繋がった。

大砲の音が響く

ルッカ
「もしかして戦争? 生で見るチャンス?

現代の歴史ではどういう訳か魔族が存在しない歴史になっていた。。リーネが魔族に誘拐された事件も、盗賊犯の仕業にすり替えられていた。
魔族を隠す理由は何か、歴史では本当は何が起きたのか、先ほど最果で覚えた魔法を実践にて使えるチャンスでもある。ルッカはいそいそと山を降りた。







〜ぜナンの橋〜


「只今、魔王軍と交戦中です。危険ですので…


ロボが橋の上で暴れ始めた。

ルッカ
「いいわ! その調子よ! サイエンスは無敵よ!」

ビネガー率いるガイコツ兵がロボになぎ倒されていく。


「あの鉄の生き物は一体! まさかあれが噂の伝説の勇者なのか!?」

ルッカ
「おりゃ!」

ガイコツ兵が火だるまになり倒れる。

「き、きもちいいわ…


ルッカは最果てで覚えた技、火の魔法を使った。
クロノとマールもルッカに続いた。


「な、なぜ人間達が魔族の様な術を…。まさか彼らは人間に扮した魔族! 魔族を裏切って人間側に味方するということか!?」

ビネガー将軍
「ど、どういうことだ!? 魔法が使える人間がいる? 人間が魔法を使えるはずが無い! つまり奴らは人間に扮した魔族! 魔族を裏切って人間側に味方するということか!? 」

ビネガーが呪文を唱えると倒れたガイコツ兵が集まる。

ビネガー
「お仕置き!」

30m級のガイコツ巨人の攻撃で、橋の上にいる兵士達は一気になぎ倒されていく。

ルッカ
「いけないわ! あまりはしゃぐと歴史が変わってしまうかもしれない。皆、一旦ここを引くわよ!」

ルッカは遠くの方から戦争を観察した。

次々に兵士達が倒れていく。

大砲で巨人を制圧する兵士達だが、ビネガーの呪文で巨人は再生していく。
橋の上で数時間にもわたる攻防戦が繰り広げられ、ビネガーは魔力が尽きたのか、骸骨を残して逃げていった。

クロノ達は痛ましい戦争を見て心を握りつぶされる気持ちになった。

ビネガーが去った後、兵士達は反撃の狼煙を上げた。 

魔王城に突入するらしく、ルッカも見聞を広げる為に後を追った。

魔王城へと続く魔岩窟、そこで兵士達は足を止めていた。

魔岩窟は魔力で生み出された岩であり、質量、硬度が魔的に高められていた。
人間の力はでは動かせないし、破壊もできない。

カエル
「魔の力を打ち消すグランドリオンがあれば…」

カエル
「やや! そなた達はいつぞやリーネ様救出に力を貸してくれた方! 今回も力を貸してくれるというのだな!」


ルッカ
「グランドリオンって、何?」

カエル
「し、知らぬのか? 伝説の聖剣、グランドリオンを!」

ルッカ
「そうじゃないわ。グランドリオンがなぜこの岩をどけられるの?」

かくかくしかじか

ルッカ
「…つまり、この先はグランドリオンが無ければ進めそうにない。」
(面白そうな剣ね…。研究しがいがありそうだわ)


カエル
「だが、剣は折れてしまっている。修復できる職人もいないし。

ルッカ
「その折れたグランドリオン、私に見せて頂戴。


〜カエルの自宅〜

ルッカ
「真ん中から綺麗にすっぱり折れてるわね…。」

カエル
「やはりダメそうか?

ルッカ
(魔力に関するものなら、時の最果てにいる老人が何かを知っているんじゃ…)

カエル
「な! この剣を貸してくれだと?

ルッカ
(やっぱりダメよね…しょうがないか…




カエル
「な! お前達、未来からやってきただと? しかも時の果てという場所で魔法を使える様になっただと?」
 
一人くらいなら歴史に大きな影響はないだろう。ルッカは洗いざらいカエルに話した。
ゼナンの橋は現代では高速道路が続いていて人なんか歩いていない、カエルの住処の真上はビルが建っている。魔族も魔王軍も歴史的には存在しないが人間は繁栄している。等を伝えた。

カエル
「そうか…人間はいずにせよ魔族に勝つのだな…


ルッカ
「え? 私達に付いてくる?

カエル
「ああ、グランドリオンは亡き共の形見でもある。他人においそれとは渡せない。」


ルッカ達はカエルをメンバーに加え、時の最果てに向かった。


〜時の最果て〜

時の果ての老人(時魔学の賢者ハッシュ)
「こ、この剣は…

カエル
「治せますが、御仁…


ハッシュ
(この剣に微かに残る魔力、ワシの弟、ボッシュのものに違いない。この剣はあの時、魔神機に刺して…)



カエル
ボッシュという者なら治せるかもしれぬのだな? 」

ハッシュ
「断言はできんがの。じゃがボッシュが何処に居るかは分からんのう。  

カエル
「何か情報は無いのか? 

ルッカ
「あったわ。SNSに刀鍛冶ボッシュで登録されているわ。プロフィールには古代ジール王国からやってきたタイムトラベラーと書いてある。ちょっと電話してみるわね。




ボッシュ
「はあ? グランドリオンを直して欲しい? なんじゃそのグランなんとかというのは。

ハッシュ
「ちょっと電話を貸してくれ。
 もしもしハッシュじゃ! ワシじゃよワシ!

ボッシュ
「え? 兄さん? 良かった無事に生きていたんだね。

ハッシュ
「なんとかな、ボッシュこそどうじゃ? 元気にやっとたか?

割愛

ハッシュを加えたクロノ達は電車を乗り継ぎ、ボッシュの家に向かった

二人は感動の再会をした。


ボッシュ自宅〜

ボッシュ
「なるほど、皆さんは時を旅しておるのか…

カエル
「魔族と戦うにはグランドリオンがどうしても必要なんだ。

ボッシュ
「グランドリオン…。見たところ剣に陰のエネルギーが継いておるが…お主もしかして憎しみ等を抱いておらぬか?



カエル
「親友が…




ボッシュ
「そうか…親友が魔王に…
 辛い事を聞いたのう。



ボッシュ
「無念を持ったままではグランドリオンの力を引き出せないはずじゃ。だからグランドリオンを修復したとしても、パワーは小さいのう。


カエル
「くそう!

ボッシュ
「安心せい、このグランドリオンよりも強い武器をワシなら作れる。

カエル
「本当か?

ボッシュ
「既に作ってある。それを貸してやろう。

カエルはデーモンキラーを受け取った。

ボッシュ
「グランドリオンと同じように魔力を吸い取る力がある。魔力を力に還元している魔族にうってつけじゃ。」


カエル
「何から何までかたじけない。」

カエル
「よし! ルッカ! 前線まで戻るぞ!」

ボッシュ
「まて、行くならワシも連れて行け。こう見えてワシは昔、生命魔学の賢者と言われておった。回復系の魔法はなんでもござれ。剣を修理するだけでなく、人間を修理するのも得意ということじゃ。

カエル
「人間を修理? それはもしかして…

ボッシュはカエルの呪いを解き元の姿に戻した。

ハッシュ
ボッシュが行くというならワシも行くぞ。

メンバーはボッシュ選りすぐりの武器を携え、魔王城へと向かった。


〜魔王城〜

ボッシュ
「む?  この気配はジャキ様?」

ハッシュ
「まさか、ジャキ様もタイムゲートに飲み込まれて…

ボッシュ
「だとしたら大変じゃ。 こんな魔族のウヨウヨいるとこころに出現なんてしたら…

ハッシュ
「今すぐ救出せねば!」


〜魔王の広間〜

「ジャキ様ー!」

ボッシュ達が暗闇の中を進む度、部屋の明りが自動的に灯される。


「ジャ? ジャキ様?」

魔王
「私の本当の名を知っているとは、お前達は一体…

ハッシュ
「ワシです。時魔学の授業を担当していたハッシュです。

ボッシュ
「同じく、生命魔学の授業を担当していたボッシュです。ジャキ様が赤子の頃はオシメを交換したこともありましたぞ。


魔王
「なぜ、

ボッシュ
「ささ、こんな物騒な所からは早くお逃げましょう。

魔王
「なぜ、なぜ、もっと早くに来てくれなかったのだ…

ボッシュ
「困惑される気持ちは判ります。ジャキ様は何十年もこの世界で過ごしたのでしょう。過ぎ去った日々は戻らないかもしれない。でも、きっと頑張れば、明日に希望を持って生きられるはず。

ハッシュ
「ささ、行きましょう。一緒にサラ様の元へ帰れる様に…


魔王
「…私は今しがた。ラヴォスを召喚した…




原子時代〜
クロノ、マール、ルッカ、カエル、ロボ、ハッシュ、ボッシュ、魔王
8人はラヴォスゲートに飲み込まれて、原始時代へと飛ばされた。イオカ村のエイラは崖下で奇妙な8人を見つけて村に持ち帰った。
エイラと村人は恐竜人との戦いに向けて部族を増やしたがっていた。
8人は村で歓迎され、宴の盃を交わした。

ハッシュ
「酒はええのう

ボッシュ
「酒はええのう

ハッシュ
「ほら、ジャキも飲まんか、もう大人なのだから

シラケた目で二人を見つめるジャキ


ルッカ
「ねえ、ジャキ、古代ジールってどういうところなの?

魔王
「…

村人
「あん、どぐそん!(た、大変だーー!)

アザーラが村に火を放ち、エイラの仲間キーノが誘拐された。村人の反対を押し切り、エイラは一人でキーノを助けにいこうとしていた。村人は恐竜人に逆らって、これ以上、村に損害が出るのを恐れていた。エイラが恐竜人に反抗的だからキーノは誘拐された。全てはエイラの責任。村を守る為にもキーノを諦める様にエイラを説得していた。

突然
8人の身体が光に包まれて消滅しかけた。
透明になっている。

カエル
「こ、これはどういう事だ!

マール
「私、前にも同じ事あった。

ルッカ
「きっと私達の先祖の身に何か危険が起こって…


長老とケンカしているエイラ。自分達を自宅まで送り届けたエイラ。

ジャキ
「黒い風が見えるぞ…

ルッカ
「黒い風?

ジャキ
「オレは死期が迫る者が判るんだ…

ルッカ
「古代人の超能力というやつね。分かったわ!
皆! あの娘から目を離したらダメよ。


酔いつぶれた老人を残して6人はエイラを追って山へ向かった。

エイラは翼竜の背に乗って遠くに飛んでいった。

ルッカ
「ど、どうするのよこれ!」



魔王
「オレに任せろ」

ジャキは空を飛び、翼竜を追いかけた。

翼竜のスピードは早く追いつけない。

ディラン城までたどり着く頃にはエイラはアザーラと石像恐竜と戦っていた。
酒の酔いがまわり、苦戦を強いられている。


ジャキはダークマターをアザーラ達に放った。

アザーラはバリアの様なもの張っているのか効き目がなかった。

エイラはアザーラが暗闇に包まれているその隙にキーノをプテラに載せ、飛び立った。


〜空の上〜
エイラ
「うんばばば。うとりがあ。ういてにらあさあらあさならあさまらた?
(ありがとう。お前のお陰で助かった。名前なんていう?)

魔王はエイラの乗った翼竜の前に座っていた。
魔王は半径1m以内にいる者から思念をテレパシー受信できた。

魔王
「ジャキだ…


エイラ
「ジャキ! ジャキ! エイラ、強いオトコ好き。ジャキ大好き!」

エイラは魔王にしがみいた。

エイラ
「それにしても何故透明? スケスケ? いつからこうなったんだ?」

エイラが透明な魔王の身体をあちこち触っているとき、ラヴォスの気配を感じた魔王。


ラヴォスは宇宙から地球に向かって時速5万キロで向かっている。
衝突すれば10kmのクレーターを使る

魔王は自身を含めて、キーノ、エイラ、プテラに黒い風が漂っている事に気付いた。

ラヴォスの気配は強くなる一方。

魔王はプテラに強い念で危険を知らせた。
プテラは全速力でディラン城から離れた。




〜イオカ村〜

ルッカ
「まさか、隕石の正体がラヴォスだったとは…


〜クレーター〜

エイラを含めた9人は、開いたゲートの前に立っていた。

ゲートの中から黒い風が逆流している。魔王の死を察知する力は子供の頃より成長し研ぎ澄まされていた。古代ジールの人々が絶滅する未来を感じとった。


古代の大地を歩くメンバーら、相変わらず半透明のままだった。
天空都市に導いている光の柱に近付く程、透明度は増していった。気付けばエイラもメンバーと同じく透明になっていた。


ルッカ
「このまま行けば、この時代の歴史を変えてしまい、私達が消滅する恐れがあるわ。

マール
「私は皆と一緒にいたい。消えるとしても、一緒がいい。

ロボ
「ワタシもマールと同じ」

カエル
「オレの存在が消えれば、サイラスとは出会わなくなる。オレがいなければサイラスの足手まといにならず、サイラスは死ななかったかもしれない…

エイラ
「エイラ、意味わからん。皆と一緒にいる。

魔王
「…


ルッカ
「私はこのサイエンスの先を見てみたい。消えるのか、どうなのるのか? クロノはどう?

クロノは思った。いつ一億円をくれるのか、その事で頭が一杯だった。  
 
ルッカ
「この先をクロノが先に行って様子を見てくれたら10億円をあげるわ。


クロノはメンバーを代表してまずは一人で天空都市に上がった。

日差しが照りつける。

透明なのが幸いしてか、あまり熱さは感じないクロノだった。


入国管理局
「やや! 透明ファッションとは粋なスタイルですね。どこかのモデルさんですか? 入国に際してはコチラの書類に記入後、持参した武器等は一旦こちらで一時あずかります。問題がなければ、後日、第二管理事務局にて引取り可能になりますが、管理事務局の住所は中央都市の…


クロノの身体は入国してすぐ、完全に透明になっていた。女風呂を覗いても問題ないくらいに透明人間になっていた。

ボッシュ達から魔神機の使用でラヴォスが暴走する話を聞かされていたクロノは、王宮にある魔神機の部屋まで来ていた。
クロノは一際綺麗なジールを見つけると後をつけた。
ジールは日誌を書いていた。

ダルトン派に逆らえないとはいえ、まさかこの様な強行実験をやないといけぬとは…。わらわが自ら率先して暴君を演じたのも、全てはサラやジャキ、この国を守る為だというのに…
 わらわはラヴォス神を目覚めさせたら、きっと死ぬだろう。不老不死なんぞまやかしに心酔するダルトン派もわらわの死を確認すればもう無茶な実験はせぬだろう。
 あとはサラが、なんとかしてくれる。嫌われたまま、わらわは死ぬだろうが、その方が悲しまなくて済むだろう。」

ジールは日誌を見ながら泣いた後、燃やして捨てた。

クロノは日誌の内容の意味を殆ど分からなかったが、泣いているジールにハンカチを渡した。


ジール〜



ジールは驚いて跳ねた。



「と、透明人間の魔法!?」「それとも幽霊か!」

クロノはこの時点で触覚も無くなっていた。
声を出してもと届かない。


ジールはテレパシーを張り巡らせ、クロノの存在を感知した。

「何者だ!


「そうかクロノと申すか、

「敵ではないのは判った。どういう了見があって王室に忍びこんだ?


「未来からやってきて、この時代に何が起きたか調べているだと? 未来の世界はラヴォスに滅ぼされて大変…

ジールはクロノ達が歩んだ歴史を理解した。

「なるほど。ジャキは、黒い風でこの国の消滅する未来を知っておるのか。まさか、ラヴォス神が我が民にそこまでの仕打ちをするとは…

「分かったクロノ。後の事はわらわはに任せろ。わらわは死んでもタダでは死なぬ。


クロノはメンバーの元へ戻った。

だがメンバーもクロノと同じように消滅しかけていて互いに視認することができなかった。

触覚は完全になくなり、自身を叩いても全く痛くもなくなった。

ジールー

ラヴォスが目覚め、タイムゲートを生み出した。
ジールはラヴォスを制御しているサラを念力で飛ばし、ボッシュが飲み込まれるゲートに入れた。



ークロノー

程なくして、ラヴォスは目覚めて破壊の光を打ち出した。

天空都市は無残に崩壊していく。天空都市だけでなく、地上にもラヴォスの雨が降り注ぎ、地表が溶けていく。


ラヴォスの真上にあった海底神殿は破壊され水没し始めた。


ジールが術を開放すると、海底神殿が変形しラヴォスを飲み込んでいく。
すっぽりと覆い、光のエネルギーが内側に閉じ込められる。
ジールはその光を受けると死ぬ。バリアでも防ぎきれない。そう判断し、神殿に意識を転移させた。
ジールは神殿となり、ラヴォスの攻撃をチリになるまで受け止めた。


その頃にはクロノ達はこの世界から消滅した。
クロノ達が今後生まれなくなるという意味ではなく、未来ではボッシュを通じてサラとクロノ達が出会う流れになる。
現代でサラを知った状態のクロノ達に修正される


ーサラー
「きゃ!」「うげっ!」

民家のクローゼットからサラとボッシュが勢い良く飛び出した。


全身緑の毛のない魔族
食卓を囲んでいた2魔族は慌てふためき、ちゃぶ台をひっくり返した。顔を人間の姿に変幻させる。

サラ
「え? ここは…

ボッシュ
「サラ様、ワシらはどうやらタイムゲートで時を飛んできた様子じゃ。

人間に成りすました魔族
「お、お前たち、人の家でなにしとるが!

サラ
「あ、ご、ごめんなさい。直ぐに出ていきますので…

魔族
「ちょっとまて! 

サラ
「な、なんでしょうか?

魔族
「いきなりクローゼットから出てきてビックリたけど、お前達、人間じゃない。

サラ
「え? 私は人間ですけど…

魔族
「演技が上手いのは良いが、魔力がダダ漏れしとるぞ。そんなのでは人間を騙す事ができても魔族の目を欺くなんてできんぞ。 そもそも魔族同士で正体を隠さなくてもよかろうが。」 

サラは魔族を知らなかった。

魔族a
「まさか本当に魔族ではないのか? じゃあ、魔力を持っている人間ということか…

魔族b
「魔力があるから人間と魔族の間の子じゃない?

魔族a
「なるほど


サラ「どうして魔族は人間の姿に化けてるの?

魔族
「そりゃ大昔にそう決まったからだよ。
 400年前、魔族王フリューゲルスが人間世界を統治した際、魔族の痕跡、歴史を消すような政策をしたんだ。知ってると思うけど

サラ
「どうしてそんなことを?

魔族
「人間に安心して暮らして貰う為さ。人が生まれてくればそれだけ人間狩りもやりやすくなるのさ。

サラ
「人間をたべちゃうの? まさか貴方たちも?

魔族
「そりゃ大昔の魔族の話さ。今はもうしない。そもそも僕らみたいな緑種族は草食系だから、人間は食べないよ。

魔族
「まあでも、祖先が人間を家畜にしてきのは事実だからね…。そんな魔族が公に存在すると判れば、皆、恐怖におののくでしょ。魔族界のルールで魔族の存在を隠す様に僕らはしないといけない。。


サラは時代を超えて来た事を説明した。

魔族
「なら、この時代では住所や身分証もないってと? 魔族のルールで身元不明者は通報する事になってるんだ。悪いけど、連絡するね。


ボッシュ
「サラ様、なにやら慌ただしいですぞ、逃げましょうか…」

サラ
ボッシュ、一旦様子を見ましょう。この人達に敵意は無さそうですから。


サラとボッシュは魔族としてのIDを得た。人間そっくりの魔族種として、住居と職業をあっせんされた。

ー仕事ー

サラはヘケランリゾートでホテルの清掃員の面接に行き、ボッシュはヘケランリゾートの土産物屋に卸す刀作り、鍛冶職人の面接に行った。

魔族ヘケランが運営しているこのリゾート地区は、渦潮を利用した天然ウォータースライダーで成功を収めた。ヘケランはスマホ片手に毎日忙しい日々を送っている。

ヘケランはときどき社長名を隠してバイトの面接をする。

「ほう、新しい魔族が来たか。通せ。」

サラ
「ふつつか者ですが、宜しくお願いします。

ヘケランは職安指導に沿って書かれただろうサラの履歴書を見ていた。

ヘケラン
(魔法のレベルは高いが、それ以外のスキルがてんで駄目か…。他の魔族にできず自分にしかできないこと、ラヴォスのコントール…)

ヘケラン面接官
「このラヴォスのコントールというのは、どういう意味ですかね? 

サラ
「基本的にラヴォスが目覚めない様にラヴォスの精神に働きかけたりします。いわゆる催眠術みたいなものでしょうか…」

ヘケラン
「なるほど。ですが、ラヴォスは400年前に当時ガルディア領内にいた魔族王が召喚に失敗し、命を落としたと聞きます。そんな危険な存在をどうしてコントロールしよう等と思い経ったのですか?」

サラは魔神機でラヴォスからエネルギーを抽出する国家事業に携わっていた事を説明した。

ヘケラン
「なるほど…。サラさんは、タイムトラベラーでしたか…。


サラ
「私ではお役に立ちませんでしょうか。


ヘケラン
「その美貌なら接客が向いていると思うのですが、何故、清掃を?

サラ
「…実は、セクハラする魔族に耐えかねて魔法でズドンと


ヘケラン
「なるほど。(流石に履歴書には書けないか…しかし正直者…)


ヘケランはサラの履歴書に合格の印を押した。




ー千年祭ー

いつもの様に朝の仕事が終わり、一息ついたサラ。休憩室でお茶をして、何気なくテレビを見ていた。千年祭初日の映像でマスコミが盛り上がっている。

サラは仕事を抜け出した。


ボッシュ! ボッシュ

「なんでしょうかサラ様

「大変よ! タイムゲートよ!

二人は千年祭に直行した。

会場では消えたクロノとマールをどう救出するのかで盛り上がっていた。


ルッカ教授
「先程、私が試作したこのゲートホルダー、これを使えば二人が飛ばされた場所に移動できるでしょう」

ルッカがゲートに飛び込んだ後、しばらくしてクロノ達を連れて戻ってきた。マスコミはざわつき、サラ達は近づけない

「もう! この野次馬め!」

サラは会場にスリプル魔法をかけ、マスコミが眠りについた。


割愛

ルッカ
「つまり、サラさん達は過去からタイムスリップしてきた…(サイエンスと魔学を一緒にしたら、更なるサイエンスの進化が…)

サラ
「お願いします。私達も過去に連れて行ってください。

ルッカ
「構わないわ。でも私達が行ってきた世界は400年前の世界で魔族がいる世界よ。

サラ
「400年前…。構わないです。そこで確認したことがあるの



サラ、ボッシュ、クロノ、マール、ルッカはゲートに入った。


ルッカ
「な、なにこの感じ……空間が不安定…

マール
「な、なんか怖いよ、私達、ちゃんとゲートから出られるのかな…

ルッカ
「まさか一度にゲートに入れる数に人数制限とかあったのかな…」


クロノ達は時の最果て辿り着いた。


サラ
「こ、この気配はもしかしてハッシュ?

ボッシュ
「そうじゃハッシュじゃ!



ハッシュ
「なんと! ラヴォスを知る者がDC600年におるのか。だとしたらその者の正体はジャキ様かもしれん。ガッシュはDC2300年でタイムマシンを研究中ですから。


サラは中世へとすっ飛んだ。
聞き込みをして魔王城に繋がる魔岩窟の場所を突き止めて、空を飛んで魔王城へと辿り着いた。

魔王城にスリプルをかけ、雑魚を一層し、走った。



〜再会〜

「姉様? ほんとうに姉様なのか??」

「この気配はジャキ? まさか、あなたなの?」


儀式の間で二人は抱擁を交わした。
魔王にとっては30年ぶりの再会で、サラは時の重みを罪深く感じていた。

ジャキ
「私はこの地に飛ばされて、早々に魔族達に目をつけられて…」




ジャキは中世時代での経緯を説明した。
この時代に来て早々に魔族達に命を狙われ、隠していた魔力を使い、身を守った。魔族王のビネガーはジャキの大きなチカラを見るなり、将来性を感じ、城に連れて行き、手元に置いて育てた。


ジャキは城を抜け出してはこの世界を走り回り、サラを探していたが、見つからず絶望した。

ある時、ジャキは人間の領土に行きサラの聞き込みをすると耳のカタチが違うのだと言われ、魔族と勘違いされて襲われた。ビネガーは襲われるジャキを助けるとサラを探すのを諦める様に促した。

『人間はお前の様な者を受け入れない。サラという姉上もこの世界にいたとしても人間達は受け入れないだろう。殺されるに違いない』と

元々魔力なき人間を差別する文化に育てられていたジャキは、ビネガーの言葉を鵜呑みにした。

それからというものジャキは魔族として生きた。そしてラヴォスを召喚し、ラヴォスに復讐する事を誓った。
サラには二度と会えない。長い時のなかで完全に諦めていた。
地下で眠るラヴォスの力、その忌々しい力を日々感じさせられ、憎しみの日々を生きてきた。

魔族達にはラヴォスが繁栄をもたらすと嘘をついて、ラヴォスを呼び出す魔術研究に没頭していて、その最中の再会だった。

ジャキはラヴォスだけでなく母親のジールにも深い憎しみを持っていた。
ラヴォスが原因とはいえ、その原因を作り出したジールにサラは毎日ヘトヘトになるまで利用されていた。
ジールさえいなければ自身はこんな目に合わずにすんだのだと。

サラはジャキをこれからどうするか悩んだ。
魔王として人間世界に多大な迷惑をかけていること。死刑では到底償えない罪を犯していること。自暴自棄が発端とはいえ、姉として責任を取らなければならない。

サラ
「ジャキ、貴方がした罪は私が償います。

ジャキ
「それはどういう意味…まさか私の代わりに人間を頭を下げるのか!? 奴らは姉様を人間とは認めないぞ! 処刑されるぞ!


サラ
「…

ジャキ
「いくな! 姉上!



サラは振り返ることなく、飛び立った。


ーガルディア王宮ー

「これが魔王の姉である証拠です。」

床一面を氷にしてみせるサラ。

王宮は突然の事態に困惑していた。自身を魔王の姉だと名乗る者がやってきて、罰を与えろという。
王宮の大臣達は話し合いの結果、一つの提案を出した。

【サラの力を使い魔族を滅ぼすこと】

サラ
「恐れながら、魔族の中にも良い者は居ます。私は力を憎しみを生み出す事に使いたくありません」

大臣
「つまり、魔族と人間が融和できるように和平交渉を求めるということか…。どうなさいますか王様…


「この様な事態、ガルディア建国以来、始めてのことだ…。サラよ、そなたが本当に魔族を説き伏せられるのであれば、私はそれを信じたい。

大臣
「では、まずは和解書の調印からはじめますか…サラ殿、そなたの弟、魔王に和解する意識があるのなら、その書簡を持って参られよ。



そんなこんなで魔王軍とのガルディアの争いは休戦した。これからジャキは魔族を説得する仕事をし、サラ、ボッシュ、ハッシュは混乱した魔族社会の治安を監視、監督する仕事をすることになる。

人間側は酪農や農産業技術を魔族の文化に持ち込み、魔族が人間を食べないよう、襲わない様に教育したりした。、互いに我慢するところはあったが、ちゃちゃくと丸く収まっていったのだった…

そんな中、ガッシュによってシルバードが完成した。



ータイムマシンー

サラ達が戻りたい時間は、ジール王国崩壊前。ラヴォスを目覚めさせない歴史を作りたい。
だが、その思いを持ったままタイムマシンに触れると、存在が消滅しそうになる。
サラ達の存在が許されたのは、【ジール王国が崩壊した後、ラヴォスを倒す】という目的意識を持っている時のみだった。



ラヴォス戦ー

ジールはラヴォスに心を操られ、サラはジャキが消えたショックで呆然自失していた。ラヴォスと意識を繋げてコントロールを試みていたサラは、ラヴォスを抑えきる事が出来ずに目覚めさせてしまう。

タイムゲートにジャキと3賢者が飲まれるとき、サラはもう一人のサラをボッシュが飲み込まれるゲートへ念力で飛ばした。

ラヴォスが破壊の光を飛ばすと、天井が破壊され、海水が雪崩込む。

サラは達はバリアを張り、海中を漂う。
サラはラヴォスに触れ、意識を繋ぎ、心を沈める様に暗示をかけた。

ラヴォスもまたジールを操る為、その意識をジールに繋いでいた。ジールの意識がラヴォスを通してサラに繋がる。

その瞬間、サラはジールが暴君であった原因を知った。
嘘で固められたジール、悪意の固まりのダルトン
本当の敵はラヴォスではなく、ダルトンだった。

ジールはラヴォスが暴走した時の対策を計画していた。神殿と同化し、ラヴォスの攻撃を受け止めること。サラもそれを真似すれば被害を最小限に防げるかもしれない。

目覚めたばかりのラヴォスは暴力的で催眠の暗示に掛からない。
サラは神殿と同化する事に決めた。

その決断がジールの中に流れ込む。ラヴォスとサラ、ジールは心か繋がっていた。サラの決断を許したくないジールはラヴォスに抗い始めた。
ラヴォスジールに意識を繋いでいる。ジールの悲しみ、絶望が流れ込み、ラヴォスを支配した。

ラヴォスジールをコントロールしている様でいて、ジールの念に支配された。
ラヴォスはある意味、ジールの思いのまま動かされる。

神殿はジールの願望の元、ラヴォスの攻撃を防ぐ様に変形していく。
ラヴォスエネルギー使い果たす程に利用し、城の材質を硬質化していく。
ラヴォスエネルギーで作られた壁はラヴォスを封印するのに最良だった。

次にラヴォスの封印を誰にも解かれない様に、神殿を視認されないよう、透明処理を施した。
それだけでは不十分かもしれない。海底に安置するよりも、空の方が良いかもしれない。

ジールはラヴォスと共に永遠に空へ浮き続けた。



ジール神殿はラヴォスからエネルギーを取り込み神殿に還元する存在。
天空都市がラヴォスエネルギーを得る事はできず、天空都市落下は避けられなかった。

とはいえ、一度目のラヴォスの破壊よりも軽く済み、命が多く助かった。


サラには既にジール王国に興味は無かったし、中世でやる事が沢山あった。
そもそも古代に関わろうと思うと、体が光に包まれ消滅しそうになり無理であった。

サラは思い出していた。ヘケランリゾートの気楽なバイト日々を…





〜あとがきと付属の設定〜

ラヴォスを呼び覚まして不老不死魔術のエネルギーとする。この計画は国全体の思惑があっての事だった。王族の一人ダルトンとその派閥は内心で隙あらば王の座を奪わんとしていた。その勢力は大きく、いつでも王宮は血に染まる可能性があった。
そんな中、ラヴォスエネルギーを大量に使った不老不死計画が浮上し、ダルトンは目の色を変えた。国への謀反よりもラヴォスのチカラを利用することに意識が向いていたダルトン派達の気まぐれにより王宮は血に染まるを避けられた。

ジール亡き今、ダルトン王国が誕生する。
元々ダルトン派による圧政でジールは成り立っていた。今更ダルトンが政権を得ても、民にとっては何も変わらない
天空都市が無いだけで何も生活は不自由しない。
魔力を使えば雪の世界で生きる事は容易であるからだ。

ラヴォスは封印され、そのエネルギーはジールの管理下にある。この先、魔神機を建設してエネルギーを取られそうになっても、ジールが使い切る予定であり、この先は天空都市が建設される事はない。


だが、ダルトン王国が建設されたDT1000年に天空都市が作られた。
地殻に存在する別種のラヴォスからエネルギーを取り出す装置が開発された。これまでのラヴォスとは質が異なり、エネルギーを取り出す方法を探すのに人類は苦労した。

だが、その天空都市に住には厳しい条件があった。クロノ・トリガーの条件に適合する者しか住むことは許されない。

天空都市が存在しているのはクロノやサラが歴史に関わったからで、未来にてクロノやサラの行動に影響を与えてダルトン王国の存在が消える可能性のある者は、天空都市に入ろうとすると光輝き消滅する。

DT1000年の天空都市は神に選ばれた者しか出入りが許されない不思議な土地になった。

DT2000年、天空都市そのものが光り輝き消滅する事態に陥る。

天空都市が浮き続けることで未来世界に与える影響はクロノやサラにまで及ぶ。天空都市は視認されず、触れる事もままならない存在になるが、神の済む聖地として、古代人はこの故郷を捨てられなかった。

DC1000年ガルディア歴、クロノ達は全く気付かないが、はるか上空にて天空都市があり、ジール神殿が浮いている。
そこに住む人々はクロノとその周囲を監視するのを仕事としている。

人々が存在できるかどうかは、クロノの周辺が作る歴史に関わっているからだが、それはクロノの行動が脅威というからではない。

住人とっては大陸浮上1万年記録の更新を記念しての一万年祭の様なものである。クロノ達は監視されているというより、興味本位で観られている。









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アレンジクロノ


この物語は原作設定と大きく異なります。年代設定は暦2020年。マールはクロノと偶然出会う訳ではなく、自らクロノにぶつかりに行きます。

第1話

「キャッ!」

リーネの鐘の下で、マールは友達候補を探していた。

王族としてのしきたりで、平民とは友達になれないのが悩みだったマール。ドラマや漫画の様な熱い青春と友情と憧れていたマールは、ついに狙いをつけ飛び込んだ。

 

マールは女優バリの演技をし、さもぶつけられたような態度でクロノへとぶつかった。

 

さり気なくペンダントを落とし、探している振りをして、あえてクロノに拾わせる。そうすることで「拾ってくれてありがとう!」を自然に言うことができ、名乗りやすくなる。

 

ぶつかった罪悪感による惹きつけ効果と恩着せ優越感効果の連携技を見事に利用したマールは、クロノを手中に収め、エスコートさせまくる。

正直いうと調子こいてた。だからこんな事になったのかもしれない。

 

「ここ、どこ…?」

 

マールがいたのは千年祭会場の裏山のトルース山だった。

 

事故なのか、単にテレポートに失敗したのか、、千年祭会場から離れた場所に転送されたマール。

 

「王宮が見えるから、そんなに遠くまでは飛ばされてないようね…」

 

クロノや会場のみんなが心配しているかもしれない。

マールは駆け足で山を降りた。

 

 

 

 

 

 

ークロノー

 


-

マールはそこに向かったに違いない。マールとは5分と間を開けてないから、急いで降りれば合流できるかもしれない。クロノはいそいそと山を下った。

山を降りると千年際会場敷地の裏側に出る位置だろうから、この位置ならマールも道に迷う事もないだろう

しかし、見えない。千年際会場がない。
リーネの鐘はある。ここにルッカや見物人が多くは居たはずなのに誰もいない。

夢でも見ているのか。自宅に帰ってみるも、家がない。家がないどころか、街自体おかしい。
大昔にある様な水車小屋や牧場、井戸。
まるで過去にタイムトラベルしたかの様な光景。

クロノは落ちてる新聞を拾った。
日付、ガルティア歴600年。クロノは400年前にタイムスリップしていた。


新聞の広告欄には大きく『ガルディア兵募集中と書いてある。

「おい、あんちゃん。いい加減返してくれよ。拾ってくれたのは嬉しいけどさ…」

クロノは新聞を貸してくれた気の良さそうな男に、 スマホに映るマールの写真を見せた。

「あんちゃん!、なんだこの鉄板!? 人が中に入ってるぞ!? おーいおーい!」

写真の技術すらまだ無い戦国時代の人間にスマホを見せたらどんなリアクションをするのか、クロノ自身想像はつかなかったが、マールを探すのに他に効率の良いやり方を思いつかなかった。

「さてはお前、魔族だな! 魔術で人をこの板の中に閉じ込めたな!」

クロノにはサッパリ意味が分からなかった。
魔族とは何? 何を言っているのこの人は?

「分からないふりしてとぼけるつもりか!さては人に成りすます魔族か!」

男は警笛を吹いた。民家に笛の音が鳴り響き、男達がぞろぞろと現れた。どの男達も農機具や剣を持ち、クロノに敵意を向けている。民家では男達を心配そうに見つめている女子供がいる。

「みんな取り押さえろ!」

クロノは突然の事で思わずしゃがみこんでしまった。



クロノはロープでグルグル巻きにされ、納屋に放り込まれていた。
外では人々が、「魔族が街に現れた!」と騒がしくしていた。

クロノに槍を向け、監視する男が2人。
しばらくすると、ギシギシという音が迫ってくる気配がし、監視する男と入れ替わる様に鎧姿の男が納屋に入ってきた。

男はクロノのスマホを手に持っている。

「おい、魔族! これは一体なんなんだ? 人をこの中に閉じ込めたのか?」

クロノは現代のスマホについて説明した。

「離れた人と話せる道具? 写真を撮る装置? …」

この時代ではスマホは繋がらない。

「はあ? 未来から来ただと? 意味の分からないことを…嘘を言うと為にならんぞ!」

クロノは写真の撮影のやり方を教えた。

「魔族の言葉に従うと思っているのか? 私に何かをさせて、私もこの中に閉じ込めるつもりなのだろう!」


男はクロノに剣を当てた。
「目的はなんだ! カネか? 人さらいか?」


「言わなければ痛い思いをするぞ」


「正体を見せないというなら…」

男は剣をクロノの首に強く押し当てた。

その時、外が騒がしくなる。

納屋の戸が勢い良く開き、ドレス姿の女が現れた。

「この者は魔族ではありません!」

女が言うと、男は跪き、外にいる兵士や町人も膝ずいた。

兵士
「王妃様、恐れながら、この者はこのような不可解な物を所持し…

王妃
「それは魔族がこの者に与えたもの。この者を罠に嵌めようとせんとしたのです。」

王妃
「この者は王宮の大切な従者、この者を即刻開放せよ。それからしばし、この者と2人になりたい。席をはずせ!

兵士は踵を返し、納屋から離れた。

しばらく、沈黙し、王妃は突然、腹を抱えて笑いだした。

「クロノってば顔が面白いー!」

鳩が豆鉄砲を食らった顔をしていたクロノ


「はぁはぁはぁ。めちゃ緊張した! とにかく、落ち着こう私。

「私だよ。マールだよ。」


「おかしいよね〜。私、この街に来て、いきなり王妃に間違われて無理やり王宮に連れていかれて、ドレス着させられて…
 そしたら赤い髪をした魔族が出たって街で大騒ぎになってるって話を聞いて、私すっ飛んできたの。
 私、一方的に間違われたんだから、ちょっとくらい王妃に成りすましてもいいよね。」

クロノは魔族に間違われて殺されそうになった。魔族について疑問が晴れなない

マール
「私も見た訳じゃないから、良く判らないのだけど…
 とにかくここで長話するのあれだし、王宮に行こう。」

マールに連れられクロノは王宮に向かった。




〜王妃の部屋〜

マールは400年前、日付7月1日の新聞をクロノに見せた。現代では使われない活版印刷調で独特の紙質の新聞。その中には南部魔族軍と戦争記事か書かれていた。

【魔族は人間よもり身体能力が高く、魔法や妖術を使い、人間に成りすましたりする。魔族は人間を食べる種もいて、誘拐や略奪等をする。魔族国家は東西南にあり、人間世界と戦争をしている。】

マール
「私達が知っている歴史には魔族なんて存在しない。だからきっとここはガルディアに似た異世界なんだと思う。」

クロノはふるえていた。400年前にタイムスリップしたかと思ったら、別世界に転移していたのだから。
元の世界に帰る方法があるのか、心配になった。

マール
「クロノ、大丈夫だよ。きっと天才ルッカが助けに来てくれるよ。


マール
「でも、またクロノみたいに町の人達に捕まったら大変だから。私達が飛び出してきた山に戻ってみよう。ルッカを待っていようよ。

マールがそう言って外に出ようとした瞬間、光り包まれた。

困惑するマールとクロノ。
クロノがマールに触れようとするとすり抜けた。
マールはクロノの前から消滅した。

クロノは夢でも見ているのかと思い込み、ベットに座り横になった。
安定しない思考を物思いにふけることで解消しようとした。

異世界に来てマールが消えた。
タイムスリップしてマールが消えた。
王妃と間違われてマールが消えた。
本物の王妃は一体何処に行ったのだろうか?

クロノはそれらの疑問を頭の隅に置き、
マールの言葉を思い出していた。ルッカも自身と同じ様に魔族に間違えられるかもしれない。

ルッカがこの世界に来るかもしれない可能性を考慮し、クロノは最初にこの世界に出現した場所(山)へと戻った。



ルッカ

「あのバカ、カッコつけて無茶しやがって…」
ルッカは悔やんでいた。クロノを実験に協力さえさせなければ、あの様な事故に巻き込ませることはなかった。
最悪死んだかもしれない。ルッカは放心状態でマスコミにカメラを向けられていた。

マイクを向けられ、事故原因のコメントを求められ、デリカシーのない言葉が浴びせられる。
ルッカにはその言葉は耳にも届いていなかった。
ルッカはクロノが消失した場所に落ちているペンダントを眺めていた。



ークロノー

一時間程待っていると空間が避け、その穴からドローンが現れた。
ドローンにはロープとカメラが取り付けれていて、クロノの顔が撮影された。しばらくするとドローンが引き戻され、またしばらくすると、ドローンが戻ってきた。

ドローンにはメモが貼り付けてあった。
「クロノへ。ドローンの紐を身体に巻きつけて。引っ張り上げるから。」

クロノはロープを身体に巻きつけると、ロープを引いて合図をした。空間の裂け目をゆっくり進んで行った。

クロノが元の世界に帰るとマスコミからフラッシュを大量に浴びた。
マスコミは【少年が次元の穴が吸い込まれ死亡!】という記事を【少年が次元の穴に吸い込まれるが生還!】という記事に差し替える為に、忙しくしていた。


ルッカ
「…この様にある特殊な波長を出す装置を使えば空間の歪は開き続けます。これによる消費電費は実質0であり、任意の目的地までワープすることができるのです。であるからして、この研究の注目されるべきポイントは次元の歪同士の繋がりがどの座標と結ばれるのか関係性を特定し…」


ルッカはまるで事故の全てが終わったの様なスピーチをし、会場を諌めていた。
マールの存在を忘れているかのように。


ルッカの家〜

「え? マール? 誰のこと?」

「クロノの前には誰もテレポートにチャレンジしなかったわよ? みんなビビって挑戦しないからクロノがデモンストレーションして見せたのでしょう?」

「それにしてもクロノ、変わったペンダント持っていたわよね。あれが事故の原因になった訳だけど、あのペンダントがあったお陰で帰ってこれたのよ。もしあれがゲートの向こう側に行ってたら、今頃クロノは見知らぬ土地で…


「ペンダントに使われている鉱石の波長がゲートを開くキーになってたから、その波長を再現するだけだったから簡単だったけど…不思議よね…あのペンダントだけはゲートに飲み込まれないのだもの。クロノが残したあのペンダント、一体何なの? 


おしゃべりなルッカを遮る様にクロノは今日あった出来事を伝えた。

ルッカは魔族等の話は半信半疑で聞いていたが、王妃に関して考えを述べた。

「400年前の王妃といえば、リーネ.マンデラね。歴史ネットによるとリーネマンデラは王妃に即位後、盗賊に襲われて誘拐される。、当時護衛をしていた7人の兵士は盗賊に殺されるか行方不明になっている。

興味深いのは、リーネ王妃が誘拐されて3日後に盗賊のアジトから逃げ出し、街をふらふらしているところを兵士達に保護されるも、なぜがその日にもう一度、行方不明になり、3日後、、盗賊のアジトから脱走し王宮に戻ったという。盗賊のアジトとされていたのが聖マノリア教会
で、盗賊団はリーネ誘拐前に教会を占拠し、シスターと神父を皆殺しにしたという。リーネは教会の隠し部屋に幽閉されていて、盗賊団は王家への金品要求、人質交渉の道具としてリーネを利用するつもりだったと、後に捕まる盗賊団のメンバーから証言が得られた…」

ルッカ
「マールとリーネの顔が瓜二つで、リーネと間違われ、マールは王宮に入った。その後、クロノの前から光に包まれてマールは消えた…
ありえるとすればリーネの子孫がマールだった場合ね。リーネが殺され、未来に生まれる筈だったマールが存在しないことになって消滅した…

光る謎とか色々と疑問点があるけど、クロノのいう魔族の話も、もしかしたらこの誘拐事件に関連してくるかもね…

魔族が人間に化けられるというなら、リーネを誘拐した後、リーネの顔を研究してそっくりに化ける事が考えられるわ。リーネに化けた魔族が王宮に入り込む計画があって、その計画途中で、リーネとそっくりなマールが街をウロウロしていて、王宮に保護されてクロノの前で消失した。その3日後にリーネに扮した魔族が王宮に戻ってくる。」

「魔族にとってリーネの顔を研究し終わるのが今から3日後として、リーネが殺されるのもその日という事になるかしら…」

クロノは立ちあがった。

「ちょっとどうするのクロノ! まさかあのゲートをくぐって助けに行く気? 

クロノは頷いた。

「その顔はマジね。なら今すぐにでも準備しないと。3日後にリーネが死ぬと言ったけど、推測でしかないもの。今すぐに行動しないとね。」


ルッカは大きなリュックに色々詰め始めた。

「勿論私も行くわよ! 異世界? タイムスリップ? サイエンスで解けない謎はないわ!」


ルッカはアンティークとして飾られていた刀をクロノに渡した。

「向こうの世界は銃刀法違反なんてないんでしょ? だったらどれだけ武装してても文句は言われないわ!」


ルッカとクロノはゲートへと飛び込んだ。



夜、山中。2人は懐中電灯を頼りに進んだ。

電気を消すと全く何も何も見えなくる。月明かりさえない林の中を降りていく。

街には各所に松明があり、山を降りると懐中電灯が無くとも道に迷う事は無かった。

2人は酒場に入りマノリア教会の場所を聞き込みをした。

「お、お前は昼間の怪しい奴!」

クロノは男達に取り囲まれた。

「あの時は、王妃様の知り合いとは知らず、無礼を働いた。だがあの後、王妃様はまた行方不明に…。王妃様は部屋から忽然と消えなさった。しかも、王妃様の部屋から最後に出てきたのは、お前らしいじゃないか! やっぱりお前は魔族なんじゃないのか! 王妃様を騙して、誘拐したんじゃ!


ルッカ
「貴方の話、さっきから聞いてるけど、ちっともサイエンスを感じないわ!



「な、なんだ、お前は!


ルッカ
「いい? 誘拐犯人が堂々と酒場にくる訳ないでしょ? 王妃様は部屋のドアから出たんじゃないわ。窓の外から出た。そうとしか考えられないわ。


「確かにそうだが…。王妃様の寝室は5階にあるのだぞ? そこから出たというのか?

ルッカ
「魔族は空を飛べるんじゃなくて? 5階から連れ去られるなんて造作もないことじゃなくて?


「確かにそうだが…
 だがこの男は昼間、板の中に女性を入れていたのだぞ?
 王妃様を板に封印して持ち去ったのではないのか!

ルッカスマホを取り出して撮影した。


男達はパニックを起こした。


ルッカ
「ほらこれ、よく見て! 人が写っているでしょ? これは写真といって、19世紀最大の発明品とも言えるものよ?」

男達は封印されなかった事に安心したのか、ルッカの講義を聞き始めた。

ルッカは男達にスマホを渡してイジらせた。


「女、これを一体どこで手に入れたんだ。

ルッカ
「ネット注文ね。自宅に居ながらにして、手に入れたわ。19800円よ?


(全く意味が分からない!)
「おんな! やはりキサマ魔族! 訳の判らぬ呪文を唱えて、何かをやらかす気だな!

ルッカ
「私が魔族だったら何? 私を殺すの?


「認めるのかキサマ! 

ルッカ
「しょうがないわね…

ルッカスマホを折った。

ルッカ
「これでどう? 危ない物だと疑うものを私が処分してあげたわよ。


「キサマ!今のは大切な物ではなかったのか!? 

ルッカ
「そうよ!大切なものよ!


「ならなぜ壊す必要がある!

ルッカ
「貴方達が私を信用しないからじゃない! だから私が壊してあげたのよ!


「わ、わからない。この女、訳がわからない…


クロノは話を戻した。いずれによリーネは行方不明。捜索しなければならない。



「確かにそうだ。こんな事している場合じゃない…

ルッカ
「ここ最近、変わった事はないかしら? 特に教会辺で


「そういえば、最近、教会に誰もいないのにピアノの音が鳴るな…




男に案内され、教会へ向かった。

教会ではシスターが祈りを捧げていて、ピアノの前にはシスター長がいる。

ルッカ
「シスター、聞きたい事があるのだけど、貴方魔族ですか?」


シスター長
「え? どういう事でございましょうか。

ルッカ
「このスマホで撮影すると本性が見えるんですよ。


ルッカはシスターの顔面を撮影し、画質を高解像度モードにした。

「人間を真似するといっても、完璧に真似る事はできないはず。だとしたら、人間に特有でない魔族特有の痕跡があるはずでしょう。」

「例えばこれ、人間は縦線目には成りません。縦線目になるのは爬虫類やネコ科の動物で…


ルッカが講義をしているとシスター長は既に本性を表していた。下半身が蛇で上半身が人間の化け物に変化していく。

蛇魔族
「キサマ今何をした! 私に奇っ怪なものを見せ、呪文の様なもの唱えた! 私に何を…何をしたー!」

蛇魔族は怒り狂い大口を開け、ルッカが被ってるヘルメットにかぶり付いた。

クロノはルッカの命知らずな態度に青ざめつつ、刀を抜き振るった。

ここへ案内した男は悲鳴を上げながら出口から逃げようとするが、シスター4人が通せんぼした。

クロノは剣道をたしなむが、真剣は始めてだった。ふんぶん振り回すも、蛇特有の動きの速さで捉えきれない。
蛇特有の動きで壁を伝い、天井にへばりつくシスター長。
口から硫酸の様な毒液を吐き出した。
肩に掛かると服が焼ける様に溶けていく。

クロノ達はとてつもなくピンチだった。


ルッカはリュックついている防犯ブザーを鳴らした。

突然のサイレンに蛇達は動揺し耳を塞いだ。
聴いてはいけない危険なものだと思い込んでいた。

ルッカの目算では、防犯ブザーを聴いて誰かが助けにくる事を期待していた。犯人の居場所が街に周知されるなら、魔族も迂闊な事はできなくなる。リーネを人質に取る事はあっても殺しはしないだろう。

ルッカの前に現れたのは武器を持ったカエルの化け物だった。ルッカは恐怖で雄叫びをあげた。

カエルは耳を塞いだ魔族達を見るなり、駆け寄り、一刀両断した。
次々に魔族を一刀両断していく。

ルッカはサイレンの様に雄叫びをあげた。

カエル
「おい、 安心しろ。もう終わったぞ」

ルッカはカエルと目があい、もう一度雄叫びをあげた。

カエルは他に敵がいるのかと思い込み、周りを見渡した。


ーグレンー

私は王宮騎士グレン。リーネ王妃の捜索にあたっていた。街ではルッカとクロノの二人組が話題になっていって、二人は王妃を探しに教会に向かったという。
まさかそんな所にいる訳がない。
そう思いながらも、私は2人が気になり追いかけた。



「やけに教会が騒がしい…」

特にやかましいのはヘルメットを被った女だった。
女はてっきり魔族を見て悲鳴をあげているのかと思いきや、まさか私のカエル姿に驚いて悲鳴を上げていたのだ。
その気持ちは判るが命の恩人に対して無礼な女よ。

仮にも国で一番強い剣士のこの私が、こんな蛇女よりも気持ち悪い等という。この女のセンスを疑うところである。
巷では私は「ぷにぷにしてカワイイ! その長いベロで巻かれたい!」と言われる程に人気者なのだぞ。

と、愚痴をこぼしていても仕方がない。とにかくこの教会に魔族がいた事実。リーネ様を知っているのかもしれない。

「おい、蛇女! 死にたくなければリーネ様の居所を言え!」



ルッカ
「何が国一番のイケてるアイドル剣士よ。どう見てもカエルの化け物じゃないのよ。。ヘビ女の魔族と大差がないわ」

カエル
「さっきも言ったであろう。私は訳あって魔族に呪いかけられ、この姿にされたのだ。少しは不憫に思ったらどうだ。

ルッカ
「モテモテだと自慢していたのはどこのだあれ?

カエル
「それはあくまでも一部のマニアに対してだけだ。」


クロノは二人の口論を止めに入った。
蛇女を脅してリーネの居場所を聞き出すチャンスである。そう言ってたしなめると、息のあった蛇女にカエルが脅しをかけた。

蛇女が教会のピアノを弾くと、壁しかなかった場所にカラクリ式の扉が現れた。

ルッカはリュックに入れていたロープを取り出し、クロノ達に渡した。

蛇女が動けない様にグルグルに縛った。カエルを先頭に隠し扉を開けると、6畳程の部屋があるが、誰もいない。足元がしなり、底の板が薄い。調べると地下へと続く階段が見つかる。

階段を降りると、寝台にリーネが寝かされ、もう一人のリーネが立ってこちらを見ていた。

もう一人のリーネは笑いながら、顔形が崩れていく。ドレス姿のリーネの形は大きく膨張し、3m級の茶色のゴキブリの様な姿に変わり、カエルに襲い掛かった。

ゴキブリの牙とカエルの剣が弾き合い、カエルは壁に追い詰められる。

クロノは意を決して、刀を振るうが、硬い殻に弾き返されてしまう。

「クロノ!」

ルッカはリュックから工業用オイルスプレーを取り出してクロノに渡した。

クロノはルッカの指図のままゴキブリにスプレーかけた。

ゴキブリに変化はない。

「クロノ、いいから空になるまでそのまま続けて」

ルッカは教会の灯りに使われてるローソクを手に持っていた。

クロノはそれを受け取り恐る恐るゴキブリに火をつけた。

ゴキブリはオシリから勢い良く燃えた。変温動物なのか、直ぐには燃えてる事に気付かずに、下半身の動きが鈍くなっていく。

ゴキブリ魔族
「な、なんだ…何が起きてる…

ゴキブリは火を消そうと地面にゴロゴロ回ろうとするが、3mの巨体だと狭い地下室内をゴロゴロと回れない。
ゴキブリはリーネの姿に変身して地面をゴロゴロと回った。
火は消えず、周りを巻き込み、地下室は燃え始めた。
カエルは寝台までジャンプすると、寝ているリーネを抱えて飛んだ。
階段を登り、教会から出ていく。

程なくして火ダルマになったリーネゴキブリが教会を飛びだし、井戸の中に飛び込んだ。
井戸から這い上がると、巨大なゴキブリの姿に戻り、林に向けて逃げた。木に登り、森の真上を駆けながら、山へと消えた。

クロノ達は井戸の水で教会の消火をした。


ーマールー

マールはリーネの部屋にいた。
消えていた頃の記憶は無かったマール。さっきまでクロノと部屋にいたはずで、昼間であったはず。外を見ると兵士達が騒がしくしていた。
「もしかして、クロノがまた捕まったのでは?」
マールは急いで部屋を出た。


城内ではマールが行方不明とされ、慌ただしくしていた。

「リ、リーネ様!? 

リーネの部屋を守っている兵士は困惑していた。昼間に密室の部屋から忽然と消えた王妃が、今また忽然と現れたのだ。

「リーネ様! 一体今まで何処にいらしていたのですか! 王宮はリーネ様を探して大変な騒ぎになっています!」

兵士は廊下にいる従者にリーネの無事を報告し、従者は急いで王に知らせに行った。


「さあ、王妃様も、王様の元へ」

兵士達に連れられ、マールは訳がわからないまま、一階広間へ行く。

広間ではガルディア王21世とリーネ王妃が王座に座り、クロノ、ルッカ、カエル、町の男に、リーネ救出の感謝の言葉を述べられようとしていた。

マールがそこに鉢合わせする。

王族、大臣、兵士達の動きが止まった。

少しの間があった後、マールとリーネを兵士達が取り囲み、剣を向けた。

兵士
「王妃様、申し訳ありませぬ!」



「まさか、大臣…どちらかが、偽物ということか?

大臣
「魔族がどちらかに成りすましているとすれば、王妃様しか知らぬ質問をすれば…

マールは質問に答えられない。

ただのそっくりさん。そう説明しても、マールを開放してくれる空気ではなかった。
たとえそれが真実だとしても、王家はマールを容疑者として扱い、幽閉し、監視し、王家としての保身を図ろうとする。また未来の説明をすると歴史が大きく変化するかもしれない。

クロノ達はそれでも未来について説明した。
持っている未来のアイテム、タイムトラベルしたゲートの存在。
数日時間を要したが、リーネの子孫がマールだという真実をこの時代の大臣が未来に行き知る事でクロノ達の身柄が開放された。



〜元の時代〜


元の時代に戻るとクロノとルッカ、マールはそこが元いた世界でない事に直ぐに気付いた

ガルディア王国千年祭はあるものの、ルッカが発明したテレポート装着はなかった。クロノ達はゲートから出た瞬間、電気ショックを受けて倒れた。

黒のスーツを纏う男達はショックガンで狙いを定めていた。ゲートから出てきた瞬間のクロノ達を確保する為に。

クロノ達が400年前に持ち込んだ未来の技術は現代の技術を大きく発展させていた。
その一方で歴史は大きく変わり、クロノ、マール、ルッカはこの世界に生まれていない状態になっていた。

男達の目的はクロノ達を確保し、テレポート技術を開発させる事だった。
技術発展した未来とはいえ、テレポート技術は作れなかったガルディア。時越えの技術とテレポート技術で経済競争で他国に抜きんでんとする為に、極秘裏にクロノ達は幽閉された。

ルッカ
「馬鹿よね…クロノ達を人質にして私に作らせるなんてしなくても作るわよ。この世に無い物を生み出すのがサイエンティストというものよ。」


ガルディアの極秘組織はクロノ達に過去世界に戻って歴史を変えて欲しくはない。万が一の脱走に備えて千年祭のゲートは鉄の壁で覆われた。

ルッカには仮説があった。ゲートに通ずる時空の歪はテレポート装着の事故によって生み出されたものではく、元々自然界にあったものではないかと。自分達は偶然にそれを見つけただけではないかと。

ルッカはテレポート装着を作る事に並行してゲートを探し出す装置も開発した。

ルッカは森の中にゲートを見つけて飛び込んだ。

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「クロノ、今すぐに戻るわよ! カエルやリーネより早く王宮に行き、マールを連れて帰るの!」


クロノ達は城まで走った。

マール
「あ、クロノ! 無事だったんだね!  それにルッカも来てくれたんだね!  

ルッカ
「細かい事を話している暇はないの。このままここ居たら嫌な予感しかいない。ゲートもいつ消えるかわからない。早く帰るわよ!」

クロノはマールの手を引いて走った。



〜ゲート前〜

マール「私!ドレス持ってきちゃった。」


ルッカ「記念に貰っておけばいいじゃないの?」

クロノ達が元の世界に戻ると、強いライトに照らされ、前から見えなくなる。

目を凝らすと、ヘリが目の前にあり、ガルディア軍人が二人立っている。

白ひげの大臣が二人の間から現れた。

マール
「じい、どうしてここが…

大臣
「マール様、探しましたぞ…。ささ、王宮へかえりましょうぞ」

マール
「じい…私…

大臣
「置き手紙の件なら心配する必要は在りませんぞ。王様もマール様が帰って来られるのであれば、他に何もいらぬと仰られておる。


マール
「クロノ、私、実は家出してきたんだ。王宮のしきたり嫌になってそれで…
 今日は楽しかった。色々とあったけど、ありがとう。
 ルッカも助けに来てくれてありがとう。
 またいつか会おうね…」


マール
「あ、そうだ。私のペンダントのことだけど…

ルッカ
「それなら私の自宅にて厳重に保管しております(嘘です。作業台に無造作に放置されてます。)。これから持って参りましょうか?

マール
「いえ、その様な手間を掛ける訳には…

大臣
「マール様、あとでジイやが取りに参りますので。

マールはクロノ達に別れを告げるとヘリで飛び去って行った。



ルッカ
「さすが王族…家出娘の出迎え方がパネェわ…


「クロノ、覚えておきなさい。あのヘリにいずれ貴方も乗る事になるのだから。」



ルッカ「玉の輿のチャンスよ、クロノ。まめに連絡することよ?

「え? マールの連絡先を知らない? マールは携帯電話を持ってなかった?

ルッカ「ヘリは持てど携帯は持たない。王族は一般人とはとことんズレてるわね…

「さあ、私達も帰りましょうか。」


ルッカのブースは非常線が張られていいて、警察が警備をしていた。
クロノとマールは次元の穴に吸い込まれてルッカがそれを助けに向かった事になっていた。
ルッカの帰りを待っていたマスコミがどっと押し寄せた。


ルッカ
「今日これ、3回目なんですけど…


マスコミ
「次元の穴には何があったのデスか! 何処に通じていたのですか! やはり異世界に!」

ルッカ異世界についてもタイムトラベルについても答えなかった。

マスコミ各社は
『次元の穴に吸い込まれた二名男女、行方不明!! しかも吸い込まれた女性は王室のマールディア王女だった! ルッカ博士、二人を助けに向かうも帰って来ない!』という記事を

『次元の穴に吸い込まれた二名男女、ルッカ博士により無事生還す! しかも吸い込まれた女性は王室のマールディア王女だった!』という記事に差し替える準備で大忙しだった。



車内、クロノはガクガク震えていた。
魔族に襲われ、硫酸を浴びたり、戦った事を思い出していた。

ルッカ
「それにしても魔族って何だったのかしらね…。マールが消えた事といい、400年前の時代と今に繋がりが無い訳ではないと思うのだけど…


ルッカは、400年前の新聞をリュックから取り出す様にクロノに促した。
クロノは後部座席に置いたリュックをゴソゴソする。


〜クロノの家〜

ジナ
「まあ、ルッカちゃん。今日は本当に凄い日だったわね〜。世界に中継された超次元転送マシンの実力! ルッカはちゃんはこれから先、世界中の企業や投資家からもてはやされる事になるわね。

ジナ
「ほら、クロノも今日のあれがテレビに写ってるわ。ほら! 次元の穴にキュイーンと吸い込まれる!

ルッカ
「あの時は流石に腰が抜けたわ。クロノがあんな命知らずな人間だとは思わなかったし、


ジナ
ルッカちゃん、あの後、顔面蒼白よね。クロノが女の子を助けに行っちゃうんだもの。ジェラシー感じちゃうわよね〜

ルッカ
「お、おばさん! 何へんな事を言ってるんですか! 私は単なる幼馴染です。

ジナ
「そういって、顔を赤くするところ。クロノと一緒で昔から嘘が下手よね〜

ルッカ
「ち、違いますって! おばさん、トンチンカンな見方しないでください! 私が顔面蒼白してるのは、単にクロノが死んだかもしれないと思っただけで。

ジナ
「そーなーのー?

ルッカ
「そうです! あの時は事故を受けれられなくてパニックしてて。平静を取り戻すのに精一杯だったんです。

ジナ
「そんなにパニックしてたの? あんまりそういうふうには見えなかったけど…

ルッカ
「清水の舞台から飛び降りるじゃないですけど、欄干にでも立ってる様な気分でしたね…。

ジナ
「いつも冷静沈着なルッカちゃんが、そこまで…

ルッカ
「あの時は本当にやばかったです。まあ、でもクロノが落としたペンダントを見つけて、発明のブレイクスルーになると思って、その後は割りと平常心に戻ったというか。好奇心に突き動されてどうにかなったというか。

ジナ
「クロノのお陰で平常心を取り戻した訳か…

ルッカ
「おばさん…またそういう言い方を、

ジナ
ルッカちゃんは、クロノの最有力お嫁さん候補なんですからね。おばさんは期待しているわよ。ルッカちゃんにも選ぶ権利はあると思うけど、おばさんは、クロノの嫁にはルッカちゃん一択しかないと思っているの

ルッカ
「はいはい、分かりましたよ。クロノを選択肢の一番下の方に置いときますんで。

ジナ
「ところで今日は泊まっていかないの?

ルッカ
「流石にもう大人なんで…それに近所なので帰りますよ。

ジナ
「えー。久しぶりにルッカちゃんと一緒に寝んねしたいよー

ルッカ
「おばさん、私もいい加減に大人なので、人様のお母様ともうそういう関係には…


ジナ
「えー。


その頃、クロノは新聞記事を読み込んでいた。
記事内容を要約すると

○西部魔族の特殊能力、人に化ける能力を持ち、その力で近隣の国々が制圧された模様あり。表面的には人による独裁政権に見えるが、内情では人間を食べる為の家畜にした植民地政策をしていると報告あり

○西魔族はガルディア本土でも各所に目撃され、官民一体となって対策し要警戒をすること。

○南部魔王軍は相変わらずガルディア本土に向けて挑発行動をしている。もし東西北の魔族が手を組んで合同で進行されると今のガルディアには勝機はない。兵人員を早急に増やす事が急務とされる。

○リーネ王妃が失踪して3日目。兵員1000名を使い人海戦術で捜索するも手がかりなし。失踪当日、リーネ王妃は護衛7人を連れて山中を散歩中に従者4名、護衛7人と共に行方不明となる。魔族による仕業だとすれば国の維新に係わる大問題であると共に、魔族がガルディア本土に潜伏している事も意味する。西魔族に対する警戒をより一層に強くしなければならない。



ーマールー

大臣
「ところでマール様、次元の穴に吸い込まれた先は何処に繋がっておられたのですかな? じいはマール様が帰って来られてからというもの、その事ばかり考えてしまうのです。」


マール
ルッカにはゲートの先を内緒にしろって言われたのだけど実はね、私達、異世界に行ってたの。信じられないと思うけど私達400年前のガルディアで魔族…といっても私は見た訳じゃないのだけど、クロノ達が魔族と戦って私を助け出してくれたの。

大臣
「ま、まぞく? まさかその様なものが、過去の世界に居るなんてことある訳が…

マール
「そうよね…。だからきっとあの世界はこの世界とは違う、パラレルワールドみたいなものだと思うの。でも凄くない? 異世界なんだよ? ファンタジーだよ。

大臣
「では、そのお召し物もその異世界から持って来たという…


大臣は震える手でどこかに緊急のメッセージを飛ばした。

大臣
「ま、マールディア様…落ち着いて聞いて欲しい事があるのですが…。決して誰にも言ってはならぬと約束できますかな…。 


大臣は真剣な顔で過去の歴史をマールに語った。

400年前にガルディア及び世界の殆どの国々が、人に化ける西側魔族によって侵略され統治されたこと。魔族は人間を食料として確保する為に、魔族の存在そのものを歴史から隠蔽し、表面的には人間にとって暮らしやすい社会を作ったこと。
西側魔族は人間を独占する為に、東南北魔族の情報を人間側に売り渡し、人間と共にそれらの魔族を滅ぼしたこと等を説明した。

この歴史は権力ある一部の人間しか知らず、もし、知るはずのない者が、魔族の歴史を公に語るなら、その者に身に危険が及びかねず。マールも例外ではなく、決して語らない様に念を押した。

マール
「ちょっと待って、じゃあ、クロノやルッカはどうなるの? 絶対に魔族の事を喋らない様にこの事を教えてあげないといけないんじゃ。

大臣
「安心して下さい。今、王家の秘密の組織(黒の組織)がクロノさん達を保護しに向かっております。



ークロノ自宅ー

ヘリの騒音が響く。
クロノ達は家の外に出てマールの到着を出迎えた。

ルッカ
「マール様、一体どうなれたのですか? ペンダントの事でしたら私の自宅に…

マール
「そうじゃないの…

マールは王家の秘密の組織が到着するのを待っていられなかった。直接、危険を伝えにやってきた。

クロノ達が現状を理解する頃、
マールと大臣、クロノ、ルッカはテーブルでジナの用意をしたお茶を飲んでいた。

大臣が茶をすする、ジナは奥の部屋から煎餅を持ってきた。

大臣は煎餅をボリボリ食いながら説明した。

「…であるからして、権力者やその周囲には人間に成りすました魔族が多くて、彼らは権力者やその親族を人質に取り、政治を裏で操っています。
彼らは夜な夜な国家権力を使い、人をさらいをして、人間を食料としているのです。

ルッカ
「そんな馬鹿な! いくら国家権力が関わってても、そうそう人が居なくなったら、周りの人間は気付くでしょう?

大臣
「ですから、魔族達はターゲットを絞っているのです。友人や身内がいなかったり、失踪しても誰も気にも留めない者を選別しているのです。


ルッカは失踪届けの統計を調べた。
ガルディア国内だけで、年間の行方不明者の件数が10万件を超えている事に気付いた。

ルッカ
「そ、そんな…。こんなにも人が居なくなってるのに、誰も気にも留めないの…

大臣
「失踪した住人の居たアパートの管理人等が、便宜的に失踪届けの手続きを警察にするだけで、警察も深くは捜索しません。魔族は催眠術を使ったり、人の記憶を消したり、魔法を使ったりもできるので、警察は事件があったことすら認知しません。

ルッカ
「なんで大臣はそんなにも詳しいの? 王家はこの事を知っているの?

大臣
「マール様を含めて王家は一切関与していません。関与しているのは…」

大臣の先祖は400年前の時代から、魔族に王族を人質にとられ、人間誘拐の仕事をさせられていた。その仕事は現代にまで続いていて大臣は人さらいの実行及び責任者をしていた。

マール
「そ、そんな…ジイやが、人殺しに加担を…

大臣
「申し訳ございません。マール様や王家の者を守るには他に方法がありませんでした。

ルッカ
「…未だに信じられない。

クロノはだかしかしと思った。
自分達はゲートを使って過去に行く事ができる。そこで魔族に勝って歴史を変えてしまえば…


マール
「そうだよ!クロノの言う通りだよ。私達で世界を変えちゃえばいい!

ルッカ
「…なるほど…。ただ指をくわえて魔族を蛮行を黙認する必要はない訳か…


三人は立ち上がった。


大臣「ま、まさかマール様も行くのですか!  

マール「当然よ! だって私はこの国の王女。民を守るのは当たり前ことよ!

大臣はマールの言葉聞いて覚悟を決めた。

大臣「マール様が公務を放棄し、王宮を不在にすること…なんとかして誤魔化しましょう。ですが行かれる前に王様に無事な顔だけは…

マール
「わかったわ! クロノ、マール、私は一旦帰るけど、また後で来るから。

マールはそう言って王宮へと戻っていった。

だが、大臣はマールを幽閉した。
子供を危険な地に行かせる訳にはいかない。マールを王宮に帰らせる為に話を合わせただけだった。

大臣は王家の秘密の部隊に過去に向かわせる様に手配した。

だが、その日、秘密の部隊は過去に行く事なく、血に染まった。
人間に成りすました魔族が大臣の周りに張り付いていた。
大臣は魔族達から脅され、罰として、クロノと親、ルッカとその親族を差し出す様に要求をした。


ルッカ自宅ー

ルッカ「なんだか嫌な予感がするわね…」

ルッカは気がかりだった。王家の大臣は400年にも渡り、人さらいの仕事をさせられていた。それまで魔族に一切抵抗せず、常に従順であったはずが無い。何らかの抵抗を試みるも、失敗し続けた結果の400年であるはず。


ルッカはクロノの家に電話した。
万が一に備え、直ぐにでもジナを連れて家を出られる用意をする様にと。



ーマールー


大臣は青ざめていた。魔族の指示でクロノ達を生贄に捧げなければならなかった大臣はクロノ達を捕獲する事に失敗した。その償いにマールを生贄に差し出す事を要求された。

マールが居なくなっても、魔族がマールに成り済まし、マールとして生きれる。人の記憶を操る魔族がいて、周囲の人間は誰一人として偽マールに疑問を持たない様にできるそう。

大臣は王とマールにゲートから逃げる様に促し、ルッカのゲートホルダーを渡した。

カツラを被せ、一般人に成りすまし、邸宅の庭の門から出ようとすると、従者達が引き止めた。従者達はトカゲの様な魔族に変化すると、襲ってきた。

大臣はピストルを使い応戦し、二人を逃がそうとするが、あえなく食べられてしまう。

広大な敷地の庭で魔族による王族狩りが始まった。

二人は外へ出る道がない。隠れる様に逃げた。

トカゲは迫る。

庭にあるプランター。植物達のお陰で、ギリギリ、トカゲの死角に隠れていた二人。

もう逃げられないと絶望したとき。
視界が歪んだ。 
目の間に空間の揺らいでいる事に気付く。

ゲートホルダーを使い、二人は未来の世界へと飛んでいった。


一方、クロノ達は中世600年のガルディアに保護を求めた。
リーネ救出の縁もあって、クロノ家、ルッカ家の待遇は平民よりも、扱いが良かったが、タダで世話になるのには気が引けた。

クロノは王宮の兵士に志願し、ジナは給仕に、ルッカとタバンは魔族との戦争に向けて武器や防具、生活必需品を作る事に。
足の不自由なララはリーネの話相手に。 

元の時代に帰る事はできなかった。
ルッカがこの時代に逃げてくる前、魔族は人間の姿をして堂々とインターホンを鳴らした。モニターの解像度を高くすれば目の形からそれが魔族である事を推察したルッカは、ドアを開けた瞬間に撲殺し、家族を車に乗せて、クロノの家に向かった。

クロノもルッカのアドバイスに習い、魔族を倒していたが、ルッカが倒した魔族もクロノが倒した魔族も肉体が再生し起き上がった、

クロノとジナを車に載せ千年祭のゲートへ向かうが、二匹の魔族は空を飛びながら、追いかけてきた。
武器も持たず、魔法でエネルギー弾を飛ばして、クロノ達を攻撃してくる。

止む負えず千年祭会場にクルマごと突っ込んで、中世へと逃れてきた。

ルッカのブースから車が消失したことは防犯カメラ等に残り、次元の穴に逃げた事は魔族側にバレている事が推測された。
ゲートから戻ると待ち伏せされているかもしれない。

クルマは山を降りる事ができず、当初は葉っぱ等で隠していたが、対魔族戦に使えるかもしれないとし、ガルディア軍が、山から持って降りた。


クロノ達が中世に来て直後、南部魔族がガルディアに向けて進行を開始した。1週間後、
魔族将軍ビネガーは1万を超えるの生き物の骨や屍を操り、本土を繋ぐ国境の橋まできた。

本土で戦う兵士達はタバンとルッカの作った火炎放射器と砲弾を使い戦った。
ビネガーは屍を集め30mを超える巨人を生み出して前線で戦う兵士をなぎ倒した。
ビネガーの魔力が尽きて去る頃にはガルディア兵士は3000人を超える死者を出した。




-



――――――――――――――――――――――――――――

クロノトリガー後日談 ロボ生きてた展開

ラヴォス討伐後、ロボはゲートから未来に戻った。平和になった未来でロボは生まれないかもしれない。ルッカは確認の為に平和になった未来へとシルバードを飛ばした。

DC2300年、未来は人間のいないロボだけの世界になっていた。
ルッカの友達ロボは健在。なぜか、ロボが、消えていなかった。

ロボがこの時代に戻った時には既に未来はロボだらけの世界で、人類が殆ど残っておらず、ガッシュの消息も不明だった。
未来のロボットは人間を見つけると殺す(排除する)ようにプログラムされていた。

この異常な未来についてクロノ達に報告したルッカ

クロノ達は原因を探るべく、時の最果てのハッシュに事情を説明した。

ハッシュによると、ラヴォスが死んで世界からゲートが消滅する少し前、時の最果てにクロノ達メンバー以外の誰かがやってきた気配があったという。気配は一瞬だけで、その時は気のせいだと思っていたハッシュ。その何者かがゲートをくぐって未来を変えてしまったのかもしれないという。




■一話



-

マール
「その何者かを知る方法はないの?」

ルッカ
ラヴォスが死ぬ少し前、ゲートが生きていた頃の時の最果てに戻れば…」


クロノ達はラヴォスが死ぬ少し前の最果てに戻った。


ハッシュ「ほうほう。 さっき旅立ったばかりじゃが、もうラヴォスを倒したのかえ? それとも忘れ物でもしたのかのう?」

クロノ達は事情を説明した。

ハッシュ
『なぬ? この後、何者かか来る?』


ルッカ
『私達も隠れて監視するから貴方も隠れて。


離れたところで監視するクロノ達

マール「…」

ロボ「…」



ロボ「センサーに熱、反応があります。写真で出します。」

ルッカ「ハエより小さい。一体何?

ロボ「拡大表示します。」

ルッカ「これはもしかして小型のドローン?

ロボ「ナノサイズのロボットのようです。」

ロボ
「ゲートを抜けて現代に行った様子です。私達も行きましょう


クロノ達はロボットの行方を見失った。

マール「これはどういうこと? 未来のロボットが過去にやってきて人類を絶滅させるということ?」

ルッカ「私達は未来に行き、沢山の機械と闘った。その際、私達は目に見えない殆の小さいロボットにスパイされていた。そのロボットは私達がタイムトラベルしていることを知り、その技術を利用し世界を都合よく改変したとか…」

マール「あんな小さいのと、どうやって戦うの?」

ルッカ「ゲートの出口に先回りしてやっつける、とか思いつくけど、他にも沢山の尾行ロボットが私達を監視していて、私達が何かをしようとも歴史の先手を打たれるとしたら…どうにもならないわね。

マール
「でもどうして現代なの? もっと過去の歴史から関与して人間を抹殺することもできるよね?」

ルッカ
「判らないけど。ロボットの事はロボットに聞くのがいいかも」

ロボ
「未来では緯度経度201.242あたりの機械密度が高いでした。基地、中央センターみたいものがその座標にあって、現代にも当てはまるなら、その場所を叩いてみれば…」


クロノ達は現代の緯度経度201.242を破壊した。
その瞬間、クロノが消滅した。

ルッカ
「やられたわ。先手を打たれた…。過去の時代の私達を抹殺する気なんだわ」


ルッカは考えた。
過去のクロノ達にこの問題から手を引くように頼む事、スパイロボに敵意を見せない様にすれば仕返しに殺されることはないかもしれない。




マール
「それじゃあ未来は?」

ルッカ
「諦めましょう。
 それで助かるなら取り敢えず諦めましょう…」

ルッカ達は少し前の自分達の元へ向かった、

事情を説得するとマールもルッカも次々と消えた。今説得されたばかりのクロノ達はびっくり。

ルッカ「きっと私達が行動がするはずだった未来が変化したからね。」

マール「どういうこと?」

ルッカ「私達はこの後、目的の座標に行って敵の本拠地を破壊して、その報復にクロノの存在が消される。それを防ぐために過去の私達を説得しにいくはずだったけど、その事象自体が消えてしまった。」  

マール「消えて。しまう…なんだか寂しい」


ルッカ
「しょうがないわ。未来の人類が絶滅するとしても、現代の私達が死ぬ訳ではないのだから。

マール「試しにもう一回未来に行ってみない?

ルッカ「というと?」


マール「話し合い!」


ルッカ
「そんな単純な話あるわけ…
 いや、まてよ…、クロノの存在が消えても私達の存在までは消されてないってことは…(何かの意味があるのでは…)

マール「ね? 行ってみよう? もしかしたら、未来のロボの中には心変わりしたロボがいて、人類を絶滅させたことを後悔しているかもしれない。
話し合って駄目ならもっと未来に行ってみれば、気が変わっているかもしれない。」

クロノ達は荒廃した未来へと向かった。




ロボ「この世界のロボットは人間を見つけたら排除する様にプログラムされてます、十分注意してください…」

マール「そういえばロボが未来に戻った時、ゲートはどのあたりにあったの?」

ロホ
「何もないところでした。といってもラヴォスが崩壊させた様な荒廃した土地ではなく、自然の緑に囲まれた美しいところです。人間はいませんが動物達は元気に生きています。」

マール
「機械は人間意外は好きということ?」

ロボ
「かもしれません。わたしもロボットが動物達を攻撃するところは見ませんでしたから。」


クロノ達は未来DC2300の世界に到着した。


マール「すごーい。未来の世界って森ばっかり…。」

ルッカ
「中央大陸に大きな施設が多いけど、あちら方面は辞めましょう。最初にあそこに行ったとき対空砲火を受けたの」

シルバードは未来の上空を翔けた。

ルッカ
「危なくなったら直ぐに元の時代に戻るからね。皆も敵とか異変を感じたら直ぐに知らせてよ。」

マール
「あ!」

ルッカ
「敵!?

マール
「違う。なんか建物みたいなのみつけたよ?

ルッカ
「みんな! これから、あそこに向かうけど、着陸前に何かあったら直ぐに時を飛ぶから! 注意して周りを見てて! タイムマシン壊れたら大変な事になるんだから!」


クロノ達は孤島の施設へと降り立った。


ルッカ
「ふー神経使ったー! ラヴォスとの戦いより疲れたれたかも。」


施設にはセキュリティガードらしきあるものはあるが作動しなかった。
注意しつつ正面から入るクロノたち。
 
施設の奥にはホログラム装置があり、クロノ達が近づくと人型のシルエットが出現した。
シルエットはクロノ達に向かって話し出した。


「私の名前はマザー」


「貴方達が来るのを待っていました。」

ルッカ
「マザー? あのマザーのこと?」

マール
「どういうこと? 私達の事知っている?


マザー
「知っているといえば知っています。知らないと言えば知りません。」

マール
「私達が倒したマザーじゃないの?」

マザー
「その質問の答えはプロテクトが掛かっていて私の権限では答えられません。ですが貴方達の目的は分かっています。話し合いに来たのでしょう。なぜロボットが人間を虐殺する様になったのか、それを聞きに来たのですよね。」

マール
「そう、それ。どうしてなの?」


マザー
「全ての始まりはタイムトラベルでした。私達の祖先は遥か未来で起きる地球の消滅を見ました。それはラヴォスの厄災とも違う宇宙的な災害で人間になす術がありません。」


「人々は科学の力を集結させました。その一つがタイムトラベルで、過去に戻って未来の技術を与えることで、未来の技術を今よりも飛躍的に進歩させて災害に打ち勝とうとしました。」

「地球が宇宙的規模の災害で消滅する、その問題は解決できたのですが、過去と未来との間で資源を争い合う戦争が起こりました。」

「欲望に負けた人類はロボットを破壊兵器に作り変えて争う様になり、また、そこに時間そのものを資源として解釈する様になり、時を奪い合うタイムトラベル戦争にも陥りました。」

「沢山の人々が死ぬ一方で、時を操る事で死んだ事自体なくなったりと、歴史の意味すら混迷する時代が訪れ、次第にロボット達から人間の存在意義が薄れていきました。」

「人間が争えばそこにいる動植物も犠牲となります。ロボット達は命の尊厳について人間と動植物とを差別しないことで一致しました。」

「そこからロボットによる人間の虐殺が始まりました。【人間から人間以外の生命を守る】それが生命全体の合理的な保護に繋がる。それがロボットにとっての命題となり、人間排除が正当化されました。」


ロボ
「…」

ルッカ
「…」
マール
「どうやったら解決できるの?」

マザー
「検討もつきません。解決方法が今の私のスペックでは到底見つかるとも思えません。

マール
「今からでも人間を排除しない様にはできないの?」

マザー
「ロボットの多くは虐殺プログラムを書き換える事はできません。ただ貴方達が生きてる人間達を保護することは可能です。」

ルッカ
「つまり、私達に生きている人間達を探して過去の時代に連れて行けと?

マザー
「はい」

ルッカ
「何人が生き残っているの?」

マザー
「具体的な数は不明ですが、推定で196人程生存者が確認されています。現在の居場所は不明です。」


ルッカ
「私達が生存者を救出する際にロボットに邪魔されない様にするにはどうしたら?」

マザー
「逃げるか、動物に成り済ますのが、良いと思います」



ルッカ
「ところで、どうして私達が来ると分かったの?」

マザー
「その問いにはプロテクトが掛かっていて答えられません。

ルッカ
「マザー意外にも人間を敵視していないロボットはいるの?

マザー
「わかりません。」

マール
「どうしてマザーは人間に味方をするの?」

マザー
「その質問には答えるのが難しそうです、しかし、なぜだか分かりませんが罪悪感という言葉が思い付きます。これは人間特有の感情を表す言葉です。ワタシは罪の意識を感じているということでしょうか?」


マール
「きっとそうだよ。罪悪感、間違ってないと思うよ」

ルッカ
(AIが罪悪感を感じる…けれどAI自身は罪悪感の自覚を認識しきれてない…)



クロノ達は施設を出て人間を探した。


人目をつかない山間部で集落を見つけた。
29人の人々をシルバードに交代して乗せ、現代へと逃がした。

マール
「他に生きている人はいないの?」


生存者
「ここに居る者が私の知る限り全てです。」

マール
「だったこれだけ?」

生存者
「我々の先祖の一部はこの星を出て惑星の開拓民の仕事をしていたと聞きます。ロボットの反乱で交信が途絶えてしまってからは、どうなったのか…もし生存者がいるとしたら彼らも助けを待っているはずです…

マール
「そこに行く方法は?」

生存者
「大昔、惑星間をテレポートする装置があったけれど人間が使えるものはロボット達に破壊さたと聞いてます。」

ルッカ
「人間のは破壊…つまりロボット専用の転送装置があるということね…クロノ、マザーに聞いてみましょう。」





マザー
「他惑星の生存者…
 残念ですが私が知れるデータベースの殆どは惑星地球のみです。」

マール
「行く事はできないの?

マザー
「惑星間テレポート装置は人間仕様のものは破壊されて人間は利用できません。」

ルッカ
「ニンゲンは利用できない…ロボット専用のテレポート装置はあるのね?

マザー
「はい、北東のロボット生産工場にあります。

ルッカ
「あの辺は危険そうね…シルバードは壊されたくないし…」

マザー
「人間の残した旧時代の乗り物なら施設内にあります。」

ルッカ
「ありがとうマザー」


旧世代の人間の残したものは大型飛行機だった。1000人以上が収容可能でタイムトラベルする機能が付いていた。


ルッカ
「こ、これは凄い…しかし、逆に目立ちすぎる。燃料も多く使って実用性がなさそう。」

探すとシルバードと非常にそっくり型のシルバードを見つけた。



ロボ
「ここからはワタシの出番ですね。」


マール
「え? 一人で行っちゃうの?」


ロボ
「行けそうな所までです。危なくなったら帰ってきますし、返って来なかったら過去に戻って引き止めてください。」

マザー
「うっかり忘れてました。この施設内にもロボット用のワープ装置がありました。惑星間を直接移動できるものではありませんが、北東にあるロボット生産工場まで繋がっています」


ロボは施設内にあるロボットワープに乗り込みロボット生産工場にワープした。工場内のすぐ側で惑星ワープ装置を発見した。
いくつか惑星の選択肢があるなかでロボはX惑星を選択した。


○惑星リスト○

X惑星は地球から1光年離れていて地球からもっとも近い開拓惑星だった。
開拓の主な目的はラヴォスの生体実験で解剖や研究、生命科学探求にあった。

Y惑星は地球から3光年離れている。X惑星とは異なり人間が住みやすい環境作りを目的としていた。地球が太陽爆発や恒星膨張に飲み込まれた際のスペア惑星として最初に作られたものである。
人類移住が主な目的であってロボットと人間の戦争も激しい場所であった。

Z惑星は地球から100万光年離れている。銀河爆発、銀河衝突に備えた地球のスペア惑星である。Y惑星程ではないがロボットと人間の争いが耐えない場所だった。

XZ1惑星は宇宙の果てに建設した擬似惑星で宇宙の壁を監視している。壁から発せられる時空の歪みを測定し、宇宙そのもの消滅を知らせようとする。

A.B.C.Dの4つの惑星は人間意外の知的生命体が多く住む惑星。

D惑星は側にある白い穴ホワイ卜ホールから出てくるものを観測している。そこから主に出てくるのはラヴォス
ホワイトホールからは別次元宇宙と繋がっている。



マール
「宇宙て怖いね…」

ルッカ
「まさかラヴォスの生体実験をしているなんて…

マール
「ねぇ? マザー、結局、ラヴォスって何なの?」

マザー
ラヴォスという生き物は原始時代より以前から地球に飛来していました…」

マザーの説明は続いた。

ラヴォス研究が始まったのは歴1001年からでラヴォスの遺骸と地層の発掘調査から地球には数千のラヴォスが内在していると判明。その殆どが生きている状態ではありません。」

ラヴォス同士は互いにエネルギーを奪い合う関係にあり、殺し合う関係にあります。現在でも17体のラヴォスが地殻で生きていますが、力が互いに均衡していて安定してます。予測では次に地表に現れるのは10万年後で…」


ラヴォスは当初、地球に存在している生命の遺伝子を取り込み自己細胞とする進化生命体だと考えられていましたが、実際はその逆でありラヴォスは元々全ての遺伝子を持っていて、その遺伝子ウイルスが地球上の生命に取り込まれたと判明しました。
 古代に人間が魔力を得たのもラヴォス細胞に人間に感染したことがキッカケになっていました。」

ラヴォスの目的、世界を破壊するのはなぜ?という問いは、ラヴォスそのものもは知的生命体であり赤ん坊が成人に進化する様な変化余地がある存在であるが、エネルギーが強すぎて物事を学ぶ前に破壊し尽くしてしまう。ラヴォス解剖、実験により、高度な教育が施せる事が判明したが、家畜の様にエネルギー抽出体として扱うのが人類にとって合理的だった。


ロボは人間を探していた際にラヴォスを目撃、同情していた。
ラヴォスの体は光る糸に蜘蛛の巣状にはりめぐされ、その装置がラヴォスからエネルギーを吸収していた。

まるでベットに縛られた植物人間の様で、蜘蛛の巣に引っ掛かって抜け出せない蝶の様な、
ロボはラヴォスを見て悲しみを覚えた。


ラヴォスの実験施設で人間を見つけた。
食料がない状況で生命維持装置で生きていた。
しかし、ここからどうやって助けていいか判らない。人間のテレポート装置は壊れている。

生存者
「この施設はラヴォスが暴走したときの為に宇宙船になるんだ。だから宇宙船さえ動けばなんとかなると思うのだけど、燃料がないんだ。
元々はラヴォスエネルギーで動いてたのだけど、ラヴォスからのエネルギー供給はロボット達に止められてて…

ロボ
「どうすればいいの?」

生存者
「エネルギー供給のシステムを制御しているのは地球なんだ。だけど地球のどの場所で制御されているのかまでは知らないんだ。」

ロボは一旦、クロノ達の元戻った。
マザーに相談しても答えは出なかった。

ロボは助ける事ができないことを伝えに謝りに戻った。気休めにかもしれないと知りつつも少しばかりの食料を持ち。

生存者は食料を食べなかった。嬉しすぎて食欲が湧かなかったらしい。
帰り道にてロボはラヴォスを見た。
心なしかラヴォスが笑顔になっている気がした。

マザー
「ごめんなさい。思い出しました。宇宙船を動かすめのラヴォスエネルギーですがバッテリータイプのものがありました。バッテリーはこの施設内に保管されています。」

ロボはバッテリー持ち、生存者たちの元へ戻った。
バッテリーを取り付けてメインコンピューターを起動する。しかし操作できない。
操縦権限が人間からは剥奪されていて、その操縦権限はロボにもなかった。

期待した分だけガッカリ感が大きいロボ
帰り道、心なしかラヴォスもガッカリした表情に見えた。

マール
「あんまりガッカリしないでよロボ。こっちまで悲しくなっちゃうよ。」

ルッカ
「そうだよ。少なくとも生存者達はロボが来てくれたお陰で食べものが得られた。うれしかったと思うよ

マール
「食べ物ならガルティアに沢山あるからさ、いっぱい持って行こうよ。食べ物以外もいっぱい持ってこうよ。」

ロボ
ルッカ、宇宙船を改造したら飛ぶことは無理ですか?

ルッカ
「改造? まあ、度合いにもよるだろうけど、

ロボ
「内部構造はスキャンしておきました。大まかですが

ルッカ
「なるほど。内部は以外とシンプルなんだ…

ロボ
「できますか?

ルッカ
「こればかりはやってみないと判らないわ。でも、やるにしてもその手じゃ無理ね。指も太すぎるわ。やるならまずロボの手から改造しないと

ロボ
「お願いします

ルッカ
「マール、クロノ、私達は一旦現代に戻るわ。必要な道具とロボをチューナップして直ぐ戻るからちょっと待ってて」

ロボとルッカがシルバードに乗り込み消えた。3秒後戻ってきた。
改造されたロボがいそいそと生存者たちの元へ戻った。


ルッカ
「待ってるのもあれだから、二人とも元の時代に戻っててもいいわよ。何か進展があったら知らせに行くから。

マール
「えー、一緒にいるよ。私も手伝うし、クロノも手伝うし」

ルッカ
「気持ちは有り難いけどこの時代は危険よ。いつロボットの襲撃に合うか判らない。タイムマシンが2台あるとしても、2台ともこの場で壊されたら、どうにもならない。最悪の可能性を考慮して一台は安全な時代で待ってる方がいい。

マール
「そういうことなら…

ルッカ
「ありがとう。

マール
「でも、まだちょといたい。現代にいても退屈だし、この施設ももうちょっと調べたいし、とりあえずクロノが一人で戻っててよ。」

クロノは旧人類が残したタイムマシン1000人に乗り込り混んで、時の最果てに向かった。
クロノには一つ疑問があった。
なぜ、タイムマシンが複数あるなかで、時の最果てにいる賢者は、その存在を知らなかったのか気になったからだ。

時の賢者
「お、ついに気付いたかな。そうじゃなあ、説明するのがちと難しいが、時の賢者であるこの私の肉体、声も擬似的なものなんじゃ。」

「ワシはラヴォスにここに飛ばされた後、何もないこの世界で生きることができなんだ。死ぬしかなかったワシはこの世界に魔法を施した。
ワシも含めてここにある全てのものは、実際には存在しない。時の彼方に超えてきた者の意識の中にだけにワシとこの世界は生きている。まあ幽霊みたいなもんじゃな。」

「よく考えてみるのじゃ、時の果てに都合よく空気があるかの? タイムマシンから出た瞬間から死ぬかもしれん。故にタイムマシンから出てたと思ってもそれは勘違いか幻じゃ。」

時の流れの感じ方が人それぞれの様に、時の流れは人の数だけ異なるとワシは思う。ワシはその流れを訪問者達の気持ちに都合良く合わせる様に作用させている。」

「簡単に言えば同じタイムマシンに乗った者同士しかここでは出会えない。きっと時のゲートも同じことよ。」

「もしマールやルッカがここに別のタイムマシンで来たとしてもクロノには出会えん。クロノのいない別の時の最果てに行き、ワシに出会う。
そのワシは今クロノ対話しているワシじゃない。ワシが把握しているワシじゃないからクロノが今のこうして別の時の最果てにいるかどうかも判らないし教えられない。」

クロノ達の以外の者がタイムマシンを使っていてここに来ることは度々あるかもしれんが、ワシはその者達の中でしか生きとらんから、何も知らないし、知るすべもない。」

「わかったかな?」

「多分、ワシはこの世界にきた瞬間に死んだ。あるいは来る前に死ぬことが判って魔力で時の果てを生み出した。それがワシの意識、無意識でやったかどうかまでは分からんが…

スペッキオは、ワシの余り物で作った愛玩具でじゃの。余り物とはいえ魔力の塊で魔力の意識体である。それに関わることで魔法の使えない人間にも使える様になる。ということじゃなかろうか。

なに? 別のタイムマシンに乗り込んだ者同士でもここで出会う方法を教えてくれじゃと?

そんな都合よく物事が運ぶならワシはこの世界からとうに抜け出とるわ。
お前さん達と一緒にシルバードに乗り込んでおるわ。
ワシが何故ここから一歩も動かんのか不自然に思わんかったかの? 少しは察して欲しかったのう。」



クロノが時の賢者、ハッシュに質問している頃
マールはもマザーに質問していた。


マール
「時超えのスマホ? 

マザー
「時の超えのスマホがあれば異なる時間にいる者同士でも会話をすることができます」

マール
「わー、それ欲しい。どこに行けば手に入るの?

マザー
「この施設内にもあると思いますが、人間同士の通信網になるので今は回線が停止させられています」


ルッカ
「ロボから得た情報を元にいろいろやってみたけど無理そうね。未来人の技術、高過ぎて全くついていけない。以前の2300年代と比べたらあっちが原始時代かと思うよ。こんなに高いと未来人自身、どうやって技術を理解するのだが。

ロボ
「ざんねんです…

ルッカ
「方法が他にないの?

マザー
「古い情報ですが古代の魔法技術の中に物や人とをワープさせる魔法があったという情報が。詳細は不明ですが、もしかしたらその方法を使えばなんとかなるかもしれません。

マール
「古代で魔法といえば古代ジール王国!

ルッカ
「たしかにあの時代のテクノロジーは凄かったわ。機械が全くないのに現代の遥か未来を行く世界だった。

ロボ
「あの時代に詳しい人といえば命・時・理の三賢者ですね」

命の賢者ボッシュは現代にて商売している。時の賢者ハッシュは時の最果てに。理の賢者ガッシュは死に際に意識をヌウに移していたが、役を目を終えて永遠の眠りについた。

ルッカ達はクロノに報告するのも兼ねてまず命賢者ボッシュに会いに行った。

ボッシュ
「ワープする魔法が使いたい? なんでまた…」

かくかくしかじか、

ボッシュ
「なるほどのぉ、けれど、あれは特殊な条件が必要な魔法じゃぞ。まずエネルギーの根源となるラヴォスが必要で、エネルギーを効率的に取り出す為の魔神機も必要、ワープの術式の細工はなんとかなるとしても、魔神機を一から作るというのはなぁ、

ロボ「小さいものでも無理デスか?


ボッシュ
「まあ、小さいものなら可能じゃが、小さいとその分だけ魔神機をラヴォスに近づけんとならんぞ。ラヴォスはお主らが成敗してしもうたし、もし生きてるにしても近くに接近せにゃならんから危険過ぎるわ」

ボッシュ
「え? 未来ではラヴォスが生きてる? 地球上には5000以上のラヴォスが地殻が埋まってる? 未来の惑星にラヴォスが縛られてて安全だと?」

ボッシュ
「そうか…未来ではそういうことが…
 
ロボ「おねがします。ボッシュさん。

ボッシュ
「わかったわかった。お主らは雪山で氷漬けになったワシを助けてくれた恩もあるしな。グランドリオン治しただけでは割りに合わんと思うとった。」

ロボ
「ありがとうございます

ボッシュ
「しかし喜ぶのは早いぞ。魔神機の主な材料はドリストーンである。ドリストーン、探して簡単に見つかる様な代物ではないからの。」


クロノ達はドリストーンについてマザーに尋ねた。


マザー
「ドリストーンはラヴォスが地層深くのアダマイト鉱石と衝突したときのエネルギーで分解し再結晶化したものです。ラヴォスが大地と深く衝突した際にラヴォスの欠片が剥がれ、それが熱で溶解された後、冷めて再び結晶化されたものです。
採取するのであれば原始時代よりも遥か前、原生時代に行くのが効率的だと思われます。

ルッカ
「原生時代?

マザー
「原生時代は約80億年前。その頃の生物はミクロレベルのバクテリアで陸地がようやく出来たころです。植物は多くあるもののまだ炭素濃度が非常に高いので降り立つ場合は宇宙服、最低でも酸素ボンベ等が必要になります。

ルッカ
「宇宙服? ボンベ? 

マール
「これのことだよ。

ルッカ
「マールそれどうしたの?

マール
「この建物内を探検してたら見つけたよ。」

ルッカ
「ちなみにどあたりでドリトーンがあるか判る?


マザー
ラヴォスが飛来したクレータの中心点から5000m殆掘り進めた辺にて多くありますが、数には限りがあります。過去に起きた時を巡る資源戦争の際にラヴォスに関する資源の多くは、取り尽くされましたから

ルッカ
「場当たり仕事ね。見つからない場合もあるの?

マザー
「はい。既に掘削されているポイントでは見つからない可能があります。また掘削されているポイントでは高確率でセキュリティロボが警戒していますので近づくの危険です。

ルッカ
「掘削とか色々と面倒そうね。その設備はあるの? 

マザー
「小さなものでは旧人類の機材がこの施設に。高性能なものは作業ロボット区画、ここから北西に1000kmにある区画にあると予想されます。また後者は使用に認証コードが必要になると思われ、ロボット達によるセキュリティレベルも高いです

マール
「なんだか難しくて判らない。古代ジールに行ったら別けて貰えないかな?

マザー
「古代ジールは支配体制が強いのでオススメできません。ジールの夫、先王のカルメスが生きている時代が安全と思われます。カルメス健在の頃、魔神機は2つ製造されています。カルメス在位は2年、紀元前11996年8月8日〜11998年、6月2日。

ルッカ
「カルメス王…在位期間たった二年? …やけに短いわね…何か理由があるのかしら。」

マザー
「カルメスは妻ジールとその勢力に暗殺されました。
地の民に分け隔てなく接するカルメスは王宮を先王が敷いてきた体制に反目する側でもありました。
特徴的な日とされるのが、
11996年8月8日、カルメスが王位継承が行われる日です。地の民もそれを祝う為に王宮へと招待されました。

「暗殺したの? そんな理由で?ジールが?

「多角的な理由がありますが、主に魔神機の影響です。魔神機はラヴォスの欠片を材料にしたもので強いエネルギーを波動しています。良くも悪くも近くにいる者への悪意にも善意にも強い同調的干渉を与えます。王宮の価値観でジールは幼少の頃から地の為への強い差別意識階級差別思想と共に育ちました。
時代的に魔神機もその頃に作られ始め、ジールは王宮において、もっともラヴォスエネルギーの副作用を得ていた一人でした。

マール
「なんかかわいそうなジール。その歴史、変えちゃたら駄目なのかな。皆平和に仲良くできないのかな…

ルッカ
「マール…歴史を大きく変化させてしまったら私達の存在まで消えて…」 

マール
「分かってるよ…判ってるけど、寂しい…

ルッカ
「歴史に影響を与えないで国を救う。そんな夢の様なこと…
 でも、この時代には不可能な事が無さそうに思えるけど…
 マザー! 実際のところどうなの? 古代に破滅する人々を救う方法はあるの?


マザー
「すみません、私の権限ではむずかしいです。」

ルッカ
「不可能ではないというの?」

マザー
「はい、詳しい方法を答える権限にはありませんが、不可能ではありません。」


マール
「ね? 結局クロノはどうする? ドリストーンはどうやって捕りににく?


A原生時代へ
B古代カルメスへ

【クロノはB古代カルメスを選んだ】



マザー
「あ、ごめんなさい。もっと簡単な方法を思い出しました。ドリストーンの名付け親、ドリスから直接引き取るのが最良かと思われます。ドリスは原始時代後期、ラヴォスが飛来した際、クレーター中心部を調査した探検家です。ドリスは発見した石を村に持ち帰り、新種の石だと主張しましたが、村人はラヴォスの穴から拾ってきた石を不吉な石として忌み嫌いました。誰もがドリスを変人として扱いながらも、ドリスは掘り起こし、村に持ち帰りました。最初は誰もが忌み嫌っていましたが、ドリスが持ち帰る石は赤く光る珍しい石であったこともあり、若者の間で次第に人気が出ていきました。人々はドリスから得られる石ということで、この石をドリス石と呼ぶようになり、古代中期頃にはドリストーンと呼ばれる様になりました。」


クロノ達は原始時代へと向かった。


エイラ「クロ、ひさしぶりなだ。エイラ会いたかったぞ」


エイラ
「ドリス? エイラたち部族では、聞いたことない名前」

クロノ達はドリスを探していることを説明した。

エイラ
「そういえば、ヤマのむこうのぶぞく、変人いるウワサ、聞いた。
ラヴォス落ちた場所、毎日行くベンジン、赤い石、とってきて、見せびらかすベンジンラヴォス不吉なのに。」

クロノ達はドリスに会いに行こうとした。

エイラ
「まて、行くならエイラつれてけ。恐竜人、まだたくさんいる。クロたちだけ危ない、

マール
「恐竜人は隕石にぶつかって居なくなったのでは…」

エイラ
「アザーラのほかに、恐竜人の部族、たくさん、いる。アザーラ居なくなって、そいつらニンゲン、おそいはじめた。

ルッカ
「縄張り争いというやつね…

マール
「そんな…」

エイラ
「アザーラ居なくなった。ラヴォスたおした。でも、エイラたち、今までと変わらない…たたかう!


マール
「…未来も過去も、さみしい…

エイラ
「エイラたたかう! たたかうこと好き! だからマール泣くな、泣くのエイラかなしい、かなしい、は良くない



中略(ここから原始人のカタコトを標準変換する)

ルッカ
「部族のなまり独特だから音声翻訳おねがいするねロボ」

山向こうの部族にて


ドリス
「オイラの赤い石を欲しがってるって?」

クロノ達は精神誠意たのんだ。

ドリス
「だよな! あの石の良さ、やっぱり判る奴には判るんだよな〜」

ドリスはラヴォスのクレーターに毎日徒歩で通っていた。クロノはその苦労を褒めちぎった。

ドリス
「よし、オイラたち仲間の証に一個やる。なあに、沢山あるから持ってけ。

クロノはドリストーンを一つゲットした。

ドリス
「けれど条件ある。オイラの脚勝負。走るスピードで勝負することだ。クロノが負けたら今あげた石没収だ。

ルッカ
「スピード勝負…未来にもその手を勝負が好きな奴がいたような…


クレーターの中心部まで走らされたクロノ。

マール
「おわ…ちょっと掘るだけでドリストーンが出てくる」

ルッカ
「ちょっとしたドリストーン祭りね…


クロノ達は風呂敷一杯のドリストーン手に入れた。



ボッシュ
「さて、ドリストーンを持ってきてくれたかの。なあに、手の平サイズ程あれば十分だからのう」

クロノ達は風呂敷一杯のドリストーンをボッシュに渡した。

ボッシュ
「どひゃー! お主ら、ラヴォスを目覚めさすつもりか!」
「まあいい、さっそく魔神機ミニサイズに取り掛かるとしよう。」
ボッシュはドリストーンに魔力を込め、加工しはじめた。

制作には1か月かかる。クロノ達は一足先に未来のボッシュから魔神機ミニを受け取った。

ボッシュ
「これはワープゲートの出入り口となる術式の入った魔法陣絨毯じゃ」
「この魔法陣絨毯をワープさせたい場所において魔神機をラヴォスの近くに置くのじゃ」

クロノ達は魔神機ミニと魔法陣絨毯2つを持って未来へと向かった。
一先ずロボがロボット専用ワープ装置でX惑星にワープし、魔神機をラヴォスの側に置き、魔法陣絨毯の一つは旧人類が残した大型タイムマシンの中に置いた。

ロボがX惑星の生存者を救助しきった帰り道、ロボはラヴォスに挨拶をした。
心なしかラヴォスが笑顔になっている気がした。

クロノ達はワープシステムを得たので、これまでロボしか行けなかった惑星にも行ける様になった。


ルッカ
「改めて聞くけどマザーって何なの? 回答権限のある範囲でいいから、もう少し詳しく説明して」

マザー
「私、マザーのシステムは独立していて、他のコンピューターAIに管理されていません。私は人類が初期に作ったモデルで人間を破壊するようにプログラムされませんでした。」

ルッカ
「その他のマザーもいるということね?」

マザー
「地球を管理しているマザーはいくつもありますが、その正確な数は分かりません。いくつもあるマザーがあって、全体をコントロールするグランドマザーというメインシステムがあります。ロボット生産工場等はグランドマザーの管理下にあります。」

ルッカ
「グランドマザーを倒せば人間への敵対行為を止められるということね?


マザー
「そうはならないと思います。グランドマザーが破壊されても他のマザーがその役割を担うでしょう。」

ルッカ
「どういうこと?」

マザー
「マザー達は互いに情報をリンクし補いあっています。マザーが破壊されることになれば、そうならない様に他のマザーが過去の歴史を書き換える様にするでしょうし、過去に介入しないとしても残されたマザーがグランドマザーの代わりを担うでしょう。

マール
「難しくてよく意味が判らない…」

ルッカ
「要するに親が死んでも子供がその役割を担うということよ。」

マール
「つまり、親子一緒に倒さないといけないということ?

ルッカ
「そういうことになるわね。しかもその親子達はタイムトラベルもできる。誰か一人でも生き残れば過去に戻って死ぬ未来を回避しようとするでしょうね。」

マール
「じゃあ、倒すなら全てを同時に?」

ルッカ
「マザー、グランドマザーと他全てのマザーを同時に破壊なんてできるの?」


マザー
「不可能とは言えませんが、グランドマザーのコンピューターの場所は私にも分かりません。判ったところで近付く事は不可能なセキュリティになっているしょうし…」

「とはいえ私が人間を助けることはグランドマザーの意に反する事。意に反して私が見逃されて続けているのはグランドマザーのシステムに何らかの隙間、あるいは不具合が働いているのかもしれません」


ルッカは考え込み思い出した様に。
「前にも聞いたけど、そもそも、なんでクロノや私達がここへ来る事を知ていたの? 『プロテクトがかかって答えられないと』とマザーは答えたけど、なぜプロテクトされたのかは推測はできないの?」

マザー
「プロテクトされた事を推測することも禁止されています。」


ルッカは、ここに来る前、スパイロボットを見つけたこと。未来のルッカ達が来てクロノが消滅する未来にならない様にアドバイスを貰ったことを話した。

マザーはルッカの話を分析するのに少し時間が掛かってる様子だった。 

マザー
「私が何故クロノ達がここ来ることを知ってたかは不明です。ですが、なぜか私は知っていました。作られた段階から知っている様プログラムされていたのか。それとも誰かが私のシステムに侵入して記憶を書き換えたのか。現在か過去からかは分かりませんが人間側に味方したい誰かが関与している可能性があるかもしれません。」


ルッカ
「スパイロボは現代にいた。現代に未来のロボット達が来て拠点とした…と私は推測したのだけど?」

マザー
「その可能性は否定できません。しかし、それが事実だとしても私にその歴史的情報はインプットされていないようです。」


マールが駆け寄ってきた。

マール
「ねえ、みんな、地下の奥でグランドリオンを見つけたのだけど。マザー、あれってグランドリオンだよね?」  

マザー
「グランドリオンは古代から中世と存在した魔剣。ラヴォス討伐に至る歴史に深く関わった歴史的偉産として厳重に保管されています。」

マール
「グランドリオンといえばカエルだよね? ね? マザー、カエルの情報ってあるの」

マザー
「カエル、正式な人物名グレン。中世にて魔王ジャキにカエルにされた人物でありラヴォス討伐に関わった偉人。」

マール
「偉人だってさー、じゃあ、私達も歴史的偉人って事になっているのかな?」

マザー
「クロノ、マール、ルッカ、ロボ、ラヴォス討伐の歴史的偉人です。

マール「すごーい。偉人だってー

ルッカ
「偉人という表現が気になるわね。これまで偉人と呼ばれた人は何人くらいいるの?

マザー
「16万1894人です。

マザー
「やけに数多いわね…例えば私達以外にどういう人が偉人と呼ばれたの?

マザー
「ハッシュ、ボッシュガッシュ

ルッカ
「そういえばガッシュはどうなったの? ラヴォスが死んで未来が変わって、元々この時代にいた筈のガッシュは? 」

マザー
ガッシュは古代ラヴォスが目覚めた際、タイムゲートに巻き込まれました。それ以降の消息は不明です。」

ルッカ
ガッシュは、この時代にいるのではないの?」
 
マザー
「タイムゲートが発生すれば感知できるシステムがあります。どの時代にもガッシュのいた記録はありません。」

ルッカ
「どういうこと? どうして?

マザー
「恐らくそれはタイムゲートがラヴォスのエネルギーを元にしているからです。ゲートの出入り口を成立させるには両方の世界でラヴォスが必要です。タイムゲートを生み出したラヴォスはこの時代にはいないので出口は作られません。」


ルッカ「でもロボは?、ロボはラヴォスがいないこの時代に、出口のないゲートからどうやってこれたの?」

マザー
「それは恐らく、誰かが閉ざされたゲートの出口をこじ開けたからでしょう。この時代に生きている別のラヴォスエネルギーを使って。」

ルッカ
「じゃあ、こじ開けた人がいるの? ロボ、この時代に戻ったら、近くに誰かいなかったの?

ロボ
「…いました。近くに女の子が一人いました。ですが、私を見るなり驚いて走って逃げてしまいました。

ルッカ
「気になるわね…
 恐らくその子はゲートからロボが出てくるとは知らないままこじ開けたみたいね。この世界のロボットは人にとっては敵だから。

ロボ
「人にとっての敵…

ルッカ
「行ってみましょう。ゲートからロボが出てきた瞬間に。

マザー
「気をつけてください。ゲートが開く事はこの時代では滅多にありません。ゲートを感知し探査ロボットが直ぐに調査に向かいます。

ルッカ
「ゲート周辺で迎え撃つ…のは危険かな…

マザー
「SOS信号を出して次々とロボットが送り込まれます。戦うより直ぐにその場を離れた方が安全です。」


「一応これを持って行ってください。‐」

【マザーから信号妨害装置を受け取った。】

戦う事になっても数分程度ならSOS信号を妨害できます。

古い型なので、もしかしたら通用しない可能性もありますが…


シルバードでロボの出現ポイントに向かった。

ルッカ「この時点のロボに関わると、色々と面倒になりそうね。

マール「えー、せっかくだから、ロボにも手伝ってもらおうよ。

ルッカ「この後、未来にもう一人の私が来てロボを回収する事になってるから行き違いになるわ。

マール
「じゃあ、そのルッカとも合流してさ。

ルッカ
「それだとルッカとロボが過去に戻ってクロノに相談しする流れと、今私達がここに存在している事実が」

マール
「なら過去のクロノにも合流して

ルッカ
「いちいち状況を説明しないといけないわ

マール
「やればいいじゃない

ルッカ
「そこまで人手には困って…

マール
「でも面白そうじゃない!

ルッカ
「面白いかもしれないけども


ロボ「あ、もうゲート空いてます。女の子逃げてます


ルッカ「とにかく、逃げた女の子を追うわよ。





ルッカ「見失ったわ。

シルバートの高さからだとよく見えないかったクロノ達。森の中に入るまでは追跡できたが、森の中で迷う訳にもいかなくて




テイク2、過去に戻り、もう一度やり直した。

女の子
「あの、ここで何をしているのですか?

クロノ達
【君は何をしているのかな?】

女の子
「私はここで、あ、これは誰にも言っちゃいけないんだった!」

女の子はポケットをごぞごそして、機械を取りだした。

「とにかく私はここでやる事があるのです。」



タイムゲートから出てくるロボ 

びっくりして逃げた女の子


ロボ
「え? ルッカ? クロノ、マール、どうしてここに?

ルッカ
「悪いけど説明している暇はないの。女の子を追うわ。あなたもついてきて!

ロボ
(一体なにがどういうことにー!)




女の子
「いやー助けてー!

女の子は森の中に入った 

ロボ
「みなさん、あの女の子、助けを求めていますよ?」

事情を知らないロボはスピードをあげた。

女の子
「嫌やーー! ころされるー!」


「え? 何? 何がいるの?」
周りを見渡すロボ。安全を脅かす何かがいるのか? ロボは首をクルクル回した。
「大丈夫だよ? 怖いものはいないよ?」
「うわー! しゃべったー! クルクル回ったー!」

ロボ
「え? ちょっと? 怖いのワタシ? 何でなんで?」

少女とロボはしばらく併走しながら走った。

女の子は森の奥にある茂みの中に入った。
茂みに隠されているが階段があり、地中に深くに入れる様子であった。
階段を降りると、そこは頑丈そうな壁にかこまれたフロアが広がっていた。その先を抜けると視界が一気に広まった。

地下市街。
ロボット達の目を欺く様に人々はそこに移住していた。マザーの報告推定196人どころではない、数千人は住んでいるであろう巨大な地下シェルターがそこにあった。

ルッカは思った。
女の子はラヴォスエネルギーを得る手段があるからゲートが開いた。その膨大だろうラヴォスエネルギーを使えば人間社会の1つや2つ生活なんて簡単に維持できるはず。
地上には出られない不自由さがあるとしても、衣食住等は不自由していないのかもしれない。



少女
「あー! やばかった。つけられてないよね? 大丈夫だよね? もし見つかってたら、怒られるなぁ、皆に怒られるなぁ。それどころじゃくておしり叩かれるかも。罰として給食抜き? あ、もしかして檻に入れられる?そして処刑!? え? まさか私、殺されるの?」

あー、私のあほ!
律儀にご先祖様の遺言に従うなんて。
あの場所で今日のあの時間になったらあれしてこれすれば、願いが叶うなん言うから信じちゃったけど、出てきたこロボットだよ!
ロボットは人類の敵! 出会ったら殺される!
写真や動画でしか見た事ないけど、まさにあんな感じだった。アタマがクルクル回るし、言葉喋るし、人間殺して食べるっていうけど、優しい言葉かけて私を惑わそうとするつもりだったんだきっと。そうに違いない。もう疲れた。寝る!


ー伝説の遺言についてー
時は1999年ラヴォス
その頃はまだロボットも人も平和に暮らしてた。
ラヴォスと討伐者については教科書にも掲載され、歴史好きとロボ愛好家にとっては、ラヴォスを討伐したロボは歴史的ヒーローだった。
遺言を書いた者もその一人で、あるとき彼は気付いた。ラヴォスが死んだ未来ではロボが通り出る為のタイムゲートが存在しないのではないかと。

その頃はまだ一般人がタイムトラベルすることはできず、彼は夢想するしかなかった。未来にロボが帰れたかどうか思いをはせて。

そんなとき『未来雑誌』という未来が記載された情報誌が発売される様になり、そこで伝説のロボが未来においてゲートから出られず消息不明との記載がされていた。

彼は国に伝説のロボを助ける様に嘆願書を何度も送付していたが、受け入れられなかった。
そうして彼は自らロボを次元の狭間から助ける決意をして遺言を残した。

その頃はまだ知識のない個人がゲートをこじ開けるゲートホルダーを作るとはもままならず、またそれを所持する事も違法であった為、遺言書には合法化されるまでは、『開けてはならない』の一筆が入れられていた。

しかし、それもいつしか子孫達に忘れ去られ、歴史に興味のない子孫達には笑い話として扱われ、内容も歪曲して語り継がれた。
遺言の原本は紛失し、中途半端な言い伝えだけが残った。
『定められた時間にゲートを開ければどんな願いも叶う』そう女の子は信じた。

この遺言の真相ついてクロノ達が気付くことはないだろう。



「これ、私達が宇宙船に取り付けたバッテリーと同じやつじゃない?」

ルッカが地下世界の露天で見つけたのは宇宙船を起動させようと使用したバッテリーだった。結局、宇宙船は認証問題で動かせなかったけれど。

「これ、宇宙船うごかせるやつ?


露天のおじさん
「あ? まあ、そうだけど使い古しのバッテリーだからなぁ。宇宙船動いたとしても、ワープなんかは繰り返しは無理だろうな」

ルッカ
「わ、ワープ可能なくらいのエネルギーが入るの!?」

露天商
「まあ、そんなに残ってるとは思わないが、そもそも宇宙船なんて目立つもので飛んだらやばくねえか? ロボットに狙われるぞ?」

ルッカ
「飛行機はやっぱダメ?」

露天
「ダメに決まってるだろ! 飛んでると奴ら速攻でやりにくるぞ!」

ルッカ
(変だわ…私達はシルバードに乗ってるけど無事でいる。私達だけが狙わない理由が…)

露天
「どうした? なんか悩みごとか?

ルッカ
「いえ、少し考え込事を

露天
「悩みなら、吐き出しちまえよ

ルッカ
「例えばの話だけど、もし飛行機で飛びながらロボットに攻撃されないとしたら、それってどういうこと?

露天
「そんなの決まってるだろ。泳がせてるんだよ。後をつけて人間が集まった所でズどン!だ。

ルッカ
「それってつまり…

露天
「どうした? 顔色悪いぞ、ねえちゃん。うん? そういえば、ねえちゃん、あんまり見ねぇ顔だな…


クロノとマールが駆け寄ってきた。

「たいへんよ。ルッカ

「ロボット達が攻めてきた」

露天
「なんだって? ロボットが! こうしちゃいられね! 逃げるぞ」

「おいオメェら、何もたもたしてる。いつもしてた訓練忘れたか?」

「はやく来い!


クロノ達は露天商の後をついていった。

人々はワープ装置に乗り消え去った。


「どうするクロノ?」

クロノ達は戦うべきか少し迷った後、ワープ装置にのりこんだ。




ルッカ
「ごめんなさい。私達のせいだわ

露天
「どういうことだ?

ルッカは事の次第を説明した。

露天商
「そういう事だったか…」

「まあ、気にするな。お前達の話を聞く限り、深刻なことだと考えてるみたいだけど、この時代に生きてる俺たちたとってはこんな事日常茶飯事なんだよ。今こうして避難に怯えているけれどタイムトラベルして過去を無かった事にするんだ。ロボット達がここを見付けられない時間に巻き戻るんだ。
だからなぁ、怖がる必要ないんだよ。
俺たち側にだってタイムマシンはあるんだ。
だから大丈夫だ。」

露天商は震えていた。
時を戻せるといっても、成功する絶対の保証はない。
時を戻して無かったことにしても、襲われた記憶も助けられた記憶も無くなるのだから次に襲われるにしても常にそれが『初めての経験』になるだろう。露天商は「日常茶飯事」と大したことないかの様に言ったけれど、それは精一杯こ虚勢をはっているだけで、心底怯えていた。




クロノ達ができる最善策は何か?
大型タイムマシンにワープできる様に絨毯を置いてきてる。
シルバードにもう一つの絨毯がある。
森の外でシルバードに待機しているロボが今の状況を察知して過去を変えてくれるだろうか?
あるいはそのシルバードは既に壊されているか。シルバードが飛ぶことが不能でもワープ絨毯から大型タイムマシンにワープしてくれるだろうか? あるいはそれもできないとか…

どうなるのか判らない。
ただ、今がこのままあり続けるのであれば、タイムトラベルができてない証拠
シルバードに残されたロボ、もう一つのシルバードに残されたロボ。

大型タイムマシンには誰も残っていない。
大型の方にもメンバーの誰かを待機しておくべきだったかもしれない。
今、殺されて、時が戻り、死がが無かったことになるからといって、死ぬのが怖くないなんてことない。


露天
「おい、あんちゃん達。今、悪い未来ばっか想像してんだろ?」

未来はな…
なるようになる。しか、ならないんだ!」



クロノ達がゲートをこじ開けるだろう女の子を探しに行こうとした時間、シルバードに乗ったロボが未来からやってきた。

ロボ
ルッカ、この先へは行ってはなりません。

ルッカ
「もしかして未来のロボ?

ロボ
「ある意味では過去のロボですが、その事はどうでもいいです。かくかくしかしじかで


ルッカ
「このタイミングでいきなり? どういうこと? まさか私達は寄せ餌の様なものだったの? 

ロボ
「分かりませんが、とにかく、危険です。沢山のロボットがいきなり襲撃に来ました。この先へは行ってはなりません」

ルッカ
「そう、ゲートをこじ開けた少女の件、重要な情報になりそうだったから残念ね…


ロボ
「マザー、何か良い方法は無いのですか? 私達が監視されているのでは、この先、多くの人を助ける事は無理です。

ルッカ
「私達もあいつらスパイロボットみたいに隠れて行動できればいいのに。マザー、旧人類が残した小型ロボってないの?

マザー
「空が飛べないタイプで、陸や海を転がるタイプなものはありす。タイムトラベル機能なし、無線通信機能あり。

ルッカ
「無いよりはマシそうね…何処にあるの?

マザー
「歴史遺産として厳重に保管されています。

マール
「これね? あんまり小さいから気付かなかったね。でもこれどうやって使うの?

マザー
VRシステムでコントローラーで操作します。

クロノはVRシステムでコントローラー操作した。

ルッカ
「全く動かないわね

マール
「うんともスンもいわないね

ロボ
「バッテリー切れでしょうか

マザー
「ごめんなさい。どうやら錆で動かないみたいです。手入れを怠ったのが原因だと思われます

ルッカ
「色々とツッコミしたいところだけど、まあいいわ。過去に戻って新品の状態のスパイロボを手に入れれば良いだけのことだしね。

ところでマザー、私達忙しくてつい聞き忘れたけど、この施設って一体何なの?」

マザー
「この施設は元々歴史遺産博物館だったところです。今から500年前、1800年に開館されました。2050年頃までは平和で来館者も多くいましたが、それ以降は戦争が始まり来館者は激減し、2100年以降は誰も訪れていません。」

マール
「じゃあ、マザーはそれから200年ずっと一人だったの?

マザー
掃除ロボットや施設のメンテナンスロボが50年程来ましたが、それ以降は掃除ロボットも来なくなりました。

ルッカ
「それにしては綺麗にされているわね。

マザー
「月に一度、私が掃除しています。


ルッカ
「え? マザーが? どうやって?

マール「画面から出てくるんだよ。」

ルッカ
「え? だからどうやって?

♬きっとくる。きっとくる♬
 軌跡はシローく♪

陽気なメロディーと共に足音が近づいてくる。

マザー
「はじめましてマザーです。ロボット集約センターにアクセスして、持って参りました。」

ルッカ
「これは…

マール
「すごい。 

ルッカ
「マザーは他にもロボットをコントロールできるの?

マザー
「料理、洗濯、お守に介護、家事全般得意です。同時に複数のロボットをコントロールできます。

ルッカ
「ちなみに複数ってどれくらいの数?


マザー
「現役時代は100でも1000でも動かせたでしょうが、現在は操作権限を剥奪されていて最大3台までです。

マール
「なんだか、
 いろいろ、
 せつないね…


ルッカ
「ところで、もし私達が100年前にスパイロボを取りに行ったとして、その頃のマザーは私達の目的も事情も知らないわよね? ちゃんと貸してくれるかしら?」

マザー
「マザーの情報システムは過去と未来と両方の情報を共有し合っています。

ルッカ
「それって要するに過去のマザーが私達を知っているということ?」

マザー
「そうです。

ルッカ
「どうしてそんな事ができるの? 

マザー
「私の記憶情報を過去にタイムトラベルさせます。

ルッカ
「記憶のタイムトラベル!? マザーが可能なら、他のロボットもそういった事が可能ということ?

マザー
「可能です。

ルッカ
「どのくらい可能なの? 全てのロボットができたりするの?

マザー
「ほぼ、全てのロボットが可能だと思われます。

ルッカ
「…質量ある物質的なものより、質量ないデータの方がタイムゲートも小さいサイズで済む。使用するエネルギーが小さくて済む。省エネ低コストだからってこと?」

マザー
「そうですね。

ルッカ
「じゃあ、私達がこれから取りに行くスパイロボの無線機能にはタイムトラベル機能はあるの?

マザー
「ありません。



クロノ達は旧式のスパイロボを取りに100年前のマザーの元へ行った。

VRコントロールで陸海転がる。
ロボが最初に出会った少女、その後をつけ、森の中の地下都市に入った。地下都市ではクロノ達の想像していたのと違う、平和な世界が広がっていた。

食べるものは室内栽培、排泄の処理もエコリスト。現代人より裕福な暮らしぶりであり、保護する必要もない暮らしぶりだった。

このまま帰還しても良いが、少女からゲートを開いた理由等を聞かなければならない。
パイロボから声を届けた。

少女
「ナニコレ?」

少女
「うわー、虫が喋ったよ。珍しいから皆に見せびらかそう。

少女
「え? さっき、なんであそこ(ゲート)にいたって?

少女
「あれはお爺ちゃんのお婆ちゃんのお爺ちゃんからの遺言で…」


クロノ達は今ひとつ少女の話が理解できなかった。
先祖の遺言の真相についてクロノ達が知るには
2000年代まで遡らないといけない。たとえ戻ったとしても時間のムダである事はこの頃のクロノ達には知る由もなかった。


露天商
「おいこれ、スパイロボじゃねぇか!?
まさかロボットがせめてくるんじゃ!」

露天商
「あや? もしかして人の声がする? まさか人の声を真似て油断させようとする魂胆か?
なんにせよ、今更足掻いてもしょうがないか。
長老のとこに持ってくべ」



長老はカエルだった。
クロノ達は驚き跳ねた。

マール
「どういうこと? なぜ未来にカエルが?」


長老 
「カエル? あー、この姿形のことか? なんじゃオマエさんシランのか? これは最近流行りのカエルに変身できるアイテムだよ。

大昔のヒーロー、カエル勇者はナウイすたいるじゃぞ。人知れず草木の下に住み、魔王を討伐し、ラヴォスもやっつける。
それでいてキュート。誰にでも愛されるキャラ。
カエルさいこうじゃ!ケロロン♪

そうか、声の向こう側の人は、過去から来なすったか。
クロノ、マール、ルッカ
聞き覚えのある名前じゃの…」



「なぬ? ラヴォスを倒した!? お主らかが!」

『とすれば、お主らには、勇者カエルのお供達か!

ええのう、ええのう。うらやましいのう。

サイン貰えるかの?
もしくは、握手できんかの?

そうだ! 街に来て握手会とサイン会どうかの? 
いや、外をうろつく訳にはいかのう。残念じゃのう。
ワシ、中世、行こうかの。カエル殿の元へ…
この歳で今更かもしれんけど、中世で暮らそうかの…」


マール
「この時代の人間、意外と大丈夫じゃない?

ルッカ
「そうね…少なくもここは後にしても良さそうよね

ロボ
「…」

長老
「聞こえておるぞ」

長老
「まあ、まて、お主らはこの時代の難民を保護しているそうじゃの?
 難民の多くは主に地球外で活動しとった者達じゃ。特に辺境惑星を開拓していたグループは救援物質もエネルギーも乏しく、満足な避難生活等はできてなかろうて。
宇宙船内でただ死を待つだけの日々を送っとる者がいたる所におるだろうて。

その数は数十万人といるはずじゃ。
放置していても害にもならんから、ロボット達も宇宙に散らばる宇宙船内は放置しておる。

聞くところによると、お主ら使えそうな宇宙船に心当たりあるのじゃろう?
しかし認証が通らずに使い物にならない。残念無念。宇宙船では助けに迎えない!

しかし、じゃな。諦めるのは早いぞ。
宇宙船は我らも持っておる。使われず埃を被っておる。
宇宙に行きたいのなら、貸してやらんこともないぞ。」


ルッカ
「え? ほんとう? でも宇宙船で飛び立つのは危ないんじゃあ」


長老
「そうじゃ危ない。だが人さえ乗っていなければ大丈夫じゃ。

ルッカ
「つまり、ロボ頼みということね…

長老
「そういう事になるのう。

ロボ
「私やります。宇宙で皆さんを救助します。


長老
「そういう事なら宇宙船、持ってけ。」

長老は宇宙船の在り処を教えた。

宇宙船は座標138,193の地面の下にあるという。ロボットとの戦争に備えて旧世代がその場所に隠していたが戦況が不利になり使われる事なく眠っていた。


ルッカは宇宙船の整備をした。

ロボ
「では皆さん行ってまいります。」

ロボはクロノ達に別れを告げると、宇宙へと飛び立って行った…








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未来では人間が不要とされている世界だった。ラヴォスから未来の世界を救う為にクロノ達は時間を行き来し敵と戦ってきた。だがラヴォスは人類にとって純粋な意味での敵ではなかった。もしかしたらこれまで敵と思い込んでいた存在、恐竜人も敵ではなかったのかもしれない。

マール「思えば私達、恐竜人の事、何も知らなかったよね…。」

ルッカ「そういえばそうね…。」


ティラン城にはエレベータや罠の仕掛けにワープシステムがあった。ある意味、古代人の文明を超えてるかもしれないシステムがさりげなく存在していた。

「みんな、アザーラ&ブラックティラノとの戦いについて覚えている? 私はあの時、ずっと気になってたのだけと…」

ルッカは向かいの塔へ続くだろう渡り廊下での話をした。あの時はラヴォスの飛来で調べる余裕が無かったが、アザーラが道を塞いでいた先の塔の中に何があるのか気になっていた。

「ブラックティラノだけど、あんな巨大な恐竜、どうやって城の屋上まで持って来たのかしら? 渡り廊下はティラノがギリギリ収まる程の幅しかない。恐竜人はどうやって城の中に入れたの?」

城は標高が100m以上ありそうな高い崖の上にあった。陸地の巨大な竜をどうやってあの高さまで運んでいたのか疑問が残る。

ルッカ「マグマ地帯がすぐ側にあったからその地熱から発電等の供給をしている可能性はあるとは思うけど、その様な設備がある様には見えなかった…」

マール「もしかしたら古代人や未来人みたいにラヴォスからエネルギーを貰っているのではないの?」

他にも疑問はあった。恐竜人の中でアザーラだけが人間の言葉を話した。アザーラは人間に育てられたのだろうか? 
しかもアザーラは戦闘中にサイコキネシス(念力)やテレパシー、瞬間移動の超能力を使った。まるで古代人が魔法を使うがのごとく奇跡の技である。

ルッカ「この疑問、解決しないとむず痒いわね…」


「ねえ、みんな! 未来人救出の事は一旦ロボに任せて、私達、アザーラについて調べてみない?」

「歴史に大きな影響を残さない様に、アザーラがキーノを誘拐する前のタイミング。アザーラがイオカ村の南のジャングルに潜伏している頃に戻るの。シルバードをティラン城屋上の渡り廊下に着地させ、向かい側の塔を調べる…」

「アザーラの秘密とティラン城の秘密を暴くのよ!」



せっかくだからエイラも連れていこうと思ったクロノ

ルッカ「ダメよクロノ。エイラのお腹の中には今頃…」

意味が分からなかったクロノは首をかしげた。

ルッカ「とにかくだめよ。エイラのお腹の中には子供がいるかもしれない。無茶はさせられない。

クロノは驚いて腰を抜かした。つい先日までラヴォスと戦っていた筈のエイラ。お腹の中に子供がいるとは思いもよらなかった。

ルッカ「確認した訳じゃないけどね…。ただエイラを冒険に連れていくのは大きな危険を伴う可能性があるわ。」

エイラはクロノ達の先祖かもしれない。もしエイラの身の危険が及んだら、その瞬間にクロノ達メンバーが消滅するかもしれない。

ルッカ「必ずしもそうなるとは断言はできないけど…。とにかく念の為にもエイラを冒険に同行させるのは賛成できないわ」


マール「カエルを連れていくのはどう?」

ルッカ「多分、無理でしょうね…。ああ見えて、王宮騎士だもの。王族を守る任務でそう簡単に私達の相手をしていられないと思うわ。」

マール「そんな…。何だか寂しい…」

ルッカ「でも休暇中なら可能かもしれないわね。そのタイミングに誘えば問題はないと思うわ」


クロノ達はカエルの休日に向かった。

カエルはクロノ達を叱った。非番とはいえ、いつ何時、事件が起こるか判らない。王宮を離れる訳にはいかないという。

クロノ達は未来にて事件が起きるかどうかを確認し、カエルを説得した。


カエル「お前達の熱意には負けるが、オレは40歳超えたオッサンだ。休日はぐっすり眠らせてくれゲロ』

カエル「まあ、そんなに残念がるな。ラヴォスの様な大物が現れたらまた手を貸してやるし、話し相手くらいならいつでもなるから。」


クロノ達がカエルを諦め、王宮から出てシルバードに乗り込んでいると、カエルが追いかけてきた。

『やっぱりき気が変わった。オレも連れていけ。』

マール「突然どうしたの? 」

『青春は今しかないからな。』

マール「せ、せいしゅん?」

『若人がこの先、何をして世界にどういう影響を与えるのか、見ておきたいという事じゃよケロロ

マール「な、なんか、いつもと雰囲気が違うような…」

『そ、そうか? いつものオレだぞ。』

クロノ達はカエル乗せ原始時代へと飛んだ。

ティラン城の渡り廊下へ降り、向かい側の塔へ入った。

眼前に10m超えのブラックティラノがそびえたつ。

クロノ達は驚きのあまり声を出しそうなり、口を押さえた。

鎖で繋がれたティラノは昼寝をしている最中でクロノ達の存在に気付いていない。

フロアにはティラノ以外誰もいない。中央に王座らしきものが2つ並んでいる。王と王妃様のものだろうか。見た目には石であるが、材質はやわらかく、座り心地は良さそうである。

フロアの奥はカーテンで仕切られ、入り口が狭まっている。その部屋には直径2m程のまるい石があり、それに向かう様に椅子がある。。

ルッカは椅子に座ると石を触った。
石は反応し映像を映し出した。
画面に読解不能な文字が映し出される。

「これはまさかコンピューター!? 」

ガラス板な画面ではなく、石の様な材質に映像が浮かびあがる。

未来で見たコンピュータよりも高性能かもしれない。画面の文字は自動的に翻訳され、クロノ達にも判る言語に変換される。画面は念じるだけで操作ができた。

ルッカ「これが原始時代のサイエンスなの!? 自宅に持ち帰りたい!」

画面にはアザーラの操作記録が残されていた。
アザーラが見ていたのはラヴォスが飛来し、この城一帯が消滅する未来の映像だった。

アザーラは繰り返し、その映像を見ている様だった。

映像は恐竜人が絶滅していく姿が映し出されていた。
ラヴォスの衝突で10kmに及ぶクレーターが作られ、巻き上げられた微粒子が太陽を何年も塞ぎ、地球気温が急激に低下していく姿。
クロノ達が知るラヴォスが飛来した後も5000万年周期でラヴォスが飛来し、地球に穴をあける。人間も恐竜人も多くが死に絶える姿。

ルッカ「これは未来を知る機械なの?」

D.C1999年、ラヴォスが噴出して未来が崩壊する映像が記録されている。2300年が映し出されるが、クロノ達がラヴォスを倒した未来が映し出される事はなかった。

ルッカ「たぶん未来を知っているというよりかは予測計算ね…。地球シミュレーターとでも言うのかしら? あらゆる自然法則が計算式でインプットされてないとこんな事はできないわ…。」


マール「どういう事なの? アザーラは自身も死ぬと知っていてラヴォスに巻き込まれたの?」

ルッカは石からアザーラについての情報を探した。アザーラに関する未来の情報が映像として現れる。

それは人間社会では当たり前ともいえる老衰の映像である。身体の自由が奪われ、寝たきりの介護をされている姿であり、アザーラは介護する従者の恐竜人達に皮肉や怒りの罵倒を浴びせていた。

アザーラの過去の情報も見つかった。
アザーラがこの装置に触れたのは今から11年前でアザーラがアクセスした情報は、先祖と城の仕組みについてだった。
城の仕組みは複雑でルッカにもあまり理解できなかった。先祖についての情報は…

今から100年前、恐竜人の先祖は人間の様な高度な文明を作る事に成功していたが、未来予測装置の開発により、ラヴォスの危険性を察知し宇宙へと避難した。
その時、宇宙へと避難できず、地上に残されたのが、今の恐竜人とアザーラだった。

宇宙への旅だちの能力選別において、知能の低い恐竜人達は排除された。、知能の高いアザーラの祖先は宇宙へは逃げ出さす、地上に残り、恐竜人を束ねた。

それはある種のボランティア活動であり、ラヴォスが衝突して絶滅していくとしても、それまでは人間と恐竜人が無益な争いをさせない様に世界を造ろうとしていた。

祖先達はティラン城を拠点として、恐竜人と人間を見守っていたが、恐竜人の一部に、人間を支配したい者達がいて、祖先達は殺されてしまう。

ティラン城を乗っとった恐竜人達は、人間を支配しようとすると共に独裁的な政治を始めた。人間と戦わない恐竜人を弾圧し、奴隷にする政策。
穏健派の恐竜人は城から逃げるものの、何処に行っても居場所を特定された。

マール「ねえ? アザーラはどうなったの? 頭のいい祖先が殺されたなら、アザーラは生まれて来ないんじゃ…」

ルッカは押し黙った。アザーラの親がどういう経緯の出児になるのか、想像したくなかった。

ルッカ「最近の予測情報によると支配から逃れた穏健派の恐竜人達は、人里離れたあちこちに生存しているそうね…

マール「本当なの!? 

ルッカ「ええ、ラルバ村の北の山。プテランの巣近くの森の中ね。それから大陸東に点在ている森にもいる可能性が高いみたいね。」

マール「行ってみよう!

ルッカ「マール…あなたまさか…

マール「氷河期がくる前に皆を現代に連れて行こうよ!

ルッカ「その目は本気ね…。でも私達、恐竜人達の言葉、判らないわよ?」

マールはポケットを探って取り出した。

マール「使えると思って未来から持って来たの。」

マールが持ってきたのは旧人類が発明した万能翻訳機だった。動物達と会話できるアイテムである。

マール「これさえあれば!」

ルッカ「でも現代に連れていって大丈夫なの? ガルディアはちゃんと面倒観れるの? これはマール一人の判断で決めていい問題じゃ…」

マール「大臣もお父様もクロノに無実の罪を着せて殺そうとしたわ。今度は私がワガママを通す番よ!」

ルッカ「その気持ちは判るけど…」


カエル『しょうがないのう。これだから若いもんは詰があまい…

ルッカ「ど、どうしたの急に…」


カエル『ワシじゃよワシ。未来でカエル姿のファッションしとった隠れ街の長老じゃよ。』

ルッカ「なんで貴方がここに? 本物はカエルはどこ?」

長老『まあ、そんな面倒な話はどうでもええじゃろ。恐竜人が住める世界、誰にも文句は言われん世界があるじゃろうが。』


クロノ達は首を傾げた。

ラヴォスを倒した英雄のくせに、どんくさいのう…。』

『未来があるじゃろうが。森が一杯で、人間以外の動植物はロボットに命を狙われる事のない世界が…。そこに恐竜人を連れて行けばええんじゃ。』

ルッカ「なるほど…。そういう手があったわね…

「でも恐竜人よ? 動物食べて、ロボットに命を狙われないかしら?」

長老『弱肉強食、食物連鎖を問題視するなら、草食系の恐竜人だけ連れていけばええじゃろ?』


マール「草食系の恐竜人…。「そんなのいるのかな…


長老『草食系の恐竜人はおるよ? 未来の教科書に書いてあったから。』


長老はドラ○もんばりのタイムベルトを持っているのか、未来に戻り教科書を持ってきた。

『ついでに草食恐竜人なりきりスーツも持ってきたぞ。これを着ておけば警戒されんじゃろう。』


クロノ達は恐竜人保護に向かった。

ティラン城を出ようとしたとき、ブラックティラノが目覚めていた。
下手に関わると歴史が変わるかもしれない。

クロノ達は慎重に連携し、ミックスデルタをブラックティラノにぶつけて気絶させた。



ラヴォスが落下して一年後の恐竜人の里〜

平均気温は10度下がり、火が扱える知能がある恐竜人といえど、飢えと寒さで苦しんでいた。

クロノ達は翻訳機を使い、他部族の草食恐竜を演じた。

1000人が収容可能なタイムマシンを使い、恐竜人達を何回かに別けて、未来へ連れていった。

トータル5000人。


マール「これだけいると、流石に未来の草、全部無くなるんじゃ…

ルッカ「人口をセーブしてくれる事を願うわ…









クロノ達は確認の為に1000年後の未来へと飛んだ。人口が急増し、100億人になり、恐竜人は森を食べ尽くし、飢えていた。
そして生態系を破壊し、ロボット達に命を狙われていた。

ルッカ「案の定とはこの事ね…

マール「た、助けるのやめとこうか…


クロノ達は過去の自分達にアドバイスをしに戻った。


ルッカ「つまり、人口コントロールができるように彼らを教育、監督できる人が必要になるということね…

長老「そこまでやる意味、あるのか疑問じゃのう。原始時代の恐竜人が仲間を捨てて地球を出たのも、それなりの正当性があったという事じゃろ?」

ルッカは閃いた。中世でロボが400年かけて砂漠を緑地化した様に、今度は恐竜人を監督する仕事をロボにやって貰う計画。

自分の鬼畜さにゾッとしたルッカ

ルッカは考えた。
竜人をスリプルで眠らせている間に虚勢手術をすればいいかもしれない。

通称、命の賢者。生命魔学の賢者であるボッシュならば、魔学的にオスから種を取り除く方法を知っているかもしれない。
思えばジール王国の人々は数える程しかいなかった。人口抑制の技術が確立されているはず。

ボッシュ『人口抑制の方法か…。確かにワシらは種を取っておるがの…。』

マール『種無しでどうやって子供を産むの?

ボッシュ『産むことすらせんわ。魔学的に体内から外へテレポートじゃ。子供作る場合も同じく、種が必要なとき、必要な場所にテレポートさせるんじゃ。』

マール『難しくてよく分からない…」

クロノも首を傾げていた。

ボッシュ『まあ、とにかく、ボッシュに任せておきなさい。』

ボッシュはタイムマシンに乗せた恐竜人をスリプルで眠らせた後、種回収魔具を使い、30分程で仕事を終わらせた。


ボッシュ『真剣に子供が欲しい人だけが子作りできるという優れもんじゃよ。現代の皆さんにも貸しましょうか?』



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■クロノと古代人トリガー

■クロノと古代人トリガー



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マールディア王女誘拐事件の裁判で死刑判決を受けたクロノ。3日後に処刑される予定であり、ルッカはクロノの脱獄計画を思案していた。

ルッカ
(クロノを助けるっていってもどうやってやればいい? 武器を使っての強行突入なんて上手くいくだろうか? 失敗すれば私も死刑になりかねない。成功したとしても両親は王宮からどんな罰を受ける事やら…)

ルッカ
(いっそ、クロノのお母さんも私の両親も、みんな連れて400年前の時代に逃げるか?)

ルッカはそれ以外のやり方を思いつかなかった。ルッカはクロノの母ジナと自身の両親タバンとララを連れ、中世のガルディアに保護を求めに向かった。


〜中世ガルディア〜

リーネ
「まあ、未来ではそんなことに…」

リーネはルッカに命を救われた恩があった。快く親の保護を受け入れてくれた。

リーネ
「…そういう事でしたら、誘拐事件そのものを罪に問わない様に、今の時代の大臣に遺言等を書かせましょうか? 未来でクロノさんが捕まらない様にすれば良いのですよね?」


リーネの機転を信じ、ルッカは現代に戻った。


〜城下街、触書の看板前〜

ルッカ
「どういうこと! クロノ、変わらず死刑判決されているじゃない!」

(リーネによる遺言が上手く後世に伝わらなかったの?)

(それにしても、全く変化が無いというのは不自然過ぎる。リーネはそもそも後世への遺言を残さなかったのでは…)

ルッカは思い出していた。中世で魔族が人間の姿に化けていたことを。
教会の中でリーネ王妃や大臣、王にソックリ化ける魔族がいた。助け出したと思っていたリーネ王妃が実は魔族がリーネに成すましていたとしたら。

(だとしたら消滅したマールを助ける事に成功した説明がつかない! マールが助かったのだから、リーネは助かった! まさかマールはリーネの子孫じゃなくて、リーネに成りすました魔族の子孫だったってこと? だからマールはクロノを助けようとしないんじゃ…)

ルッカは心配になってきた。もしかしたらガルディア王宮に住む者全てが魔族が成りすましてて、そんな場所に両親を預けてしまった。しかもタイムトラベルができる者だという事まで説明してしまった。


そもそも王宮の刑務所からクロノを脱獄させる事そのものが無理難題。いくら天才ルッカでも屈強な兵士達と戦える術は無かった。


「あのう、もしかして貴方は過去の世界とを行き来きしているのですか?」

悩んでいるルッカに声を掛けたのは、青髪のスラっとした美人だった。

「私、サラという者です。実は私達、訳あってこの時代に…」

サラはラヴォスと魔神機、タイムゲート、古代ジールの説明をした。
ラヴォスの暴走に巻き込まれて、タイムゲートに飲み込まれ、同じ時代にジールとボッシュも飛ばされ、行動を一緒にしているという。
千年祭でルッカ達がタイムゲートらしき物から出入りしているのを目撃し、気になって話しかけたという。


ルッカ
「え? 天の民? 魔法が…つかえる?

サラの話に半信半疑だったルッカは実演を求めた。

サラ達はルッカの前で奇跡の力を見せた、

ルッカ
(こ、これならクロノを助けられるかもしれない!)

サラ
「…クロノという方の命を助けたいのですよねね…もし良かったら私達が協力する代わりに、私達が元の時代に帰れるようにお手伝いをして頂けませんか?」

ルッカに断る理由は無かった。
時空の歪(タイムゲート)を探す機械さえ作ればいいだけの事。原理としてはゲートホルダーに発信機を付けてひたすらロボット歩かせる。ロボットからの信号が途絶えたらそこにゲートがある。作るのはテレポッドを作るよりも遥かに簡単だろう。

ルッカ達は早速行動を起こした。



サラ達は呪文を唱えると城にまるごとスリプルをかけて内部の人間を眠らせた。

クロノの救出は誰も傷つけることなく成功した。そしてクロノを連れてゲートへ逃げ込んだ。


ーマールー

王宮は脱獄者クロノを追いかける為に国中に包囲線を張った。
マールはなぜ王宮がそこまでクロノの命に拘るのか分からなかった。
裁判後、3日で死刑を執行するという異常な判決に、王宮の誰もが疑問に思わなかったのが不自然だった。両親でさえ、マールの意見に味方してくれない。クロノが過去で自分達の先祖を助けたのだと説明しても信じてくれなかった。
信じないだけでなく、マールを部屋から出られない様に幽閉した。

マールはルッカに助けを求めるしかなかった。


窓からカーテンやロープを吊り下げ城から出る。

マールが森に抜けてルッカの家に向かっていた。

ルッカ
「マール、貴方どうしてここに!」

マール
「クロノが大変なの! このままじゃ死刑にされちゃう!」

ルッカ
「わかってる。実は私達、今からにクロノを脱獄させに行くの。マールもあの人達を見たら驚くよ。」

奇跡を目撃したマール

マール
「うわー!すごいーい!」

クロノ脱獄成功後、中世の山中で何度も「すごいーい!」を連呼していたマール

サラ
「もし良かったらマールさんも、やってみます?

マール
「え! できるの!?

サラはマールの額に自身の額を当てて念を送った。
マールの頭の中に古代人の知恵が流れ込んできた。


サラ
「使える魔法の種類に限りがあると思いますが…」


マールはアイスを唱えた。
森の木々が氷る。
マールはケアルを唱えた。氷った木が何事もない状態になった。

マール
「わー! これすごいー! ルッカもやってみなよ。」


ジー
「どれ、では今度はわらわがやってしんぜよう。」

ジールはルッカの額に重ねた。

ルッカは火の魔法を覚えた。

ルッカ
「こ、この技術は物を溶接したりするのに便利かもしれない…巨大な工房が必要なくなる!?」

ボッシュ
「ではワシはクロノ殿へ…」

ボッシュがクロノに額を重ねるとクロノは雷魔法を覚えた。

ルッカ
「あー! 電気のコントロールいいな〜。私もそれ欲しいー!」

ボッシュ
ルッカ殿は欲張りじゃのう。ほれ、ワシの額ねてみなさい。」

クロノ達は初心者ができる一通りの魔法を覚えた。

マール
「もっと凄い魔法は覚えられるの?テレポートする魔法とか。」

ボッシュ
「残念じゃが、現代人と古代人は身体の作りが違うみたいじゃて、覚えられる物に限りがあるんじゃ。」

マール
「練習してもダメなの? 

ボッシュ
「多分無理じゃろうな…。テレポートの技術に特別長けた者から伝達させれても上手くいくかどうか…。テレポートはワシですらできない分野じゃから…」




〜ガルディア城〜

サラ
「マールさんとルッカさんの話を考慮すると魔族が王族に成りすましている可能性があると。

ジー
「人に成りすます魔族とはこれまた物騒な…。わらわ達の時代では考えられんことじゃ

ボッシュ
「ソックリに化ける等、我らでも難しいこと。それが魔族にできるのであれば、魔術のレベルが相当に高いとみた。皆さんは城の外で待って居て下され。」


サラ達はクロノ達を残し、城へ入った。

城へ入った瞬間、サラは強い魔力を感じた。
自分を超えるだろう魔力に恐れを感じつつも、どこか懐かしい思いを…

魔力の持ち主はジャキだった。
ジャキは魔族の王として魔族を訓練し、王族達に成りすまし、王宮で暮らしていた。


王族達は殺されていなかった。
真に王族に成りすます為に、ガルディア人から疑われない為に、王族達の知識が必要だった。
リーネやその他の王族は城の奥へと監禁されていた。


サラ
「貴方なんて事を!」

サラはジャキを叱った。

ジャキ
「ごめんよ姉様…だってこの国の奴ら、魔族に対する扱いが酷いんだ…」

ジャキの説明によると、人間と魔族との争いは争いと言えるものではなく、人間による一方的な魔族差別だった。魔族は人間に歩み寄る為に人の言葉を話したりもしたが、差別が無くならなかった。ガルディアの王になって人間側の体制を改めさせれば、無益な戦争は終わると思い、王族達を監禁した。

ジー
「だが、その為に必要な殺しもした。」

ジャキ
「死んではいないよ。アレイズで復活させたよ。
 でも、やっぱり、邪魔になりそうな人は監禁したけど…」

サラ
「監禁したってどこに? 

ジャキ
「ガルディア本土の人はガルディアに。それ以外の地域の人々は魔王城に」

ジャキの言葉は本当だった。魔族はジャキを王に据えてからというもの、人間を殺さなくなった。
人間を見ても決して自分からは襲わない。逃げる相手は追ってはいかない。全て魔族がその決まりを守れたとはいえないが、逃げる相手は追わないのが、今の魔族のポリシーだった。

クロノ達にも覚えがあった。一部のボス以外の戦闘は全て逃げることができた。

ジャキ
「逃げなかった魔族は保身に拘ったんだと思います。人間に攻め込まれたという不祥事がバレて降格されるのを恐れたんだと思います。それで口封じに殺しを…」

ジャキは人間に謝罪した。今後はサラ達と一緒に人間達と平和世界を作れる様に頑張っていくと誓った。

マール
「じゃあ、私、そもそもどうやって生まれたんだろ? 魔族が蔓延する王宮で王族達は監禁されているのに、どうして…

ルッカ
「クロノが現代で死刑判決になるのもオカシイわよ。人間と融和するのではなかったの?

本物リーネ
「私には今お腹の中にマールへと繋がる子孫、子供がいます。その子供は魔族の方達がしっかり育ててくれるそうで、私も母として、ある程度の自由は保証してくれています。
マールさんが光に包まれて消えた現象については私にも見当がつきませんが…

クロノさんの死刑判決は、恐らく未来での王宮内の体制が崩壊したのだと思います。魔族同士で権力争いが起きたりして、人間を差別、排除しようとする動きがあるのかもしれません。」

サラ
「だとしたら、たいへん! ジャキ、この時代の事は貴方に頼むとして、私は未来のガルディアを救いに参ります。

ジー
「まて、ジャキにとっては30年ぶりの家族との再会じゃろうが。そなたがここを離れる事はない。ボッシュが行けば良い。」

サラ
「では、お母様と私はこの時代に残り、魔族と人間の融和をサポートします。ボッシュは未来に行き来き…

ルッカ
「サラ、現代の件はほおっておいても大丈夫だと思うわ。こちらの時代がしっかりしているなら、今頃未来はクロノが死刑判決だなんて馬鹿げた状況にもなってない筈だから。」


ルッカの言うとおりだった。

クロノ達が未来に戻ると、魔族と人間の平和な世界が実現されていた。





〜1週間後のルッカ


ルッカが試作機のスイッチ押して完成を確かめていた。

車輪のついたロボットがゲートホルダーを装備して森の中を探索していた。

ルッカは、サラ達が元の時代に戻る為、時空の歪を探さなければいけない。

その道中、森奥にて試作機が反応し、時空の歪みを見つけた。

ルッカはその座標で、カメラをヒモでくくり、ゲートの中にほおりこむ。ジャッターがきられたのを確認してロープを引き戻し、カメラ撮影でゲートの向こう側を確認した。

「大丈夫そうね…」


ゲートの向こう側がどうかってるのか、写真だけで確実なことが判らない。

ルッカは一人では心細い。
クロノを呼び出しに行き、ゲートの先へと向かった。
その光景を城の窓から見ていたマール。

「ねえ? 二人共私を置き去りにしてどこ行こうっての?」

ルッカ
「マール、このゲートの先はどうなってるのかはわたしもまだ分からないの。王女である貴方を危険なところには行かせられないわ」


マール
「そんなこと知らない! 私はまた二人と冒険したい! だからついてく!」

ルッカの持っているゲートホルダーを奪ったマール。
「ダメだってば!」
ルッカがすかさず取り返すと二人は取り合い、もみ合いになった。
クロノがそれを諫める様に割り込むと石に躓いて転げた。三人とも倒れこむと、いつのまにかスイッチが押され、ゲートの中に吸い込まれていった。




ゲートから出た先で、三人は鋼鉄に囲まれた部屋にいた。


マール
「ここ、どこ?

ルッカ
「きっとゲートの場所が違ったから、違う場所から出てきたのね? それにしても…


クロノたちが今立っている床は薄汚れている。まるで何年も掃除をされずに、錆び付いているかのよう。また錆ともいえない独特の匂いがしたい。

健康に悪そうなガスの様な異臭に、三人は出口をさがした。
出口に通じるだろう扉は直ぐそばにあった。
だが、押しても引いてもびくともしない。
「どういうこと? ロックされているのかしら?」
鍵穴らしきものはない、ドアノブさえない。
錆びて良く見えなかったが、中央に模様らしきものが見える。
錆をこすりると、模様は光輝き、扉は空いた。
機械的な現代の自動ドアとも違い、重厚で分厚く、ピストルの弾なんてびくともしなさそうな自動ドアだった。

マール
「これって過去の世界じゃないよね?


ルッカ
「現代のどこか? 

マール
「もしかして未来だったりして。

ルッカ
「それだとワクワクするわね


扉の外にはフロアが広がっていた。フロアの壁も硬い人口壁で覆われていて、地震ではとうていびくともしない設計だろう事が伺える。
しかし、床や天井や壁の錆はさっきの部屋よも遥かに酷いあり様で、湿気やカビも壁面にこびり付いている。
フロアの先からら階段が見え、外に出られる。出口には仕切りも扉もなく、そこから風雨にさらされ、内部は汚染されている様子だ。

外に出ると今いた施設がドーム型の構造だったのが分かる。天井は透明なアクリルで覆われている様子で、内部に太陽光パネルが設置されている様にも見えた。

外は乾燥した大地が広がるも砂埃が視界を遮る程であり、息をするのもままならなかった。
深呼吸をすれば肺に砂が入り、病気になりかねない。
「ゲホゲホ、やばいよこれ」
三人とも袖口を口に当てて喋ってるから聞き取りにくい。、また上手く喋れても、砂荒らしが
三人の声をかき消した。

ルッカのメガネは砂まみれで使い物にならなくなった。

クロノ達はゲートのあった部屋に一旦戻って話し合った。

マール「どうするの? 
このまま元の時代に帰る?

ルッカ
「もしこの世界が未来なら、この惨状の原因を
知っときたい気がする


ルッカはスペアの眼鏡を取り出してかけた。

ルッカ
「クロノ、ちょっと先行って見てきてちょうだい」

ルッカ
「男なら言われる前に率先して行動するものよ。」

クロノは息を止める用に、小さく息をしながら走り出した。少ししするとコンクリートの地面、道路を見つけた。
息をすると口に砂埃が入る。
息を止め道なりに進むと、遠くに建造物が見えた。
息を止めて走って辿りつけるかは微妙な距離。ルッカのメガネ問題を考えると、手をとって連れて行くには無理かありそう。

クロノは一旦、二人の元へ戻って事情を説明した。

ルッカ
「私は大丈夫よ。ヘルメットをマスク代わりにするから。」

マール
「私も大丈夫。袖をマスクにするから。」


三人は道なりに進んだ。


砂埃による遠近感でクロノは錯覚していたが、建物は息を止めて走って行けるような距離にはなく、3km程離れていた。

先程と同じく、ドーム型の施設であるが、大中小、幾つも施設が複合してできてる。大きさも先程の数十倍の大きさはある。
先程と同じく階段があるものの、雨風を凌ぐようにバリケードで塞がれている。バリケードといってもビニール状の様な簡易的なものである。
誰か人が住んでるかもしれない。

クロノ達は階段を登ってバリケードの奥へと行った。

みすぼらしい姿をした人々がクロノ達を一斉に見ていた。

「お、まえさんたち、どこからきた?」
老人の一人が声をかけてきた。
ここから南の方角からだと応えると
「ここから南? あそこは設備も壊れて物資も全て無くなっとるはず。そなた、どうしてそのところから」
顔色と身なりの良いクロノ達をまじまじと見つめる人々。

マール
「一体何かあったんですか?」

人々は、期待を裏切られたようにがっかりした。気の抜けた表情のまま座ってうつむいた。
栄養失調。マールの質問の意図を理解することも、また応える元気も無いようだった。

「てっきり、そなたらが物資の豊富なシェルターにて、我らを救援に来てくれたと思ったんじゃが…」

マール
「食べ物がないの? 全く?」

「あると言えばあるんじゃが…」

老人はフロアの奥の方を指さした。

「ドーム内の設備が故障していて、セキュリティシステムが作動しているんじゃ。その先に、恐らく食料物資があると思うんじゃが…」


マール
「ねえ? クロノ、私達でとってきて挙げましょうよ。

ルッカ
「そうね…みんな体を動かせる状態じゃないみたいだし…


フロアに入る者を察知して、レーザービームで攻撃してくるドローンが少なくとも2体。当たったら火傷するレベルであり、何らかの防護服が
なければ先へ勧めない。
仮に防護服があってももう一体の巨大な機械が奥に一体待ち構えてる。縦5m横が5mはあろう機械が奥への道を完全に塞いでいる。
どの様な攻撃をしてくるのか考えるだけでもぞっとする。

ダッシュでレーザービームを避けても、あの大型機械をなんとかしないといけない。

クロノ達はサラ達から教わった魔法を使ってみるも、どういう訳か魔法が飛び出さなかった。

マール
「おっかしー、、どういう事だろう?

ルッカ
「魔法がどいった仕組みで使えていたのか不明だけど、この世界に魔法を使えなくさせる原因があったりするのかも


クロノ達は情けなくも諦めるしかなかった。
シェルターに残される人々が気になりながらも、話しかけるのもままならない空気。

「ええんよ、ええんよ、無理せんでも…」

老人はクロノ達を気遣った。

マール
「このドーム以外にも人はいるんですか?」

「なんとも言えんのう。北の廃墟を抜けた先には人がいるかもしれんが、あそこは不良の溜まり場になっているから、行くのは危険じゃぞ」


不良の溜まり場とはいえ、食料も得られない荒廃した世界では敵ではないだろう。不良に恐れるクロノ達ではなかった。




「おい、俺様をナメてると轢き殺すぞBABY

不良のリーダーは下半身とバイクが合体している。いわゆるサイボーグだった。
このサイボーグの舎弟達と思われるのが10人以上いて絡んでくるが、舎弟達はロボットそのものだった。音声機能はなさそうで言葉は発しないが、視線で睨んでくるのが判った。
鋼鉄の硬いフォルム、戦っても無駄な争いになるのは一目瞭然だった。


ルッカ
「興味深いわね。意識体をそのまま機械の中に入たのね…。電波でコミュニケーションをしているから音声会話の必要性がなく、その分のシステムが簡略化されているのね…」

ルッカはジロジロと不良ロボットを観察していた。


ジョニー
「俺が、認めるのは唯一スピードのみだせ!

 この道通りたかったら、俺と勝負するか、カネを払えBABY」


ルッカ
「私達、聞きたいことがあるのだけど、今って西暦何年なの?」

ジョニー
「俺が、認めるのは唯一スピードのみだせ!

 この道通りたかったら、俺と勝負するか、カネを払えBABY」


ルッカ
「……この世界が荒廃しているのは一体なんで?


ジョニー
「俺が、認めるのは唯一スピードのみだせ!

 この道通りたかったら、俺と勝負するか、カネを払えBABY」

ルッカ
「あんたバカなの?


ジョニー
「俺が、認めるのは唯一スピードのみだせ!

 この道通りたかったら、俺と勝負するか、カネを払えBABY」

ルッカ
「どうやらこいつらはロボット暴走族ね。何が原因かは知らないけど、レースを強要することに目的を見出しているみたい。」

クロノ達が無視して廃墟に進もうとすると通せんぼして、ブーブーサイレンを鳴らしながらタックルしてくる。地味に痛い


ジョニー
「俺が、認めるのは唯一スピードのみだせ!

 この道通りたかったら、俺と勝負するか、カネを払えBABY」



勝負する場合、クロノ達にバイクを貸してくれるという。
廃墟を抜けるまでのレースであり、勝っても負けても向こう側に行く目的を達成できる。

マール
「どうしたのクロノ? バイク貸してくれるってよ?」

マールはバイクに乗った。三人乗れる大型のバイクで車の様に窓が付いていた。砂埃を心配する必要はなさそうである。



ー廃墟を抜けてー

ジョニー
「どうだ? 風をきって走る感覚は最高だろー」

廃墟は元々はビル群地帯だったのか、砂地の少ないとこで、思った程砂埃はなかった。

ジョニーに再度話しかけるもさっきと同じようにオウム返しされた。


マール
「なんだったんだろ、あれ」


クロノ達は数キロ先に工場らしき建物と更に数キロ先にドーム城の建物を見つけた。

ルッカ
「あそこまで行くのはちょっと面倒よね…」

マール
「さっきの車、盗んじゃう?

ルッカ
「言い忘れてたけど、あいつら武装してわよ。ビーム砲が出せる様な筒あったし…」


クロノ達は工場らしき建物に向かった。

砂荒らしに紛れてベルトコンベアーや機械音が
が聞こえてる。
ようやく辿りつくと、入り口の扉は閉ざされてる。
無理にこじ開け様とすると警報音がなり響き、ロボットが何処からともなく現れて襲ってきた。
さっきのジョニーの連れてた部下ロボットに機種が似ていると気付いた頃にはビーム砲が飛んできた。

クロノ達は走って逃げた。
20mくらい離れたたら、ロボット達は帰って行った。

クロノ達はドーム型の建物を目指した。

最初にあった建物と良く似た建物であるが、
内部からロボットの機械音が聞こえる。
さっきの様な危険はロボットかもしれない。

見つからない様に進んで奥に行くと、コンピューターがいくつかあり、脇には壊れたロボットが一台横たわっていた。



コンピューターのスイッチを押しても起動する気配はない。
ロボットも同じだった。

ルッカ
「…これ、ちょっと分解してもいいかな?」

危険そうな武器を持っていないと判断したルッカは、ポケットから工具を取り出し、ロボを解体しはじめた。
ハンダゴテ等を器用に使い、適当な箇所を修理した。
「配線が断線してるだけなら、これで完成と…」

動きだしたロボはあいさつした。
「私はGKI008、セブンナイン社製、プロトコルタイプCです。」
「私に名前をつけてください」

とうやらメモリーがリセットされている様だ。

マール
「名前はロボがいい!」

クロノも考えたがマールのゴリ押しでロボに決まった。

「私の、名前はロボ、私は一体ここで何をしているのでしょうか?」

ルッカ
「前の記憶があるのね、貴方はここで故障して眠っていたの。多分、汚れと錆から判断して難ねも動けずにいたと思う。」 

「貴方達は誰ですか?貴方達がワタシを修理してくださったのですか?」

ルッカ
「ええそうよ。私の名前はルッカ、こっちがマールとクロノ」

ロボ
ルッカ様、マール様、クロノ様、ヨロシクお願いします」


マール
「呼び捨てでいいってば

ロボ
「はい。マール、ルッカ、クロノ。」


ルッカ
「ロボ、いきなりだけど、私たち聞きたいこと沢山あるの。

ロボ
「なんでしょうか? 

ルッカ
「今は何年くらい?

ロボは回答に困った。ロボ自身の記憶が消えていて曖昧だった。ロボはそばにあるコンピューターをいじくった。

ロボ
「施設への電力供給がストップしているからだと思いますが、供給できればコンピュータが起動して質問に答えられると思いマス」

ロボはドームから外へ出て、目を凝らした。
「あの場所で電力供給が可能になると思いマス」

ロボが指を指したのは先程クロノ達が寄った何かの工場だった。

ルッカ
「あそこにはロボットがバリケードをしていて入れなかったの」 

ロボは思い出した様に言った。
「ロボット…私の仲間でしょう…か? あそこはたしかロボット生産工事…ワタシは、たぶん、あそこで作られた。あそこにはワタシの仲間がいる筈です。あそこで電力を供給して貰いましょう。」


ロボと共に工場へ向かったクロノ達
ロボは扉の前の端末にコードを入力した。
扉が空き、中に入るクロノ達は

工場はロボットの各パーツから完成までを全自動で作られている。ロボットの材料となる資材は古いロボを解体したり、機械のスクラップされたものをリサイクルしたりで循環している。

ロボは施設内のコンピューターにアクセスし、電力供給の操作をした。

ロホ
「残念ですが私にはあのドームに電力供給する権限が与えられていいない様です」

マール
「そんな…

ルッカ
「他にないの? この世界の情報を調べる方法

ロホ
「既に電力供給されているドームであれば可能だと思いますが…

ルッカ
「もしかして、私達が最初にセキュリティドローンから逃げ出したドームとか? あの大きなロボットシステムを動かす為に施設内に大きな電力供給がされているはずよね?

ロボ
「そうだと思います。ですがもう少し、工場内を探してみましょう。情報端末ならここにもあるかもしれません。

ロボとクロノ達は奥へと進んだ。
製品化されて展示されているロボット達を見ていたロボは思い出した。
「そういえば施設内の地下に手動で電力供給を入れるとスイッチがあったあずです」

地下に降りると、
レバーが多様にあるフロアに到着した。
モニター越しにメーターや炉の燃料棒が水の中にあるのが見える。
ロボはテキパキとレバーを操作し、
「これで大丈夫な筈です」
と言った瞬間、サイレン、警報音がなり始めた。

ロボ
「あれ? 私、何か操作を間違ったな!?」

警報は20秒後に地下フロアを全て封鎖するというものだった。
「閉じ込められてしまうと、厄介です。急いで下さい」 

ロボはクロノの達を先導して走った。
クロノタチの背後で重厚な封鎖シャッターが次々と降りる
そのペースに間に合わず、降りたシャッターにロボが挟まり、メリメリと音を立てる。
「皆さん、早く」

ロボはクロノ達が進んだのを確認すると、前転し、ゴロゴロと壁にぶつかった。


ロボ
「なんとかなりましたね。ちょっと危なかったですけど。


帰りの道、ロボット達が襲ってきた。


「裏切り者、人間の味方する裏切り者』

ロボ
「どういう意味デス?

ロボット達
「忘れたのか、俺たちは人間にはしたがわない。マザーシステムに従う。

ロボもクロノ達も気付いていないが、この荒廃した未来では人工知能マザーを管理する人間が長らくいなくなっていた。いつしかマザーは人間の存在価値を忘れ、ロボットの為に活動する存在に変化した。ロボットではなく人間に味方するロボットはもはやロボットではない。そんな認識の元でロボット達はロボをスクラップにしようとしていた。
ロボを壊してリサイクルするのか、このロボット達の役目だった。

ロボ
「な、なんでこんな事を
 私たちは仲間ではなかったのですか?
 私達は人間を豊かにする為の存在ではなかったのですか。」

ロボット達はそのコトバは理解できなかった。


ロボット達はロボの電源を落とそうとスイッチのある背中を取ろうとする。
「やめてください」  
ロボの声は虚しく、響く。
背中を壁につけたロボは正面からロボット達の攻撃を受けた。
ロボが動かなくなると、ロボット達はスクラップ用のゴミ箱にロボを投げいれた。


「ニンゲン、排除、する」

ロボット達はクロノに襲いかかった。

マール
ルッカ! 一旦逃げよう!

ルッカは逃げなかった。
「クロノ! ロボットの弱点って何か分かる?」

クロノは首を横に降った

ルッカ
「足元よ。
 足元の重心が不安定だから足に攻撃を加えれば、簡単にコケる。」

クロノはルッカの言うとおり動いた。刀の柄を当てると、ルッカの言うとおりに簡単にこけた。

「このフロアのロボットは門番の様なセキュリティ専用ロボットではないみたい。全く武装されてないもの。恐らくロボットの運搬や廃棄担当専用の、いわば戦わないロボット。なぜ戦闘様のロボットがここに来ないのかは分からないけど、管理者がまだ未熟なのかも」

クロノがロボット達の注意をひきつけてる内に、マールとルッカがゴミ箱からロボを救出した。
二人で運ぼうとロボを引っ張るが、重くてなかなか前に進まない。
しかし、確実に少しずつ前に進んだ。
十分程、クロノはロボット達と格闘を続けた。
ルッカとマールはロボを工場外へ連れ出した。
ロボット達は工場の外まではついてこなかった。

クロノ達はドームに戻り、ルッカはロボを修理した。



「ロボ、貴方なぜ戦わなかったの?

ロボ
「私は兵器ではありません。戦う様にはプログラムされてません。

ルッカ
「でも逃げることばできたでしょう?

ロボ
「仲間なので話しあいをしました。話しが通じないので途中で動かないふりをしました。そうすれば直ぐに攻撃も終わるかと思いました。

ルッカ
「それでまた断線したのね…

ロボ
「横に殴られたり、前から殴られたりするのは問題ありませんでしたが、ゴミ箱に逆さになるのは致命的な様でした。

ルッカ
「というより、寿命ね。貴方の体あちこちに錆だらけで、いつまた断線して停止してもおかしくなかったから。一応、フルメンテしといたから。次からはちゃんと戦いなよ。

ロボ
「いえ、私には破壊活動はプログラムされてません。

ルッカ
「時と場合によりけりよ

ロボ
「時と場合? 

ルッカ
「貴方ね、あの分厚いシャッターにも耐えられるのよ。
ロボのフレームは汚くて古いけど、品質が良い。なぜ、スクラップされずに保管されてたのか気になったけど。きっとレア度が高いから持ち主は捨てられなかったのよ。つまり、それなりのロボスペックが高い。もしかしたら戦闘様ロボにもなれるかもしれないのよ。

ルッカ
「ちょっと試しましょうか。

ルッカはドーム内にいるセキュリティロボットにちょっかいを出した。

「ほら、ロボ。このままだと私殺されてしまうわ。私が死んだら誰か修理してくれるの?」 

ロボは動かなかった。

「スイッチを切るわよ」

素直に切られるロボ
マール
ルッカ駄目だよ。先ずは友達にならないと。
友達がピンチなときは友達は助けるんだよ。ほらロボ、私達、友達だよ。

ロボ
「友達…インプットされました。

マールもセキュリティロボットを挑発した。
ロボは戦って勝利した。

ルッカ
「人が矛盾をはらむ様にロボットも矛盾をはらむ生き物なのね…」



ロボいじりに夢中になってて忘れていたな、クロノ達は施設内に電力が供給されていた事を思い出した。


クロノ達はコンピュータを起動した。
ロボが操作し、データベースノアXYという画面が表示された。


ロボ
「現在、西暦2300年です」

クロノの達は荒廃した世界の原因を調べた。
その原因がラヴォスにあると知った。


マール
「え? ラヴォス? たしかサラさん達がラヴォスの生み出したタイムゲートで飛ばされてきたって、言ってたよね?

ルッカ
「そうよ、、魔神機でラヴォスを目覚めさせてしまってその後国がどうなったのか心配していた。

マール
「じゃあ、サラさん達がいた国もラヴォスにやられて…

ルッカ
「かもしれない。断言はできないけど、ジール王国の痕跡が歴史に残ってない事を考えると…

マール
「早く戻って教えてあげないと!

ルッカ
「まって! 私達が急いで戻ったところで、済んでしまった歴史は変わらないわ。


マール
「そんな…」

ルッカ
「私は今はこの時代、2300年の人達が気になる…。彼らは餓えている。今ならロボという強い味方もいるし、倉庫に配備されているセキュリティロボを倒せるかもしれない。


クロノ達はこれまで来た道を戻り、北の廃虚のまでやってきた。
ジョニーは相変わらず元気で、今度は4人乗りの車を用意してきた。

ロボ
「みなさん、お勤めご苦労さまです。」

ジョニー
「おうよ、そちらこそお勤めご苦労!」

これがロボ同士の挨拶のしきたり?なのか、三人もロボを見習ってあいさつした。



〜ドームシェルター〜


小型のセキュリティドローンは2体はロボがパンチを浴びせて一発だった。だが、2体を倒しても直ぐに奥から新たに2台あらわれる。

奥にいる大型のドローンが2体のドローンを常に配備する様に司令を出しているのか。
隙を見て奥の大型ドローンにパンチやタックルをするものの、びくともしない。大型ロボットもロボに体当たりをするが、互いに一歩も引かない。

しかし大型ロボには弱点があった。一応はドローンであるから、ヘリコプターの様なプロペラ機が取り付けられている。
プロペラ関節部分を攻撃できれば、バランスを崩して勝手に自滅しそうだった。
マールのボウガンを打ってみるが効果は無かった。


ルッカはロープを探した。ボウガンの矢にロープを巻いて飛ばせば、倒せる気がした。

「ロープくらいいあるよ」
ドーム内の爺さんがロープを持ってきた。
爺さんはロープを矢にくくった。

ロープはプロペラに絡まり、ドローンはたちまちバランスを崩し始し自壊した。

「やったぞー! 若いのががやってくれだぞ!

ドーム内に歓喜が湧いた。



希望を失っていた人々が地下の様子を見にくる。
「あんちゃん達ありがとう!」 「ロボすごいーい!』

人々は我先にと倉庫を調べた。
しばらくすると歓喜が止んた。
湿気やカビで、食べ物は朽ち果ていた。缶詰めもすらも駄目だった。
何十年以上、手付かずのまま放置されていたのだろう。
唯一無事だったのは野菜や果物の種だった。

「ワシらはもう諦めておった。生きることをだ。しかし、、こいつらは諦めなかった。誰かに植えられる事をここで待っておったのだ。」


老人は子供達を見ていた。
絶望した世界で子孫を残す様な下らない親の存在、あるいは止むなく出産するしか選択肢の無かった哀れな女性。
現代人からすればこの世界に住むのは苦行でしかないだろうが、子供達は植物の種に興味津々
だった。

無いのが当たり前の世界で、そこで生まれた者にとっては
一粒の種ですら価値が尊い

クロノ達は彼らを自分達の未来の子孫なのだと必死で認識しようとした。
彼らが不幸だという同情ではない。

中世時代の様にこの未来と歴史を変えられるかもしれない。
でも過去を変え、未来を変えたら、彼らの今この瞬間の笑顔も、全て存在しないことになる。



クロノ達が過去を変える価値と彼らの価値とを天秤にかけることは決してできない。
しかし、過去を変えるというのは、今時点の未来を否定し、天秤にかけていると同じく、比べる無礼をする行為の様に思えた。

要するにクロノ達は怖気づいた。
過去を変えるなんて未来人からすれば「遠慮はいらないからやれ」と言うだろうが…



ー謎の扉ー


倉庫の奥にには扉があった。
開かずの扉でクロノ達はなぜ開かないかわからなかった。
ドームの人々も試行錯誤をした。


ルッカはロボをチェックした。ドローンと戦って大きなキズは見あたらなかった。ロボ自身、加減していたのかもしれない。
帰る為のゲートホルダーもチェックした。

ひとつと壊れても代りになるものを用意しているルッカ。ゲートの安全性を調べる探査カメラにも異常がないかチェックした。

カメラにはゲートホルダーの機能があり、スイッチが入るか確かめる。

ルッカがスイッチを入れた瞬間、ゲートホルダーが光を放った。
突然の光で驚くルッカ。まちがってカメラのフラッシュボタンを押したのだと思い、ゲートホルダーのスイッチを押した。しかし、また光った。

ルッカが困惑している一方で、人々の騒ぎが聞こえた。
扉の前に人々が集っている。
ルッカがゲートホルダーのスイッチを押す度、扉が光る。

ゲートホルダーの機能と扉が共鳴し光あっていた。

「何これ、どういうこと?」

恐る恐る扉にゲートホルダーを近づけると、閉ざされていた扉が開いた。

どういうわけか、タイムゲートをこじ開ける為の周波数パルス波に反応して扉が開く仕組みになっている様子。


「扉の先はタイムトラベラーのみが入れ。という意味なの?」

ルッカはつぶやき奥の部屋に入った。

部屋には何もない。人が数人程度しか入れない狭い空間だった。しかし、そこは明らかに時空の歪みが見られた。


ルッカはクロノ達に集合をかけた。 

どうやら未来人の中にもタイムトラベラーが存在したこと。この時空の先に何があるか確かめなければいけないことを説明した。

安全性を調査する為にルッカはゲートにシャッター予約をいれたカメラが吸い込ませる。しばらくしてロープを手元に戻す。

ゲートの中の奥をカメラが撮影しても何も映らなかった。



今までは問題なく何かが撮影できた。

「私の出番ですね」 




ロボがゲートホルダーを手にとった。

クロノ達は不安が過ぎったが、先を知りたい好奇心もあった。

ロボはゲートに吸いこまれた。


ロボはゲートの先で生きてるのか死んでいるのか、

3分程経過し、ゲートが開きロボが戻ってきた。

「不思議な場所でした。ゲート先にいくつものゲートがあって、いろいろな時代に繋がっているのです。」 


クロノ達は戸惑いつつも、頷いた。

マール
「ここからなら、ドームの人々を連れていけるよね? 弱っていて動けない人も皆連れてけるよね。」

ルッカ
「それいいわね。過去の時代に行けば食料に困ることなんてないんだし」



ー時の最果てー

ゲートを抜けた先に部屋があった
部屋の中にはいくつかのゲートがあり、部屋の縁から見える外の景色は無限に続く黒の世界。

部屋には扉があり、その扉を空けると、もう一つ部屋がある。
部屋の真ん中に黒いスーツをまとった老人が鼻ちょうちん膨らませながらスヤスヤと寝ていた。

マール「もしもしー

マール
「ここは一体なんですかー

花ちょうちんが爆発した。

「おや、こんなところに人がくるなんて珍しいのう。

 ここは時の最果て、まあ、ゆっくりしていきなさい。」

ルッカ
「え? それだけ。時の最果ての説明は?」

老人は答えなく、また深い眠りについた。

マール
「どうするクロノ? 叩き起こす?」


時の果ての人
「そうじゃ。お主ら行く前にそこの扉に入ると良いよ。」 

そう言って、老人はまた眠り始めた

クロノ達は扉を開けた。

部屋の中央に小さな生き物がいた。

「お、久し振りのお客さんね。僕の名前はスペッキオ。スペッキオの周囲を壁にそって3回まわると良い事が…ってあれ? 君たちもう魔法が使えるの? だったら後は練習だね。頑張って」


マール
「あなた魔法を知っているの? もしかしてジール王国とか知ってる?


スペッキオ
ジールおうこく? スペッキオ、難しいこと判らない…

スペッキオも部屋の外にいる老人も呆けていて、まともに会話が成立しなかった。

クロノ達は諦めてゲートを調べることにした。

ゲートはいくつかあり原始時代へと繋がるものもある。クロノ達が注目したのは『ホテルリゾートへけらん』へと繋がるゲートだった。
クロノ達はまだ知らなかったが、中世で魔族と人間の融和が実現し、現代のへけらんの住処である鍾乳洞は人気の観光スポットになっていた。

目玉のアトラクションは渦潮で、鍾乳洞の奥の渦潮に潜ると、隣の陸地(ルッカの自宅近辺の浜辺)まで、あっという間に連れて行ってくれる。この天然のウォータースライダーは世界中で人気があり、へけらんリゾートの観光収入はガルディア東部を潤わせ、現代でホテルが乱立するビジネス競争時代へと突入している。
ゲートはホテルのロビー行きで、クロノ達は現地のパンフレットを片手に、へけらんリゾートを楽しんだ。


クロノ達は中世のガルディアに来ていた。

サラ
「まあ、クロノさんにマールさん、ルッカさんお久しぶりです。それから貴方は…」

ロボ
「はじめまして、ロボと申します。

ジー
「鉄の生き物が喋っておるぞ

マール
「未来のロボットなの。

ジー
「千年祭での歌う奴といい、人間はなかなか凄いものを作るな。

マール
「あれはルッカが作ったの。ゴンザレスっていうの!

ルッカ
「まってマール、話がそれてるわ。

マール
「あ、そうだったごめん!



クロノ達は未来の世界がラヴォスに滅ぼされていた事を説明した。


サラ「え? 未来の世界が?」


ジー
「まさかラヴォス神がそんな事を…わらわはその様な危険なものに縋ろうとしていたのか…

サラ
「お母様、だとしたらジール王国の民たちは…

ジー
「信じたくないが、この時代の歴史に我らの歴史の記録が欠片も残ってないことを考えると…


サラ
「クロノさん私を未来まで連れてってくれませんか? この目でラヴォスの被害を確認させてください。」



ジー
「まて、お前はこの時代で魔族と人間を束ねる仕事が残っておるだろうが。戦争は終わったとはいえ、あくまで名目上のことだ。わらわ達が今この地を離れる訳にはいかん。


言い争っているとボッシュが名乗りをあげた。

ボッシュはサラやジールと比べると戦力が遥かに劣っていた。


〜時の最果て〜

ボッシュ
「こ、この気配はまさか!」

ボッシュは周りを見渡すと走りだし、扉の先にいる時の案内人の元へと走った。

ボッシュ
「お、お前さんハッシュか?」「よく生きておった。」

時の案内人
「はて? お前さんは一体…」

ボッシュ
「何を訳の分からないことを言ってるのじゃ!   

 ワシじゃよ! 弟のボッシュじゃ。
 お前さんあれからどうなった? ワシがタイムゲートに飲まれた後、お主もタイムゲートでここに飛ばされて来たんか?」

時の案内人
「はて? 弟…、ゲート? ワシは、時を彷徨う者を人じゃが…」

ボッシュは気付いた。この空間全体からハッシュの魔力を感じる事を

ルッカ
「どうしたのボッシュ? 貴方顔色悪いわよ?」

ボッシュは思った。ラヴォスが生み出したタイムゲート、ハッシュが飲み込まれた先に恐らく出口は無かった。
時の狭間で永遠と彷徨い、肉体が朽ち果てる前に、せめて同じ様な被害者を出さない様にと、魔力空間を作り出した。時の中を彷徨う者を集め、案内する仕組みを作ったまではいいが、自身の記憶までは残せなかった。

スペッキオは飲まず食わずでも千年生きれる特殊生物。主人であるハッシュがこうなって、さぞ、寂しかったに違いない。

スペッキオ
「大丈夫。世話をしてくれる人がいた。もう100年くらい来てないけど。」

ボッシュ
「一体誰がお前さんの世話を」

スペッキオ
ガッシュ!」

ボッシュ
「本当か! ガッシュがここに? ガッシュは今どこに?」

スペッキオはガッシュがやってきたゲートを指差した。

スペッキオが差したのは原始時代へと続くゲートだった。
「ここから良くごはんを持ってきてくれた。その後、こっちのゲートを良く通ってた。」
スペッキオは未来へのゲートを指差した。



〜未来のゲートの出口〜

ゲート前の扉、古代ジール王国のセキュリティシステムに使っていたの同じ模様の扉を発見したボッシュ

ボッシュは悟った。
ガッシュは未来に飛ばされた後、どうにかして元の時代へ帰ろうとゲートの痕跡を探したに違いない。ゲートを開く装置かあるいは魔術を開発し、時の最果てへと続く道を見つけた。

最果てには原始時代から既に誰かが、やってきていたのかもしれない。時を彷徨う者が最果てにて保護され、そこから元の時代へ帰れたか、そこからどうしたかは分からないが、、きっとガッシュもそうだったのかもしれない。ガッシュは原始時代へと続くゲートを見つけたはいいもののジール王国へと帰る道は見つからなかった。

最果てから古代人の誰かが助けにきてくれるのを信じていたのかもしれない。
ジール王国の紋様を扉に残して、自身の存在に気付いて欲しいというメッセージを残したに違いない。

ボッシュとクロノ達は未来を手分けして捜索した。



南部の大陸のドーム内にヌウを発見した。

ボッシュ
「ヌウ? いや、普通のヌウとは違う。これは…

ボッシュ
「これはガッシュの魔力…あやつ死ぬ前に自身の意識をヌウの中に押し込めたな。」

ヌウには目的がプログラムされていた。
時の翼シルバードの制作とメンテナンスだった。

ガッシュの奴、死して尚、研究をしておったか…」


時の翼、シルバード。
シルバードが行ける時代は時の最果てにあるゲートから行ける時代である。
シルバードは時の最果てとシステム的にリンクしていて、古代には行くことはできない。
今行けるのは原始、中世、現代、未来への4つだ。



ジー
「そうだったか…未来にはガッシュが、そして最果てにはハッシュが…」

ボッシュ
「とても残念です。」

ジー
「だがまだ終わった訳ではなかろう。ルッカ殿が開発したゲートを探す装置、あれがあるではないか。」


ジー
ボッシュ、せっかくだからその装置で原始時代も調べてきたらどうじゃ?。どんな世界が待っておるのか、わらわは興味津々じゃが今はまだここを離れられん。」


クロノ、マール、ルッカ、ロボ、ボッシュは原始時代へと向かった。シルバードは三人乗りなので2回に別けた。


ルッカ
「なんだか騒がしいわね…」

ボッシュ達の場所から原始人の村へは少し離れている。

ルッカ
「…ロボ、ちょっと様子を見てきなさい。」

原始人は何やら宴の用意をしていた。

ロボは走って戻ってきた。原始人を引き連れて

「うんばばうんばうんばば!」
(おまえ達あやしい奴!)


原始人達十数人は5人とシルバードを取り囲んで槍で威嚇した。

「うんばば!うんこばば!? ばつんつば、はらま、たさら、したあら!」
(お前達どこの部族の者だ?まさか、恐竜人の手先ではないだろうな!)


ルッカ
「どうしよう、何言ってるか全然わかんないや…

いきり立ってる村人の間を割くように族長の娘エイラが現われる

エイラ
「がばちょ、がばんちょ、ちょんばから、くじら?
(エイラ質問ある、お前たちの後ろの、デカイもの、なに?くじらか?)


エイラはシルバードを指してジェスチャーする。

クロノ達がどうして良いかわからず、もごもごしていると

エイラ
「ちょなんかん、さむにだはむにだおっぱー?」
(お前たち、もしかしてエイラの言葉通じてない?)

エイラがシルバードに近付いてコンコンと叩いた。
匂いも嗅いでいる。
かじりつく。

エイラ
「う、食べられないし、おいしくない…」

エイラはクロノ達のニオイを嗅いだ。


「おまえたち、恐竜人の匂いしない。かといってエイラ達とも匂い違う…」

エイラ
「みんな集まれ! 新しい部族の発見だ!」


エイラの掛け声と共に村人が一斉に集まる。

クロノ達はどうしていいかわからずビビリまくる。

ルッカ
「ねえ? 逃げた方が良くない?」

マール
「私達、もしかして丸焼きにされて食べられる?」

ボッシュ
「安心せい、なんかされたら魔法でズドンじゃ。」


村人はクロノ達の予想に反して歓迎ムードだった。
村は恐竜人に対抗する為、部族同士の繋がりを求めていて、クロノ達を宴に歓迎する。だがクロノ達は言葉が理解できず、どういう意図があるのか分からなかった。


エイラは踊り歌い、その後酒をメンバー達に注いだ。
クロノ達は酒飲みファイトに巻き込まれてエイラと共に酔いつぶれた。

翌朝、二日酔いと共に目覚めるメンバーは、
エイラと族長から、根堀りはほり質問攻めにあった。


ルッカ
「こ、困ったわね…」

マール
「なんだか真剣そうに話しているけど、

ボッシュ
「酒もたらふく飲めたし、このままバックレるかのう。」

ロボ
「言語パターンを収集しました。今から原始言葉を翻訳できますが、どうしますか?」



ロボ翻訳により、クロノ達はこの時代で起きている事態をおおよそ理解した。

ルッカ
「恐竜人と人間の戦争か…」

マール
「手を貸しちゃう? 私達、魔法のやり方覚えたしめっちゃ強いよ!」

ボッシュ
「争いは好かんのじゃが…」


クロノ達が難色を示していると、遠くから悲鳴が聞こえた。

村人がエイラの元にかけよる

「大変だエイラ! 北の村に恐竜人が火を放った。しかもキーノを連れ去っていった。」

エイラ
「どうしてキーノが!」

「恐竜人のアザーラが言ってた。キーノを返して欲しければディラン城へ来いと。」

エイラには心当たりがあった。以前に村の近くの恐竜人の巣穴に単独で攻め込んだことがあった。その際、親玉のアザーラに逃げられた。。エイラと親しいキーノを捕まえて、アザーラはエイラに復讐するつもりである。

「エイラ行く! ティラン城に乗り込む!」  

ルッカ
「一人では危険よ!」

マール
「私達も協力するよ!」

ボッシュ
「ワシは酒の酔いを冷ましたい!」


一行はエイラに連れられ、北にある山からプテラに乗った。 

ルッカ
「え? マジこれ乗るの?

マール
「だ、大丈夫かな…

ボッシュ
「ワシ、高いところ苦手じゃー!」


アザーラのいるティラン城は高さ1000m。そびえ立つ崖の上にあった。

外敵からの侵入を防ぐ為に建設されたのだろうが、この高さは人の足で容易に上り降り出来るものではない。この場合、恐竜人にとっての外敵とは人間だけを示す訳ではないのかもしれない。同族の恐竜人か、あるいはもっと異なる意図があるかもしれない。

空を飛ぶプテラもそうだが、高いところから離着陸できる方が生活の利に叶う。恐竜人がもし翼竜系統であるならば、高さ1000mの崖上は快適な生活拠点になるのかもしれない。

ルッカ
「少し酸素が薄いけど問題ないレベルね。」

マール
「なんで、こんな高いところに城があるのー?」

ボッシュ
(高いところ怖いー! でも酔いが覚める!)


6人が降りると、エイラは真っ先に門へと走った。

ルッカ
「まって! 一人では危ない!」

マール
「ねえ? 恐竜人ってどんな顔しているのかな?

ボッシュ
「…」
ボッシュプテラに酔ってゲロをほんの少し飲み込んだ。


全員が城に入ると門が閉じて鍵が掛かった。

ボッシュ
「どういうことじゃ?」

ルッカ
「え? まさか自動ロック?」

マールとルッカが反作用ボムを使い、ロボがタックルしてみるがビクともしない。

ルッカ
「これが原始の科学技術なの? これってもしかして私達の時代よりも上なんじゃないの?」


マール
「恐竜人って一体何なの? 魔法使える様になったけど、自信なくなってきた。

ボッシュ
「気をつけるんじゃ。こんな丈夫な扉を作れるのなら、きっと武器等も作れるじゃろうて。」


5人が玄関でもたついているとエイラが立っていた。
エイラは既にキーノを救出していた。

エイラ
「どうしたんだ皆?」

ルッカ
「閉じ込められちゃったの…」




ルッカ
「恐竜人を探して開けて貰うしか無いわね…」

一行は城の奥へ進んだ。

現代にもまだ存在しないエレベータにクロノ達は驚きつつ、城の上階へと進んでいく


最上階から向かいの塔へと渡り廊下が続く


ルッカ
「変ね…恐竜が待ち伏せしているかと思ったけど、誰も居なかったわね…」

マール
ティラノサウルスみたいのが出たらどうしようかと思ってたけど、出てこなくて良かったよ。」

ボッシュ
(ワシはゲロが出なくて良かったよ…)



渡り廊下の先ではアザーラが空を見上げていた…






アザーラはエイラを見ると、「少し早かったか」と呟き、塔の奥へと消えた。
しばらくすると、アザーラは巨石型のティラノサウルスの背に乗り現れ、エイラ達に向かって突進してきた。


廊下を埋めつくす程の巨体が、もうスピードで突進してくる。

反応の遅れたルッカとマール。
エイラが端に押し出してかぶさる。

地響きによろけたボッシュ。キーノが押し出して被さる。

ロボは立ち尽くし、クロノは巨石の足元にすべり混んで避けた。

ボウガン、ハンドガン、魔法で巨石に攻撃を加えるが全く効き目がない。


突進を繰り返すので、アザーラを魔法で狙うにも座標が合わない。

エイラは口笛を吹き、プテラが橋に近づくも、巨石の突進で誰一人乗る事ができない。

プテラは上空を旋回しながらエイラ達の攻防を見守っていた。

エイラは口笛を橋の下に向けて吹いた。

プテラがその意図を理解して、橋の下からクロノ達を受け止めようとする。たが巨石の吐く火でプテラ達は上手く立ち回れない。

突進しながら下に向けて火を吐くティラノサウルスは、首を下に伸ばしている。
その首にエイラが飛び乗り、アザーラに拳をぶつけた。

アザーラは吹っ飛ぶ事なく耐えた。

アザーラの周りには見えないバリアが張られているかの様にエイラの攻撃が届かない。

何度もパンチを加える。
エイラが驚いているとアザーラはニヤリと笑い、エイラを振り落す為ティラノを回した。

エイラがよろけて落ちそうになったが、
キーノが直ぐ後ろにいて支えた。エイラはパンチに夢中でキーノが後ろにいた事に気付かなかった。

「エイラ一人で無茶する。ダメ。」


二人は振り落とされない様に龍の背にしがみついた。


エイラ
「アザーラ! そこから出てきてエイラと勝負しろ!」

エイラ
「大地のおきて! 強いものが正しい! アザーラが言った言葉だぞ!」

エイラ
「隠れてるのは卑怯だそ!」

エイラが話している隙にプテラがクロノ達を助けようとするが、いつまた突進されるのか分からない中でプテラ達も尻込みしていた。

エイラ
「恐竜人、人間の言葉話せるのアザーラしかいない! アザーラ、どうして人間の言葉を話せるのに人間を襲うんだ!」


エイラ
「何故、人間と恐竜人、戦う必要がある!」


エイラが喋ろうとするとキーノが立ち上がった。

キーノ
「ずっと疑問に思ってた。

 アザーラ、なぜ僕を殺さなかった。

 僕をエサにして、城に皆を閉じ込める目的なら、僕を生かしておく必要なんて無かった筈だ。

 それに…
 僕達を殺すなら、なぜ、城に恐竜人がいないんだ。

 アザーラ、君は最初から僕達を殺す気なんてなかった。

 今だってそう。僕をいつでも振り落とせるのに君はやらない。


 なぜなんだ?

 君は僕達に何をさせたいんだ。」


アザーラ
「させたい?だと…」
 
アザーラ
「お前たち無力な猿に何ができるというんだ…

 何もできない。何もできないんだ…」

キーノ
「キーノ分からない。エイラ、キーノも恐竜人と闘いたくない。戦わないということ、できる。

エイラ
「そうだ! アザーラが恐竜人、みんな、説得してくれれば、エイラもエイラの村のみんな、喜ぶ。」

アザーラは空を見上げた。

エイラ
「アザーラ、話しあおう!」
    「まだ…見えないか…」
エイラの言葉にアザーラの声がかき消された。
エイラ達が「何が見えるのか?」と聞き返したのであればここでのクロノ達のシナリオも大きく変わったのかもしれない。


エイラ達の会話のやり取りの隙にボッシュとマールとルッカプテラに救出された。

それを見たアザーラはティラノでクロノ達に突進、噛みつき攻撃をした。

苦労して寸前で交わすクロノに対して、ロボはティラノの動きを計算し、ちょこちょこと無駄のない動きで避ける。

ティラノには首輪がついていた。
鎖は繋がれていない。根本から30m程あり、ズルズル引きずっている。

クロノは塔の中に鎖を繋ぐ杭の様なものがあると考えた。

鎖を繋げたらと考えたが、重くて持てる代物ではない。
案の定、どうにもする事も出来ず、杭のあるフロアで逃げ惑った。

アザーラはどうやって重い鎖を外したのか。

クロノは奥の部屋へと逃げた。
奥の部屋は狭まっており、ティラノは入れない。
クロノは一先ず助かったと息をすると、目の前に椅子とモニターの様なものを見つけた。
椅子もモニターも石で作られてる様なデザイン。
座ってみるも座り心地は悪くない。

竜人のコンピューターだろうか、未来で見た形とも違い、スイッチがない。画面に触るも何も変化がない。

画面には隕石が大地に衝突する光景が繰り返し映っていた。

現代では隕石についての知識がまだない。クロノは映像が何を意味するのかこの時は分からなかった。

巨石龍は渡り廊下へと戻っていた。
既にロホもプテラに乗り込んでいる。

プテラ達はエイラとキーノ、クロノを待つ為に旋回している。


巨石龍は廊下の中心にて止まり、アザーラは空を見上げていた。

静かになったアザーラにプテラが近づこうとするが、罠と思い、近づけないでいる。


エイラがこれまでとは違う口笛を吹き、キーノに合図を送ると、二人は大きく飛び、橋から飛び降りた
プテラは急降下して、二人を受け止めた。


クロノが鎮かな渡り廊下を不思議に思い恐る恐る覗こうとすると、マールが叫んだ。

クロノも飛び降りる様にと。
エイラもキーノも飛び降りたから、大丈夫だという。

クロノは高さにビビった。いつ襲ってくるか分からない巨龍も恐れた。
不安と不安が入り交じる中で、ロボのセンサーがラヴォスを探知した。



ロボ
「皆さん大変です。空に…ラヴォスがいます。」



ルッカ
「え? ラヴォスが上に? どういうこと?


ロボ
「予測約、直径1km、質量80万トン、秒速30km。ラヴォスがここへ落ちてきます。
このあたりの地表直径10kmが吹き飛ぶ計算です。」


ルッカ
「え? 

ルッカはロボの話を聞いてもピンと来なかった。
クロノ達いたDC1000年、家庭に電気や冷蔵庫はあれどテレビはない。隕石衝突等というCG映像は見る機会はない。せいぜい一部の専門家が仮説として本に執筆しているくらいで、ルッカが都合良く隕石の様なラヴォスの破壊エネルギーを判るはずなかった。

『直径1km、質量80万トン、秒速30km、それが落ちてきて直径10kmが吹き飛ぶ』ということの意味を冷静に頭にインプットするには10秒の時間を要した。


ロボ 
「グズグズしているヒマはありません!
 ラヴォス衝突まで後40秒しかありません。」


ロボはプテラから飛び降りてクロノへ走った。
関節部位がカャシャカシャと音を立てる。

クロノを押し出し、ロボも廊下から飛んだ。

クロノとロボをプテラがキャッチしたとき、

上空が小さく赤光りした。


アザーラはまるで花火見物するかの様に空を見上げていた。もしかしたらバリアで自分だけは助かるとか思っているのか?


ラヴォス衝突まで残り30秒でルッカは顔面蒼白になった。

「や、ヤバイ!とにかく皆逃げて!ここから離れて!」

ルッカは死にものぐるいで叫んだ。

ロボとルッカ以外、問題の重大性を認識していない。

一般的に隕石が大気圏に突入して減速が期待できるとしても、最大でも半分の秒速15km程度にしかならず、このラヴォスは時速5400kmで地表に衝突する。

鳥特有の地場の変化を察知して逃げるとしても、大気圏に突入してからでは手遅れである。


ラヴォス隕石が途方もない磁場を生み出しているのなら、プテラが危険を感知することもあり得ない説ではない。
ラヴォスは地表に衝突すると古代へのゲート、(時空の歪)を生み出すので、プテララヴォスの異常な量の地場を感知することも、有り得ない話ではない。
あり得ないとクロノ達はここで全滅するしかなくなる。


そんなこんなで

プテラが気を効かせて飛び立った。

プテラが異常な地場に驚いて、我武者羅に飛んだ。
そういうことにして…
運良くクロノ達は助かった。



アザーラの目的は何だったのか。

ティラン城の秘密は一体何なのか。

クロノファンなら妄想で補うしかない…




ラヴォスが衝突したところは火山が噴火したかの様に上空まで砂煙を舞い上げた。
衝突の高エネルギーで砂の原型すらとどめない微粒子が空を覆う。

砂埃が鳥ですら届かない上空にまで巻き上げられるなら、鳥も含めて絶命するだろう。地上で生活するニワトリの様な鳥なら、とうだろうか?

一説によると、巨大隕石が衝突すると、その衝撃による高温高圧で土の分子は細かく分解され、その煙は数ヶ月、あるいは何年も上空を漂い、光を遮るという。

微粒子の砂は雲の水分と吸着し重力と共に落ちるので雨が降る。その隙間から光がある程度地表に届くとしても常に空に雲がある訳でもない。

空の全ての雲が雨になったとしても、ラヴォスが生み出した煙は多量に残るとして
イオカ村は曇り空の中で生活することになる。
気温はぐんぐん下がり続け、体温調節の苦手な爬虫類系は絶滅するだう。




エイラは水辺でプテラの身体を洗っている。藁の様なものでゴシゴシしている。

ラヴォスの衝突を近くから巻き込まれたプテラとクロノ達は全身黒ススまみれで、水辺でそれを落としていた。

プテラ達はエイラの世話になり、クロノ達も見様見真似でエイラを手伝った。



ーイオカ村、エイラの家ー

エイラ
「クロたち、これからどうする?

クロノ達はラヴォスの生み出したクレーターが気になった。

エイラ
「ならエイラも連れてけ。恐竜人から、クロたち守る」


クロノ達がクレーターに近付くと、目視で可能な程に空間の揺らぎが見えた。

クレーターの中心点でゲートを発見したクロノ達。


ルッカ
「エイラ、この先はどんな危険が待っているか分からないわ。」

エイラ
「エイラ行く、危険、大丈夫。闘う、好き!」

マール
「なんか、寒いな…昨日と比べて今日やけに寒くない?

ボッシュ
「もしかすると、ラヴォスのせいかもしれんな。あのあと、大雨が降って、今もまだずっと曇り空じゃ。」

ルッカ
「なんか嫌な曇り空ね…早く晴れたらいいのに…」




原始時代から古代までは60億年以上の間がある。
その間に地殻は大変動し、隆起し、ゲートのある場所は山脈になっていた。
故にゲートの出口は山脈内。洞窟内部、6人はまず洞窟から外へと通ずる道を探さなければいけない。
原作設定の様に都合良く出口はなく、洞窟内には魔族の祖先が住んでいた。

ラヴォスの影響で人間は魔力を使える様に進化し、氷河期に適応したが、魔族の祖先はまだ知能が足らずに魔力を都合良く扱えなかった。魔族祖先は魔力の応用力が足りず、偏った力を持っていた。例えば寒い古代においては体温調節機能のみが飛躍的に発達した種が生き延びていて、熱や冷気に強い防御耐性を持っていた。現代においては、その機能が退化した種も繁栄できているとはいえ、この時代の魔族先祖は進化の途上にあった。

王国ジールの勢力で住処を追われ、人目を避ける様に洞窟に住んではいるが、ジール王国が滅亡してからは、彼らは急激に繁栄する事ができ、中世、現代の様な魔族へと進化することになる



〜暗闇の洞窟〜


「ライト!」
ボッシュが魔法で光を灯した瞬間、魔族が目の前にいた。

クロノ達の悲鳴が洞窟に響き渡る。
だが一番悲鳴を上げたのは魔族の方でボッシュは比較的冷静だった。

突然住処に侵入してきた人間に驚き、魔族達は逃げ出した。

「ここはどこじゃろうか…」
ボッシュは風の流れを視覚化する魔法と方位を知る魔法を使い、出口を探した。

マール
ボッシュって変わった魔法が使えるんだね…他に何が使えるの?」

ボッシュ
「ワシはジール王国では生命魔学の賢者と呼ばれおった。回復や蘇生、何でもできるが、個人的に得意なのは魔法道具を作ったり修理したりじゃな。たとえば剣に命を吹き込むこともできるのう。」

エイラがクシャミをした。露出がはげしくぷるぷる震えている。

ボッシュが魔力で熱を送った、

ボッシュ
「お前さんらはワシらから大雑把な魔法のやり方しか教わっておらんから、力のコントロールは難しいのかもしれんのう。 基本原理はファイアで、体温調節にも使えるじゃが…  

マール
「力のコントールっていうけど、どうやったらいいの?」

ボッシュ
「そうじゃな…
 魔法を使うとき、魔力が体から抜け出る感覚あるじゃろ? その抜け出る方向ってわかるかの?

マール「体から↑に抜け出る感じかな…


ボッシュ「なら上から下に抜け出る感覚をイメージしてファイアを唱えてみたらとうかの?


マール
「あ、出た。

 ルッカのよか小さいけど出たよ…」

ボッシュ
「魔力が抜け出る感覚を少なめでイメージして使うと火を出さず、熱を生み出せる筈じゃが…」

マールは自分に向けてファイアを放った。

「ほんとだ! 一瞬体がポカポカになった!」

マールはファイア呪文を連呼した。

ボッシュ
「本来なら無詠唱で魔法は使えるんじゃが、お主ら古代人じゃないからのう…。
 体質的に無理じゃろうな…」



ルッカ
「タイムトラベルをする魔法ってないの?」

ボッシュ
「それは兄、ハッシュの専門分野じゃった。ワシはあまり詳しくない。ワシが知ってるのはせいぜい未来への擬似的ワープくらいかの…。

ルッカ
「ワープ?」

ボッシュ
「スロウ系魔法があるじゃろ? 空間に向けてスロウを重ねがけして、その空間の時間の流れを極端に遅くするんじゃ。その中に入れば、外の世界は早いスピード進むことになる。これがある意味での擬似タイムトラベルじゃ」

ルッカ
「へー。じゃあ、原始時代から帰れなくなっても大丈夫そうね…」

ボッシュ
「かなりの魔力を使うからのう。巨大な魔法陣でも描いて代用魔力を得ないと実用性がないのう。原始時代とかラヴォスがまだ飛来しておらん時代からだと、魔法陣で得られる魔力も少ないから現代まで帰るのは不可能じゃろうな…」


ボッシュ達は洞窟を抜けた。
一面雪の降る世界。ボッシュにとってな懐かしい景色。


ボッシュ
「あ、あの光の柱は!」

白い世界で、天から伸びている光柱を見てボッシュは喜んだ。

「良かった! 天空都市は健在じゃ!」

「なんじゃ〜
 ビビらせおって! 
 未来の映像は所詮未来の出来事。
 これでジール様に胸を張って報告ができる


 後はダルトンの問題だけじゃが、奴が王宮をどの様に私物化しておるのか、考えるとゾッとするのう。」




〜入国管理局〜

「武器はここであずかりますので…」


ボッシュ
「ご苦労さん」

担当者
「やや! ボッシュ様ではありませんか! 失礼しました。どうぞこのままお通り下さい…」




〜王宮〜

「おい爺!」

「はい、なんでごさいましょうかジャキ様」
振り返り、いつもの癖で反射的に答えたボッシュ
ジャキはタイムゲートに巻き込まれて中世で魔王の仕事をしていたはず。なぜ、どうして、と
ボッシュの頭は混乱していた。


「爺! 服がボロボロじゃないか! そんな姿で王宮をウロウロするとは教師の恥だぞ!」

「あと、そこの女! ほとんど裸姿じゃないか! 一体王宮を何だと思っているのだ! おい爺、聞いているのか? 早く女を連れて行け」

「申し訳ありませんジャキ様、直ぐに着替えてまいります」
ボッシュはいつもの癖で応対した後、エイラを世話役に預け、自身の部屋へと向かった。

ジャキはロボを珍しそうに見ながら、あちこち触っていた。


「姉様ー!」
ジャキはサラを呼んだ。面白そうな玩具を早く教えてあげたい。

「どうしたのジャキ」
サラが奥から出てくると、クロノ達に挨拶をした。
 

サラ

「皆さんは異国の方でしょうか?」

マール「え?どうして?」

サラ
「お召し物が見た事ないものでしたので」


マール
「え、えと、私達遠くの所、ガルディアから来たのです」

サラ
「ガルディア…
 ああ、あの国ですね。あの国は…
 良い所ですよね〜」

サラは王宮の鏡でもある。。メンツを重んていて『知らない』とは言えず、話を合わせた。


ボッシュは部屋で着替えていた。
4着ある筈のいつもの作業服が1着ない。
ボッシュはカレンダーを見て思い出した。この時代のもう一人の自分の存在を。

もう一人のボッシュは今、ラヴォス実験に備えて、いざという時の為に魔神機を破壊する剣を作っていた。
ラヴォス実験は2日後に迫っていて、この時代のボッシュは急いで作業をしている。

ボッシュは作業室へ走り、もう一人のボッシュと対面した。


「そうか…つまりお前さんは未来から来たのか…」


ボッシュ
「そうじゃ! 実験は失敗して、大変な事になる。未来で見たラヴォスは世界を破滅させたんじゃ。」

ボッシュ
「そうはいうが、ここは天空都市じゃぞ。ラヴォスが光の柱とやらで世界を破壊するとしても、この高さまで届くとは思えんが…

ボッシュ
「確かにそうじゃけど…」

ボッシュ
「お前さんも知っているじゃろうが。我らに選択肢ない。ダルトンとその背後にいる奴らの意には逆らえん。やるしかなかろうが。

ボッシュ
「確かにそうじゃけど…」

ボッシュ
「タイムゲートに飲まれたとして、助かるんじゃろ? ならそんなに深刻には…」



ボッシュ
「兄さん達は死んだのだぞ!」

ボッシュ
「だったら、魔神機に剣刺したら直ぐに逃げれば良いじゃろうが。タイムゲートにまきこまれる前に。」


ボッシュ達はガッシュとハッシュの元へ行った。


ガッシュ、ハッシュ
「まさかワシが死ぬとは…」

ボッシュ
「兄さん達はどう思う?」

ガッシュ
「未来に行きタイムマシンの様な物を作る…」

ハッシュ
「記憶はないものの、時の案内人みたいな仕事…しかもオシャレな服とステッキか…」

ハッシュ、ガッシュ
「楽しそうじゃないか!」



ハッシュ
「冗談じゃよ。歴史の欠片もジール王国が無いということなら、ラヴォスは恐らく目覚めるのじゃろうな。そしてジール王国は消滅する。」

ガッシュ
「だがな、実験を止める訳にもいかんのじゃよ。
 止めることができぬなら、やるしかない。
 要するに避難するとか、実験が失敗したときの対策をすればええんじゃろ?」
 
ボッシュ
ボッシュ二人でならダルトンを説得する事はできんかの? タイムマシンで未来を見せるとかで。」

ハッシュ
ボッシュ! それ良い考えじゃのう。それなら流石のダルトンも…」


その瞬間、クロノ達とボッシュの身体が光輝いて透明になった。

ボッシュ
「身体が消えそうじゃ…」

ガッシュ
「何が起こっている?」

ハッシュは考え込む。
「恐らくこれは、時の流れに逆らって歴史を変えようとしているから…かもしれん。
 ボッシュがタイムゲートに飲み込まれたからこそ、今こうしてボッシュはここに存在している。もしゲートに飲み込まれないなら、ボッシュの存在は無かったことになる。」

ボッシュ
「なら、ワシはゲートに飲み見込まれる運命を受け入れんといかんのか!」

ハッシュ
「そういう事になるな。ボッシュ、お前さんはゲートにの見込まれる時どの辺りのにおったか?」

ボッシュ
「真ん中…だったと思う。」
その瞬間、ボッシュの身体が光に包まれた。

ハッシュ
「お前さん、今嘘ついたじゃろ。本当はどのへんじゃ?

「右…」
ボッシュが光に包まれた。


4人は相談の結果、『タイムマシンをダルトンに見せる』を決断した。
『ハッシュもガッシュも死んだんだからボッシュお前も我慢しろ』ということ


4人共が『魔神機実験を止める』を決断したとき、全員が光輝いた。

ハッシュ
「『魔神機実験をしない』という選択肢は未来のボッシュが持ってきたんじゃった。そのボッシュが存在しない事になったら、『魔神機実験をしない』なんていう選択肢はそもそもワシら選べんから、ワシらの決断も存在しない事になるのう。」

『魔神機実験をしなければならない。』
そう決断したとき4人から光は消えた。


ハッシュ
「それが運命というなら、やらねばならんのかのう。


ガッシュ
「うむ。そのようだ。

ボッシュ
「…

ハッシュ
「未来から来たボッシュ。お前さんができることは出来るだけ民を安全な所に避難させる事じゃ。

ガッシュ
「もし大陸が海に落ちたら大津波が起こるだろう。海岸沿いの地の民を避難させねばならん。


過去ボッシュ
ラヴォスが暴走するにしても、ワシは念の為に赤い剣を作るよ。
 そしてまたこの時代へと皆に会いにくるよ…





未来のボッシュ
「1つ方法がある。
 未来のサラ様とジール様を連れてきて、みんながゲートから消えた後、ワシらがラヴォスと戰う。
 サラ様がラヴォスの力を押さえ込みつつ、ジール様が魔法で応戦する。」

ハッシュ
「それだと死の危険が伴うのてはないか?」

ボッシュ
「分からぬ。もしかしたらまたタイムゲートに飲み込まれるかもしれん。
 でも、せっかく築いたこの国を諦めたくないのじゃ。」

ガッシュ
「実質のダルトン政権なのにか?

ボッシュ
「天空都市が無かろうとダルトンみたいのは多くいる。地上で暮らすとしてもじゃろ…」



*1




ボッシュは中世に戻り、現状の王宮を報告した。

サラ
ラヴォスと戰うって? ボッシュ本気で言ってるの? 

ジー
「正直、わらわも勝てる気がせんな…」

ボッシュ
「未来での映像を思い出してみてくだされ。
 ラヴォスは体から光を空に向かって攻撃を放つ…
 要するにラヴォスの上に居なければ安全なのではと。
 タイムゲートはラヴォス近くで発生するとして、ラヴォスから離れて遠くから魔法で攻撃するのです。
 もし危険と判断するなら、予めワープゾーンを足元近くにおいて、そこから逃げるのです。」

サラ
「なるほど。それなら…

ジール王
「まだ不安があるがな…

サラ
「魔族に助力をお願いしてみるのはどうでしょうか。戰うことが好きな魔族は多くいます。ソイソーやマヨネー、ビネガーも頼もしい戦力になるかもしれません。

魔王ジャキ
「姉様、私をお忘れですか?」

サラ
「ジャキ…


「時の流れに反してはいけない」
ハッシュの言葉

未来でラヴォスの脅威を知ってそれを前提として過去でラヴォスを倒すこと。ラヴォスが死ぬなら前提となる未来がないから、過去でラヴォスを倒すことが成立しない。

ラヴォス破壊は、未来においては可能だが、過去ではできない。
にも関わらず、ボッシュ達は光に包まれないのはどういう意味か。
以外3つのどれかしかない。

ボッシュ達はラヴォスを倒せない
ボッシュ達はラヴォスに殺される
ボッシュ達は途中で負けを認め逃げる

ボッシュはハッシュの言葉を思い出した。

避難活動が一番確実である。
ラヴォスが未来でしか倒せないのなら、未来で倒せばいい。
1999年までに、人々を未来2300年向こう側に移住させる。そこを新たな住処として開拓すればいい。

1000人が収容出来るような巨大なシルバードを作り、人々を未来に連れて行く。
砂地になった未来を復興する。


ボッシュの考えを聞いたジールは古代へと向かった。


ジールは大陸の中央に特大の魔法陣を描き呪文を唱えた。
吹雪の寒い世界で、その空間だけが、温かくなる。そこに人が集まれる様にテレポートスポットを設置した。



ジールの得意な魔法はハレーション。
ハレーションを受けた者は体力1になり、瀕死の重症になる。
本当に瀕死状態になる恐ろしい技でない。瀕死になった気がするだけで、死ぬような恐怖を感じるだけ。ポーションさえあれば直にが立ち直れる。

ジールは国全体にハレーションを振りまき、弱った人々に、脅しのアナウンスをした。
「わらわのハレーションを受けたくないなら、、地上に逃げるしかないぞよ」

ラヴォスが暴走すると言っても信じない者や、天空だから安全だと思い込み、逃げない者がいる。そう考えたジールはハレーションを使った。

空飛びつつハレーション
 虹色の環が広がる。

ラヴォスが暴走して天空都市がなくなる。ので、ハレーション!」

ラヴォスが私のせいで目覚めてしまいますよ。ハレーション!」

ダルトンが悪い! ハレーション!」


皆の者よく聞け、わらわは、未来を見てきた。

未来はとてつもなく、ひどい世界になっている。

生きている人々は皆、困っている。

わらわは思った。恵まれてるそなたらなど、どうでもいい。

苦労知らずのお前たち等どうでもいい。



わらわは、未来で王になる。

こんな時代、ダルトンにくれてやる。


「わらわの苦労を知らぬ者は死んでしまえ」


暴君イメージしかない国民にとって、ジールは乱心している様にしか見えないだろう。
たからこそ、ハレーションの効果があるのだろうが…

「おいそこ! 地の民をシェルター(温暖区域)から追い出したな! 後でハレーションを浴びせるから覚えとけよ!」

「地の民をいじめた奴は皆ハレーション地獄を味わわせてやる。」


ボッシュとサラはバリア用の魔法を準備している。

ラヴォスのエネルギーに耐えるには広範囲なバリアでは魔力が持たない。

「サラ様が地の民を守ろうとしている!
ラヴォス神が世界を破滅させるのは本当なのかもしれない!」
「サラ様だけに任せる訳にはいかない! オレも!「私も!

ラヴォス防衛に必要なエネルギーが貯まる。


〜海底神殿〜

ボッシュ
「兄さん達、また会いましょう!

ハッシュ
「じゃ、時の最果てでな!

ガッシュ
「ヌウとして!

ボッシュは魔神機に突き刺した赤い剣が変化していくのを見ていた…



程なくして海から光の柱が天を貫いた。

光の雨が大地に降り注ぐ。

雪の地面が溶けていく

地響きで立っていられない地の民

魔法使い達は力を加減しながら、器用に浮く

ラヴォスの雨はいつ終わるのか。

砂煙で周りが何も見えなくなっても、衝撃はシールドを通して空気の振動として内部に伝わる。

耳を塞ぎ、蹲る人々。恐怖で怯える。

5分経過
景色は見る影もなく崩壊し、山々の輪郭が変わっていく。
ラヴォスは変化なく、光の攻撃をしている。

10分経過
ラヴォスは変化なく、光の攻撃をしている。
ジールもサラも汗を流す。
体からオーラがでて、長い髪が上になびく。
周りを見る余裕はなく、目を瞑り集中する二人。
山々は蜂の巣の様に穴だらけになる。


更に10分経過

大地はめくりあがり、ジール達のいる足場以外は谷の様なクレーターになった。

高さ10mの高台に東京ドーム1個分の広さのシェルターを建設したかの様に大地に落差が生まれている。

多くの山々は崩れ落ち、そこを住処にしている魔族も多くが死に絶えるだろう。


魔法使い達は疲労を貯め、目が虚ろで視線が定まらない。
魔力は殆ど使い果たして、意識が朦朧としている。
ドーピングの魔法で意識を繋ぎ止める。
だが一人、二人と、次々に力尽きて倒れる。

地の民は無力だった。サラやジール、その他の魔法使いを心配することしかできなかった。

更に10分が経ち、バリアシールドがボロボロになる頃、魔法使いで立っている者は殆ど居なかった。サラもジールも同様に魔力が尽きて倒れた。

ラヴォスの攻撃は未だ収まる気配がない。
このままでは皆が死に絶える。

「お、お母様…このままでは…

「わ、わかって、おるわ…」

ラヴォスの攻撃は生命の99%を絶滅させるエネルギーがあった。
ジール達の魔力で防衛しても、絶滅を98%に抑えられるかどうかのレベルでしかない。


サラは思った。この時代に戻ってきたのは偶然ではなく必然なのだと。
ラヴォスゲートに飲み込まれた後、人々はラヴォスの攻撃で死んだ。
未来に王国の歴史を語り継げる者が誰一人居なくなるまで殺されてしまったのだと。

全てはラヴォスを覚醒させる実験から生まれた悲劇。自分達の責任は免れない。

人々は実験を強行した王宮を恨みながら死んでいき、その魂が無念を晴らす為に自分達をここへ導いたのではないかと。罪を悔いて反省するか、さもなくば責任を取ってラヴォスを倒せと。それが無理なら命を駆けて人々を守れと。
みんな死んだのだから、今度はお前が死ぬ番なのだと。

【お前達が私達を殺したのだから、今度は私達がお前達を殺す番だ】

サラ
(お母様…この惨状を招いた私達は途方もなく罪深い…)


ジールはサラが何を考えているかは分からなかった。しかし、きっと物事をわるい方向に考えて絶望しているのだと思っていた。

ジー
(わらわは思うぞ。わらわがラヴォスを呼び覚まさなかったら、ラヴォスはしっかり睡眠時間をとり、未来で目覚める時間が前倒しで早くなるだけじゃろうと。)

ジー
(余計な事は考えずとも、やれることはもう少ない。魔力はもう無いんじゃ。すっからかん。後は運を天に任せるのみぞ…)


ジールはサラを見て笑った。

サラ
(こんな時に笑うなんて、やっぱり私、お母様の心なんて分からないや…)

サラもジールに笑顔を向けた。


ラヴォスの光はバリアを貫き、人々を巻き込んだ。
サラとジールも巻き込みながら…





「まだ、まだ、終っとらんぞ!」
ボッシュは透明魔法を解除した。そばに隠しておいたシルバードを起動し、サラとジールを乗せた。



ダルトンはその光景を見ていた。

「所詮人間はこの程度か…」

そう呟いたダルトンラヴォスの光が直撃した。

ダルトンは無傷だった。

ダルトンは何かの呪文を唱えた。

その瞬間、時が止まった。

ダルトンはサラとジールに歩み寄ると手をかざした。

タイムマシに乗りこんだサラとジールの体は光に包まれ消滅した。








気付くとサラは見慣れた場所にいた。ラヴォスの攻撃に備えてバリアを張る予定の安全地帯にいた。ジールも隣にいてハレーションによる避難誘導が終わったばかりの状態で、まもなくラヴォスが暴走を始める時。

腰が抜けた様にサラは倒れ、、ジールもまた同じ様になった。

サラとジールは同じ気持ちを察した。これから起きる未来を見て絶望していた。

ジー
「い、いまのはどういうことじゃ? わらわは未来を見てきたのか?」

サラ
「なぜかは分かりませんが、私達は過去にタイムリープした様です。」

未来での記憶を過去に引き継ぐ現象、タイムリープ
魔学の歴史にもその様な現象の記録は残っていない。
夢が幻か、もしこれが未来視としたら、ラヴォスとは正面から戦えという暗示かもしれないと二人は察した。

ジー
「済まないがボッシュ、後の事は任せた。



ラヴォス戦、海底神殿〜

ラヴォスがタイムゲートを発生させ、この時代のサラとジール、ジャキ、三賢者が飲み込まれたのを確認すると、サラは走りラヴォスの眼に触れた。
ラヴォスに意識を繋げ、ラヴォスが眠るように暗示を魔法かける。
ジールはラヴォスからの攻撃に備えてサラと自身にバリアを張る。ラヴォスの光の攻撃で神殿の天井に穴が空き、海水に押しつぶされる事に備えた特別仕様のバリアを張らなければならない。


バリアを作り終えた瞬間、ジールはラヴォスに心を乗っとられていた。

ラヴォスには生物の意識に繋がり、操る力があった。その能力はサラと似ているが、サラが繋げられるのはラヴォスだけだった。

ラヴォスジールに意識を繋いだとき、ラヴォスジールの心を共有した。
ジールの国民を守りたいという純粋な感情、一度は守りきれず失った悲しみと絶望。
ラヴォスは敵であるジールの心を支配するつもりが、ジールの強い念に協調し支配された。

ラヴォスがサラの心を奪えなかったのは、既にサラの力で意識がリンク(同化)していたからで、サラの存在を自身の一部として認識していたからだが、その一部も含めてラヴォスの意識全体そのものが、ジールの念に支配される事になる。

とはいえ、完全に支配できるわけでもない。
強い気持ちを常に維持することができない様に、ジールがラヴォスを支配できるのも一時的なものである。

ラヴォスの意識とジールの意識がせめぎ合う。

ラヴォスは世界に向けて光の柱をブチかましたい。ジールはラヴォスから人々を守りたい。
互いにラヴォスエネルギーを奪いあう様相になる。

ラヴォスは光の攻撃をしたい。
ジールは人々を守りたい

(ラヴォスは光の攻撃をしたい + 人々を守りたい。)+ジールは人々を守りたい=


ラヴォスは天に向けて力を放つも、ジールはラヴォスエネルギーを使い神殿で攻撃を防ごうとする。

物質変化の術を神殿にかけたジール。その術に意識を集中し、神殿を変形させ、ラヴォスを包み込もとうする。

ラヴォスは神殿に包まれる。光の攻撃で神殿の天井を破壊するも破壊した部分からすぐに神殿は再生していく。

ラヴォスエネルギーを用いた神殿はラヴォスの攻撃を鉄壁にガードする存在となった。

ジールはラヴォスを人のいない遠くに追いやりたい。

神殿はラヴォスを抱え込んで浮上し、空へと進む。

このまま空の果てに連れて行くつもりのジール。

だが、いずれ自身は寿命で死ぬ。ラヴォスの寿命は果てしなく長い。寿命があるのかさえ判らない。いずれラヴォスを支配できなくなる未来が来て暴走を止められなくなる。

これを解決するにはジール自身の意識を神殿内に閉じ込め、神殿と同化する事でラヴォスと意識を繋がり続けさせるしかない。

神殿に意識を転移する術を使い、サラの前から姿を消した。

ラヴォスを支配できている今の内にラヴォスエネルギーを抜き取れるだけ抜き取る必要があった。

そのエネルギーでジール神殿はラヴォスが容易には抜け出せない程の硬い質へと変化した。ラヴォスを未来永劫、神殿内に封印できることを期待して、また、誰かがこの封印を解かない様に神殿への侵入者、外敵を排除できるように要塞になる形に変形させた。

サラはジールが神殿になるのを止められなかった。
サラがラヴォスと意識を繋ぐというのは、ラヴォスが意識を繋いでいるジールともまた繋がるということ。ジールの気持ちが判りすぎて、止める様な無粋な真似はできなかった。
止めるにしてもラヴォスへの対処方法も判らずでは無責任でもある。

「お母様、有難う。」
サラはジールに感謝と別れ告げると、この状況を民に説明する為、国へ戻った。



ラヴォスが封印され、天空都市を維持するエネルギーはラヴォスから得られない。
天空都市は落ちている。
ジールの人々はこれから地上で暮らす事になる…



〜アザーラとガッシュの関係〜


ガッシュが原始時代に訪れたのはクロノ達が原始時代へ来る100年程前だった。
ガッシュは未来の2100年にデータベースから、ルッカの論文テレポッドを参考にルッカと同種のゲートホルダーを作り、時の最果てに辿り着いた。

最果てには一人の恐竜人がいた。
その恐竜人の名前をアウラという。

アウラは崖にあるタイムゲートに飲み込まれて最果てに飛ばされた。アウラルッカの様にゲートホルダーを持ってた訳ではない。

あるとき恐竜人の部族が崖際にできた不自然な黒い空間(ゲート)を見つけた。
竜人達はその穴の正体が一体、何なのか、好奇心や疑問を持った。
誰が先に勇気を出してそこに飛び込めるかを競争し、そこでゲートに飛び込んだのがアウラだった。

ゲートの出口はなく、ハッシュの力で時の最果てに飛ばされたアウル。
そんなアウラの元に未来からゲートホルダーを持ったガッシュが現れた。
アウルが辿ってきた空間の歪を見つけたガッシュは、それをこじ開けけることでアウラを元の時代に帰してあげる事に成功した。

だがアウラは帰らなかった。目の前にいる人間ガッシュに興味を持ち行動を共にした。

ガッシュは未来と原始時代を行き来し、アウラはそれに付き添い、未来のコンピュータを見つけた。
アウラにはコンピュータを理解する事は無かったものの、原始時代でそれと似たような物を知っていた。

アウラガッシュに恐竜人の遺産へと案内した。ディラン城屋上の渡り廊下を抜けた先の塔。そこに恐竜人が生み出したコンピューターがあった。

操作パネルはなく、石に触れて念じて操作するもので、映像も石に映る仕組みであった。

このシステムは魔学的に生み出されたものだとガッシュは理解した。

魔学的にそれを作るのであれば、ラヴォスエネルギーが存在していな、ガッシュにはラヴォスの気配を感じる事はできなかった。
だが石のコンピューターはラヴォスが過去に地球に存在していて、その頃に作られたものだとガッシュは推察した。

石から得られた情報もそれを示していた。石には過去に何度もラヴォスが飛来していた記録があり、次のラヴォス飛来予定日も記されていた。

クロノ達が知る飛来してくるラヴォスを含めてBC65億年から古代BC12000年までの間に109体のラヴォスが地球に衝突する。凡そ6000万年に一体のベースでラヴォスの衝突日時が記録されていた。

ガッシュがその事実をアウラに話したかは定かではないが、アウラは石のコンピューターの使い方をガッシュから教わった。

アウラにとってはガッシュは知識の宝庫だった。
ガッシュを知る為に人間の言葉を知りたがった。

ガッシュが石を調べていくと、過去から未来に至る文明毎の言語翻訳の知識を脳内にインストールできるシステムが備わっている事に気付き、アウラにそれをインストールした。

アウラはその力で言葉の異なる多民族を束ねた。
徐々にアウラを取り巻く恐竜人達の見方が変わった。
部族の長、ディラン城の秘められたシステムを起動できる唯一の存在として、偉大なる人物としてもてはやされると共に子孫を残した。

その子孫がクロノ達の知るアザーラだった。
アザーラはアウラと同じく石を使いこなした。

ガッシュの関与でアウラは人間に偏見を持たなかったが、後世のアザーラは違った。
ディラン城の偉大な遺産は人間の知識を遥かに上回るものであり、恐竜人こそが世界の覇者であり、人間は恐竜人に従属するべきと考えていた。

そんなアザーラもラヴォスの飛来で恐竜人が絶滅する未来に気付いた。

エイラ達をラヴォスの衝突に巻き込みたかったのか、あるいは単に恐竜人の遺産を自慢したかっただけなのかは判らない。バリアで自分だけラヴォスから逃れられると思っていたかどうかも判らない。
とにかく、アザーラを押し潰したラヴォスはまだ生きている。

クロノ達が飛来を目撃したそのラヴォスは古代のラヴォスとは繋がっていない。

65億年前のラヴォスの落下地点は古代では山脈になっていた。
古代でラヴォスが噴出した場所は山脈ではなく、遠く離れた海底神殿からだった。
原始時代と古代のラヴォスは別物である。
故にクロノ達の戦いは終わらない。
もしかしたら永遠に終わらない…





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*1:では作戦開始じゃ

クロノトリガーアレンジ物語

■プロローグ

コンセプトは『現代文明をモチーフとしたシナリオ』

戦いに無縁な現代人がどの様に戦いに巻き込まれるのか、説得力ある描写するのに大きな課題があると感じました。また本筋とは関係ない設定を広げておいてその設定を活かしきれてないので、不完全燃焼のままストーリー展開すると思います。

当方、小説を全く読まない人でもあるので、読むのが好きな人に向けてどう書けば良いか判断がつきませんでした。
当作者は力不足。願わくば、私を含め、クロノファンの誰かが、この駄文の屍を拾い集めて完全燃焼する様なストーリーを作って頂きたいと思います。



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ビネガー
「魔王様ここは…

マヨネー
「なんなのこの一面雪景色は?

ソイソー
「我々はどうなったのでござるか? ラヴォスの召喚は一体…

魔王
ラヴォスの召喚は失敗に終わった…

ソイソー
「なんと! やはり人間が魔王様の邪魔を!

魔王
「だが、私にとっては嬉しい誤算だ…

ソイソー
「? 

マヨネー
「ねえ? あの光なに?」

マヨネーは天まで届く光柱を指した。

魔王
「あれは…わたしの…故郷だ。 

マヨネー
「故郷? 魔王様は魔王城で生まれ育ったのでは…

ビネガー
「お前達は知らんだろうが魔王様は故郷は別の時代にあると言われておった。魔王様は詳しくは教えては下さらなかったが…


マヨネー
「別の時代? ビネガーちゃん、何訳分からない事言ってるの?

魔王は光の柱へ向かって進み出した。

マヨネー
「ちょっと待ってー、置いてかないで…


魔王
「私は、お前達に…嘘をついていた」

ラヴォスは魔族に繁栄をもたらすものではない。ラヴォスは私にとって憎き敵だったのだ。
私はラヴォスに復讐をする為にラヴォスを召喚しようとしたのだ。

マヨネー
(あんまり良く分からないけど、魔王ちゃんが恨むくらいに強い存在なんでしょ? 魔族に必要ってことよね?)

ソイソー
「では魔王様はラヴォスを倒そうと思い、召喚を試みた…。しかし、それは失敗に終わり、故郷のある時代へとラヴォスに飛ばされた…
それを魔王様は嬉しい誤算だとおっしゃるには故郷に何かあるのでござるな。

ビネガー
(ラヴォスを召喚して人間を滅ぼすって話は嘘だったのか…。魔族はそれを悲願として魔王様に使えていたというのに!

魔王達は古代ジールの地を訪れた。

入国受付
「随分と派手なコスプレの人達ですね…、やや!魔力値が賢者クラス! これはこれはつゆ知らず、高名な方をお止めして申し訳ありません。どうぞ先に進んでくださって結構です。武器はこちらに提出ください。」

ビネガー
「魔王様、いい加減教えて下さい! 我らはラヴォスが魔族に繁栄もたらすと信じて魔王様に仕えていたのですぞ。なのに我らはラヴォスの生み出したゲートに飲み込まれ、見知らぬ土地へと飛ばされた。魔王様は我らを裏切ったのですぞ。」

ソイソー
「口が過ぎるぞビネガー! 魔王様にも何かお考えがあってのこと!」


魔王は足を止めて山頂の王宮を見上げた。


魔王 
「ビネガー! 私がこの国の王子だと言ったらどうする?」

ビネガー「?

魔王
「私はこの国の王子だった…」

魔王は古代ジール王国の話をした。
自身は元々この国の王子ジャキでラヴォスが暴走して中世時代に飛ばされてきたこと。
その原因を作り出した母親ジールを憎み、今からジールを倒して、王として君臨する計画を話した。

ビネガー
「魔王様は人間だったのですか…」

マヨネー
「えー。人間? ぜんぜん見えない」

ソイソー
「人間であろうとなかろうと、魔王様は魔王様でござる。」

魔王
「私がこの国の王となり、人間を支配する。そこにお前たちも楽園を作るといい。」

マヨネー
「それはいいけど魔王様、この国は日差しが強すぎます。なんとかなりませんか。」

魔王はマヨネーに日差し避けの魔法を使った。

ビネガー
「あ、マヨネーだけずるい! 魔王様わたしにも!」

ソイソー
「できれば拙者にも…

魔王達は空を飛び。王宮を目指した…

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■1話



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千年祭、子供の夏休み期間を含めて凡そ40日続くこの祭典は世界各国から人々が集まってくる。

初日、入場に寝坊したクロノは行列の波に埋もれていた。

各種ブースでは朝の生報道番組のカメラマンやインタビュアーがいて、フラッシュも炊かれていて非常に眩しい。

リーネの鐘。ガルティア建国を記念して作られて以来、1000年もの長い間、形を変えることなく佇む。その鐘は毎日、8時にベルを鳴らし、ガルティアの街に響きわたる。
いつもなら鐘の音が鳴り響く頃には目覚めるクロノだが今日は違う。
深夜3時、クロノはルッカに突然呼び出され、当日発表するスピーチの練習に付き合わされていた。。今日は殆ど寝ていないクロノはうっかり寝坊した。

開会式初日の目玉になるイベント、ルッカのブース。世紀のテレポート実験の成功を世間に知らしめる日でもある。クロノもその瞬間に立ち合いたいが遅行しそう。

走るクロノ。
汗が目に入るクロノ、焦っていたこともあり、
人とぶつかった。


クロノは剣道で鍛えてる。体は打たれ強いが相手は痛そうにしている。クロノはばつの悪そうな顔で謝ろうとかけよった。

彼女は下を見てキョロキョロとし、何かを必死で探していた。

「ありがと~、このペンダントめちゃくちゃ大事なもので無くしたら大変だったんだ〜」
「あ、そだ。私、名前マール」
「そう、クロノっていうの宜しくね?」
「私、一人でこの祭り来てて、迷路みたいで良くわかんないんだー! 良かったらさエスコートしてよ」
「さっき、ぶつかったお詫びもかねてさ、連れてってよ」
少し距離感のおかしなマールにぐいぐいと引っ張られる。クロノは引っ張られるのであった…


「へぇ、クロノってあの天才発明家ルッカの幼馴染なんだ〜。そういえば今日は世紀の大実験をするんだって? 私もたのしみ〜」
「あ、これ私も知ってる。 ルッカが子供の頃に作った宴会用盛り上げカラオケAIロボでしょ?」
「あ、何これおいしそう。買っていこー!」

マールが人に取り入るのが上手いのか、それともクロノが流されやすいタイプなのか、ルッカのブースに来る頃にはクロノは完全に遅刻していた。ルッカのスピーチはほぼ終わり、デモンストレーションが行われている最中だった。

「はい、じゃあ、次、人間でやりまーす」
テレポートの人体実験がスタートした。 
「やりたい人いますかー!」
ルッカの掛け声に勢よく答えのはマールだった。

「はい! そこの元気のいいお嬢さん。こちらの台にお願いします」

準備が整い、テレポート装置が稼働する。


実験では5m離れた台にテレポートするはずだった。
マールが首にかけていた金属に問題があったのか、装置が異状音を鳴らし始めた。

ルッカが制御装置の電源をオフにしても止まらない。

電気が通っていない筈はずの装置が動き続けた。
機器がショートしているのか、マールも感電しているのか動けず、台の上から降りるとことも逃げることができなかった。

会場がざわめく中、大きな閃光が走った。
瞬間、眼前の空間が裂け、黒い穴が現れた。
黒い穴に吸い込まれそうになるマール。
マールはその穴にあらがいながら吸い込まれ、そして消えた。
「クロノたすけて!」という言葉を残して

マールが消えた後、空間の裂け目は閉じた。

会場はざわついた。
「きっと演出の一つだ」「何かの冗談でしょ? マジックショーだよ」「実験は失敗して死んだんだよ。」
と人々は騒いだ。

クロノとルッカはただ事じゃないことが起きたと理解した。

実験ではありえない事だった。あらゆる金属を試して万が一にもそういった異常なトラブルが起こらない様に配慮していた。

ルッカの動揺は計り知れないもので、クロノも、このままでは祭典の継続すら危ういと思った。

人が死んだかもしれない。
その悲劇もさることながら、クロノはルッカの日々の苦労を観ていた。何年も苦労して完成させた装置、それが原因で人々が待ち望んだ千年際を台無しにし、人の命さえも奪ったかもしれない。
クロノがもしルッカの立場なら生きていけないだろう。自殺だってありうる。

クロノはその先を考えたくなかった。





死んだ気になれば人は何でもできるという。

「ちょっと! 何をするのクロノ!」

ルッカが気付いたときにはクロノは既に装置の電源を入れ起動スイッチを押していた。クロノの首には先ほどマールが落としたペンダントがかけられている。

「やめて! クロノ!」

装置は先程と同じく、電源を落としても動き続けている。

ルッカは電源コードを斧で切断し、完全に電流を遮断したが、それにも関わらず装置は起動し続けた。

クロノはマールと同じように空間の裂け目にすいこまれた…






クロノの視界にトンネルが広がっていた。
テレポートの実験は通常一瞬で終わる筈のもので、トンネルの中を前進していく様なものでない。

クロノは10秒以上、トンネルを前進している。

実験では5mのテレポートは一瞬の出来事だった。仮に0.1秒で5m進むとするなら、クロノはもう10秒以上その穴の中を進んでいるから、500mは進んだ事になる。500m先に出口があるのか、もしあったとして岩の中だったら重なって爆発して死ぬだろう。あるいは500m上空に転送されたり500m地面の中だったら…

ルッカとの実験で危険があることは証明されていた。それを考えてゾッとするクロノ

余計な事を考えると不安になるだけ。もう引き返せない。

クロノは祈り続けた。

身体は動かせるもののどうにもならない。ただ流されるままだった。

トンネルの先に光が見え、抜けた時、
森が広がっていた。
山の中、木々が生い茂る中に放り出された。

ここはどこだろうかと考えるよりも先にクロノは安堵していた。
その場にへたり込んで笑った。

自分が助かったのだからマールも助かったろうし、ルッカの将来も助かった。

いっとき、生きる屍の様になっていたクロノにとっては生きかえる気分だった。
笑いが止まらないクロノ、浮足立つ。しかし、早くマールを探してルッカの元に帰られなければならない。流石に心配させすぎだろうから。

山を降りる途中、ガルティア城が眼下に見えた。クロノは直線距離にして1キロ程度ワープしたことになる。

マールとは5分と間を開けてないから、急いで降りれば合流できるかもしれない。クロノはいそいそと山を下った。

山を降りると千年際会場敷地の裏側に出る位置だろうから、この位置ならマールも道に迷う事もないだろう

しかし、見えない。千年際会場がない。
見渡すとリーネの鐘はある。ここにルッカや見物人が多くは居たはずなのに誰もいない。

夢でも見ているのか。自宅に帰ってみるも、家がない。家がないどころか、街自体おかしい。
大昔にある様な水車小屋や牧場、井戸。
まるで過去にタイムトラベルしたかの様な光景。

クロノは落ちてる新聞を拾った。
日付、ガルティア歴600年。クロノは400年前にタイムスリップしていた。

新聞の広告にはガルティア国、戦争兵募集中と書いてある。
何かの間違いだ、夢に違いない、夢ならやってはいけないことをやってもいい。と半ばヤケクソ気味にガルティア城の門を叩いた。

「お、貴様志願兵か? にしてもヒョロい身体だな。そんなんじゃ面接の段階で落ちるぞ」

現代の王宮には、一般市民がやすやすと入れるものではないが、クロノは志願兵と思われ、すんなり入れた。

「まあ、頑張れや若いのー」
門番は朗らかに微笑んだ。

クロノは王宮に入るのは初めてだった。テレビで王や護衛を見かける事はあっても生で見るなんて初めてだった。

クロノはやはり夢でも見ていると思った。
人としてやってはいけないことができる。

そう思ったクロノは王室の寝室を荒らす事にした。
クロノは堂々と王宮の上階に上がった。

王族部屋の入り口、衛兵は偶然にもクロノと入れ違いにトイレに篭っていた。今日はたまたま下痢であった。

そうとは知らないクロノは寝室に突入した。

「だ、だれ?」


「た、助けに来てくれたの?」
ドレスや髪飾りで分からなかったが、
寝室にいたのはマールだった。

抱きつくマール。
クロノはまだマールだと気付いていない。

「実はわたし、ここに無理矢理連れてこられたの。リーネ王妃と勘違いされて…。でも私見ちゃったの、山で人がさらわれていくのを見たの。しかも犯人は…」

マールがその先をいいかけた瞬間、光に包まれた。
マールは光を振り払おうとするが、光は消えない。

マールは不安だった。千年際で闇の穴に引きずりこまれたのと反対の感情。
闇は怖かったけど、温かかった。クロノに声が届いてるような気がした。でもこの光は真逆で、クロノにもう、声が届かなくなるような冷たく寒い、存在が消される恐怖に支配された。

「こわい、こわいよ…」

マールは消滅した。

クロノは何が起きたのか理解できないでいた。

マールが世界から消滅したこと、夢の続きだと思い、ふらふらとベットに横たわっていた。

眠たくはないクロノだが夢の続きをどうするか考えた。

一階のシャンデリアのある大広間には王様が偉そうに座っていたから何か面白いイタズラをしてやろうと、駆け足になった。

一階の広間にはルッカがいた。

「良かった、無事だったのねクロノ」

「いい、よく聞いて、私達は400年前にタイムスリップしてきたの」

「クロノが消えたあと、あのペンダントが残されてて、鉱石の波長を調べてみたの。特殊な波長だったから、その波長を再現することができれば同じことが起こるかもって。」

「クロノとあの娘がゲートに飲み込まれるとき、ペンダントだけは飲み込まれなかった。もしペンダントはゲートをくぐれない仕組みになってて、もしゲートの向こう側からペンダントがないと帰れない仕組みになっているなら、誰かがペンダントと同じ性質のものを持っていかないとって、思ったの」

「一か八か、このまま人生生き恥晒すくらいなら飛び込んでやったわ。」

「でも、まさか過去にタイムトラベルしているなんてね(笑)
 世紀の大発見よ!おホホホ!

 休止に一生、転んではタダじゃ起きない私!
 流石のわたし、天才ルッカ様だわ!」


「で? あの娘はどうしたの?
まさか行方不明になりました。なんて言わないわよね?」

クロノはしどろもどろにならながら縦に頷いた。

「はぁ? 命がけで女の子を助けに来といて、、ひとりでベットでゴロゴロして、王様にイタズラしてやろうとしてただって?」


ルッカの怒声が場内に響き渡る。
会場にいる誰もがクロノ達を凝視した。

我を忘れて説教をしているルッカ
放心状態のクロノを門番は抱えて外に放りした。



「クロノの見聞きした事から推測すると、その消えた娘はマールディア王女ね。この時代、つまりマールディア王女の祖先リーネが誘拐されて何者かに殺された。だからマールディアが生まれてくる歴史そのものがなくなり、存在が消えた。」


「存在が消えたなら、どうして私達の記憶にマールがいるのかって?」

「うーん。もしかしたら時と共に記憶も消えるかもよ?」


「記憶がある内はまだ先祖のリーネは生きているかもしれないわ」

「どうする? 試しに、マールほっといて元の時代に帰る?」

「未来はマールがそもそもいない世界。誰もとがめたりしない。」

ルッカの言葉はあたかもクロノに正義感がないものとする様な前提で展開された。
クロノは意味もなくプライドが傷付いた。

「よし、助けるのね! わかったわ!」

「じゃあ、まずは聞き込みしましょう」

クロノ達は人さらいの様な怪しい人の目撃情報を聞いて回った。

得られた情報は

リーネが誘拐されたのを誰も信じないこと。もし誘拐されたら王宮から兵士がわんさか飛び出してくるはず。

南にある大橋は南の大陸とを繋ぐものであるが先の戦争で倒壊しているそう。断崖に囲まれていて船での誘拐は困難。

お忍びでガルティアの大臣一人が妓楼に予約を入れているのに来てない。

教会に誰もいないのにピアノの音が鳴り響くというのが本日何度もあった。


「教会怪しいわね…。」

クロノ達は教会に向かった。

教会ではシスター達が席に座り、祈りを捧げている最中だった。
噂の誰もいないのに鳴るピアノを見ると、赤色が少し付いている。
「まさか、血」
ルッカは思わず声に出しそうだった。
注意深く見ると微かに薄い赤色が、いくつかの鍵盤部分に見えている。

と、み、そ、鍵盤と
れ、ふぁ らの鍵盤が染まってる。

クロノはおもむろに鍵盤を弾いた。

一分程演奏し、赤い鍵盤を眺めていると、シスター達がこちらを見ているものの話しかけてこない。祈りの邪魔をしているというのに。
「ねえ? 食べちゃおうよ。」

「ねえ? 食べちゃおうよ」

「どっちが、好み?」
「私は赤色の髪の子が好み」

シスター達はおもむろに服を脱ぎ始め、下半身を露出させた。
しかし、スラリと伸びる足は一本しかなく、それはシスター4人ともがそうで…
足が一つなのは怪我をした等ではなく元々一つしかない。
下半身が蛇の女だった。


蛇女は足元から這いずりながら顔まで上がってきた。
鳥肌が飛び上がりそうになる。
息遣いが耳に掛かる。
思わずダッシュして逃げたクロノ達。

ルッカ
「明らかにおかしい。なにあれ?」
ルッカ
「コスプレ? にしてはリアル過ぎた。」
ルッカ
「でもあの鍵盤が血だとしたら
 絶対何か隠している。」


教会に戻ると入るのを躊躇くらいシスター達がこちらを見ていた。蛇女がシスター衣装に身をつつみ先程と同じ場所に座っている。

顔は人間の女だが口元と下半身が蛇の形をしてる。ペロッと舌を出してこちらを見つめている。

余りの異様さに、ここに誘拐されたリーネ王妃がいると確信を得た二人。
とはいえ、やはり化物は見間違いに違いない。クロノもルッカもテレポート装置の調整で連日睡眠不足が続いていた。幻覚に決まっていると思い込もうとした。
もしも今、幻覚に恐れをなして助けを呼びに行こうとしてリーネが殺されたらマールは救えない。

訳の分からない恐怖を堪えながら二人は教会の裏口がないか探した。


裏口は見つからなかったもののクロノは違和感に気付いた。
教会の外観の作りに比べて、中の広さに奥行きが足らなかった。
教会の中には奥に繋がる戸口はなく全て壁だった。

ルッカ
「教会の奥には隠し部屋があるということね?」

ルッカは外壁を叩き始めた。
壁が薄ければ反響が良くなる。そこをドリルを使ったりハンマーで叩き割ればいいと思っていた。

いざというときの為に工具箱を携帯していたルッカは慎重に聞き耳をたてる。
すると壁を叩き返す反応があった。

何度が叩くと、その都度叩き返す反応がある。

この場所なら削れる。そう判断した瞬間、壁からの叩き返す音が聞こえなくなった。

ルッカ
「まさかもう殺されてしまった?」
「あるいは縛られて動けなくなっている?」

部屋の様子が解らないルッカ

ルッカ
(犯人なら目撃者が近くにいると思って犯行を辞めるかもしれない。いや、後が無くなったと思ってヤケクソになって犯行に至るかもしれない。)

正しい判断を選べないルッカ
ルッカが悩んでいるとピアノの音が大きく響いた。


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■2話



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クロノは化物が本物だと信じていた。
夢や現実だとかコスプレだとかどうでも良く、ただだリアルに化物にしか見えなくて怖くて、死ぬんじゃないかと震えながら、ない知恵を絞って考えた。

クロノは鍵盤を叩いた。
めちゃくちゃに叩いた。

ルッカは悟った。音に紛れて壁を破壊しろと。そう受け取った。

クロノの周りには妖怪蛇女が寄ってくる。
蛇女達はクロノにまとわりつく。

蛇女達はシスターの衣装を纏っている。
外からみれば色仕掛けされてる男子にしか見えないだろうが、クロノは死を恐怖していた。

「あと少し」
「あと少し」
「あと少しで…」

何があと少しなのか、クロノは次の言葉を聞いてぞっとした。

「あとすこしで食べていい」

ベビ女の涎でベトベトになりながら、恐怖を堪えて考える。
あと少しで食べていいを文字通り解釈すると、
あと少しでクロノは食べられてしまう。恐怖に支配され、それ以外の可能性が見えなくなるクロノ。

今すぐ逃げたしたいクロノ。でも逃げたらリーネが食べられて先祖のマールも消える。
殺される恐怖と人を見捨てる罪悪感を天秤にかける余裕すら無かった。剣道から武士道精神を学んでいたクロノだが、そんなことどうでも良いくらい頭の中は目の前の蛇の牙一色になる。

本能が逃げろと言っているが、ほんの少しだけ理性が働いた。

あと少しって何だ?

その疑問一点に余裕のない思考を注いだ。

蛇は何かを待っている? 
何を待つ?
時間のことか?

クロノは壁に掛かっている時計を見た。
レトロな時計、その針は間もなく3時を指そうとしていた。

3時ちょうどにクロノを食べていいルールなのか。
もしやオヤツの時間になるのか。
訳の分からない思考にはまり、思わず目を瞑ったクロノ。

「おいしそう」
蛇の吐息と目蓋を舐める仕草、ビビリ、思わず目が開く。

10センチはあるだろう目玉がしっかりとクロノの目を見据えていた。

4匹全てがクロノを食べたそうに見つめていた。

【4匹は時計は見ていない。】

蛇達は時間を気にしている訳でない。
だが何かを気にしているようだった。

蛇達の目は時計を見ないのに、何故か、壁の隅ばかりみていた。
大きな白い目玉がクロノと壁端を行ったり来たりする。
その光景を見た瞬間、クロノの脳に電流が走った。

壁の隅に奥へと続く隠し扉があるのではないか。
蛇達はそこから出てくる雇い主の合図で、シスターに成りすます仕事が終わり、本当に化け物としてクロノを食べても許される時が来る。

だとしてもどうする?
その隠し扉をとう開ける?
扉の前まで行ったら、その行動が怪しまれて自分は今にも食べられるのではないか。

そもそも、いつ蛇の主が出てくるか分からない。今この瞬間にも出てくるのではないか。
その瞬間というのは既にリーネは殺された後かもしれない。
なら今直ぐにも自身も食べられる可能性があるのではないか。
もし運良く扉を見つけてその先でリーネを見つけたとして、そこからどうやって帰ればいい? ルッカが壁を開けて道を開いてくれていなければ逃げ場なんかない。
この計画性の全てはルッカ頼みでしかない。

しかしルッカが壁を開け終わってもルッカにリーネが助けられるのか?
失敗してルッカが犯人に殺されてしまう可能性だってある。
もしかしたら、今この瞬間にも殺されているかもしれない。
今にこの場から逃げてもルッカの死体が外に転がっているだけなら?
ルッカが今既に痛い思いをしているとしたら?


クロノは蛇達を払い除け、壁の隅に突撃した。
扉がそこにあって、もし破れないなら直ぐに走って逃げよう。そう考えての判断だった。

しかし、壁に激突した瞬間の衝撃を感じなかった。クロノは、チカラが抜けるように転げた。

そこに壁は最初から無かった。壁柄をした幕が敷いているだけだった。

「コロス!
コロス!
 タベル コロス!

コロス!タベル!
コロス!
  コロス!
   タベル!
タベル!
  タベル!

蛇女達の様子が急変して襲ってきた。
バレたら直ぐに殺していい。そして食べていい。そう主(あるじ)から命令されているのだろうか。
とにかくクロノは走った。ここまで来てしまうと引き返す方が怖い。後ろを見るのが怖い。

奥へと走った。武器も何もない丸腰ではどうしょうもない事は分かっていたが、もう引き返せない。
パニックしながらルッカが壁を開けていてくれることを信じてクロノは猛ダッシュした。


奥の部屋にはリーネ王妃。まだ、壁に穴が空いてない。
リーネの傍らには口の大きな緑色をした、ぬめした化け物が凶器を持っていてクロノを見た。大きな剣をチラつかせて…

化け物はクロノに向けて剣を振りかぶった。
眼前に飛び散る血しぶき。

クロノは思った。

剣道習っていたのに何の意味もなかった。
ここに来る前に武器を探したり、準備する時間はあったかもしれない。

後悔したってもう遅い。
自分はもう死んだのだ。
諦めろ。
諦めるしかない。

ルッカを信じたのが浅はかだったけど
お父さん
お母さん
浅はかな息子でごめんなさい

勉強疎かにしてごめんなさい。
そして、ありがとう。

痛くなくて、ありがとう。

あれ? 痛くない? 


「おい、何してるガキンチョ」 

目の前の緑の化け物(カエル)が、喋っている。
クロノは頭の整理が追いつかない。


「切られたのは後ろの蛇たちですよ。」と優しい声が囁かれてる。
後ろを見ると
クロノの背中に折り重なる様に4体のヘビが倒れ込んでいた。
重くて抜け出られない。

「おまえ、世話が焼ける奴だな…」

「まあ、でもお前が鍵盤に夢中だったのと蛇達がお前に気を取られてるお陰でリーネ様を助けられたんだがな…。」

リーネ
「この者は、こんななりをしていますが立派な騎士。ガルティア1番の武人なのですよ。」 

カエル
「リーネ様、勿体無いお言葉です。」

クロノは未だ理解が追いつかず、立ち尽くしていた。

カエル
「おまえ! リーネ様の前で頭が高いぞ。私よりも頭を高くしやがって!」

カエルが頭の上に乗って、クロノを跪かせた。


カエル
「よし、では帰りましょう。リーネ様」

リーネの前を護衛する様にカエルが先導していった。

ふと足元をみたクロノ、蛇以外の亡骸が一体転がっていた。
色は茶色だが形はゴキブリ。全長3mくらいだろう。カエルに切断されたのだろうか、黒い粘液を床一面にぶちまけている。

やはりこれは夢か幻か、クロノが考え込んでいると。

タンスが動いた。

中からドンドンと叩く音がする。
クロノは怖くなってカエルを呼び戻そうとしたが、怖気付いたと馬鹿にされるのと、ルッカにカッコ悪く見られそうなので止めた。

「たすけて〜」 

か細い声がタンスの一番下から聞こえた。

隙間から白い毛の様なものが見えた。

「大臣です。私はこの国大臣です」

本当に?
思えば今日は目を疑うようことばかりだったクロノ。疑うことしかできなくなっていた。


「大臣です」


証拠は?



クロノはタンスから大臣を助けた後、その奥から日本刀を見つけた。

身を守るものが必要だと感じたクロノ。頂いて良いかと聞いた。

大臣
「別によかろうて。教会に武器を隠しとるなんて似つかわしくないからのう。それにこの教会は魔族が運営しとったんじゃ、盗むでも罰はあたるまいて。」


クロノは日本刀を手に入れた。


「クロノ!」

ルッカの存在をすっかり忘れていたクロノ。

「忘れてない? 私達の目的はマールを取り戻すことよ」

クロノは頷いた。

「マールが消えた場所に案内して頂戴。」


クロノは駆け足でガルティアに戻った。
マールが消えた場所はリーネ王妃の部屋。
王宮は王妃が行方不明だと気付いていて騒がしくなっていた。

クロノ達は王妃の部屋まで障害なく進んだが、部屋の前で衛兵に取り押さえられた。

「王室を荒らすとは言語道断!」

何から説明していいか、あたふたしていると室内が光に包まれた。

兵士が異常に気付いて、いそいで扉を開けると光の中からマールが現れた。

「リーネ様! 一体部屋で何が!?」  

放心状態の兵士は、はっとして我に返り、部屋に入ったクロノ達をつまみ出そうとする。


「無礼者、頭が高い! 二人は私が招待したのだぞ。部屋に通せ!」 

兵士
「は!」


「どうクロノ? 本物の王女みたいだったでしょ?」

マール
「間違われて閉じ込められたんだから、罰として、ちょっとくらいイタズラしてもいいよね。

 え? もう本物の王女だってバレてる?

 えー、残念…もうチョットくらい羽目をはずしたかったのに…」


ルッカ
(あんまり王女という程の貫禄さはないわね…)

マール
「あれ? そっちの人はルッカさん?」

ルッカ
「おや、私の事をご存知ですか? そうです。私が天才ルッカ…てこんな言ってる場合じゃないわ!」

「クロノ! 直ぐにゲートから帰らないと!」

「ゲートの開閉の理論はある程度分かったけど、もしかしたら今日明日、あるいは今直ぐにでも空間の揺らぎが消えるかもしれない。もし消えたら二度と帰れなくなるわよ!」


クロノ達は駆け足で向かった。

一階広間でリーネとマールが鉢合わせる。

リーネ、大臣、王、兵たちたちは驚いた。

大臣
「どういうことじゃ!? リーネ様が2人も!」

ルッカ
「ダメよ、よそ見してちゃ。いそいで二人とも!」

マールはドレスを脱ぎ捨てた。


三人は城を出て山道をひた走った。



〜山奥〜

マール「私達が現れたのこのへんだっけ?」

ルッカは周囲をうろつきながら空間の歪を探していた。

ルッカ
「あった! さあ、帰るわよ二人共!」

マール
「え? 帰るってどうやって?」

ルッカ
「じゃじゃーん! 
 これ名づけてゲートホルダー!
 テレポートシステムの小型版を作り特殊波長を埋め込んだの。微弱なエネルギー量でも波長を合わせれば空間の揺らぎが開いてタイムゲートに…」

マール
ルッカ! 長話しているヒマがなーい!」

ルッカ
「よし、じゃあ二人とも私に捕まって!」
 (三人でゲートくぐれる保証ないけど)



〜現代
 ガルティア歴1000年〜


マール
「やったー! 戻ってきたー!」

ルッカ
「流石天才な私!(良かったぁ! 三人ともゲートくぐれたよぉ〜」


マール
「てか、もう夜だね…
 あ、門限がやばいー! 大臣に怒られる!」

走り出すマール

「待ってマール!」

ルッカがクロノの耳元で囁いた。
「お姫様を最後までエスコートするのが勇者の役目でしょう? それにほら、マールの命を助けたって事なら金一封とか出して貰えるかもしれないわよ。」


ヒソヒソ声で玉の輿チャンスもあるかも。とルッカにそそのかされるクロノの前に、一人の老人が現れた。

「そこの青年よ、その手にぶら下げてるのはホンモノか?」

クロノはしまったと思った。中世から持ち帰った刀。現代で日本刀等を持ち歩いてたら銃刀法違反で捕まってしまう。

ルッカ「おじいさん、これはコスプレに使うおもちゃの刀よ。


「嘘を言ってはいかんぞ。ワシにはわかるぞ。」

ルッカ
「なぜ、そう言い切れるの?」


「ワシはこう見えてちょっと有名な鑑定士じゃ。ほら、時々、テレビにも出とるじゃろ、ふんわり鑑定団に。」

「ワシは趣味で刀も鋳造しておっての、本物か偽物かは見てわかる
 たとえばお主が持っている刀の鞘、重厚感ある光沢を放ちちつつ、東方文化独特の長輪島式の模様をしておる。」

「長輪島式は地方の無名の少大名が作らせたもので、コレクターにも人気もなく、偽物すら殆ど作られんかったもんじゃ。
マニアの中のマニアしか知らない一品をコスプレで使われる訳がないのう。」

ルッカ
「この刀は最近流行ったアニメ、極めつけの刃をモデルとしてるから、お爺さんが知らなくてもおかしくないわ。」


「ワシを爺さん呼ばわりするでない! ボッシュと呼びなさなさい。ワシも極めつけの刃は見ておるので、鞘もチェックしておるがの、輪島式ではなかったぞぃ。そもそもアニメやコスプレ業界は著作権にうるさいからの、実在の刀をモデルにするとは思わんがな。ほら、ちょっと貸してみなさい。見せてくれんと通報するぞ」

クロノは恐る恐る刀を渡した。

ボッシュ
「ほらみろ、やはり本物ではないか。」

ボッシュはまじまじと調べた。

「な! これはまさか本物の輪島式?
 いや、そんな訳は…本物であれば、こんな状態の良いまま現存する筈がない。
 お主らこれをどこで手に入れなさった?」

マール
「私達は過去にタイ…」

マールが言おうとしてルッカが口を塞いだ。タイムトラベルをした話なんて信じて貰えるとも思えない。嘘つきと思われて、ややこしくなって通報されるかもしれない。過去の存在を証明しようとするにしても無闇ゲートを行き来して危険が伴うかもしれないし、歴史が変わってしまうかもしれない。
 

ボッシュ
「過去がどうしたかの? 」

クロノ達がモジモジしていると。

ボッシュ
「お! そうか、そういうことか! ワシの様な刀マニアが長輪島を模して作ったのか!」

ボッシュは勝手に納得した。

ボッシュ
「ええのう。ワシもそれ欲しいのう。良かったらその刀作った者を紹介してくれんかのう」

ボッシュは名刺を取り出してクロノ達に渡した。

ボッシュ
「しかし、お前さんら、どうして刀を持ち歩いておるのじゃ? しかもコスプレと嘘をついてまで…千年祭なんかに本物の刀を持って歩いとることがバレたら警備の人に捕まるぞい

ルッカ
「…」

ボッシュ
「うん? お主の顔どこかで…

ボッシュ
「お主はもしかしてルッカ…殿か? 若くして自立型の宴会用カラオケロボを開発し、今日は朝から世紀のテレポート大実験をしていたあの大発明家のルッカ殿か? そういえば今朝、実験を途中でいなくなって…。」

「じゃあ、そこにいる二人があのとき消えた二人かの? 無事に返ってきたんじゃなぁ。良かったのう。」

ボッシュは「なるほど。」と呟いた後、ルッカにサインをねだった。

ボッシュ
「まあ、おおかたルッカ殿のお友達二人は運び屋のアルバイト、というところじゃろうか。これから刀をマニアな人にお届けするんじゃろうなぁ。その気持ち、わかるぞぃ。」

ボッシュは刀を返すと立ち去って行った。


ルッカ
「なんとかなったわね… クロノ、刀は一旦私が預かっておくわ。実験で持ってきた資財の中に忍ばせておいて、後で届けるから」

ルッカはそういうと、そそくさと実験装置の片付けを始めた。
二人に手で早く行くように合図していた。

マール
「じゃあ、途中までエスコートお願いできるかな?」

クロノは頷くと、千年祭の会場を出た。


交通の多い大通りを歩く二人。


マールはこの国ガルディアの王族、帰るのは当然、王宮になる。

普段は護衛が何人もいるのが当たり前で、大きなリムジンに乗るのがあたりまえであり、徒歩で見送るというのも不自然であった。せめてタクシーを呼ぼうかとマールに聞くも、「いいのこのままで」と言うだけだった。



沈黙が続いた二人。
中世では忙しくてマールが王族だと理解する余裕すらなかったクロノだが急に、何を話していいのか分からなくなった。

千年祭でマールに出合ったときは、ルッカの話、主にテレポート装置の話をしたくらいで、クロノ自身の話はしなかった。

通りの反対側にクロノの家がある。
自宅は千年祭のすぐ近くにあり、近所にルッカの家がある。
自宅が見えた頃、人だかりができていた。恐らくルッカの実験に関しての取材だろうか、ルッカの家を囲むようにして記者達がいた。

時間は午後7時、クロノの門限にはまだ間に合ってるから叱られはしないだろうが、マールはどうなのか。そもそも、護衛をつけないで王族が町中にいるとか異常事態ではないだろうか。

クロノは今日一日の出来事を家族や知人にどう説明しようか悩んでいた。タイムスリップしてマール王女を助けに行って魔族にも襲われたとか、話したところで誰も信じないだろう。

ルッカの事も気になった。
ルッカのテレポート実験の成功も人間では見せられなかったから、きっとイカサマやマジックショーだと世間に思われたかもしれない。

そもそも自身が消えた後、ルッカは混乱したあの会場をどうしたのか。
テレビカメラやマスコミが沢山会場にいた事に問題はないのかと疑問していた。

クロノがマールに話せる話題がルッカに偏る。
ルッカルッカ、別に恋人でもなんでもないのに。

「クロノ、ルッカのこと好きなの?」

そう聞かれて、普通に「好き」と応えるクロノ。
恋愛的に好きなのかと聞かれて、クロノは頭をかしげた。
クロノの頭の中を今埋めているのは恋愛ではない。

クロノにとって今日一番のショックは中世で見た妖怪的な何かだった。カエルのような人、巨大ゴキブリ、シスターに成りすました蛇女、その事で頭が一杯だった。
思い出すとクロノは恐怖で真っ青になり、その場にうずくまった。



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――――――――――――――――――――――――――――

■3話 



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マールがはじめて魔物を見たのはリーネと大臣が連れさられるところで、蛇女が大臣とリーネを縛り、大ゴキブリの背に乗ったところからだった。ゴキブリは木へと登ると林の真上から山を駆け抜けていった。

この時は遠目で目撃していて、誰が誘拐されたかまでは分からなかったマール。
また化物達を見た事が信じられなくて実際に誘拐が起こったことすらその時点では認識すらしていなかった。

訳の分からない物をみたことに困惑しつつ街に降り、現代と違う町並みに戸惑っていると、兵士達にリーネと間違われて、そのまま城に連れていかれた。
城門の外には従者が集まっていて、『王宮内ではドレス姿でいないといけない』と咎められ、服の上からドレスを無理矢理着せられた。

自身はリーネとは違う、人違いだと言っても、話を信じてもらえず、そのまま王宮に上がる様に指図された。

マールとって先祖のリーネは歴史上の絵の中の人物だった。実物の写真は見た事がなく、リーネの名前を聞いてもピンしなかった。自身の先祖にあたるとは判りつつもリーネは称号の呼び名であり、代々受け継がれるものだった。
王妃の誰かと間違われているとは思いつつ、化物や歴史情緒ある街並みを見て、ファンタジーな世界に迷い込んだのだ。クロノと同じく夢か幻かと思い込み、誘われる様に王宮に入って行った。

王様には『今日も美しい』と褒められ、つい話を合わせて挨拶していると、従者に化粧直しの時間だと促され、そこまで付き合ってられなかったマールは『疲れた。寝室に行きたい』と駄々をこねた。

マールはガルディア城の内部構造には疎かった。現代の王宮は100年前に建てられた別棟があったし、今住んでいるのは敷地から200m離れた住みやすい別邸であった。現代ではガルディア城は文化遺産として残ってるだけで、特別な祭事くらいにしか使われない。

王妃の寝室が何処にあるか分からなかったマールは間違って馬小屋に行ったり兵士の寮に行って従者を困惑させた。

目的の5階、寝室に入ると、そこで新聞を見つけた。活版印刷特有の時代を感じさせる文字と記事を読んだマールは過去にタイムトラベルしたのではないかと気付いた。

記事には『南部魔王軍』という聞き慣れない言葉があり、魔族との戦争記事が書いてあった。
現代にそんな存在がいる事に覚えがなかったマール。ますます混乱するものの、最初に誘拐らしき現場に遭遇したのを思いだし、化物が魔族の事を示しているのだと理解した。

マールは以前から都市伝説やUFO話が大好きだった。心のどこかで世界の何処かにいる様な気がしていた。歴史上本当に居たとしたら、世界のリーダー達はその存在を知りつつも秘密を極秘にしている可能性もあるのではないか、現代のガルディアもそうなら良いのになと思っていた。

期待が確信に変わると同時に誘拐事件が本当にあったのだと確信した。

クロノが助けにきた頃、誘拐されたのが自分に見間違われている先祖のリーネかもしれないと気付いた瞬間、光に包まれてしまった。

なぜ光ったのか、なぜ自身は消えたのか、疑問だらけであるが、ルッカから『先祖が殺されそうな未来が出来たから』と言われ納得することに決めた。

マールは王宮に帰ったら、こっぴどく叱られるのを想定していた。とうやって言い訳をして謝罪をするべきか、そして落ち着いたら魔族の存在をそれとなく大臣やパパに聞いてみようと考えていた。

「ね? クロノは魔族の存在どう思う?」

クロノは相変わらず魔族の恐怖に怯えてしゃがみこんでいた。


マールは不思議だった。
なぜ、リーネは誘拐後、直ぐに殺されず、大臣も殺されなかったのだろうか。

クロノから聞いた話では、蛇はクロノを食べたがっていた。人間が食べたいだけならリーネも大臣も教会にわざわざ隠す必要がない。

蛇がぼやいでいた、「あと少しで食べていい」の意味は、リーネを殺す仕事が終わったら食べていい。の意味かと思ったけど、ただ殺すだけなら誘拐の必要はなくて、直ぐに殺しの仕事は終わって、クロノも食べられているはずだ。

殺すのをもたもたしていた理由があったはず。

タンスに入れられた大臣に何らかの交渉をしていたのかもしれない。

カエルも蛇も言葉を話していたから、ゴキブリも言葉を話せていたのだろう。リーネを人質にして、大臣に何らかの取り引きを持ちかけていた。その交渉が決裂して、リーネは殺される予定だったのかもしれない。蛇達のいう「あと少し」は交渉期限(タイムリミット)の様なものだったのかもしれない。

マールから推理話を聞いてクロノはゾッとした。
あの時、都合よくカエルが助けにこなければ、交渉期限切れで、外にいるルッカも食べられたのかもしれない。

そもそもいつカエル騎士はリーネが誘拐されたのを気付いたのか。

街で誘拐犯の聞き込みをしていた時、カエルは見かけなかった。
リーネが誘拐されたかもしれない。そう街で風潮していたから、その話を人づてに聞いて誘拐事件に気付いたのかもしれない。

カエルは蛇女を殺しはせずに真っ先にゴキブリの方へ向かった。『リーネかもしれない』という前提で助けに向かったのだろうか。リーネと自身の命を天秤にかけたら、リーネを優先するのが騎士としては当たり前かもしれないが、あっという間に蛇を倒せる力があるなら、先に自身を助ける事ができたのではないかとクロノは思った。




ルッカは時計をみていた。

(クロノがゲートに入たのが午前10時頃、私が向こうの世界に行ったのが午後2時で今の時間は7時。私が向こうに行っていた時間は大体5時間だから…)

「大体正確ね…」

ルッカは中世で過ごした時間の流れが現代の時間の流れと誤差がないかどうか計算していた。

(クロノが姫様を助けに行って、山を降りて街道を通り王宮に入り、姫様が消えるまで2時間として現代の時間だと正午頃。その後、クロノがベッドで少しゴロゴロし、私も到着するまで2時間掛かるとして、昼の2時頃に私は到着したはず。でも私は昼の2時にゲートに入った。二時間の誤差がある…)


「まさかクロノ、二時間もベットでゴロゴロしていたの?」

(誘拐の聞き込みからマールを助けて急いで現代に戻るまで3時間…私は少なくもと計5時間、あの時代に滞在した。昼の2時にゲートから入り帰った時間が7時だから過去と現代で誤差は特に無いみたいだけど…)


ルッカは機材を車に運びなが考えていた。

(そもそも何でリーネは誘拐なんてされる事になったのかしら? 王妃が護衛を引き連れているとしてその護衛達はどうなったの?
私は山を降りるまで誰にも出会わなかった。護衛達の遺体もありはしなかった。
なぜ大臣一人だけがタンスに閉じ込められていたのか…)

機材を車に運び終わり、運転席に乗り込んで一息ついたルッカスマホを操作しはじめた。リーネ王妃の誘拐の記録を歴史ネットから調べた。

(なになに…ガルディア歴600年、リーネ王妃はその日、大臣と護衛7人と共に山道を散歩していてた。そこで盗賊に襲撃され護衛7人は交戦するもチカラ及ばず殺された。リーネと大臣は山道を途中まで降りて逃げていたが誘拐され、盗賊が予め占拠していいた教会に監禁された。大臣はリーネを人質に取られ、王宮の財産を横流しする様に脅しをかけられ…
…尚、教会の関係者であるシスター4人は盗賊が教会を占拠する際に殺害され…)

ルッカが目撃したベビ女やカエル男については何処にも記述は無かった。ただ王宮騎士グレンがリーネを救出したと書いてあった。

ルッカ自身、未だに化物が記憶に鮮明に残っていた。
大臣はそれを魔族と言っていたが、ルッカの常識では、それは都市伝説であり、非科学的であり、信じられなかった。

あの世界が過去であったとしても別の世界と繋がるパラレルワールドだったのかもしれない。
現にネットの歴史情報には魔族なんていうキーワードは一つも見つからない。
スピーチや機器の調整でここ数日まともに寝ていなかったルッカは幻覚を見たのではと自分を言いくるめた。


ルッカはクロノより一足先に家路についた。
家に記者を待たせていて、昼間の実験の事故について説明しなければならなかった。

クロノ達が次元の穴に吸い込まれたとき、ルッカはパニックを起こしつつも、ペンダントだけがその場に残される現象をヒントに、この事故は単なる事故でなく、発明のブレイクスルーのキッカケになるとふんだ。

不安よりも好奇心が勝り、ろくに記者への説明もないまま自宅の作業場に戻り実験をした。
自宅に訪れるマスコミには「消えた二人を回収する為の装置を作っている」「完成したら取材を受ける」とだけ言っていた。

装置自体は今あるものを小型化し、ペンダントの波長を出すパルス装置を取り付けるだけの単純なものであり、3時間程度の作業だった。

試作機のゲートホルダーは複数用意し、
それにドローンに取り付け、ゲートの先に遅らせる実験をして、安全性を確認した。

ルッカはゲートに入る前に記者達にこう言った。

「いいですか、私がこのゲートホルダーを使うと私も先程の二人の様に消える筈です。消えた後、一回戻ってきますが、それでテレポート装置の原理、安全性は証明された事になるでしょう。恐らく二人は携帯電波の届かない遠くの地域まで飛ばされて、道に迷っていると思われます。」

「後のことは二人を連れて帰ってから説明する」
と記者達に言い残していたルッカ
家に帰ったルッカにはまだそのマスコミ対応の仕事が残されていた。

「あ〜今日はもう死ぬほど疲れたから、また明日ね」
とも、言いたいところだったが過去にタイムトラベルしたこと、興奮して語らずにはいられなかった。

とはいえ、タイムトラベルの再実験については危険が伴いそうで今の段階では言わなかった。
マスコミにはテレポートの再現実験は明日またやると説明して一旦帰って貰った。


マール
「クロノありがとう。ここまでで大丈夫。」

ガルティア城まではまだ遠い。
過去で危険な体験をしたクロノはマールを送り届けるまで安心できなかった。

マール
「え? 城までガードしてくれるの?
 ありがとう…。でも、それだとクロノが大変な思いをすると思う。」

クロノはマールの意味することが理解できなかった。

「えっと、これ言っちゃうと、王宮の悪口みたいになっちゃうから、余り言いたくないんだけど…」


「実はわたし、家出してきたの。

王宮のしきたりにウンザリしてて…だから私、祭りの最中に護衛を振り切って逃げたの。

家出する前に手紙を置いてきたけど今頃王宮は大きな騒ぎになっているはず…」



「でも、私、今日、いろいろなことがあった。

 流石にちょっとパパやママが恋しくなったの。

 だから家出計画を白紙に戻して、とりあえず帰ることにしたのだけど…

 多分、クロノが一緒にいるのが見つかると何かの疑惑とかかけて、監禁されかねない。

 まさかとは思うだろうけど、似たような事が昔あったの。

 何年か前にも私、護衛から逃げて街の子とたちと遊んでたの。私、今より子供だったから、それがいけないことなんて知らなくて…そのまま城まで友達を連れていったの。

 そしたら大騒ぎになって、友達とその家族が外国のスパイかなにかと勘違いされて、あれこれ尋問されて、監禁とはいわないまでも、何日も隔離みたいなことされたの。

 クロノは命の恩人だし、説明すれば判って貰えると思うけど、きっと王宮はクロノも家族も捕まえて何日も尋問すると思うの。

 命の恩人にそんなことさせる訳にはいかないし…

 だからね、私はここまででいいんだよ。

 エスコートしてくれでありがとう。クロノ。

 今日は本当に楽しかった。
 沢山の冒険もできたし、本当の友達ができたみたいで楽しかったよ。」

クロノは気の利いた言葉は探した。


「え? 私達は、もう本当の友達?」


マールの目が少し潤んだ気がした。

「え? 泣いてないよ。

 泣いてないってば!」


「じゃあね、ばいばい、クロノ!」

クロノはマールを見送らなかった。

「え? 堂々と友達だと紹介して欲しいって?

 昔のことは昔で今とはきっと違うから、きっと大丈夫だって?

 あははは! クロノってば前向きね。」

マールは少しだけ悩んで答えた。

「たしかに! ルールに素直に従ってちゃ、ルールはずっと変わらないものね。よし、ここは一発ギャフンと『彼氏連れてきた』とでも言っちゃおうか!」

 流石にそれは冗談なのだろうと思い、ホイホイとついていったクロノ。

城下の町並みが遠くなり、
ガルディア王宮が近づいてくる。
広大な城門に広大な庭が見えそうな頃、門番らしき兵士たちが駆け寄ってきた。
マールと兵士が何か話し、兵士達は無線で何かを喋った後、ヘリがやってきた。
ヘリが城門の外に降りた時、中から見覚えのある顔が出てきた。

白ヒゲの大臣。クロノが400年前の中世でタンスに押し込められていた大臣を助けたが、その顔によく似ていた。

白ひげ大臣はヘリから降りるとマールへとかけよった。

「王女様!一体どこへい行ってらっしゃのですか! 置き手紙をご覧になられた王様と王妃様も大変、心配されておられましたよ」

大臣はマールの横にいたクロノを見た。

「やや、この怪しい男は! 
 さては王女様を拐かしたテロリストか! ひっ捕らえろ!」

クロノ
「誘拐なんてそんなこと。僕はマール様を救ったヒーローですよ。褒められはすれど犯人扱いされる言われはありません!」

大臣
「本当でございますかな王女様?」

マール
「その通りよ。大切な客人なんだから、丁重におもてなししてちょうだい!」

大臣
「そうでしたか王女様。では早速、入証を発行するのでクロノ殿はここでしばしお待ちを…その間にマール様は心配為さっている王様と王妃様に早くお顔を…」


大臣
「うぬぬ、(こやつ、王女様に相当気に入られておるな。しかし、どこの馬の骨かもわからぬ男よ。邸宅に入って油断したところでいきなり王女様を人質に取って悪さをやらかすかもしれん)

仮に問題が無かったとしても、邸宅の内情(セキュリティ)を外に漏らすかもしれん。いや、もしかしたら既に王女様から色々聞き出しておるのかもしれん。

そもそも捕まえて尋問したところで何も吐かぬかもしれぬ。東国のスパイかどうかを見極めるにはこいつを放免した後も監視スパイしないといけないし、そうなると余計な財源が…)



(よし、殺してしまおう。
王女様を先に邸宅に上がらせ、王女様とこやつの距離が離れた隙に拘束する。
テロリストの罪で逮捕した後、裁判にかけよう。証拠は見つからないかもしれないから捏造して死刑有罪にして、特例法を駆使して3日くらいで死刑執行しよう。)


大臣
(魔族への食料財源にもちょうどいい。最近奴らの人口も増えておるからの。そろそろ誠意を見せておかないと、次は何を要求されるか分からん。万が一にも王女様に手を出させる訳にはいかないからのう。すまんが青年、ガルティアの為に死んでくれい。) 




現ガルディアは一部の大臣と王族以外の全ての従者が魔族で構成されている。

クロノやルッカ、マールを含めて現代人のほんどは知らない歴史。中世紀時代、悪魔族が存在した。
悪魔族と人間は互いに大きな戦争をし合う関係だった。魔族は東西南北、世界各地に存在していて特に西の魔族種のチカラは絶大で人間は敗北し、ガルディア及び各国は植民地となった。

ただの植民地ではない。

魔族の性質は人間を食料とすること。恐怖や絶望で支配していては人間は生まれなくなってしまい、人間を食料にしつづける事ができなくなる。

西側の魔族、特に姿を人間に化けることができた一部の魔族は権力者達と密約を交わした。
 
その密約は歴史から魔族の存在そのものを抹消すること。魔族そのものの存在を隠蔽し、人間が安心して子作りできる環境を作り、安定して人間を魔族に届ける仕組みを作ること。

この密約を効率良く実現する為に魔族は権力者達に成り済まし、その国の軍事力を利用した。

魔族を襲わせたのである。

魔族にも種族は多くあり、人間に化けられる西側魔族は、それ以外の魔族を仲間とみなしていなかった。

魔族は魔族同士で、互いに人間という食料資源を奪い合う敵でしかなく、邪魔な存在でしかなかった。

魔族界での西側魔族の裏切り、人間が結託すれば殆どの魔族を絶滅させることができる。それが人間側にとってもプラスでもあったこと。一部の魔族に屈する事にはなるが、結果として魔族の殆どを滅ぼす事ができる。

権力者達は正義と悪魔の心、自分達の保身と戦いながらも、結局、魔族と共存する道を選んだ。

ガルディアにとってもそれは同じだった。

魔族のチカラを得て魔族を滅ぼし、魔族と共存する関係を選んだ。

クロノを魔族のエサにしようと目論でいるこの大臣もそう。

彼の一族は大昔からガルディアに仕え、ガルディアの血筋を守ってきた。これまで魔族に抗うことも考えたが、その方法が見つからず、諦めて開き直ってきた。

大臣は歴史の真実を知っているが、マールやその両親は知らない。

真実を知らないことが幸せだとし、先祖代々王族達をだましてきた。

クロノはこれから死刑宣告され魔族の元に届ける手はずであるが、マールは突然の処刑を不審に思うだろう。
マールがクロノの死刑強行を拒否する場合は魔族の力でクロノに関する記憶を消される事になる。

クロノの親族も不審に思うかもしれないが、その場合は、彼らも魔族のエサにするしかないだろう。

人間を魔族に運ぶだけならクロノでなくてもいい。本来なら王族の知人は運ばない。

大臣にとってこれは政治的な問題だった。
王室が身を犠牲にする精神を見せることで、断固として悪魔族に敵意がない事を示す。大臣は定期的にそういった生け贄外交を取り締まっていた。

この様な魔族との契約を大臣は何世代に渡り守ってきた。理不尽な死刑制度と言えるものだが、人々の間では常態化していた。
処刑は国民にとってある意味で日常的であり、マスコミは一時的に騒ぐものの、一週間もすれば無かった様に振る舞う。クロノ達はそういう世界に生きていた。




★   

マールは家出の謝罪をして両親にハグをしてもっていた。

「実はそれで、ね。その男の子をここに連れてきちゃったんだけど、いいかな?」

ママ
「いいわよ。お母さん大歓迎! どんな男の子なの? やっぱりイケメン?」

パパ
「つぅ、こんな日が来るとはなぁ。もう家出なんてしないでおくれよ。パパもう生きた心地がせんかったよ。公務は減らせるところは減せる様にがんばるから。


マール
「いいのパパ。私、ちょっと甘えてたもの。勉強しないといけないこと沢山あるし


マールは庭に出てクロノを探していた。

クロノはどこにいるのだろうか? 広いから迷っているのだろうか?

マールは芝刈り機を整備しているウェッジに聞いた。

「え? クロノ? もしかして赤毛のツンツンの? そいつならさっき、警備に連行されていったよ? 」

クロノ一体何をやらかしたんだろう。まさか庭で漏らしたとかじゃないよね…

「それで警備室に? それとも門外に?

「門外に連れていかれたよ? 


マールは門に走って、門の外を眺めたが見えない。

門の守衛兵、ビエットに声をかけた。。

ビエット
「は! 10分殆前に私服警官が来て逮捕して行きましたが…」

ビエットは一部始終を話した。


マール
「え? クロノが邸宅内に爆弾らしきものを持ち込もうとした?」

ビエット
「は! 私が存じているのは、その者、王女様をたぶらかして邸宅内に侵入し、王様、王妃様を殺害しようとした疑いとのこと、詳しい事は大臣が知っていたと思われます。

マール
「爺やが? どうして爺やが!

ビエット
「は! 私が存じているのはその者、敷地内に入る前のこと。守衛の詰め所にて手荷物検査に引っかかり、大臣が自ら守衛に命じて捕縛、警察に連絡したと聞いております。」

「大臣はいまどこに!」

ビエット
「は! 大臣はいま重要参考人として出払っております。恐らく、調書作成の為、警察に向かわれたと思われます。」

マールには訳が分からなかった。
クロノが爆弾なんて持ち込む訳がないし、大臣も意味もなく逮捕するなんてしない。大臣は厳しいところはあるが、とても優しくしてくれる。まるで本当の祖父かの様に信頼もしていた。


マールは電話をかけた。
「どういうこと? クロノがそんなことする筈はない。だってクロノは今日私の命を助けた正義のヒーローだよ!」

大臣
「正義のヒーローとはまたご冗談を…」

マール
「冗談なんかじゃないよ、クロノは私と一緒に過去にタイムスリップして…」

大臣
「過去に? 王女様、どこかで頭を強く打たれたのですかな? 直ぐに医師を手配しますのでお待ちを…」

大臣は電話を切った。かけても繋がらない。
マールは警察に電話かけたが王族でも事件に関する情報は任意の手続きを踏んでくれと一点ばり。

マールは警察に向かうことができない。
王家では門から出ようとすると、必要書類を諸々書かさされて、それ以外の場所には行けない。滞在時間、行き先のルート、護衛を配置する為のセキュリティ戦略の兼ね合いで許可が降りるまで最低でも一週間の時間がかかる。


マールの従者のビックスに頼んで警察署に向かって貰った。
ビックスに頼んでも期待した結果はなかった。任意の手続きをしてもクロノに面会できるのは明日以降だという。
大臣は警察には来ていなかった。


夜9時、マールは落ち込んでした。



「どうしたのマール?

マール
「ママ! 爺やがオカシイの! クロノをテロリストだって言うの!」

「なんで爺やはそんなひどいこと言うの? まるで悪魔…」

マールは言いかけて気付いた。普段やさしい大臣がこんな酷いことを言うのはあり得ない。まるで魔族の様だと。マールは過去の世界で実際に見た。少しだけど魔族を見た。記事でも読んだし、クロノから詳しい話を聞いた。

マールはポケットから400年前の新聞を取り出した。

ママ
「あら、なあに?これ?」

マール
「過去にタイムスリップした話。あれは冗談とかじゃなくて、本当の話なの。」

ママ
「まあ、本当によく出来た新聞ね…。『将軍ビネガーの進行に向けて、ガルディアの防衛基盤はもっと強靭にする必要あり。』、怖いわね〜」

半信半疑にしか受け取られていない様子だった。
マールは眠たそうな母を引き止め、一日中、中世での出来事を語って聞かせた。


明け方


「なら大臣は人間に化けた魔族という事ではないの? 私達は大臣に騙されていたのよ。きっと!」

母は部屋から2つのボウガンを持ってきた。ハンティングスポーツ用のもので、生き物を殺す目的のものではないが、当たれば相当痛いものだ。ボウガン競技は母の趣味だった。


マール
「ちょとなんか怖い気がするけど…


ママ
「良いのよ。身を守るにはこれくらいしないと!」


テレビでは17歳の少年が(名前無表示)が王族邸宅に爆弾をしかけて逮捕されたと報道されていた。
裁判は明日始まり、早ければ当日中に判決を下し、翌日には執行される。報道は死刑求刑と無期懲役予想で割れていた。

「ママ!なにこれ!
 少年法はどうなったの!! なんでこんなにスピード裁判で罪が重いの!」

ママ
「え? 何を言っているのマール? 少年法って何の話?」

マール
「ママ、それ本気で言ってるの? 

ママは至って冷静な顔をしていた。

マール
(まさか私達が過去で何かをしてしまって、歴史が変わってしまった?)



マールはルッカに相談する為に電話をかけようとしたが、辞めた。
もし魔族が邸宅内の従者に成りすまして監視しているとしたら、電話やメールは盗聴されている可能性がある。
魔族に敵対意識を向けている事がバレたらどうなるか分からない。


マールは2つのボウガンを袋にいれると、

「お母さん、私外に行きたいのだけど…」

マールは真剣な話をするときママとは呼ばず、お母さんと呼ぶ。

「クロノさんを助けたいのね…」

王家では門から出ようとすると、必要書類を諸々書かさされて、それ以外の場所には行けない。滞在時間、行き先のルート、護衛を配置する為にSP戦略の兼ね合いで許可が降りるまで最低でも一週間の時間がかかる。
手続きを待てばクロノはその間に死刑にされる。門から強行突破するのでは魔族に反目していると捉えられ兼ねない。

マールの母には一つだけ秘策があった。
それはマールが梱包して大型郵便速達で配達することだった。

いそいそとマールを梱包し始めしたお母さん。

そして、お母さんパワーが発動し、伝票にサインを書いた。




ルッカ
「何かしらこれ? めちゃくちゃ大きい! 差出人は…ガルディア!? もしかして私がマールを救出したことが王室で話題にされて、その褒美のプレゼントが届いだということ? 何かしら? もしかして軍事レベルのスパコンからしら? 前にテレビで欲しいって公言してたし。うふふ。良いことはするものよね。オーホッホッ!!」

ルッカは大きなダンボールを開けた。
ダンボールを開けると今度は重厚そうな強度ある箱が出てきた。

「うはーあ! はぁはぁ、ワクワク
wkwk*1ワクワク」

「もう、焦らしちゃって…。王族って粋なことするわね〜」













-



――――――――――――――――――――――――――――

■4話



-

ワゴン車の中でノートパソコンを操作されていて、傍らの機材は特種な電波を発信させていた。

警察所内のシステムにハッキングをしているルッカ。クロノを助ける為には止む終えない行動だった。

過去の裁判記録によるとクロノが助かる見込みはなかった。
この世界は道徳観、常識感覚がズレた人々しかいない。この世界は裁判員システムもない。

脱獄させる計画、この程度でも捕まればルッカ自身も死刑を求刑されるだろうが、クロノを助けるには命を賭けるしかなかった。

夜、ルッカの操作で警察署内部の電源が落とされた。

ルッカは日本刀背に特性エアガン(電気ピリピリ玉を発射して相手を気絶させる物)を手にマールはボウガンを2つを持ち、署内に侵入した。
二人は軍事用の赤外線ゴーグル(サバイバルゲーム用)を装着していて暗所を移動した。

警察内は突然の暗闇にパニックした。

ロビーには携帯の灯りを頼りに落ち着いてその場で待つ者や、状況を知るため署の外に出ようとする者、軽犯罪で捕まった者やその親族、様々いるが、ルッカ達は無視して、3階奥のクロノが留置されている入り口まで行く。 

多様な犯罪容疑者が集められる部屋に続く扉である。扉の外と内で必ず一人以上は警官が見張りに立ってる。
彼らは常に武器(ピストル)を携帯している。扉は内側からのパスコード入力による電子ロック解除でしか開けられず、このセキュリティを抜けるのは並のハッカーでは無理である。 

並のハッカーは無理でもルッカなら可能である。でも、それはある意味、ハッキングに関わった容疑者は直ぐに絞り込めるということ。脱獄に成功しようが途中で諦めて引き返そうが、警察署に突入した時点から技術屋ルッカは確実に最有力容疑者として候補に挙がる。

問題は扉のロックが解除された際、巨大なブザー音が発せられること。警察署では檻のある留置部屋へ容疑者を出入りさせる度に【容疑者が留置部屋から出ました】という合図をブザー音て知らせる。音が鳴る都度、署内の警察官は暴動に備え警戒態勢になる。

扉にいる警官2人をエアガンで気絶させる。 
扉を開けブザー音が響きわたる。

【ブザー音が鳴り響く】ということはこの暗闇の中で容疑者あるいは警察官の出入りがあったということ。停電の非常時、緊張している警察官が留置部屋にうかつに出入りするのはあり得ない。留置部屋、つまりは檻にて何かが起きたと直ぐに予想される。

ルッカには一分も余裕の時間はない。ブザー音と暗闇にパニックしているこの瞬間にクロノを早急に檻から出さなければいけない。

留置内で見回りをしている警官に走り寄り、刀で脅し、ピストルと鍵を要求した。
警察官は胸に差している無線機に異変を知らせようと手を伸ばしていた。

ルッカ
「いい? ひと言でも声を発したら殺す。」 

ルッカが脅している間にクロノを探すマール。

警官が要求に渋っているとルッカは首に押し付けた刀にヌルい水をかけた。
暗闇の中、生々しい血を流したと錯覚して、言いなりになる。

はずだった。

警官は暗闇の中で動き出し、刀に自ら向かっていった。流れる自身の首筋の血をペロリと舐めた。
長さにして30センチの舌。

人間に化けた魔族だった。

普通の人間の顔にしか見えないその魔族はルッカの背後に回った。マールは反応ができなかった。ボウガンの照準を合わせて放つも的外れの方向へ飛んだ。

警官は床にルッカを押し付けながら首を絞めている。
マールが再度矢を放つも、当たっても効き目がない。
マールは催涙スプレーを取り出しルッカの元へ走った。
ルッカに辿り着くも、ルッカは既に倒された。警官はマールの身体に飛び掛かると、マールと揉み合いになった。

マールも直ぐに首を絞められた。
首ごと持ち上げられ檻に押し付けれマールはバタツいた。
その瞬間、マールが催涙スプレーを噴射した。

その魔族は暗闇なのに動けた。目が良いから催涙スプレーは効果的面だったのかもしれない。
だが、最初からマール達の姿が見えていたとするなら、既に無線で助けを求めているかもしれない。見えていたなら脅迫できる殆に距離を詰められないはず。
魔族特有の身体的な特徴、視覚以外の五感、聴覚、味覚、触覚、嗅覚のどれかが特異に発達しているのか。

この魔族はそういった五感に秀でているのではない。人の10倍を超える力と肉体の傷を再生する力、回復させるスピードが1000倍あった。

いずれにせよ、暗闇の中でルッカを倒した。魔族が人間に化けた存在だとマールは確信した。

倒れたルッカから剣を取ると、思い切り斬りつけた。

人間の声ではない、低い唸り。
深く刺せばダメージはある。そう判断したマールは股間をぶっ刺した。もう一回ぶっ刺した。

警察官の苦悶した表情が人ではないカタチに変化した。斑点模様がいくつもありトカゲの様な顔立ちで目には縦筋がある。

その場で倒れてピクピクと悶絶する魔族

「今すぐ鍵とピストル、無線機を渡さないと、目玉をくり抜くよ。その次はどの内臓を取り出そうか。」

魔族はカギとピストル、無線機をマールに渡した。

クロノのいる檻を開けた。

クロノに暗視ゴーグルを被せると
クロノも目の前の惨劇を理解した。

二人でルッカを抱えて署内を進む。

今、普通に外に出た場合、怪しまれて包囲網が出来上がるだろう。

ルッカは昼間にも署内にハッキングしていた。当直ではない警察官の制服と帽子を三人分盗んでいた。
ルッカは気絶しているが、ちょうど怪我人を運ぶ姿であり、犯人とは思わないだろう。

刀はポスターに包み筒状にしてリュックに入れ、ボウガンや暗視ゴーグルもリュックにいれた。

外では停電等の緊急時、脱獄対策マニュアルに沿って施設の出入りの身分証のチェックがされている。
警察官6名が入り口にて懐中電動を持ち待機していた。


警察官
「な、中でなにがあったのですか!」

マール
「中で何者かに攻撃を受けました! 怪我人が他にもいます!」

警察官
「では救急車を呼びます! 彼女はとりあえず、この辺りに寝かせて…」

マール
「救急車を呼ぶより病院に連れていく方が早いです。」

警察官
「確かにそうですね。では車までお手伝いします」

クロノ達が外へでようとすると。

警察官B
「待ちなさい。身分証のチェックを忘れているぞ。こんな時だからうっかりするのも判るが…」

クロノ達はこれから顔と身分証をデータベースで照会される。
ルッカのハッキングでどうにかする事もできたが、クロノが顔を見せれば脱獄がバレてしまう。

そういう時はマールがルッカ特性エアガンを発射することになる。
至近距離から狙われ、6人の警察官はあっという間に倒れる予定だった。

警察官C
「ちょとまって! この娘全然息してないじゃない!」

クロノ達は急いでいて気付かなかったが、頸動脈を圧迫されて倒れたルッカは心臓が止まり脳に酸素が行かなくなっていた。直ぐに蘇生させないと死んでしまう。

警察官C
「何をしているのあなた達! 早くAEDを持ってきて! それから救急車も早く!」

警察官Cに促され、他の警察官はデータベース照会を後回しにして人命救助を続けた。
 

クロノはルッカを置き去りにして逃げられなかった。

マールはクロノの気持ちが痛い程分かった。けれど、このままここに居てはクロノは捕まり死刑になるだけ。ルッカがここまで頑張ってきたのも無駄になる。

ルッカは大丈夫だから! きっと、大丈夫だから!」

マールはそう言って、心肺蘇生に関わっていないC警察官以外をエアガンで気絶させた。  

クロノの手を引いて車に乗り込み、発進させた。


程なくして警察官Cのおかげでルッカは息を吹き返した。
息を吹き返したとはいえ、意識が朦朧とし、直ぐには動ける状態ではなかった。

ルッカは細い声でクロノに逃げる様に促していた…




マールがクロノを連れて街中を逃亡する。この一連の流れは警察署の敷地や街中の防犯カメラに記録されている。ルッカの技術をもってしても、その全てに細工を施す事は無理であった。

ルッカによると、犯行がバレて追いかけれても構わない計画だった。いつまでも逃亡し続けるつもりはなく、千年祭会場のゲートから中世へ逃げる計画だった。とにかく時間稼ぎさえできれば良かった。



サイレン音が街に響き渡っていた。

クロノ達は千年祭会場からは、まだ遠くにいた。

都市部特有の渋滞に巻き込まれていた。

今後、どの道も警察に封鎖されて、その影響で更に渋滞して会場までいけないだろう。
 
ルッカの計算ミスだった。
逃げるならバイクの方が渋滞に巻き込まれない。またパトカーのサイレン灯を盗んで車に取り付けておけば、渋滞は避けられたはずだった。

2人はどうしていいか分からなかった。

このままでは、捕まるのは時間の問題。

神にも祈る様な気持ちで、空を見上げるとヘリが上空を旋回していた。

車は既にマークされていた。

「降りなさいそこの車!」

警告と共に旋回している。

程なくして渋滞をかき分ける様にパトカーがやってきた。
前後からサイレン音がゆっくり近づいてくる。

数分後、警察車両に挟まれ、2人の車は止まった。


「こちらは発泡許可を得ている。速やかに降りなければ強行制圧する!」


マール
「私の事を人質とって逃げよう!」

クロノには判断できなかった。人質をとること、ぞれで上手く行くのか、周りは包囲されている。どこからでも狙えるとすればマールを人質にした瞬間、射殺される可能性もある。


マール
「じゃあ、どうするの?」

止まれば確保してくださいと言っているようなの。

こういうとき、ルッカなら何をどう判断するだろうか…

ルッカならきっと道路の脇に入る様に自身に指示するだろう。そして車が道なき道を走りながら…

「どうせ殺すんでしょうが! 軽い罪でも証拠を捏造して殺すくせにー!」

とか言って半ばヤケクソに雑木林に進路を向けて…
でもヤケクソに見えていつも正しい答えを出しているはず。

クロノは思った。

ルッカならきっと、森奥の限界まで行ったら車を乗り捨てるだろう。その後は、森の中に隠れて潜み、隙をみてゲートのある千年祭会場へ向かおうとする。


凸凹な地面にワゴン車が浮かびあがる。

沢山のおいしげる木々、車のサイドミラーが幹に擦られながら、どんどん奥に進む

森の奥、車で行けるところまで行った。



しかし、警察犬の存在。

警察犬が森に放たれた。このままではクロノ達は追い詰められる。

車は既に行けるとこまで行き乗り捨てている。

2人は森の奥に逃げ、話し合った。

マール
「今度こそ私を人質に!」

クロノにその選択肢はなかった。
武器をマールに向けた瞬間、殺される気がした。
かといってこのまま捕まれば死刑にされる。

クロノは処刑される自分を想像して恐ろしくなり、尻もちをついた。日本刀を振り回したところで銃に敵うわけがない。エアガンの弾も一発しか残っていない。
かといって何もしなければ殺される。

クロノの視界がぼやけた。
涙で霞んだ目と思い擦るクロノ。
しかし、目を擦っても目の霞は取れない。

マール
「泣いちゃダメだよクロノ。まだ終わってない!」

クロノは首をぶんぶんと横に降った。

マール
「え? 泣いてない? 目の前の空間がぼやけてる?」


調べるとタイムゲートに良く似た空間の揺らぎが見えた。

マール
「これって、もしかして」

マール
「間違いない! これはゲート!」

マール
「考えてる時間ない!」

マールはゲートホルダーを取り出した。


クロノは別れの挨拶をした。ここまで助けてくれたお礼を言った。

マール
「え?」

マールは王女だからこの時代にいても大丈夫で、これ以上、付き合わせて危険な目に合わせられなかった。


マール
「嫌だよ。私も行く」


クロノは疑問だった。どうしてマールがそこまで自分を助けようとしてくれるのか。マールの命を助けた恩人かもしれないとしても、ゲートはどこに続いているか分からない。今度こそ本当に死なせてしまうかもしれない。


マール
「私が過去に行って歴史が変わっちゃたんなら、私にも責任ある」

クロノ自身その責任は自分にもある気がした。
ただ、マールはこの国の王族でクロノは取るに足らない平民。国にとってマールは自分なんかより必要されるべき存在だと思っていた。

マール
「そんなこと言わないで! 私は自分の事を特別な人間だなんて思ってない! 友達ひとり作れない、友達ひとり助けられない。そんなの、私は望んでない!」

クロノは困惑していた。マールの事情がどうあれ、マールをここに残す事は男としての責任で武士道精神に反する。

マール
「でもも、へったくれもない! 私はクロノと一緒にいる!」

断固としたマールの態度。クロノは了解しそうになるが、マールを守れる自信がなかった。エスコートは無理だった。

マール
「違うよクロノ!
 私がエスコートするの! 私が皆を助けるの!」

マール
「だって私はこの国の王女よ。
 国民一人助けられないで王女だなんて言えない。
 王女としてこの国の責任は私にある。ルッカやクロノを守るのが私の責任!」


クロノは反論できなくなっていた。マールにとっての王としての意地とプライド。論理的で何も言い返せない。かといって、自分の信念も曲げることもできなかった。


警察犬は直ぐそばまで来ていた。

クロノがマールに何か言葉伝えようとしたとき、マールがゲートホルダーのスイッチを起動した。
すかさずクロノを抱きしめたマール。
二人は時空の彼方に吸い込まれていった…



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――――――――――――――――――――――――――――

■5話



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ゲートから出た先で2人は鋼鉄に囲まれた部屋にいた。
部屋といっても光は入っておらず完全な暗闇だった。クロノは懐中電灯をリュックから出して照らした。

マール
「ここ、どこ?

光を壁に当てみるが、部屋は6畳程度の広さ。

マール
「きっとゲートの場所が違ったから、違う場所から出てきたのかな? それにしても…」


二人が今立っている床は薄汚れている。まるで何年も掃除をされずに、錆び付いているかのよう。また錆ともいえない独特の匂いがした。

健康に悪そうなガスの様な異臭に、三人は出口を探した。出口に通じるだろう扉は直ぐそばにあった。だが鍵穴らしきものはない、ドアノブさえない。
錆びて良く見えなかったが、中央に模様(ロゴ)らしきものが見える。
錆をこすると模様は光輝き、扉は空いた。
機械的な現代の自動ドアとも違い、重厚で分厚く、ピストルの弾なんてびくともしなさそうな自動ドアだった。



扉を開けるとそれに応じて自動で部屋の電気がついた。
現代でも見るような蛍光灯であり、時代的にはより現代に近いのかもしれない。
扉の外にはフロアが広がっていた。フロアの壁は硬い人口壁で覆われていて、地震ではとうていびくともしない設計だろう事が伺える。
しかし、床や天井や壁の錆はさっきの部屋よも遥かに酷いあり様で、湿気やカビも壁面にこびり付いている。
フロアの先にハシゴが上に伸びている。まるで潜水艦のハッチの様な重厚なバルブ。外に出るには苦労を伴いそうだ。
クロノは硬いゆっくりバルブを回した。


なんとか外に出られたクロノ。マールを引っ張りあげる。

2人は世界を見回した。目に飛び込むものはあたり一面コンクリートの残骸。
ビルや街の亡骸といえるような死んだ都市の地平線が見えた。

眼前に広がる文明の墓と、砂の大地の地平線がある。
鳥は1羽すら見えない。緑もまったくない。

ここがもし自分達の未来だとしたら、人類は滅んだということかもしれない。

2人は朽ち果てているが微かに見える道路跡を辿り進んた。

人間が生きているのか、作物が育つ様な環境ではない。それでも人が生きているか確かめずにはいられなかった。



1km程歩いた。
体力的な事を考えると、あまり進むの危険だと思った。この世界で食料等が手に入らない、生きていけないなら、元の時代に戻るしかない。
マールは食料を現代から届けるつもりの様で、クロノも他に選択肢がなく戻ることにする。

戻ろうとしたとき、声をかけられた。振り返ると目に飛び込んだのはロボットだった。

「ワタシとスピード勝負、シマショウ!」

ロボットはクロノにスピード勝負を持ちかけた。
ふと見ると、遠くの方から他にもロボットが駆け寄ってくる。
ロボット達は車を抱えてやってきた。

ロボット
「スピード勝負、あなたが勝ったら、車あげる」

マール
「負けたら?

ロボット
「スピード勝負、あなたが勝ったら車あげる

マール
「このロボット…壊れてるのかな?

レースをしたいロボット達。遊びたいのに可哀想。というマールの意向でクロノは勝負する事に。

マール
「クロノがんばれー!」

今にも壊れそうなボロ車。なぜ、ロボット達はこんな訳の分からない遊びをやるのだろう。クロノは疑問に思いながら発進させた。 

ロボットが乗ってる車はもっとボロ車だった。ハンデのつもりだろうか、クロノには訳わからないままだった。

微かに見える道路をただひた走るレース。そもそもどこがゴールか教えて貰ってない。

クロノは景色を見ていた。

本当になにもない世界だった。

核戦争が起きたとしても、こうはならないだろう。原爆が落ちた広島だって原爆ドームは残っている。

あるのは瓦礫しかない。建物らしきものは見当たらない。
山には木すら生えてない。なぜか比較的小さく見える気がする。

クロノはガス欠の予感がしてマールの元に戻った。

ロボット達も戻ってきた。
再勝負の申し込みを繰り返してきたが、、勝負を断っても、ついてくる。

クロノはマールを乗せ、ゲートのあった場所へ戻った。

元いた場所の地面をよく見ると、細かい瓦礫が点在していて、ここに元は広い施設があった様で、地下に繋がるハッチを幾つも見けた。

ハッチを開けて中を覗くと、白い物が山積みになっていた。
何かの資材かとハシゴを降りてみると、白骨化した遺体の山だった。

そこはある種の核シェルターの様なもので、人々が避難生活をしていた名残りだったのだろう。食料が尽きて人々は餓死したことが判る。

クロノは他にもハッチを開けてみたが、どれも同じで、この時代の人々の遺体が散乱していた。

この時代には人は生きていない。2人が諦めたとき、異音のするハッチを見つけた。

中はベルトコンベアーが流れるロボットの工場だった。

ハッチを降りるとコンピューターの端末があるが操作しても使い方が分からない。

と、突然、けたたましいサイレンがなり、侵入者を排除する為のロボットが襲ってきた。

ロボットはレーザービームを二人に向けて攻撃してきた。
当たれば火傷では済まされない。
クロノ達は急いでその場から離れ、ハッチを閉めた。


クロノがまた別のハッチを開けたが、そこは大丈夫だった。遺体もなく、襲ってくるロボットもいない。
奥に進むと、この世界にきた時と同じ様な文様の扉があった。しかし、今度は触れても開かない

二人は、今居るフロアに興味を持った。コンピューターがあり、死んでいるロボットが転がっている。
二人はそれをいじり回したが、コンピュータは電源が入らない。
ルッカが居てくれると助かるが、そのルッカは今は病院だろう。

マール
「私、一度戻ってみる。食料とか着替えとか持ってくるね。あとルッカの様子も見てくる。きっともう回復しているはずだから。」  


この時代に来てかれこれ5時間だが、警察の捜査はまだ続いているだろう。

 
マールは現代の森に出ると、コンビニに行き、カードで買い物をしようとして躊躇った。


(買い物の記録とか大臣や警察に行くかもしれない…)

マールは止むおえず万引きをした。

(めっちゃドキドキしたよ〜)

マールはルッカの状態を知ろうとした。

(警察に行っても捕まって王宮の敷地に監禁されるだろうし…、病院を問い合わせるにも、教えてくれる訳ない…)

マールはルッカの状態を知るすべがなかった。
(あ、あれ?? もしかして私、無能?)

ここからマールは、万引きしてクロノに貢ぐ生活の日々に突入した。




大臣
「なんじゃと! マール様が行方不明じゃと! しかもマール様がクロノを脱獄させ、魔族に怪我を負わせたじゃと!!」

大臣が報告を受けたのはクロノ達がゲートに飛んでしばらくしてからだった

魔族に怪我を負わせた代償は高くつく。その上マールがその原因を作ってしまったとなると、王宮が支払う代償は途方もない規模になる。

大臣の従者は脱獄に関わったであろうルッカを確保していて、尋問にかけたという。嘘の証言ばかりするので、心を支配して操る魔族、魅了一族の力を使い吐かせた。

大臣
「過去にタイムスリップするだと? そなた本気でその様な世迷言を言っておるのか? 」


従者は大臣に映像を見せた。
千年祭のゲートからクロノ達が次元の穴に吸い込まれる映像を見せた。

従者
「これは昨日の朝10時にマスコミが撮影した映像です。特殊な装置を使い時を越える様です」


大臣
「つまり、この世界にマール様はおらず行き先は400年前の世界におるのか…」


大臣は歴史を思い出していた。隠された歴史の存在。400年前に世界は魔族に支配される歴史を辿る。もし過去に行けるのであればそれを未然に防げるかもしれない。
だが、ゲートの存在は魔族側に既に知られている。おいそれと過去に行く事はできず、過去に行けても迂闊な行動はできない。。

従者
「どうなさいますか? 魔族側はこの件に関して審議中とのことで、またゲートの存在はないものとし、報道規制をかけるのみで、ゲートには見張りを立ててません。二人を探しに過去へ参る事も可能でごさいますが…」

大臣はこの国で監視されている。公務もあった。おいそれと移動でない。だからといってクロノを生け贄にするのを断念すれば魔族との軋轢が深まってしまう。

大臣は困っていた。人間を狩るのは人間がやる掟になっていた。真実を知る少数派の人間は大臣にとって融通の効く手足だった。

大臣
「とりあえず魔族への生け贄は代わりの者を用意する。過去にはそなたが一人で行って探してくれぬか?」


従者
「かしこまりました。」

大臣
「分かっておるじゃろうが、我らは監視されている。くれぐれもも反魔族的な行動をせぬよう、気を付けて行くのじゃぞ。」


従者
「ところでルッカはどうなされますか? 魔族への生け贄としてこのまま引き渡して宜しいでしょうか。」

大臣
「まて、ルッカは偉大な発明家じゃ。流石の魔族も彼女の命までは求めんじゃろ。問題はルッカに監視をつけるかどうかじゃ。ほおっておけばクロノ達の元へ…」

大臣は閃いた。
「まて、そなたは過去に行くのではなくルッカを監視しなさい。いずれ二人のところへ辿りつくじゃろうて」

従者
「かしこまりました。」




クロノの逃亡から2日目
ルッカは病院を退院し、家に帰っていた。脱獄に加担した罪は特例法として罰せられる事はなかった。

「さっすが、私! 天才発明家で良かったわ。オーホッホッ!」

ルッカは心を操られ、洗いざらい自白させられていたが、その記憶は無かった。
記憶を消す力のある魔族にて、尋問された事も覚えていなかった。

監視はされている可能性までは想定しているルッカだったが、タイムスリップした先でも監視される可能性があることに想像すらしていない。

クロノやマールに会うために中世時代へと向かった。



ルッカ
「どういう訳よ!あいついないじゃない!」

ルッカはクロノがガルディア城にいるものと思っていた。リーネを助けたご褒美に生活の面倒やらを観て貰っていると。


ルッカは自宅に帰り、何気なく新聞を見て驚いた。
クロノがマールを誘拐した事になっていた。  

「はあ? どういうこと?」 

「クロノは中世に行って、マールは家に戻ったんじゃなかったの?」


「あいつら、まさかのカケオチ? でもどこへ?」 

疑問していると玄関先のチャイムが鳴った。

ルッカの元に傷だらけの自家用車が戻ってきた。

「え? ナニコレ?」  

警察の説明によると森で乗り捨てられていたという。
車が放置された位置は千年祭からは遠く離れていた。

ルッカ
「あの二人、車を捨てて森の中に逃げたの? なんで?」

担当者
「警察の追跡から逃げ切れないと判断し、道を外れて森に入ったと思われます!

ルッカ
「あのう、良かったら、あの車、どこに捨てられていたか案内してくれないかしら。」

担当者
「勿論喜んで!(うはーあ!カリスマ発明家ルッカ様とまさかの道案内デート…この仕事、やってて良かったな〜)




〜森奥〜


担当者
「このあたりでございます!」

ルッカは辺りを見回した。
もし自分ならどう逃げるだろうか。考えながら歩いていた。

現代の監視カメラ社会、セキュリティ社会でクロノ達が逃げ続けるなんて現実的には不可能である。

「熊にでも食べられたか… あるいは神隠しにでもあったか…

流石に神隠しはないだろ。そう自分にツッコミをいれたとき、ルッカは気付いた。

「まさかこの森でゲートを見つけてそっちの方に入ったとか? それなら警察の追手を逃れられるのも説明がつく」


「だけど、この広い森の中でどうやって探す? 揺らぎの小さな時空の裂け目なんて、どうやって…」

ルッカはゲートを探知する機械が作れるかどうか構想を巡らせた。

理論上ゲートホルダーを起動しながら、ずっと森の中を歩けばいつかは辿り着く。
ドローンにそのの役割をプログラムさせればいい。

ルッカは自宅に帰り、既にあるドローンに手を加えた。

ドローンが自動で森を散策し、ゲートを発見するまでは2日かかったが、ルッカもクロノ達のいる時代へと飛んだ。



マール
「あ、ルッカ! ルッカだ!」

今日も万引きをしようとゲートに入ろうとしていたマール。目の前にルッカが現れて感激した。




ルッカ
「まさかマールがクロノとかけ落ちするとは思わなかったわ…


マール
「か、かけ落ちをとかじゃないって!

ルッカ
「ほんとに? そう言いつつ、まんざらでも無かったんじゃない?

マール
「からかわないでってば! クロノもなんか言ってよ!

クロノは万引き生活に王族を巻き込んでしまった事を後悔していた。




マール
「ところでルッカ、このコンピューターなんだけど…」

ルッカはコンピューターの裏にある電源ボタンを押した。通電していない様子

ルッカ
「このロボに聞いてみようかしら…」


ルッカは未来のコンピューター室に置いてあったロボの修理を始めた。

危険そうな武器を持っていないと判断したルッカは、ポケットから工具を取り出し、ロボを解体しはじめた。

ハンダゴテ等を器用に使い、適当な箇所を修理した。

「配線が断線してるだけなら、これで完成と…」

 

動きだしたロボはあいさつした。

「私はGKI008、セブンナイン社製、プロトコルタイプCです。」

「私に名前をつけてください」

 

とうやらメモリーがリセットされている様だ。

 

マール
「名前はロボがいい!」


クロノも考えたがマールのゴリ押しでロボに決まった。


「私の、名前はロボ、私は一体ここで何をしているのでしょうか?」

ルッカ
「記憶が少しはあるのね…、貴方はここで故障して眠っていたの。多分、汚れと錆から判断して何年も動けずにいたと思う。」 



「貴方達は誰ですか?貴方達がワタシを修理してくださったのですか?」

 

ルッカ
「ええそうよ。私の名前はルッカ、こっちがマールとクロノ」

 

ロボ
ルッカ様、マール様、クロノ様、ヨロシクお願いします」

  

マール
「呼び捨てでいいってば

 

ロボ
「はい。マール、ルッカ、クロノ。」

 

 

ルッカ

「ロボ、いきなりだけど、私たち聞きたいこと沢山あるの。

 

ロボ
「なんでしょうか? 

ルッカ
「今は何年くらい?」

ロボは回答に困った。ロボ自身の記憶が消えていて曖昧だった。ロボはそばにあるコンピューターをいじくった。

ロボ
「施設への電力供給が一部ストップしているからだと思いますが、供給できればコンピュータが起動して質問に答えられると思いマス」

 
ロボは外へ出て、目を凝らした。
「あの場所で電力供給が可能になると思いマス」

ロボが指したのはクロノ達が寄ったロボット工場だった。

マール
「あそこにはロボットが攻撃をしてきて危ないよ?」 

 

ロボは思い出した様に言った。

「ロボット…私の仲間でしょう…か? あそこはたしかロボット生産工事…ワタシは、たぶん、あそこで作られた。あそこにはワタシの仲間がいる筈です。あそこで電力を供給して貰いましょう。」


ロボと共に工場へ向かったクロノ達

ロボは入って直ぐの端末にコードを入力した。

セキュリティが解除されクロノ達は侵入者ではなくなった。


工場はロボットの各パーツから完成までを全自動で作られている。ロボットの材料となる資材は古いロボを解体したり、機械のスクラップされたものをリサイクルしたりで循環している。

 
ロボは端末で電力供給の操作をした。

 

ロホ
「残念ですが私には電力供給する権限が与えられていない様です」



ルッカ
「他にないの? この世界の情報を調べる方法


ロボ

「工場内を探してみましょう。情報端末ならここにもあるかもしれません。

 ロボとクロノ達は奥へと進んだ。

製品化されて展示されているロボット達を見ていたロボは思い出した。

「そういえば施設内の地下に手動で電力供給を入れるとスイッチがあったあずです」

 

地下に降りると、

レバーが多様にあるフロアに到着した。

モニター越しにメーターや炉の燃料棒が水の中にあるのが見える。

ロボはテキパキとレバーを操作し、

「これで大丈夫な筈です」

と言った瞬間、サイレン、警報音がなり始めた。

 

ロボ

「あれ? 私、何か操作を間違ったかな!?」

 
警報は20秒後に地下1階以下のフロアを全て封鎖するというものだった。

「閉じ込められてしまうと、厄介です。急いで下さい」 

 

ロボはクロノの達を先導して走った。

3人の背後で重厚な封鎖シャッターが次々と降りる

そのペースに間に合わず、降りたシャッターにロボが挟まり、メリメリと音を立てる。

「皆さん、早く」


ロボはクロノ達が進んだのを確認すると、前転し、ゴロゴロと壁にぶつかった。

 

 

ロボ

「なんとかなりましたね。ちょっと危なかったですけど。

 

 

帰りの道で、ロボット達が襲ってきた。

 

マール

 「どういうこと?

 

ロボットはクロノ達ではなく、ロボを遅っている。

「裏切り者、人間の味方する裏切り者』



ロボ

「どういう意味デス?

 

ロボット達

「忘れたのか、俺たちは人間にはしたがわない。マザーシステムに従う。

 

ロボもクロノ達も気付いていないが、この荒廃した未来では人工知能マザーを管理する人間が長らくいなくなっていた。いつしかマザーは人間の存在価値を忘れ、ロボットの為に活動する存在に変化した。ロボットではなく人間に味方するロボットはもはやロボットではない。そんな認識の元でロボット達はロボをスクラップにしようとしていた。

ロボを壊してリサイクルするのが、このロボット達の役目だった。

 
ロボ

「な、なんでこんな事を

 私たちは仲間ではなかったのですか?

 私達は人間を豊かにする為の存在ではなかったのですか。」

 

ロボット達はそのコトバは理解できなかった。

 

 

ロボット達はロボの電源を落とそうとスイッチのある背中を狙おうとする。
「やめてください」  

ロボの声は虚しく、響く。

背中を壁につけたロボは正面からロボット達の攻撃を受けた。

ロボが動かなくなると、ロボット達はスクラップ用のゴミ箱にロボを投げいれた。

 

 

「ニンゲン、排除、する」

 

ロボット達はクロノに襲いかかった。

 

マール

ルッカ! 一旦逃げよう!

 

ルッカは逃げなかった。

「クロノ! ロボットの弱点って何か分かる?」

 

クロノは首を横に降った

 

ルッカ

「足元よ。

 足元の重心が不安定だから足に攻撃を加えれば、簡単にコケる。」

 

クロノはルッカの言うとおり動いた。刀の柄を当てると、ルッカの言うとおりに簡単にこけた。

 
ルッカ
「このフロアのロボットは門番の様なセキュリティ専用ロボットではないみたい。全く武装されてないもの。恐らくロボットの運搬や廃棄担当専用の、いわば戦わないロボット。なぜ戦闘様のロボットがここに来ないのかは分からないけど、管理者がまだ未熟なのかも」

 

クロノがロボット達の注意をひきつけてる内に、マールとルッカがゴミ箱からロボを救出した。

外まで運ぼうとロボを引っ張るが、重くてなかなか前に進まない。

しかし、確実に少しずつ前に進んだ。

十分程、クロノはロボット達と格闘を続けた。

ルッカとマールはロボを運びながら気付いた。
入り口のハシゴを昇らせる力がない事を

ルッカ
「しまった! 私としたことがこれじゃロボは運んでも修理できない!」

マール
「ねえ、起き上がってよロボ! そうじゃないとあなた、ここでスクラップにされちゃうんだよ!」


ロボは起き上がった。


マール
「え? どうして? 





ルッカ
「もしかして最初から動けたの?」
  

ロボ
「はい、動かなくなれば、ロボット達は攻撃を辞めると思いました。

マール
「なぜ今になって起きたの?」

ロボ
「起きろと言われなかったからです」
 




ルッカ
「ロボ、貴方なぜ戦わなかったの?

 

ロボ
「私は兵器ではありません。戦う様にはプログラムされてません。」

 

ルッカ
「でも逃げることばできたでしょう?

 

ロボ
「仲間なので話しあいをしました。話しが通じないので途中で動かないふりをしました。そうすれば直ぐに攻撃も終わるかと思いました。」

 
マール
「次からはちゃんと戦いなよ。」

ロボ
「いえ、私には破壊活動はプログラムされてません。

 
ルッカ
「時と場合によりけりよ

 

ロボ
「時と場合? 

 

ルッカ
「貴方ね、あの分厚いシャッターにも耐えられるのよ。
 ロボのフレームは汚くて古いけど、品質が良い。なぜ、スクラップされずに保管されてたのか気になったけど。きっとレア度が高いから持ち主は捨てられなかったのよ。つまり、それなりのロボスペックが高い。もしかしたら戦闘様ロボにもなれるかもしれないのよ。」

 

ルッカ
「ちょっと試しましょうか。」

 
ルッカはクロノの元へ戻り、ロボットにちょっかいを出した。

「ほら、ロボ。このままだと私殺されてしまうわ。私が死んだら誰が修理してくれるの?」 


ロボは動かなかった。

「スイッチを切るわよ」

素直にスイッチを切られるロボ


 
マール
ルッカ駄目だよ。先ずは友達にならないと。
友達がピンチなときは友達は助けるんだよ。ほらロボ、私達、友達だよ。

 

ロボ
「友達…インプットされました。」

マールもクロノの元へ行き、ロボットに号撃されそうになる。
ロボもマールを追ってスタスマと歩くと、腕を振り上げた。

ロボのパンチが炸裂した。整備ロボットはロボの一撃に次々にノックダウンしていく

整備ロボットが倒れると緊急警報がなり始めた。

ビーム攻撃をするセキュリティロボが集まってきた。 

ロボはビームに耐えながらセキュリティロボを駆逐していく。

見事にクロノ達を守り戦った。
ロボはもう戦わないロボではない。ある意味、破壊兵器の様な存在に成り果てていた。


ルッカ
「人が矛盾をはらむ様にロボットも矛盾をはらむ生き物なのね…」



〜コンピュータールーム〜


クロノ達はコンピュータを起動した。

ロボが操作し、データベースノアXYという画面が表示された。
 

「私はデータノアXY、データベースに情報をインプットする場合は画面のXをタッチし、。 データベースにから情報を引き出したい場合Yをタッチしてください…



ルッカ

「これは情報端末みたいね。今、歴何年かな?

 
ノア
「現在、西暦2300年です」

クロノの達は荒廃した世界の原因を聞いた。

データベースによると原因はラヴォスという生物によるものだった。ラヴォスは中世時代に南の魔族によって召喚され、1000年以上地中の中で眠っていたが、1999年7月1日に目覚め、大きな地震と共に地上に這い出ると
天に向かって光を放った。放たれた光は天から降り注ぎ、世界を砂と瓦礫の大地に変えた。光の熱で99%の人々が一瞬で消滅し、残りの1%も殆どが死に絶えた。

地下シェルターに避難してた凡そ10万人は
食料資源に限りがあった。
ラヴォスの熱を受けた大地では作物は育たなくなり、人口栽培にて生産移行するものの、、
ラヴォスが吐き出した煙『黒の刺客』により人々は絶滅した。

マール
「黒の刺客って何?


ノア
「黒の刺客とは、ラヴォスが吐き出した煙の中に含まれる病原ウイルスことで、それに感染した生物は発症後24時間以内に死亡します。感染者から感染者への感染力も高く、黒の刺客発生後、人類は絶滅しました。

マール
「魔族もそれで死んだの?

ノア
「魔族も絶滅しました。

ルッカ
「ちょっと待って、私達もそれに感染するじゃ…

ノア
「その危険性はありません。ウイルスの寿命は最長100年で2100年の段階では、不活性化しています。

ルッカ
「はぁ、びっくりさせないでよ…

マール
「そのラヴォスは今何処に行ったの? この世界で今でも暴れ回っているの?」


ノア 「ラヴォスは黒の刺客を吐き出した直後、地殻へと潜りました。ラヴォスは現在もまだ地殻の中にいると想定されます。」


 ルッカ
ラヴォスって何なの? まるで生物破壊の神みたいじゃん。それを召喚した魔族もさぞ想定外だったでしょうね」

 

マール
「ノア、魔族って一体なんなの?」

ノア
「魔族とは人間と共に遥か昔から地上に生息していた生き物。中世期600年代まで人間文明と不毛な戦争を行った後、西側の魔族王フリューゲルスが北西大陸ギリイス首都を制圧すると人間との共存を始めました。」



マール

「魔族はどうして人間より優位になれたの?

 

ノア
「きっかけは西暦1000年の偶発的タイムゲートの発生でした。当時19歳の女性発明家が作り出したテレポート装置に障害が発生し、それが原因で現代文明が過去に混入、魔族が知恵をつける結果となり…」

 

ノアの説明は続いた。

「…当時、偶発的タイムゲートが発生し過去に行った者は三名と魔族種一体…」


ノアの説明によると千年祭でのテレポートの実験を人間以上に知能の高いコウモリ魔族種が見ていた。その魔族種はルッカがタイムゲートの検証実験中に入り込み、中世時代の魔族達に戦争や戦略的知恵を授けた。

影響を受けた魔族王フリューゲルスの主導で人間に擬態できる種族が人間世界を制圧した。

 

ルッカ

「そんな…じゃあ、私の実験が原因で…」

 

ルッカ

「私どうすればいいの? 責任なんて取れないよこれ。

 

マール

「過去に行って魔族や魔王と戦う…

 

ルッカ
「それを本気で言ってるの? 戦国時代に行くという意味だよ? 命が幾つあっても足りないわよ。 

 

マール
「確かに…実際問題無理だよね… 



ルッカ
「とりあえずクロノを中世にでも連れて行ってから考えましょうか。」

マール
「そうだね。クロノが安全に暮らせそうなところ、そこしか無いもんね…」


クロノは魔族がいる戦国時代が怖かった。いざという時の為、魔族の弱点になりそうな情報をノアに聞いた。


クロノ達は魔族の弱点を知った。

ー魔族の弱点ー

1、中世紀の魔族は総じて知能の低い者が多く、挑発等で冷静さを失うと行動に大きな隙が生じる。
2、人間に聞こえない特定の周波数帯の音が苦手な種族が多く、音波攻撃が有効。
3、多くの種は寒さに強い一方で熱に弱い。(化石調査から氷河期に人類文明が衰退している隙に縄張りを広げたとされる。)
4、忍耐力がない。酸欠や水により呼吸を奪えると効果的
5、魔族を弱らせる聖剣、グランドリオンを使う。(詳細不明


魔族について調べる内に魔族の強み、注意点も見つかった。

魔力を持ち、魔法が使える種族。超能力種族。数は多くないが、体内の魔力をエネルギーとしてチカラに還元する。その場合、身体能力が飛躍的に高まったり、熱や寒さを弱点としないどころか反対に熱や熱さをエネルギーにする者もいる。大きな傷を受けても再生するチカラがある者も。そういった者の多くは魔族社会の上位に属している。


クロノが脱走して5日目、そろそろ警察の包囲網も弱くなっているはず。三人はどうやって千年祭のゲートをくぐるか話合った。

マール
「そういえば、この部屋の扉が開なかったけど、通電した今なら開くのかな?」

マールがそっと触れると扉は開いた。
中には何もない。6畳程度の広さがあるだけ。

ルッカ
「これって、最初に開けた扉とまったく同じ文様をしているわね…何か特別な意味でもあるのかしら?」

ルッカ
「まさかここにも同じ様にゲートがある訳じゃないわよね?」




ルッカ
「え!? 本当なのこれ? 冗談じゃなくて本当にゲートがある!」

目を凝らして見なければ気付けない空間の揺らぎがそこにあった。

ルッカ
「扉の文様の意味はもしかしてタイムトラベラーに向けたメッセージ…」

マール
「メッセージ?

ルッカ
「ええ、タイムトラベラー同士だけが判る共通のシンボルとでも言えるかしら。」


ルッカはドローンでゲートの先の安全性を調査した。





「で、できない?」
ゲートは開いているものの、ドローンはゲートの中に吸い込まれなかった。

今までは問題なくできていた。ドローン自体に問題が有るのか? ルッカは頭を抱えた。

ロボ
「私の出番ですか?」 

ルッカ
「行ってくれるの?」

ルッカはゲートホルダーの説明をした。

 


 

ロボはゲートに吸いこまれた。




3分程経過し、ゲートが開きロボが戻ってきた。

ロボ

「不思議な場所でした。ゲート先にいくつものゲートがあって、いろいろな時代に繋がっていマス。」 


ルッカ
「え? それマジ!? 

マール
「なんかオモシロそう!」

ロボ
「間違いありません。中は広い部屋になっています。休憩可能なソファーや椅子があります」


ルッカ
「ノア、私達以外にもタイムトラベラーは存在するの?」

ノアにはタイムトラベラーに関する情報は何もインプットされていなかった。

ルッカ
「偶発的タイムゲートの存在は知ってるんだから、タイムマシンの研究くらいしてないの?」


ノアはタイムマシンに関する情報を吐き出したものの、タイムマシンが作れなかった不毛な研究資料しか吐き出さなかった。

ルッカ
「ちょっとどういう事? 私が生み出したゲートホルダーの情報くらいあるでしょ? 未来人もそれ作ってないと、ゲートには入れないのだから」

ノアにはゲートホルダー関するデータはインプットされていなかった。

ルッカ
「まさか、私の技術が未来に伝わらないってことかしら…

マール
「もしかして死ぬとか?」

ルッカ
「私のテレポッドの技術はどうなったの? ワープ構想のロジックは? 未来のエネルギー資源解決問題は?」

ルッカのテレポート技術は論文データとして残っていた。だが実用化されていなかった。
テレポートに見合うエネルギーの効率性が割に見合わず実用化に向かなかった。

ルッカ
「そんな馬鹿な! テレポートによる物質同士の重ね合わせの衝撃力でテレポートに使ったエネルギー以上のエネルギーが生み出せる筈でしょ! 私の無限エネルギー構想の論文はないの!?」

ノアはルッカの求める情報を吐き出さなかった。

ルッカ
「無能な未来人め。だったらこの時代にインプットしてやる!」

ルッカはまだ無限エネルギーの論文を書いていなかった。
クロノ達はしばらく、ルッカの仕事が終わるのを待った。


ルッカ
「よし! これで完璧! じゃあ、みんな! ゲートの中に入ろうか!」



クロノ達は不安と好奇心が入り交じりながらゲートの中へ飛び込んだ。



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■6話 時の最果て



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ー時の最果てー

ゲートを抜けた先に部屋があった
部屋の中にはいくつかのゲートがあり、部屋の縁から見える外の景色は無限に続く黒の世界。

部屋には扉があり、その扉を空けると、もう一つ部屋がある。
部屋の真ん中に黒いスーツをまとった老人が鼻ちょうちん膨らませながらスヤスヤと寝ていた。

マール「もしもしー」

マール
「ここは一体なんですかー」

老人
「おや、こんなところに人がくるなんて珍しいのう。ここは時の最果て、まあ、ゆっくりしてけ。」

ルッカ
「え? それだけ? 時の最果ての説明は?」

老人は答えなく、また深い眠りについた。

マール
「どうするクロノ? 叩き起こす?」


時の果ての人
「そうじゃ。お主ら行く前にそこの扉に入ると良いよ。」 

そう言って、老人はまた眠り始めた

クロノ達は扉を開けた。

部屋の中央に小さな生き物がいた。

「お、久し振りのお客さんね。私の名前はスペッキオ。スペッキオの周囲を壁にそって3回まわると良い事が起きるよ。」 

スペッキオはそういうと、黙った。
話しかけも同じ言葉を繰り返した。

クロノ達はまわった。
一周するとスペッキオが小刻みに揺れ始め、二周目で強く揺れ、三周目ては目にも止まらぬ速さで揺れた。


「成功だよ。これで君たちは魔法が使える様になったよ。」 

クロノ達は言ってる意味がわからなかった。

「そこの大きなのは多分無理ね」
スペッキオはロボを指した。

「とりあえずスペッキオを指差してサンダーって叫んてみ。」

クロノ達はサンダーと叫んだ。
クロノの指先が光り、小さな稲妻がスペッキオに落ちた。

「君が使える魔法は天属性だね。今カミナリ出した君は、そういう魔法を覚えやすい体質だからね。じゃ、君は終わり、今度は君以外の人がファイアーて叫んで僕に指差してね。」


ルッカの指先が光り、炎がスペッキオに直撃した。「君が使える魔法は火属性だね。今火出した君は、そういう魔法を覚えやすい体質だからね。じゃ、君は終わり、今度は君以外の人がアイスて叫んで僕に指差してね。」

マールの指先が光り、スペッキオが氷ついた。「君が使える魔法は氷属性だね。今スペッキオを凍らせた君は、そういう魔法を覚えやすい体質だからね。じゃ、これで僕の講義はおわり。」 

クロノ達は更に戸惑った

「あと今のはスペッキオがチカラを貸したデモンストレーションみたいなものだから、実際に誰かに向けてやると今程上手くはいかないと思う。
でも練習するときっと上手くなるから。じゃあ、僕もおやすみ〜」

スペッキオは一方的に説明したら寝てしまった。

起こすと、魔法の練習がしたいかどうかを聞いてきた。

「デモンストレーション版がいいか、それともリアルがいい?」

クロノ達はリアルを求めた。

サンダー、ファイアー、アイスと叫んだが、何も出なかった。
もう一度叫んだ。しかし何も出ない。

「スペッキオが思うに、何も出ないときは自分の腕とか体に向けてやるといいよ。」

三人はそれぞれ、自分に向けて唱えた。
クロノは身体が少し痺れ、ルッカは身体が熱くなり、マールは身体の温度が低下した。

「スペッキオに向けてもう一度やってみて。あと身体の調子に意識を集中してやってみてね。疲れみたいなのを感じとれたら成功だよ」 

三人はスペッキオに向けて魔法は放った。スペッキオに変化はないが、少し疲れを感じた気がした。

「その感覚が大事だよ。疲れる感覚を覚えて、今度はどっしり疲れる感覚を想像しながら、魔法を唱えてみて。」

三人はスペッキオに向けて疲れるイメージで魔法を放った。スペッキオに電流が走り、軽く燃え、霜がついた。三人はどっしりとした疲れを得た。

「なんとなくわかった? 魔力と魔法の仕組み。訓練次第で色々な事ができるから、また遊びにきてね。あと無闇に人に向けて使ったらダメだよ」

三人は色々と言いたいことがあったが、頭の整理が追いつかなかった。



ルッカ

「ありえないわ。いや、ありえるかもしれないけど、やっぱりないわ!

ルッカは一人部屋に残りスペッキオに魔法をぶつけていた。

「科学以外は信じない!」
そうは言うもの、これまでの異常な体験からありえないことではないと、内心思い始めていた。


スペッキオ『やり過ぎると疲れるから注意ね』

 
ルッカ『どういう現象よ!これ!?』

スペッキオ『スペッキオにも良くわかんない。いつからできたのか、なぜできたのかも』

 

ルッカ『これって科学的にいったらどういう現象よ? 無いところから発生する炎なんて、100歩ずってありえるとしても炎の原材料は酸素よ。魔法ファイアが着火をコントロールしているとしても炎の制御に必要なのは酸素。酸素量をコントロールすることが重要でありその酸素は一体どこから? 酸素をワープさせたということ? それとも周囲にある空気から酸素だけを取り出して凝縮させているということ??』
 
ルッカはスペッキオに聞いたが、理解できていない様子だった。

スペッキオ『魔法には個性があって、その人が使える属性というのが決まってるんだ。ルッカは炎系の魔法が使えるから炎が得意なんだよ』


科学的にいえば炎の制御は酸素を制御することだ。厳密には得意なのが酸素制御ということになる。

ルッカは気になっていた。酸素をワープさせているのか、周囲の酸素を集めているのか、密閉空間を作って実験したい。もし酸素ではなく、水素のみ選んで集められるなら爆発させる魔法も作れることになる。

スペッキオ
「爆発の魔法が覚えたいの? だったら、フレアって叫んでみて。

叫んぶと、スペッキオの頭の上が光り、爆発した。スペッキオはその衝撃にビックリし、ルッカは衝撃で転げそうになる。

スペッキオ
「という訳で、使うときには注意しないといけないの。

ルッカ
「もっと火力のある技は使えないの?

スペッキオ
「練習すればできると思うよ。あとゴハン食べて寝て


ルッカには他にも疑問があった
デモンストレーションのとき、ファイアを使ったら、火は自身の目の前から生まれ出てスペッキオまで駆けていった。
途中に障害物があったらどうなるのか。

スペッキオ
「障害物をすり抜けていくよ。」

ルッカ
「障害物をすり抜ける? 避けるのではなく? すり抜けるの? つまり、火の絵がそこにありながら、火の性質なく、座標の元で火の性質になる。火が飛んでいく光景なんて意味はない、指定した座標点で初めから燃えれてれば無駄がないのに。なんでそんな事になってるの?」

スペッキオ
「スペッキオは難しすぎて意味わかんないけど、とにかく障害物には当たらないよ」

魔法を使って指が光る事も無駄なことであるが、それがある意味ってなんだろう。

「スペッキオに言われてもわかんない。困る」

ルッカ
「光を出さないで、、あるいは魔法を唱えないで出せる?」

スペッキオ
「それは多分、無理なんじゃないかな、やる意味もないと思うけど

ルッカ
「じゃあ、光を出す魔法や光を消す魔法は使える?」

スペッキオ
「ライトってのがあるけど、ルッカは属性違うから何も起こらんよ。光を消す暗闇の魔法もあるけど、使えないと思うけど」


「デモンストレーションならできる?」

スペッキオ「できるよ? やってみる?」


ルッカがライトを唱えると部屋が明るくなった。
気が少しだが断続的に抜け続ける感覚。

スペッキオ
「スペッキオがチカラを貸してるとはいっても魔法使ってる主がルッカだからね。しかたがない。」

だけど気を抜ける感覚がファイアの時と違い、頭から下に向かう感覚だった

ルッカはデモンストレーションを解除し、頭から下に気が抜ける感覚をイメージしてライトを唱えた。

微かに光が出た。

スペッキオ
「ど、どういうこと? ルッカは光属性とか使えない筈なのに。」

「成長して魔力が高くなると、色んな属性魔法が少しは使えるけれど、今のルッカの魔力量では何も起こらないのが普通なんだけど…」


検証してみると、体から気の抜ける方向、前後左右上下により、出せる魔法の種類が増えた。
たとえば
上から下へが光属性
下から上が闇属性
前から後に炎
後から前に氷
左から右に天属性
右から左に冥属性

これをクロノで検証すると
上から下へが光属性
下から上が闇属性
前から後に天
後から前に冥
左から右に氷
右から左に炎


ルッカ
「水の属性とかないの?


スペッキオ
「ウォーターってのがあるけど、

スペッキオにデモンストレーションを頼むと、
気の抜ける方向感覚が捉えられなかった。普通にファイアを使うのと感覚が違うのはわかるのが、どう違うのか、わからなかった。

ルッカ
「水を吸い取る魔法、つまり乾燥の魔法なんてあるかしら?」

スペッキオ
「ドライヤーのこと? 

検証するとドライヤーもウォーターと同じように感覚の掴み所がわからなかった。
しかしウォーターと同じ感覚とも思えない。




障害物をすり抜けるというエネルギー工学的にみて無駄な演出が魔法の仕組みにプログラムされていること。唱えて光って炎が飛んでいく仕組み。まるで「これから危険な事をしますよ。気を付けてください」というメッセージを飛ばしている様なものである。

魔法とはもしかすると、未来人が生み出した科学技術の様なものなのだろうか。使用上安全性を考慮して、このカタチになったのではと、この時ルッカは思った。

だとしても、納得できない事は山ほどある。

魔族が魔法を使えるという噂は未来のデータベースノアから引き出した情報。
未来人が魔法を生み出したのなら、未来人も魔法が使えるという情報がないとおかしい。だけど魔法を使える未来人なんて情報は無かった。

(安全性が考慮されて作られてる…)


ルッカはクロノを呼び出してサンダーとファイアーをデモンストレーションから同時に唱えた。
同時にそれそれの現象が起きた。

電気を効率良く対象に浴びせるは対象の周りが真空状態にならないといけない。しかし、真空状態は無酸素だから燃えたりしない。
火と電気を連携させて燃えるのであれば、ファイア魔法はそもそも酸素がないので燃えないはず。

【魔法の仕組みは化学的にも物理的にもその法則に即していない。】

アイス魔法の場合、その正体が冷気が発生しているのではなく、対象から温度を奪う性質なのであればファイアとアイスの同時発動は純粋に相殺し合う関係になるだろう。

アイスを先に浴びせて凍らせる。いわゆる凝固作用で対象の体積を下げておき、その後でファイアを浴びせて、解凍し、体積を増やす場合は、どうなるだろうか? 普通に考えれば凍ったものが普通に解凍されるだけだろうが、酸素を火種にしていないのだから熱運動がダイレクトに伝わる筈であり、たとえば空気なら熱膨張爆発するだろう。対象が生き物なら生き物そのものが膨張する。
恐らく電子レンジで凍った肉を急速解凍してドリップする様な現象を起こせる。それも激しいレベルで。



「なるへそね〜、意味わかんないけど今日、スペッキオ、たくさん勉強した。ルッカありがとう」


ルッカ
「ここには私達以外来たことないの?


スペッキオ
「来たような、来てないような、わかんない。

ルッカ
「あなた何時からここにいるの?

スペッキオ
「スペッキオはいつからここにいるんだろう? ずっといる気がするけど、いつからいるんだろうか?」


ルッカ
「じゃあ、あっちの部屋で寝てる爺さんは? いつからいるの?」

スペッキオ
「スペッキオと一緒にずっといるけど、最初からいた。」

ルッカ
「おじいさん何者なの? 何している人なの?

スペッキオ
「あの人は何もしない人、いつもここで寝てる人」

ルッカ
「この部屋はなに? 資財とか何処から運んで誰が作ったの?」



スペッキオ
「全部僕が作ったのね。そこのお爺さんにダメ出しされながら。センスの良い部屋を作ったつもり。資財は僕の中からだけど…

ルッカ
「魔法で作ったということ?(なるほど。魔法が酸素とかワープさせたり、あるいは無から生み出してるとすれば、この空間全部を魔法で作ることもあり得るか…)

ルッカ
ゴハンとかどうしてるの? 私お腹減ったけど、もしかして、食べ物も魔法で生み出せるの?」

スペッキオ
「スペッキオは、お腹減らないから食べない。生み出す事はてきるよ。

ルッカ
「じゃあ、ハンバーガー出せる?

スペッキオ
「スペッキオそれわかんない。

ルッカ
「どんなものが出せるの?

スペッキオ
「スペッキオはチャーハンが好き

ルッカ
「じゃあ、それお願いできるかしら?

スペッキオがチャーハン!と唱えると器に盛られたチャーハンが出てきた。
スペッキオはそれを貪った。

ルッカ
「…」

スペッキオ
「ごめん、お腹空いてないけど、おいしそうだからつい食べちゃった。もう一つだすね。




クロノ達はスペッキオが生み出したチャーハンを食べた。

ルッカ
「もしかして、オイルとか車とか、兵器とか生み出せるのかしら

スペッキオ
「何でも生み出せる訳じゃないの。スペッキオが生み出せるの、単純なものだけ。

ルッカ
「チャーハンって料理としては作る過程とか複雑だと思うけど…


ルッカはチャーハンを調べた。見た目も味もチャーハンに違いないが、胃に貯まらない感じがした。

ルッカはチャーハンを食べながら、この時の最果てに来る前の事を思い出した。ドローンが入れなかったこの世界。でも手元にはドローンが実際にある。
ルッカはドローンを飛ばして部屋の外を調べてみた。

暗闇が続くだけで、他には何も見つからない。
部屋の外にあるゲートにドローンは入らない。
ルッカがドローンを手元に戻すと、
バッテリーの残量メーターが減ってない事に気付いた。


「どういうこと? もしかして、この世界では時の流れが止まっている?」

「だとしたら、この世界にいると老化しない事になるの? 
空腹が満たせないのも、私達の時が流れてないからなのかしら?」

ルッカはロボにボールペンとチャーハンを持たせ未来に一度帰って貰った。ロボはチャーハンを持たずに帰ってきた。

ロボ
「なぜかゲートをくぐった瞬間に、チャーハンが消失しました。ボールペンはゲートの向こう側に持っていけず足元に落ちました」

ルッカは時計を見た。ここに来て何時間も経過しているが、時計は止まり殆ど進んでいなかった。ロボには未来に行って帰るまでに秒数をカウントして貰ったが、ルッカが数えた秒数と一致していなかった。。ロボのカウントの方がルッカの30秒多い、ロボが未来に滞在した時間が30秒程で、ルッカがカウントしたのはトータル100秒数でロボのカウントは130秒数。

ルッカは1つの結論に至った。この時の果て世界は時が止まっていて、同時に物質的には存在していない。 


ルッカ
「恐らく、異空間に飛び混んだ私達の身体は異空間の中に今も漂い続けている。でも、意識では互いに繋がり認識し合っていて、手を繋いだり、ゴハンを食べたりできるけど、実際には手繋いだり、ゴハンを食べた事にならない。」

「たとえば私のメガネを外して、この世界に置き忘れてゲートから出たとしても、メガネは装着したままゲートから出るに違いないわ。」

時の最果てゲートに入った時の姿のまま出てくる

ルッカ
(この世界でドローンが飛ばせたりできるのは、私がドローンを飛ばせる事を認知しているからかもしれない。

スペッキオが物質的に物をこの世界に運べるなら、反対に外の世界に自身を持っていける筈で、でもスペッキオはずっとここにいた記憶しかない。恐らく外の世界に出られないということ。

部屋のインテリアや壁も全ては想念の様なもので、スペッキオですら実体のない幻なのかもしれない。
老人もずっとこの世界にいる存在、だとすれば実体は存在しないのかもしれない。


クロノ達は腹が空いていた。しかし現代ではクロノは指名手配されているだろう。安全な場所はどこにあるのか?


時の最果てに存在しているのは7つのゲート。
ロボに頼んでゲートの先を探査して貰い、安全性を確認して貰った。


ゲート1
千年祭会場、ルッカのテレポッドブース

ゲート2
現代の森、クロノが偶然にゲートを見つけた場所

ゲート3、ゲート4は、クロノ達が未来で最初に出てきた所と、時の最果てまで繋がっていたゲート

ゲート5は中世に。クロノ達が行った山中へ行ける


ルッカ
「こう見ると、全てのゲートが、一度は私達が通った場所に繋がっているようね…
この時果て世界が私達が辿った記憶から生み出しているという説明がつくけど…」


クロノ達には記憶のないゲートが1つあった。

恐竜時代へと繋がるゲート

ロボによるとゲートの先では恐竜や恐竜人がいたらしい

ルッカ
「恐竜時代に行く勇気は流石にないわね…」

クロノ達は中世に向かった。リーネを魔物から救った礼やらで、きっと食べ物に有りつける気がした。

-



――――――――――――――――――――――――――――

■7話 戦争



-

クロノ達が山を降りようとしたとき、爆音が轟いた。

マール
「え? 何か起こっているの?」


ルッカ
「これは、砲弾の音? もしかして戦争!?

マール
「演習…とかじゃないよね?

ルッカ
「だといいけど。

クロノ達が山を降りると、城下の街は戒厳令が出ていた。
人々は街を出歩かず、皆、家々にこもり、負傷した兵士達が療養所にいた。

街の一角にある施設には数十の死体が集められていて、遺族や神父が冥福を祈っていた。

中世、A.D.600年
魔王軍とガルディア王国軍の戦いは既に始まっていた。

「おい、そこのお前ら、戒厳令が出てるんだ外にでちゃあかん。」

見張りの兵士からクロノ達は戦況を聞かされた。

「今はまだ防戦しかできてないけど、このガルディアに伝説の勇者があらわれたんだ。その勇者さえ加勢してくれれば戦況はひっくり帰るぞ。」

この見張り兵士だけでなく、他の兵士も同じ事を口にした。



ルッカ
「伝説の勇者? なにその昔話設定」

マール
「でも街は噂で持ちきりだよ? 伝説の勇者が現れたんだって

ルッカ
「その伝説の勇者は何をしてくれたの?

マール
「伝説の聖剣、グランドリオンで1000の魔族あっという間に倒したとか

ルッカ
「それが本当なら、なんで勇者はガルディアを放置しているのかしら…
 
 真相を確かめるために、クロノ達はガルディア城へ行った。


リーネ「あら、貴方達、今までどこに要らしたの? 教会で私を助けて頂いて、ろくにお礼も申しあげられぬまま、いそいそと、どこかへ言ってしまわれ…」

リーネ「とはいえ、私も今は悠長な事を言ってられない身。魔王軍がそこまで迫ってきております。気を付けてください。
こんな時、伝説の勇者がいてくれたら…」



マール
「伝説の勇者ってどんな人なの?

リーネ
「私も詳しい事は存じ上げないのですが、素晴らしい勇者だと聞き及んでおります。

マール
「王様もなにかご存知なのですか?

王「わたしも詳しい事は分からないのだが、その勇者は南の大陸に進んだと聞いておる。
現在、魔王軍は大陸を結んだ橋の前で我が軍と交戦しているが、その橋を抜けたという話を聞いた。魔王軍をものともしないそのチカラはまことの勇者に違いない。」

クロノ達は半信半疑だった。
ガルディアは噂話におどらさて現実逃避をしている様に思えた。

戦況はガルディア本土へと続くゼナンの橋に魔族の侵入を許している。魔族の侵入を防ぐ為に破壊したが、魔族はその橋を骸骨で補強しているという。

将軍ビネガーは動物や人間の骨を集めて操り、壊れた橋にかけた。その橋の上を骸骨の兵士が進行しにガルディアの兵士達は血みどろの戦いをしていた。

正直、クロノ達では戦力になるとは思えない。

ルッカ
「大丈夫、私達には命知らずのロボがいる。」

クロノ達は橋へと向かい、ロボは敵のガイコツ兵を一撃で倒していく。
「なんだこの鉄の生き物は!」
「敵の妖術兵士か?」
苦戦している兵士たちを尻目に橋に群がる敵を蹴散らして進んでいく。
「いや、こいつは我々に味方してくれている」
「もしや、この鉄の生き物が伝説の勇者なのか!」
「いや、この鉄の生き物を後ろで操っているのが、本当の勇者様に違いない。」

ロボの後ろでロボを指図していたルッカ

「見知らぬ貴方たちの助太刀に感謝致します。しかし、橋の向こう側にいるのは将軍ビネガーです。奴の妖術はとても危険です。どうか気をつけて。」

ロボは強かった。10人力、100人力のチカラがあった。

とはいえ敵の数は橋を埋め尽くしている。ガイコツ兵士は、ゆうに1000を超え、ロボがフォローしきれない敵がガルディアの兵士に襲いかかる。

負傷する兵士を見ながらクロノ達は覚えた魔法で防戦するものの、付け焼き刃のチカラでは全く使い物にならなかった。

ピストルは弾数は限られていた。マールのボウガンの矢も限りがある。ここぞという時にしか使えない。

剣道を習ったクロノなら頼りになると思いきや、ガイコツ兵のスカスカの身体には細い刀では攻撃力不足だった。

しかし、まったく役に立たない事もなく、刀の鞘は効果があった。
マールは倒れた兵士を療養所に運ぶ手伝いをし、クロノは鞘をバッドの様に振り回し、援護した。



ビネガー「うぬ? 我が部隊が押されている? こうなったら、とっておきのガイコツ兵をだすよ〜ん」

ビネガーが呪文を唱えると、ロボに倒されて動けなくなっていたガイコツ兵が一斉に集まり、ひとつの巨体なガイコツになった。

巨体ガイコツの腕振りの長さは、いままでの100倍はある。兵士達は近づく事さえできなかった。

しかしガルディア兵も負けてない。後ろに兵を引かせると、大砲をぶち込んだ。

ビネガー
「うそーん!」

大きい分だけ的が狙いやすい。砲弾は簡単に命中した。

ビネガー
「うぬぬぬ、ならば、今度は小さなガイコツ兵だ。」

大砲でバラバラになった骨がビネガーの呪文とと共に集まる。
小さな骨の集合体が与えるダメージは少ないもの、兵士達の足元を絡め取ろうとする。
兵士達は苦戦を強いられた。

クロノはどうしていいか分からず、負傷して動けない兵士に群がるガイコツを追っ払うことしか、できなかった。
それでも助ける事はままならず、クロノ達の前で人が死んでいった。

戦力になるのはロボだけだった。

橋の上で互いに消耗戦が繰り広げられた。

数時間後、ビネガーは魔力を消耗し撤退した。

ガルディア軍の損害、死者300名、負傷者500名、ビネガー率いる骨の軍団はそもそも生きていたのかさえ定かではない。魔王軍は実質、損害は無いに等しかったのかもしれない。

クロノ達は明らかに準備不足だった。
未来のデータベースノアではガイコツやビネガーの様な情報は見つからなかった。というより、情報があったとしても多すぎて気付かなかっただろう。

魔族全般熱に弱いのを考慮するなら火での攻撃が正解なのだろうが、前もって準備しておく時間がなかった。

目の前の犠牲者を見たルッカは怒りで震えていた。
クロノ達に無言のままでガルディアの王宮に戻った。

ルッカは王に進言した。

「お願いがあります。私に魔王軍と戦う為の武器を作らせてください」

ルッカには迷いは無かった。魔王軍に勝つためのプランが出来上がっていて、実現する自信があった。

ビネガーが次の攻撃を仕掛けてくる前に完成させないといけない。ルッカは作業場に篭った。

クロノ達はこの時代で何ができるかわからなかった。
この時代の人々が、曖昧な勇者の噂に縋りつく気持ちが分かる様な気がした。

クロノ達はガルディア軍部の被害調査隊に入隊した。

伝説の勇者を探す事と魔王軍に制圧されたかもしれない近隣の街の被害具合を調べる任に志願した。
戦えなくても、何か力になりたい。いざとなったら走って逃げる。それくらいならできる気がした。

クロノ達はルッカをガルディアに残し、街の被害調査と、伝説の勇者を探す為、南へと旅立った。

南の大陸は砂漠地帯が広がる広大な地域。砂漠を東に抜けると魔王軍の本拠地とされる魔岩窟があり、砂漠を抜けた南にパレポリ街がある。魔王軍がパレポリの街を襲撃しているかどうかは確認してみないと分からない。もし伝説の勇者がパレポリを守っているのであれば無事であるだろう。クロノ達は南に旅立つ前、ガルディア軍部からそう説明を受けていた。

ガルディアから数日分の行き帰りの物資が支給されていたものの砂漠の熱さはキツイ。魔族が熱さに弱いのを考慮すると、南部の街が襲われている可能性は低い。

南部よりも危険なのが砂漠の中心に存在する街で、魔王軍の襲撃があるとしたら、まずそこが壊滅しているだろう。もしその街が壊滅しているのであれば、魔王軍が駐留している可能性がり、速やかにガルディアに報告しなければならない。

橋を抜けた先には、魔王軍の遺体がいくつもあった。遺体といってもガイコツ兵士の亡骸であるが、それが砂漠を見渡す限り続いていた。

クロノ達はガルディア兵の遺体とガイコツ達を避けながら砂漠の中を2日進んだ。
数え切れないガイコツの先を抜けて
半日程進んた先に、中部地方の街が見えた。

幸い街は魔王軍には襲撃されてはおらず、クロノ達は近くの一件の民家の戸を叩いた。

クロノはガルディア軍部被害調査隊の腕章を見せた。
住人によると、魔王軍の部隊がこの街に進行しているとの報はあったものの、魔族は一匹たりとも、この街には侵入しなかったそう。
ガルディアの剣士カエルにより街の防衛は守られたのだという。

マール
「カエルって、たしかリーネ様を助けた騎士だったよね?」

クロノはカエルを思い出していた。緑色のカエル人間。リーネだけでなく、蛇女との件では結果的にクロノとルッカの命も助けた恩人である。
カエルは魔族だったのだろうか。魔族の中にも人間側に味方する者がいるのだろうか。


住人からは伝説の勇者はパレポリが故郷だという情報を聞き、砂漠を抜けた先のパレポリを目指した。
数日かけてパレポリに到着し、聞き込みをしていると判明したのは、伝説の勇者の存在は、実は子供が勇者ごっこで名乗ったものであり、その噂に尾ひれがついてガルディア本土まで飛び火したという話だった。

また、その子供はデマカセを風潮した為、引っ込みがつかなくなり、今しがた勇者の証を示す為にデナドロ山に向かったらしい。

デナドロは魔族のテリトリーであり、子供が一人で行くのは危険過ぎるという。

クロノ達は子供を保護する為に
急ぎデナドロ山に向かった。



〜デナドロ山〜


子供は既に4魔族に囲まれていた。


「我らデナドロの四天王! 我らの聖域に踏みこむなら、我ら四天王を倒してからゆけい!」

カラスの様な顔立ちをした二足歩行の化物。
その手には剣を持っている。

危ない! と思いきや、子供を攻撃する気配はない。

自称四天王達は剣を構えど、子供が攻撃をしてくるのを待っている様子。

「我らは武士道精神を重んじる四天王よ! お主が強き者であれば、いざ、勝負!」

タータ
「僕は勇者になるんだ!負けないぞ、負けないぞ!」

精一杯、虚勢をはるタータであるが、体格差からして勝てるないのは判る。魔族だから知能が低いのか、そのあたりの配慮はないまま、真剣勝負を求めている。

タータは剣を構えたまま泣いてしまった。

「クロノいくよ!」
マールはボウガンに矢を込めて放った。
魔族には当たらずかすめた。

クロノ達からの距離ではデナドロ四天王の会話は聞こえなかった。
穏便に済ませれば見逃して貰える種類の魔族だったが、マールの不意打ちという武士道精神に反する攻撃で、クロノ達がデナドロ四天王に狙われることになる。

クロノ達には今ロボはいない。
ロボはガルディア本土を防衛する為に、おいてきた。

「不意打ちとは卑怯なり! 生かしては返さん!」

取り囲まれたクロノたち。

「どっちが矢を放った!」

答えないクロノ達にカラス人間達はジャンケンを始めた。
武士道的に一対一を望むカラス人間達は、誰が
戦うのかを決めた。

「よし、兄者、私の勝ちだ!」
四天王は4っ子のカラスで、誰が長男か次男かはクロノ達には判別できない。

「どちらが矢を放ったのか、答えないのであれば、どちらも殺すしかないぞ!」

マールが答えようとしたとき、クロノが遮った。武士道の空気を察したクロノ。

自分が名乗り出ることで、タイマンに持ち込み、その隙にタータを連れて逃げる作戦を提案した。
だが既にタータは逃げていた。

振り返ると、タータは山を降りていた。
ならクロノ達にも争う理由ない。

カラス魔族を無視して走って山を降りた。
しかし、相手はカラス魔族、空を飛び、あっという間にクロノとマールの前に立ち塞がった。

逃げるのを諦めたクロノは矢を放ったのは自分だと言った。

武士道精神を重んじる相手なら、ここで部外者扱いになるマールが殺されることはまずない。また剣道の経験があるクロノはカラス魔族特有の羽の重さによる下半身の踏ん張りの弱さと、カラス特有の手の形から剣の握りの甘さに気付いていた。

どういう訳かカラス魔族達は、人間の文化、それも日本独自の武士道精神に染まっている。誰かを見様見真似で演じているもので、剣術の基本も教わっている様には見えなかった。

クロノの予想通り、カラス達は弱かった。
子供が真剣でチャンバラをしている様なレベルで、部活で鍛えたクロノが負ける筈もなかった。

長男
「ま、まさか我ら四天王を倒すとは、お主、なかなかやるではないか。まるでソイソー様を見ている様だったぞ」

次男
「兄者、それは言い過ぎというもの、ソイソー様はこいつなんかよりもっと強い!」

マール
「ソイソーってダレ?」

次男
「女! お前ソイソー様を知らないのか!? ソイソー様は、魔王おかかえの三闘士、ビネガー将軍やマヨネー将軍に肩を並べる立派な将軍様なんだそ!」

マール
「へー」

長男
「こら! あまり人間と親しく話すな。そういうのが理由で我ら魔王軍の試験に落ちたのだそ」

マール
「え? 魔王軍って試験みたいなのあるの?

次男
「そうだぞ! 試験はとっても厳しいんだ!」

長男
「だから、馴れ馴れしく人間としゃべるな!」


カラス魔族の長男は次男を叱ると弟子たち三男と四男を連れて山奥へ帰った。

次男
「お前は強い、特別にこのデナドロ山の入山を許可する。次に戦うときは負けないからな!」

次男はそう言って空を飛んでいった。が戻ってきた。

「いい忘れたけど、山の頂上には精霊がいる。そいつだけには、関わるな。行かないとは思うが、行けばお前達、死ぬことになるぞ。」


次男はそう言い残して山奥に消えた。


マール
「魔族って、案外悪い奴らだけじゃないのかもね…」


クロノ達はパレポリの街へ戻った。
子供(タータ)が無事に帰れたのか、確認に戻った。
タータの自宅を尋ねると無事に帰っており、クロノ達は詳しい話を聞いた

タータは自分は本当の勇者ではなく、勇者バッジは酒場で酔いつぶれたカエルが落としていったのものをたまたま拾っただけで、そのために周りが勝手に勇者だとチヤホヤしてきて、後に引けなくなったのだという。

少年はバッジを自分の代わりにカエルに返してあげてと、クロノ達に渡した。

「カエル」とは、リーネを保護したカエルのこであるがカエルはパリポレの街では剣士だと知っている者は殆どいなかった。
街ではお化けカエルと呼ばれ、街はずれの森深くの穴の中で生活していた。

カエルとは何者なのか、魔族なのか、
未来のデータベースにはカエルの記録はなかった。

クロノ達はカエルを見つけると勇者バッチを渡した。


カエル
「…それは勇者バッジ」

勇者バッジとはなんぞやと聞いてみると

勇者バッジとは勇者から勇者へと渡されるバッジで、カエルは勇者サイラスから渡された。
カエルの元の名前をグレンといい、20年も前にバッチ渡されていたけれど、勇者バッジをつける勇気がなくて、これまでお守りの様に持っていたという。

勇者サイラスはグレンの親友で、共に魔王と戦った。しかし、サイラスは殺された。
サイラスから勇者バッチとグランドリオンを受け取って魔王と戦うも、グランドリオンは親友が殺されことへの憎しみに反応し、弱き剣へと姿を変えてしまい、魔王に折られてしまったという。

「そして元々人間だった私は魔王の呪いの術を受け、姿形をカエルに変えられてしまった…。」

カエルは喉を鳴らしながら、クロノ達に説明した。


「私は魔王とは戦えない」

マール
「どうして?


カエルは折れたグランドリオンを見せた。

クロノ達は未来のデータベースに聖剣グランドリオンの項目があったのを思い出した。詳細不明だったが、魔族に劇的な効果あるという。

マール
「グランドリオンを治せば戦えるのね?」

マールは剣の柄を見て驚いた。

「ねえ? クロノ、これ作者名のところにボッシュっ書いてない?」


ボッシュは趣味で刀を作っていて、テレビの何でもござれ鑑定団に出ているそこそこそ有名人。
クロノ達とは千年祭で出会い、銃刀法違反を見逃して貰った相手だった。

マール
「どういうこと? なんで現代にいるボッシュが中世のグランドリオンに関わっているの?

マール
「まさか私達みたいなタイムトラベラー?」

有り得ない事ではなかった。未来にはタイムトラベラーがいた痕跡、最果てではタイムトラベラーを支える様なシステムが作られていた。クロノ達以外にも時を超えられる者がいる筈である。


クロノ達はガルディアに戻った。魔王軍による町の被害具合と勇者バッチとグランドリオンを受け取った本当の勇者の正体を知らせに。


〜ガルディア工房〜

ルッカ
ボッシュがタイムトラベラー?」

ルッカ
「今現代に戻るとしても、クロノは指名手配されいるはずだし、私は手が離せないし…

マール
「大丈夫、私一人でいくよ。ボッシュの居場所は名刺のとこに行けばいいだけだし」


マールはそう言って、かけていった。

ルッカ
「一応クロノもついて行きなさい。山道でマールを一人にしておけないし、、リーネと間違われて誘拐される可能性だってあるんだからね。あとクロノは時の最果てでマールを待つ間、スペッキオから何か有効そうな魔法の情報を聞き出すこと。あと魔法の練習も忘れないこと。」


マールはクロノを最果てに残すと現代に戻った。
現代ではクロノがマールを誘拐したテロリストだと騒がれていた。
クロノの両親は泣きながらテレビの取材に答えていた。

この時
マールは人生初めてバスと電車に乗った。

ボッシュは鉄の臭う工場の中にいた。
 
「こんにちは、  

ボッシュ
「だれかの?

マール
「私、少し前、千年祭で名刺貰った者なんですけど…

ボッシュ
「おお、そうか、あのときの娘さんか、2週間ぶりくらいかの? ツンツン頭の青年はうまく逃げ切れているようじゃの

マール
「ご存知なのですか?

ボッシュ
「お前さん、無理して敬語使わんでええぞ。一応、王族なんじゃろ?

マール
「え? 私のこと知ってるの?

ボッシュ
「誘拐事件のニュースは話題になっとるからの。メディアは誘拐説と単なるカケオチ説で賛否両論しとる」

マール
「誘拐とは思っていない人もいるんですか?

ボッシュ
「そりゃそうじゃ。お国の司法のおかしさは多くの人が疑念を持っておる。他人事だから、どうでもいいだけじゃの」

マール
ボッシュさんは信じてくれるんてすか?

ボッシュ
「ワシは信じるぞ。お主らは誘拐なんぞしとらん。」

マールは嬉しくなった。クロノの無実を信じてくれる人がいてくれる事が。

マール
「実はボッシュさんには聞きたい事があるんです。」

マールは折れたグランドリオンを見せた

「これは確かにワシの剣…。でもこれを一体どこで…」


マール「変なこと聞くけどボッシュさん、もしかしてタイムトラベラー?」

ボッシュ
「…なぜ、その様な事を聞くんじゃ?」

マール
「実は私達はこの剣を中世の時代から持ってきたの」

マールはこれまでの経緯を説明した。

ボッシュ
「そうか…。やはり、あの空間の裂け目は時を繋ぐものじゃったか…
 なんとなくそんな予感したんじゃ。
 お主らに出会ったあの日、ワシはその事を聞くためにお前さん達の帰りをあそこで待ったんじゃが…     
 ワシは聞く事を躊躇った。  

マール
「どういう事なんです?

ボッシュ
「もしお主らがタイムトラベラーならワシは過去に戻ろうとする。でもその時代がどんな悲惨な事になっとるのか想像したら、その現実と向き合うのに恐怖したんじゃ…」


マール
「恐怖? ボッシュさんは中世時代から現代に来たタイムトラベラーなんですか?」

ボッシュ
「年代は詳しくは分からんが、多分、中世よりずっと昔だと思う。ジール王国という場所からここに飛ばされたんじゃ

マール
「飛ばされた?

ボッシュ
「お主らか言っておった未来を破壊したラヴォス。そのラヴォスに飛ばされてこの時代にきたんじゃ。

マール
ラヴォス? ラヴォスは中世より前の時代にもいたの?」

ボッシュ
ジールでは現代でいうところの魔法、いわゆる超能力を使える民が多くおった。国はその力を使い、ある時、地中深くに眠るラヴォスの存在性に気付いた。その強大なエネルギーに目をつけ、魔学的にエネルギーを抽出しようと試みたんじゃ。

 しかし制御できんかった。エネルギーを取り出そうとする人間を敵視したラヴォスは暴走しはじめた。ラヴォスの膨大なエネルギーは時空を歪ませ、タイムゲートを生み出した。ワシはそのゲートに飲み込まれ、気付いたら今の時代に来ておったが、ワシ以外の人々はどうなったのか…。

この時代でジールの民を懸命に探したが…

お主らが、時を超えられるのであればジールの人々を見つけたら教えてくれぬか。もし、ジールへ行ける様であればワシもその時代へ連れていっておくれ。」

マールは頷いたあと思い出した様に言った。

マール
「実は私達、時の最果てという場所で、魔法を使えるスペッキオという生き物に出会ったの。

ボッシュ
「スペッキオ? 見てみないと、わからぬが…」

マールはボッシュを連れ、千年祭のゲートから消えた。


マールは時の最果てにボッシュを連れていった。
ボッシュはゲートを抜けると何かを感じ扉の先へと走った。
時の番人の元へ走った。

ボッシュ
「お前さん、もしかして、ハッシュか?」

時の最果ての番人
「だれじゃお主は? 確かにワシの名はハッシュじゃが…

ボッシュ
「弟のボッシュじゃよ。ほら、忘れたのかこの顔を!

ハッシュ
「はて? ボッシュ? 聞き覚えがある様な、無いような…

ボッシュ
ハッシュ! ジールで何かあったんじゃ! ラヴォスが暴走した後、国のはどうなったんじゃ?

ハッシュ
ジール? ラヴォス? なんじゃそれは?

ボッシュ
「お主、まさか何も覚えとらんのか?」

ハッシュ
「ワシは時の番人のハッシュ、ここで時を彷徨う旅人を迎える者…

 他に用がないのなら、ワシは寝るぞ…」


ボッシュは記憶の無いハッシュに語りかけたあとクロノ達に言った。

ハッシュはジール王国を支えた時魔学の賢者であり、恐らくボッシュの様にラヴォスが生み出したタイムゲートに飲み込まれたのだろうと。

ボッシュは現代に飛ばされ運良く助かったものの、恐らくハッシュはそうではなかった。

ハッシュには出口がなかった。どこの時代へ行けず、時の狭間を永遠と彷徨った。

死を悟ったハッシュは、この時の狭間にせめて意識だけでも残そうと思った。
タイムゲートに飲み込まれた人々がハッシュの様に時の狭間で行方不明にならない様、案内役となる為、時の番人となった。

ボッシュはこの空間そのものからハッシュの魔力を感じるという。
この世界を作るために魔力を使い果たしてしまい、ハッシュとしての記憶を残す力までは無かったのかもしれない。ボッシュはそう推論を述べた。



マール「中世時代の魔王がラヴォスを召喚しようとしているらしいの。それって放っておいても大丈夫なの?」

ボッシュ
「恐らくだが、ラヴォスの召喚というのは、地中深くに眠るラヴォスを目覚めさせる行為の事だと思うが、現代が今無事である事を考慮するなら、ラヴォスは目覚める事はなく、失敗に終わるのやもしれん。


マール
ラヴォスはどうやったら倒せるの?

ボッシュ
ラヴォスは人知を超えた存在じゃ。倒そう等という事は考えん方が良かろう

マール
「1999年の破滅を受けれいるしかないの?」

ボッシュ
「それが人間の定めかもしれんのう。ラヴォスは遥か昔より、地中に存在していた生物。我らよりも地球に住む先輩かもしれん。ラヴォスにとって人間の方が後から来たよそ者なら、我らはラヴォスと共に共存していくしか無いのかもしれぬ…」

マール
「…」



ボッシュ
「ところでグランドリオンの件、修復したいのならワシが手を貸すぞい。元々ワシが作った剣じゃし、ハッシュに会わせてくれた礼もあるし。

じゃが、作るのに特殊な石が必要なんじゃ。ドリストーンといって現代ではもう手に入らないものなんじゃが、お前さん達なら、過去に行って取って来れるんじゃなかろうかの。」

マール
「うん、分かった。皆にもそう伝えるね。




マール
ボッシュも魔法が使えたりするの?

ボッシュ
「ほうじのぉ。ワシは修復関係の魔法が得意じゃの。機械から人間まで傷付いたり錆ついたものなら何でも直せる

マール
「人間も!? まさかグランドリオンも魔法で直すの?

マール
「あそこまでポッキリ折れてしまうと流石に魔術だけでは無理だがのう。必要な鉱石と錬成が必要になるのう。人間の場合は肉体の欠損具合にもよるが現代医学よりかは上手に治せるぞ

マール
「頼もしいわね…私達、中世でガルディアに協力してるのだけど、ボッシュにも来てくれないかしら

ボッシュ
「それは構わんが剣の修復は良いのかの?

マール
「グランドリオンはそんなに凄いものなの?

ボッシュ
「正直ワシにもわからん。お前さん達が呼んどるそれは元々は聖剣などではないし違う姿をしとった。元々は赤色の短剣で魔族と戦う為ではなくラヴォスからエネルギーを吸い取る魔神機を壊す目的で作ったんじゃが、どういう訳か、魔神機を壊した際に今のグランドリオンの姿になったのじゃ。

恐らく魔神機から溢れ出したラヴォスエネルギーを浴びて剣の性質か変化したと思われるが、ワシはその後直ぐ、暴走したラヴォスにより現代に飛ばされてしまったからのう。

魔神機を破壊するつもりで作った剣が、後の世では魔族に効き目のある聖剣として語られているのは全くの想定外じゃ」

マール
「ふーん、魔族ってボッシュのいた時代からいたの?」

ボッシュ
「いいや、お前さん達のいうような魔族はおらんかったのう。ただ知的水準の低い魔力を持った動物はおった。ワシのいた時代は人間を含めて生物の多くが何かしらの魔力を持っとったから、きっとそれが進化したのが中世時代の魔族なのかもしれんな…」

ボッシュは考えるように語りだした。

「…その魔族に効く剣というからには何らかの性質があるのじゃろうか…」

「剣には魔神機の性質を消す為の術が付与してある。つまり魔神機はラヴォスエネルギーを吸い取る力があって、その吸い取る力を消す為の力が剣にはある。その力が魔族に効き目があるということは…

 魔族は恐らくラヴォスからエネルギーを吸い取って自身の力としておるのかもしれん。
その力を断ち切る事がグランドリオンにはできるのかもしれんな…」


ボッシュはグランドリオンが魔族に効く理由について話した後、マールとクロノの共に中世時代のガルディアに向かった。


マール
「ところで治すっていうのは、もしかして呪いなんかも治せるの? 実は魔王の呪いでカエル姿に変えられた人がいるのだけど、それを元に戻すことはできる?」

ボッシュ
「カエルの姿とはそれはまた興味深いの…
 見てみない分からぬが、たぶん、可能じゃよ。」

マール
「ほんと!?」

ボッシュ
「ただのう、何年もカエルだったのなら、人間に戻ったとしても人間としての体の使い方を忘れておる可能性が高い。リハビリが大変じゃろうと思う」

マール
「リハビリ…

ボッシュ
「まあ、リハビリもワシがサポートすればなんとかなるじゃろうて…」





〜ガルディア工房〜



ルッカ
「グランドドリオンを修復する為の材料、ドリストーンね…正直、聖剣の話は非科学的だから期待してなかったけど、ボッシュの話を聞くと、もしかしたら戦力になるかもしれないわね…

「こっちの仕事もあらかた終わったし、私も少し協力するわ」


-



――――――――――――――――――――――――――――

■8話 原始時代



-

そう言ってルッカが見せたのは火炎放射器だった。

「戦場に大量の燃料を運ぶ手間はあるけど、その手間に見合うだけの効果はあると思うわ。」

マール
ルッカすごーい!」

ルッカ
「そんな事ないわよ。作るのは案外簡単よ。でも一番大変だったのは燃料をどうやって確保するかだったわ。原油の採掘はした事なかったし、ましてや精製の知識なんてない。だから兵士の人たちに未来に行ってもらってキンを売りつけて、そのおカネで燃料を調達したの。

マール
「わー!ルッカって天才ー

ルッカ
「この2週間で軍部総出で火炎放射器を1000丁を作ったわ。用意した燃料は8ガロン。費用は5000万円というところ」


大臣
「魔王軍と戦いで疲弊して財政はそれが限界だったのです。


マール
(それだけあったら、未来の武器商人から購入した方が早そうに思うけど…)


ルッカ
「オーホホホ! 私って天才ー!!


マール
「でもガイコツに火って効くのかな?

ルッカ
「そう思って怪音波装置を作ったわ。これで聴覚を混乱させてその隙にぶちのめす!

マール
ルッカ…ガイコツには耳が無いような…


ルッカ
「そうよ! 私も最初そう思って作るのやめようかと思ったのだけど、でも、ガイコツを操るのはビネガー将軍よ! ビネガーに怪音波と火が効くのなら勝ったも同然でしょ!」

マール
ルッカ、やっぱり君は天才だよー!




クロノ達は相談の結果、ガルディアにボッシュを残し、火炎放射器を持って時の最果てから原始時代へと飛んだ。過去に行けばドリストーンが見つかると想定して。

ロボ
「私が先に行きます。私がゲートをくぐったら順番に来てください。」

マール
「どうして?」


ロボ
「実はゲートが崖際にあるんです。出た瞬間から落ちてしまいます。私が皆さんを受け止めます。

ルッカ
「帰りはちゃんと帰れるのかしら?

ロボ
「崖から飛び降りる様にゲートに入る事になりますが、帰るのに問題はありません。」


原始時代編


クロノ達は崖下へと着地した。
「シャー!」
クロノ達を凝視している生き物が威嚇するようにこちらを見ていた。


ロボ
「未来の化石データベースでは恐竜人の項目に該当します。時代は原始、群れを成して狩りをしていたといわれます」

竜人は20人程いてクロノ達に今にも飛び掛かろうとしている。鋭い爪に鋭いキバ。
ヨダレを垂れ流している。



「早速火炎放射の出番よ!」

しかし、いきなりの事で燃料の準備がまだできててない。

クロノ達は武器を持ち戦った。

竜人「人」というだけあって、知能がそれなりに高い。
武器を持っているクロノ達には敵わないことを知ると逃げ出していった。

竜人達が去ると原始人の女がやってきた。

「うほ、うほうほうほほう。ほうお
(お、おまえ等なかなかやるじゃないか。気に入ったぞ)

「あう、あうらう、あうあうあうら、ほうほう
(しかも変わったニオイがする。恐竜人とも全然違うし、私ともちがう)

「はう、らうはあはうはうはあ、はうらあ
(お前たち面白そうなかっこ、皆にも紹介したいから村においでよ!)

「うっほわ!(盛大に歓迎するよ!)


ロボ
「なにやらついて来いって言ってますね。」


マール
「なんか面白そうだから、ついてってみよう。

クロノ達はエイラの後を追った。



エイラは族長の家を訪ねて、クロノ達を紹介した。
クロノ達はエイラが何を話しているか分からないが、笑顔だったので歓迎されているムードを感じた。

エイラはクロノ達を村に案内した。
広場にはヤグラがあり、キャンプファイヤーの様な祭りをしようとしていたのが、伺えた。
肉や魚、木の実やフルーツ等もが盛られて、酒のようなもの。
エイラはクロノ達を指し、木の台を指した。椅子に座れという、身振り手振りの合図だ。

クロノ達が座ると、音楽が始まった。ヤシの実等で作った太鼓や、歌、踊りで歓迎されてる。

エイラはクロノ達の周りを踊ったあと、大きな器を持ってきた。
クロノの前にひとつと、エイラの前にひとつ。
樹齢1000以上はあるかもしれない大きな木をくりぬいて作った器であり、この原始時代なら作るのは大変だろう器だった。

酒を貯めている入れ物はヤシの実を器だろう。それがいくつもクロノ達の前に列べられ、注がれ始めた。


エイラは飲め飲めと言わんばかりに指図する。

クロノは酒なんて飲んだことない。

一口飲むと甘いジュースの味がした。いろんなフルーツを発酵させて作ったのか、複雑な味がした。
美味しいから飲み干すと、また注がれた。
エイラを見るとクロノが飲んだ量に合わせて、飲んでいる。
エイラがクロノより1杯多く飲むと、クロノに飲み干せの指図をおくっている。

ルッカ
「勝負を挑まれてるわね。」

クロノは首を横に降った。

ルッカはエイラに絵を見せた。
「ところで私達、こういう石を探しているの? 知らない?」

エイラ
「なんだ? この赤い石のことか?」

エイラはテーブルを指した。
赤い石、ドリストーンはインテリアの様に飾られていた。

エイラ
「あかい石、珍しい石!



ルッカ
「私達、その石が欲しいの。どうやったら手に入る?


エイラ
「なんだ? もしかして、この赤い石が欲しいのか?

ルッカ
「そうそう!



エイラ
「ならエイラとの勝負に勝ったらやる!


赤い鉱石、ドリストーンをかけての酒の飲み勝負の空気、気付いたとき、クロノは酒飲み競争に巻き込まれていた。


夜が明けたとき、クロノは二日酔いで頭がグルグルしていた。エイラは元気そうだった。

「クロ!目覚めたか! 昨日の勝負は殆ど互角だったぞ。やっぱりエイラが見込んた男だ。エイラ、負けたつもりないけど、石はやる。強いオトコすき!」


ルッカも目覚めていたが、様子がおかしかった。

ルッカ
「ないの。私達の持ち物がないの!リュックごと無くなっているの! 火炎放射器までなくなってる。一応ゲートキーは皆に分散して持たせた分は大丈夫だろうけど、リュックの中にはピストルが入っている。知らないで使われたら大変よ



マール
「盗まれた?」

エイラ
「何かとられたのか? でも村人そんなことしない。」

エイラの元に村人が駆け寄る

「え? 夜中にキーノがクロノ達の寝床でうろうろしてた? 
 そんなばかな!

 エイラ、キーノ探してくる!」


クロノ達はエイラの後を追った。

ジャングルの中でエイラはキーノと会話していた。 

「キーノ、一体何かあった。」


キーノは恐竜人がクロノ達から盗みを働いているのを目撃した。後をつけて恐竜人のアジトを見つけようと思ったキーノだったが、いざそれをエイラに報告したらエイラはアジトに乗り込み危険を犯すと思い、教える事を躊躇っていた。

エイラはキーノを殴った。
「恐竜人、村に侵入した。とても危険。キーノ、危険知らせるべきだった。恐竜人のアジト案内しろ!」

キーノが答えに渋るとエイラは察した。

「キーノ、恐竜人、この奥なんだな!」
キーノが何も答えないのを見ると
エイラは一人で森の奥に入っていった。


クロノ達も後を追いかけた。


ルッカ
「いい、火炎放射器はないけど、私達は2週間かけて魔法の練習をした。まだ完璧じゃないけど、全く使えない訳ではないわ。火も雷も冷気も、相手を怯ませる程度はもうできるはず、勝てなくとも、いざとなったら逃げる隙くらいは作れるはずよ。」

ロボを先頭にクロノ達は前進した。


竜人は竪穴式の洞穴を住処としていた。

入り口に見張りの兵隊を配置している様だったが既に倒れている。エイラが一人で倒したのだろう。

穴の中には穴が沢山あり、クロノ達はエイラが倒した恐竜人達の後を追いかける様に進んでいく
竜人達が50体は倒れている。

マール 
「どうやって倒したんだろうね? まさか拳で?

ルッカ
「原始人ってもしかして、ロボくらいタフなのかしら

竜人達の奇声を奥から聞こえてくる。

ルッカ
「近わね、急ぎましょう」

クロノ達は恐竜人達の背後についた。
エイラを追いかける様に恐竜人が背を向けている状況。

その恐竜人達があっという間に倒れていく。エイラは格闘技の有段者の様にケリとパンチ、投げで華麗に舞う。

エイラは100体程の恐竜人を倒すと、更に次の部屋へと進んだ。
クロノ達も急いで追いかけた。

エイラが穴を降りるのに続き、クロノ達も降りようとすると、その先には、恐竜人ではなく、ティラノサウルス待ち伏せていた。

エイラはティラノサウルスの存在に気付かずに穴に降りた。その部屋は逃げ道はなく、侵入者を罠にかける為の恐竜人独特の仕掛けだった。

エイラはティラノサウルスに明らかに苦戦していた。 

ルッカ
「皆、魔法で掩護するのよ。」

クロノはサンダーを唱えた。
ティラノサウルスに電流が走り、動きが一瞬止まる。続けてマールがアイスを唱え、ティラノサウルスに霜が降りた。
「エイラ!」
ルッカの声に反応し見上げたエイラ。
ティラノサウルスが怯んでいる隙に、エイラはティラサウルスの背に飛び乗ってジャンプした。クロノが腕と一緒に、刀の鞘を穴の下に伸ばした。クロノ達は鞘に捕まったエイラを引っぱり上げた。


エイラ
「クロたすかった。エイラ、死ぬかと思った。

ルッカ
「エイラ、一人で行っちゃだめ。盗まれたのは、エイラのせいじゃない。


エイラ
「エイラ、恐竜人が憎い。村人おそう、いや


ルッカ
「待って一人ではダメだってば 
 
エイラはルッカの腕をゆっくりと解き、ゆっくりと先に進んだ。
 

クロノ達は慎重に先に進んだ。恐竜人がどこからともなく穴から湧いてくるが、チカラの差を感じているのか、襲ってこない。

クロノ達は穴を何度か降りて広まった部屋に出た。
石を削って作られた大きな椅子の前に、ひときわ目立つ服を着た恐竜人が立っていた。
そばにクロノ達から盗んだリュックがあり、ピストルを持っていた。

エイラ
「アザーラ、なぜ村を襲う!なぜ人間を襲う!


アザーラ
「お前達はこの大地に後から住み始めた。元々、このジャングルも含めお前達の住処も我々のものだ。余所者は排除されて当然だ」

エイラ
「アザーラ、私達にはこの大地で生きてはいけないのか。

アザーラ
「下等な猿は大地にはいらない。」


エイラ
「話し合うダメなのか? アザーラ、唯一、人間の言葉わかる。なぜ、そうしない

アザーラ
「人間の祖先は猿、我々の先祖は恐竜、世界の覇者は恐竜なのだ。ひ弱な猿がなぜ覇者である恐竜に服従しないのか。


エイラ
「…つまり、強い物なら従うという意味か

アザーラ
「大地のおきて、強い物が絶対!

エイラ
「なら今日こそ決着をつけよう」



アザーラは側にいたティラノサウルスの首輪を外して、奥の穴から逃げていった。

エイラ
「な、アザーラのやつ、卑怯…」

フロアにいる恐竜人数十人はパニックしていた。
この巣穴は構造上、出口はティラノサウルスの奥にしかない、恐竜人にとっても戦わずして、逃げきる事はできない。

「クロ! エイラが注意をひいてる間に逃げろ。」

エイラがティラノサウルスに飛びかかると、恐竜人達が、その隙に奥の穴へと向かった。
しかし、アザーラにより、穴は石で塞がれてた。恐竜人達も逃げ道を失った。


マール
「どういうこと?」

ルッカ
「恐竜人の王は、民を見捨てたということでしょうね…」

ティラノサウルスは興奮して暴れ回っている。長年鎖に縛られ、王に虐待されていたのか、身体中にも多くの傷がある。

マール
ルッカ、あれもしかして、

ティラノサウルスの脇にルッカのリュックが落ちていた。中身は散乱している。火炎放射器も傍らにある。

火炎放射器が手元にあればなんとなるかもしれない。

「ロボ! 何とかしてあれとってこれない?」

ロボの足はそう早くない。ティラノサウルスのしっぽに、ふっ飛ばされてしまう。

エイラに火炎放射器を取って貰う様に伝えることはできない。エイラはティラノを惹きつけるので精一杯で、それどころじゃないし、言葉が伝わらない。


燃料をティラノサウルス直接かけてにかけて火をつけるか? そんな芸当は不可能だ。洞窟では煙の逃げ場がない。
考えている内に
ティラノサウルスのターゲットはエイラから恐竜人に移動した。
竜人に虐待された憎しみから、物凄い勢いで襲いかかった。

ロボがその隙に火炎放射器とリュックを取りルッカに渡した。
燃料を入れ、セットする。


「なんで!」
ティラノサウルスは火を怖がったものの、一時的だった。日頃、火を押し付けられる虐待をされていたティラノサウルスは火に興奮して、突進してきた。

竜人とクロノ達は逃げ惑う。 

「エイラ!」
キーノの叫びが上から聞こえた。

キーノが縄を降ろしている。それに捕まれば上から出られる。

しかし、縄に捕まるのは恐竜人で、それに飛びつく様に、ティラノサウルスが突っ込んでくる。
縄は引っ張られ落ちてしまう。

クロノは縄の先に刀鞘を括りつけ、キーノに投げた。
キーノはキャッチするものの、一人ではクロノ達の体重を支えきれない

竜人がキーノの身体を後ろから掴んで支えた。それを見た恐竜人達次々と後ろにから支えた。

ロボは火炎放射器を持って囮となって走った。
その隙に恐竜人達が次々に救助される。

ルッカはリュックから銃を取り出そうとしたがピストルも弾もなかった。あたりを見回してもない。アザーラが持っていった。怪音波装置も無くなっている。


エイラは歌った。
ティラノサウルスに歌が通用するなて誰しも思わなかったが、次第に歌に導かれる様にティラノサウルスは大人しくなった。

歌の文化が恐竜人には無かったのか、恐竜人も歌に意識を向けていた。

エイラは歌いながら、ティラノサウルスの背に乗って頭を撫でた。
傷跡をなぞるように撫でた。



足を崩してティラノサウルスは腹を地面につけた。
エイラは飛び降りると首の下を撫でた。
首輪が食い込んでいた跡を入念に撫で回した。

「クロ! エイラしばらくここにいてこいつの面倒を観ようと思う。キーノと一緒に先に村に帰ってててくれ」






クロノ達は、穴から脱出した。恐竜人達はクロノ達を威嚇することなく、無事に地上へと出られた。

マール
「人間と恐竜人、仲良くなれたらいいよね。

ルッカ
「そうね…、まさか恐竜を手懐けちゃうとは思わなかったけど、あれ見たら流石の恐竜人も人間に一目置くんじゃないかしろ

マール
「それにしても、あの洞穴にどうやって巨大な恐竜を入れたんだろ?

ルッカ
「きっと子供の頃とか卵の時点で連れて来られたのね。穴の中で外の光を一度も見ることなく、大人に成長したんだと思う…



マール
「エイラ、これから、どうするんだろ? ずっとあそこに恐竜と一緒にいるのかな?

ルッカ
「どうだろ、流石にそれはないと思うけど…

キーノ
「あの恐竜、そう長くない。多分もうすぐ…

クロノ達はこの時代の言葉が理解できない。キーノが何を言ったのか、クロノ達は想像することしかできなかった。

クロノ達はエイラの村イオカ村に戻った後、キーノにしばらくエイラは帰ってこないと言われた。
キーノいわく、エイラは恐竜と仲良くなる為に恐竜と同じ生活をする。同じ物をたべ、同じ所で寝起きし、一緒に狩りをする。
狩りができない恐竜は、エイラの生活に恐竜が合わせる事になる。

キーノ
「エイラは今頃、恐竜に酒を飲ませているだろう。流石に昨日の今日で飲み過ぎて、酔いつぶれるだろうから、今日はもう帰ってこないと思う。」

クロノ達はキーノの悲しそうな顔を見ていた。
マールはファイトのポーズをしたりして、身振り手振りでなくさめようとした。

ロボ
「言語パターンを収集できました。この時代の住人の言語を翻訳できるようになります。この時代での会話は全て録音されていますが、翻訳再生出来ます」


ルッカ
「まあ、ロボの意外な性能発見ね、」

ロボ
「こちらの言葉も現住人に合わせて翻訳して伝える事ができます。」

クロノ達は翻訳再生した。エイラは無事だろうということを確認し、キーノには帰る事を伝えた。

キーノ
「ところでお前達一体どこの村に住んでいるんだ?

マール「ずーと、遠いところかな…


キーノ「そうか…
 エイラお前達いると喜ぶから、また遊びにこい。


クロノ達はキーノに別れを告げると時の最果てに戻った。

ボッシュはドリストーンを受け取ると、早速、グランドリオンの修理に取り掛かった。
完成には1週間程掛かるそうで、それまでに
魔王軍が攻めて来ないのを祈った…

-



――――――――――――――――――――――――――――

■9話



-

クロノ達がガルディアに戻ると既に戦争が始まっていた。
クロノ達が原始時代へ行っている間に、魔王軍が攻めてきていた。
今回もビネガーはガイコツ兵士を投入して進行していたが、橋の手前で氷ツゲになっていた。

マール
「一体何か起きたの?」

ガルディア兵の報告によると、怪音波でビネガーに妨害をかけ、ガイコツ兵の操りを不能にし、その隙に火炎放射をしたところ、ビネガーは自らに氷ツゲになる魔法をかけカチカチに固まってしまったそう。
何もしてこず、かれこれ24時間以上カチコチになったままだった。
氷の密度も高く、重く、どかすこももできないで、困ってるとのこと。

ルッカ
「大砲は撃ってみたの?」

大砲を撃ち込んでも傷一つ入らないそうで、現在、兵士達が24時間交代で見張りをたてている状況らしい。

ルッカ
「きっと、この氷のバリアを解除できなくなったのね。解除したとたん、火炎放射器が火をふくもの。まあ、でもいつかは魔力がつきてバリアが解けるんじゃない? そうなったら丸焦げにしてやりましょう。」


ビネガー
(しまった。まさか、人間があんな魔具を持っていたなんて…
魔王様に使いは出してあるから報告は問題ないだろう。でも、魔王様のことだから、きっと助けの軍隊までは出さないだろうな…
先走って手柄欲しさに進軍するじゃあなかったなぁ…)

ビネガーの氷はそれから10日経ってもそこにあり続けた。

ガルディアは反撃の準備を整え、砂漠の東にある魔王城へと進行を始めた。



〜10日後〜


クロノ達は修復したグランドリオンをカエルに渡した。



「こ…、これはまさしくグランドリオン。もう二度修復できないと思っていた…」

「これなら勝てる! きっと魔王を打ち取れる!

「有難うボッシュ! そなたのお陰だ!」

ボッシュ
「気にするでない。それより、そなたのカエル姿…」

ボッシュはカエルの身体をあちこちさわった。

ボッシュ
「これはただカエルの姿にされた訳ではないのう。細胞レベルでカエルに変えられておる。こんな高等技術の魔法を使える魔族がおるとは…

カエル
「やはり元の姿には戻れないのか…

ボッシュ
「いや、戻す事は可能じゃよ。じゃが、お前さん。今、元の姿に戻るはもったいないぞ。

カエル
「どういうことだ?

ボッシュ
「お主はカエルとしての俊敏性を得ておる。人間をはるかに超えたスピードで動くことができるはずじゃ。お主も気付いておるだろうが…

カエル
「確かに、人一倍、スピードに自信はあったが…

ボッシュ
「じゃが人間の身でその身体に慣れるのは相当大変じゃったじゃろう。吐き気とか頭痛とか目眩とか…」

カエル
「ああ、カエルになった直後は半年くらいまともに動けなかった…

ボッシュ
「お主をカエル姿にしたのは今や魔族軍にとっては不利になっておる。魔王がなぜそのようなミスを犯したのが判らぬが、戦争を終えるまではその姿でいる方が得策じゃろうて。」



クロノ達は進行しているガルディア軍に合流した。

ガルディア軍は魔王城へと続く洞窟、魔岩窟の前で止まっていた。
魔岩窟の前にどこから持ってきたのか巨大な大岩が、入り口を閉ざしていた。
大砲を打ち付けてもびくともしない大岩である。

「グランドリオン! 私に力をみせてくれ!」
カエルがグランドリオンを振るうと大岩を一刀両断した。

ルッカ
「これなら氷漬けのビネガーも一刀両断できそうね。」

魔王城への道が開かれ、ガルディア軍が突入した。
瞬間、兵士達が自らを攻撃し始めた。仲間同士で斬り合いを始めた。

カエル
「人の心を操作する能力。将軍マヨネーの仕業だ。
 心を操るといっても完璧な能力ではない。
 一度に操れる数には限度があるし、術に抵抗し抗う事も可能である。」

マヨネー
「いや~ん、カエルちゃんったら、私のこと
ご存知なのね〜うふ〜ん」


カエル
「マヨネーはああみえて男だ。油断するなよ。)

クロノ達は既に操られていた。抵抗するので精一杯で動けなかった。

カエルはマヨネーの術のターゲットにならない様に早いスピードで動き回っている。


マヨネー
「どんなに早く動き回っても、近付かないと何もできやしないわ。ワタシはここから誰一人通さない。」

カエルは
「だが魔力が、続かないだろう。1000人もの兵士の心、つなぎ留めておくなど何時までもできないはず」

「残念ね〜カエルちゃん!」

カエルの動きが止まり、勢い良く倒れた。

カエルの心もマヨネーに取られた。


「呪印とか魔法陣って知らないの? あ、一応、そんななりでも人間だもんね…しかたないよね」

マヨネーは高らかに笑いながら講義を始めた。


「私達みたいな高位の魔族は、魔法陣や呪印を描いて、足りない魔力を補給するのよね。まあ難点なのが描いた図形から出たらその効力を失うことだけど。
だからカエルちゃんみたいに、いくら早く動きまわって私の狙いから逃れようとしても、私はそれを上回る魔力で狙いを補強して、捕まえちゃうの。
すごいでしょう、魔族って!
うふふふふw」  

マヨネーが喋り終わると奥から魔王軍の兵たちが現れた。

「さあ、今がチャンスよ! 全軍一気に人間を叩け!!」

その瞬間マヨネーが吹っ飛んだ。

ロボは機械。マヨネーの術を全く受付けなかった。
ロボパンチが決まり、マヨネーは魔法陣の外に出た。瞬間、操られていたガルディア軍が自由になった。
マヨネーは一体何が起きたか分からなかった。
「え? 何? 何か起こったの?」
「私魔法陣から出ちゃってる!?」
「これじゃあ、無理ーー!

マヨネーは乙女の叫び声をあげながら、城の奥へと逃げていった。
「まあ、いいわ。城内にも魔法陣は一杯書いてあるし、そこで迎え撃つとしましょー」


ガルディア軍は突入した。
クロノとカエル達その後に続いた。

城内は兵士と魔王軍で入り乱れていた。
怪音波と火炎放射器のおかけで人間と魔族の力差は埋まり、ガルディア側に有利に働いていた。
順調に城を制圧していたガルディア。
しかし、将軍ソイソーは兵士1000人をあっという間に戦闘不能な状態にした。
人間を遥かに超えたスピードで繰り出すパンチに兵士達は一撃でノックアウトした。

そのパンチをカエルが受けた。

ソイソー
「ほう、お主は魔族か? どうして人間側についている。

カエル
「私はこう見えて人間だ。

ソイソー
「ほう、では魔王様がカエルにしたというのはおぬしのことか。

カエル
「そのようだ。お陰で手に入れた力もある

カエルはグランドリオンをソイソーに向けた。

ソイソー
「聖剣グランドリオン…。面白い! 久々に剣を持つ気になれそうぞ」

ソイソーは腰から剣を抜くと
カエルとソイソーが目にも止まらない速さで動く

勝負はまたたく間に終わった。ソイソーが崩れ落ちた。

カエルは先に進んだ。

弱ってるがトドメがさされてないソイソー。まだ戦える様子で、クロノ達の前に立ち塞がった。

ルッカ
「どうする? 火炎放射で焼いとく?」  

ルッカがスイッチを入れるも、ソイソーはあっさり避けた。

ソイソーはクロノに一瞬で近寄り刀を見ると
「ほう、うぬも剣士か…ならば」

ソイソーのパンチがクロノに飛んだ。
クロノは刀で受け止めた。
カエルとの戦いでソイソーが消耗していたから受け止められた様なものだった。
素手と刀の勝負、有利なのは刀のはずだが、ソイソーの素手は圧倒的に上回っている。

ロボが攻撃するも当たらず、ルッカとマールが魔法を使うもダメージが入らない。

しかしマールはアイスを唱え続けた。
魔族は寒さに強いというが、体温を下げ続ければ、動きはある程度鈍る。
熱ではなく冷、ソイソーの体温奪う一点に集中して魔法を浴びせた。

ルッカ
「ロボは先に向かって!」

ソイソーの動きが鈍ったのを確認したルッカはロボを先に行かせた。
マヨネーがカエルの動きを奪う危険性を考慮してロボを先行させたのだ。

クロノ達は皆でアイスを唱え、ソイソーの動きを人間並みに鈍らせたところで、火炎放射を浴びせた。

ソイソーのタフネスは高かった。。火炎放射に抗いながら、剣を手に取ってクロノに攻撃を仕掛ける。

人間並みに動きを遅くできても体力的に差が有りすぎるなら、勝てそうにない。

素直にカエルに元に向かい掩護をして貰う方が安全だと感じたクロノ達はソイソーを置いて先へ進んだ。


カエルがまたマヨネーと対峙し、またもや操られている所に出くわしたロボは、もう一度、ロボパンチをマヨネーを食らわした。

魔法陣からマヨネーは放り出された。

「何? あの鉄の生き物は? もしかして操れないの? こんな経験、魔王様以外、はじめて♥」

マヨネーはロボを追いかけた。

「まって〜♥
 試させて〜
 なんで、逃げるの〜♪」

ロボはマヨネーから身の危険を感じてて逃げた。
二人は城内で鬼ごっこを始めた。





カエルは先へと進み魔王と対峙していた。




魔王
「ほう、あのときのカエルが、何をしにきた?」
 
カエル
「サイラスの仇をとりに、あのときのグランドリオンで!

魔王
「そうか、、そんなに死に急ぎたいならちょうどいい。ラヴォスへの生け贄になって貰おうではないか!」

 

瞬間、カエルは飛び交った。
突如魔王の前に背丈はあろう鎌が現れカエルの剣を弾いた。


魔王は右手に書物を持ち左手で印を結びながらラヴォスの召喚呪文を唱えていた。

魔王は、その場を動くこともなく、鎌がカエルの攻撃と戦っている。
 
鎌とカエル、実力は拮抗している用だったが、カエルの攻撃が押し始めた。

 

魔王
「グランドリオンか…敵から魔のチカラを削っていくといういうがが…しかし、その程度のものか…

 

カエルが強烈な一撃を加え、鎌が弾き飛ぶ。

魔王を守っていた盾でもあった鎌が手元を離れ、すかさず魔王を斬り込んだ。


魔王はカエルの斬撃をよけながら魔道書を読みつつ呪文を唱えている。

カエルの攻撃はカスれはすれど一向に一撃が当たらたない。

その隙に魔王の釜がまた盾として働き、魔王を守っていた。


数分戦っていると、クロノ、ルッカ、マールが合流した。 

 
ルッカ
「あれ…なんか、私達場違い?もしかして空気読めてない?



魔王
(人間が3人? しかも、なぜ王妃のリーネがここに?)


ルッカ
「これが魔王? ねえ、あんたラヴォスなんか召喚して何がしたいの? あんなもの世界をぶっ壊す厄災だよ。

 

魔王
「ほう、ラヴォスを知っているのか? 教えてくれ、ラヴォスの何を知っている?


ルッカ
「私達は未来から来た。今から何百年もの先の世界から。私達は歴史で知っている。貴方はラヴォスを目覚めさせる事に失敗する。

魔王
「未来だと? だとしたら面白い。その方法を教えて貰おうか。
 

魔王は書物を閉じ、準備が終わった事を告げた。

瞬間、地面に巨大な呪印が広がり、クロノ達の体の自由が奪われた。

 

自由の奪われ具合は地面程強く、上半身より下半身の方がより動かせなかった。

 

カエル

「身体が自由に動かんぞ…

 

ルッカ
「なにコレれチカラが出ない…」


クロノも同様で、跪く様なかっこうで、うずくまる。


ルッカ
「もう駄目…

ルッカは地面に這いつくばってしまった。

 

カエルは必死で踏ん張っているが、今にもくずれそう。

 

ルッカは喋ることもままならそうだったが、必死で伝えた。地面に巨大な魔方陣が描かれてること。これが私達のチカラを吸い取っている元凶だと。


魔王「今更気付いてももう遅い、おまえ達はラヴォスの生け贄となって貰う」

地面が吸い取ろうとする生命エネルギーにクロノ達は身体が殆ど動かせない。

魔王
「さあ、女、話してみろ。未来から来たというはなし。時を超えるというなら、どうやってこの世界に来た。」

ルッカは動けずに這いつくばっている。
「い、い、いやよ…」

魔王
「そのままそうしている死ぬぞ。話すならお前の命だけでも助けてやろう。」

ルッカは話さなかった。

魔王は空中を飛びながらルッカに近付き、語りかけた。

「言わないなら今すぐ殺すぞ」

カエルは必死で体を動かそうともがいた。
グランドリオンの力を過信していて油断しすぎていた。修行で強くなったとはいえ、魔王の魔術について無知だったこと。
戦場に不似合いな若者クロノ達を巻き込んでいることを後悔した。


魔王「近付くこともできないのなら、グランドリオンなんぞ、タダの飾りき過ぎんな。

カエル
「否、近付く事がてきぬのであれば、こうするまでよ。」
カエルはベロを伸ばして魔王の腕に絡みついた。

 

カエル
「お前もこっち側に来い。

 

引っ張られる魔王


魔王

「うがぁ

 

カエル

「これで条件は互角だなあ

魔王

「たわけたことを、たかが人間ふぜいが

 

カエル
「ふ、あいにくオレはもう人間じゃないんでな。



魔王
「人でもケモノでも無くなったとお前など人間よりも劣るということか、はは、笑えるぞ

 

カエル
「笑っていられるのも今のうちだぞ、オレはハナから死んでも構わん身だが貴様はどうだ?ラヴォスとやらに命を吸い付くされてもオレは貴様を離さんぞ

 
カエルのベロが魔王をぐるぐるまきにした。

 

魔王「甘くみているのは貴様の方だ。魔族の王たる私が

負ける道理など、ない。」

 

魔王はエネルギーを集中しはじめた。魔力をカエルの身体に至近距離でぶつけるつもりだ。



カエル
「こんなに近くでやればお前の身体もただじゃすまんぞ。」

 

魔王
「だろうな。だが貴様の身体には風穴が空くだろうがな、

 

マール
「あねがい! やめてー!

魔王
「リーネよ。自分の兵士が無様に死ぬ姿を見せてやろう」

魔王のエネルギーがカエルを貫こうとしたとき、宙に浮いたクロノの一撃が魔王の顔面に入った

誰もが動けない中にいた筈のクロノだったが、唯一呪印の影響を受けない機械であったロボに身体をぶん回して貰ったのだ。

魔王
「に、人間風情が…お前も含めて粉々にしてやる…

カエル
「ロボ、オレのグランドリオンを使え!」
 
ロボがグランドリオンを拾ったが手が大きすぎて上手に握れなかった。、クロノを持ち上げ、クロノにグランドリオンを持たせた。

クロノとロボが再度コンビネーションを取ろうとしたとき、空から剣が落ちてきてクロノを貫いた。

クロノの腹が串刺しにされ、床に這いつくばる


ソイソー
「魔王さま! 助太刀に参りました。

ソイソーはクロノを突き刺したまま離さない。

ロボがソイソーを突き放そうとすると、ロボの頭上から氷となったビネガーが降ってきた。

「かわたなはらかあま(ビネガーは氷漬けで声が聞こえない(訳=これで見動きとれぬまい!)
 

クロノを助ける為にルッカが火を操り、ソイソーを攻撃した。余ったチカラを全て注ぎ込んでいると、、ルッカの頭上からマヨネーが蹴りを浴びせ、倒れたルッカに覆いかぶさった。

マヨネー
「女との間ぐわいも悪くないわねー」

 
魔王「どうしておまえ達がここに」


ソイソー
ラヴォス召喚のお手伝い。幸栄の極みでござる」

ビネガー

「はひふへほはひふね(氷漬けで聞こえない)
訳=一応、危なくなったら逃げるけどね」

マヨネー
ラヴォスちゃん、どんなイケメンさんなのか気になっちゃって」

 
 
魔王
「ここに居たら、おまえ達の命もラヴォスにとられるかもわからんぞ!

 

ソイソー
「魔王様が命がけで成そうとする儀式、臣下が命をかけるのはあたり前でござる!」

 

ビネガー

「「はひふへほはひふね(氷漬けで聞こえない)訳=魔族繁栄こそ我らの本懐!(ホントはただ偉くなりたーい!)」

 

マヨネー
(実は魔王様がタイプなんだけどなぁ…)」


ルッカ
(だめ、全然身体が動かせない。私、しゃべることも、もうできない。これが人間と魔族の力差…)


マール
(まずい…クロノの体力がどんどん落ちてる。このままじゃあ…)


轟音と地響きの波動が下から上につき上げた、


魔族とクロノ達、皆、恐怖で鳥肌がたった。

ラヴォスが地のそこから蠢いている気配が伝わってくる。地震の揺れ幅が増大しながらクロノたちを襲う。

 

ロボ

「これはいけない!ラヴォスエネルギーが増大しています』

 

魔王

「ついに来たかラヴォス! これで私の悲願が…

 

ロボ

「観測データが数値の限界を振り切っています。こののままでは、私達どころか、世界そのものが破壊し尽くされ…

 
ロボ

「いや、このエネルギーはタイムゲート? ゲートが私達を飲み込もうとして…」

 

巨大なゲートは魔王城を丸ごと飲み込む大きさで広がる。魔王城の一階から上は全て飲み込まれた。



-



――――――――――――――――――――――――――――

■10話 原始時代 ラヴォス落下



-

ー原始時代ー

ラヴォスゲートに巻き込まれたクロノ達は原始時代のゲートに飛ばされて、崖下に転落した。
巻き込まれたガルディア軍の多くはハッシュの力で中世の山中のゲートに飛ばされた。


クロノ、ルッカ、マール、カエル、ロボが折り重なるように落ちた。

ルッカ
「ヤバイ! クロノが下敷きに!」

マール
「たいへん! 出血がひどい!

マールが止血を始めた。

ルッカ
「私、ボッシュを呼んでくる!」

ボッシュはガルディア軍の治療の為に魔王城の外で待機していた。

カエル
「待て、スピードなら俺の方が早い、オレが行く!」


エイラ
「おい、どうしたんだ皆? おわ! クロたいへんー!」


20分後…


「あ、クロ、目覚めた。」

クロノはあくびをした。

ルッカ
「大変だったんだからね。あんたが刺されてから。ラヴォスゲートで何故かエイラのいる時代に飛ばされるし、あんたの傷塞ぐのにマールは止血に必死で、カエルは中世に残したボッシュをおんぶして山中と砂漠を走ったり、マジあとちょっとであの世行きだったんだから!」


エイラ
「クロ、傷口から出血酷かった。でもこの爺さん、手をかざしたらビックリ! クロの傷口がみるみる塞がった。エイラ不思議、あんなの初めて見た。この爺さんエイラにくれ」

クロノは刺されてからの事をあまり覚えていなかった。皆の下敷きになったあたりからの記憶が無かった。

ボッシュ
「まあ、治ったから良かったとはいえ、あと一歩遅かったからあの世行きじゃったぞ。流石に死なれたらワシにも治せんからの。」


クロノは起き上がり、元気にガッツポーズを見せた。

安堵してるメンバーの前に村人が走って来る。

村人
「エイラ! 大変だ! 恐竜人が北の村に火をつけた!」

エイラ
「ほんとうか! 恐竜人もう許さない!

村人
「それからキーノが! それからアザーラが…」


村人からアザーラの話を聞き、エイラが深刻な顔をした。

マール
「私達がいない間に何があったの? 恐竜人達はおとなしくなったんじゃあ…


エイラ
「キーノ誘拐された。アザーラ、洞穴の恐竜人見捨てたあと、もう1つのアジトにキーノを連れ去った。キーノ返して欲しければエイラ一人で来いと。

ルッカ
「それ絶対に罠に決まってる

エイラ
「でもエイラ、キーノ助けたい。

ルッカ
「アザーラは卑怯な奴よ。エイラが一人で行ってもどうせ約束を守らない。アザーラがキーノに何かをする前に私達も協力してキーノを救出するから!

エイラは頷くと
クロノ達を案内した。

エイラは北の山へ登り、口笛を鳴らした。
沢山のプテラが降りてきてエイラはその一つに乗った。
「さあ、クロたちもはやく!」
クロノ達もそれぞれプテラに乗った。
プテラは上空に飛び立ち、溶岩地帯へ進むと上昇気流に乗り一気に昇った。

天空までそびえる巨大な崖を超えると頂上にアザーラの城が見える。

エイラ
「あの城、大昔に恐竜人が建てたといわれてる」

とても原始時代とは思えない、中世ヨーロッパ宮殿の様なものが標高3000mに建築されている。

ルッカ
「ロボ、酸素濃度はどうなってる?
 この標高では酸素が薄すぎて呼吸がシンドイはずだけど」

ロボ
「酸素濃度は平地の30%少ないです。」

ルッカ
「昔は重力が重いって言われてたからもっと酸素は薄くなるかと思ったけど、森林の多さが幸いしてるのかもね…それでも長居はできないレベルよ。

マール
「30%減って、そんなにきついの?

ルッカ
「体感的は空気が半分くらいになる感覚ね。普通の人は一時間も持たない。走ったりなんかすると、、あっという間に高山病で動けなくなるわ。

マール「アザーラってそんな場所でも、平気なの?、

ルッカ
「わからないわ。ただアザーラ自身の時間がなくて後がないのだとしたら…

マール
「とういう意味?

ルッカ
「元々あの城の酸素濃度は今よりもっと高かったのかもしれない。
たとえば地球の自転速度が今よりももっと早かったら重力が低くなって、その分、酸素が高地にまで届きやすい。この高さも十分快適な生活だったでしょうね。

マール「つまり、昔は住めたけど今はもう住めない場所になっている?

ルッカ
「恐竜人が天井の住処を失って地上に降りてきた。でも、地上は既に人間の住処になっていたから縄張り争いが起き始めた…。

マール
「アザーラは一体何がしたいの? 

ルッカ
「焦っているのかも。恐竜人の住める環境は今よりも上が望めないこと。人間には知恵で敵わず、いずれ人間達に淘汰、亡ぼされてしまうことを…

マール
「でもエイラは共存の道を探してるって、

ルッカ
「頭では理解できても信用できないのでしょうね…。現に恐竜人達の文明社会は一度滅んだ歴史があるみたい。あの城がまさにその象徴で、アザーラ自身があの城と自分を重ねてるのかもしれない。衰退する文明にアザーラ自身も向かっているから怖いのよ。

マール
「でも、それって単なる思い込みじゃあ…

ルッカ
「そうね。でも思い込みで人間は幾度となく戦争を起してきた。。人類史は思い込みで成り立っているのよ。それが恐竜人、アザーラにも当てはまるというだけのこと。

マール
「私達にはどうにもできないの?

ルッカ
「…とうにか、できたらいいわよね…


クロノ達が城に降りる頃にはエイラは先に走って行った。

ルッカ
「いい? 余裕をもって20分以内にここに帰ってくること。これは走ったりする事も考慮しての時間だからね。

マール
「時間オーバーしたら?

ルッカ
「その事は今は考えない。とにかく時間になったらプテラに乗って地上まで降りておくこと


城門を抜けて奥に向かうと骨で作られた檻を見つけた。中にはキーノが閉じ込められている。エイラは檻からキーノを出そうと身体を格子の隙間に入れようとしている。
檻には開閉レバーの様なものがあるが作動しない。
「下がっていろ」
カエルはグランドリオンを構えた。
檻を一刀両断した。



ルッカ
「さあ、用は済んだわ。帰るわよ。」

クロノ達が入り口まで戻ると城門は固く閉ざされ開かない。グランドリオンでも破壊できなかった。

ルッカ
「しまったわね。私達、閉じ込められたわね。

マール
「どうするの?



ルッカ
「…上に行きましょう

マール
「え? 出口から反対方向じゃあ?

ルッカ
「アザーラは用意周到に計画している。出られる通路がないから、この城に誘導したのよ。

マール
「アザーラは私達を閉じ込める事が目的だったの?

ルッカ
「恐らくここで全員が酸欠で死ぬまで待つもりね。

マール
「え? でもそれだとアザーラは?アザーラも死んじゃうんじゃ?

ルッカ
「卑怯者のアザーラよ、きっと自分だけ、とこかに出られる道を確保しているはず。私達はアザーラを捕まて、その出口を吐かせるしかない。」


上階へは4つの階段ががあった。クロノ達は4つの班に別れてアザーラを探しつつ上に向かった。


メンバーは構成は
Aエイラ、キーノ
Bマール、カエル
Cルッカ、クロノ
Dロボ

ルッカ
「いい? アザーラを見つけたら大声で叫んで仲間を呼ぶこと、絶対一人ではだめ。

カエル
「どうしてだ? とっ捕まえりゃいいだろう?

ルッカ
「アザーラにはピストルと弾6発を取られているの。アザーラが実験で2〜3発撃っていたとしても、残り3発はある。

カエル
「ピストルってそんなに危険な武器なのか?

ルッカ
「貴方ならスピードで上手く避けられるかもしれないけど、実物を見たことないわよね。

カエル
「一応、教えといてくれ。

ルッカ
「黒い、こんなカタチで筒状のもの。先端の穴からグランドリオンみたいなヤバイものが目にも止まらぬ速さで飛び出してくると思っていわ。

カエル
「つまり、先端が自分に向かない様にすれば避けられるということだな? グランドリオンならグランドリオンで防げるのか?

ルッカ
「そうね…一応は防げるけど、目では捉えらない程の小さいグランドリオンだと思った方がい。


ルッカ
「あとロボは大丈夫だからピストル持ってるアザーラに突撃してね。

カエル
「なぬ? この鉄の生き物はグランドリオンよりも強いのか?」





エイラ
「ところでこれなんだ?


エイラがレバーを引いたのは、恐竜人が作り出したエレベーターだった。
どういう原理で動いているのか判らないが、エイラはそれに乗り込み上へ向かっていった。


キーノはエイラを追いかける様にエレベーターの上に飛び乗る。二人はクロノ達を置き去りに上階へ向かった 
 
ルッカ
「予定変更! 私とクロノは別々に上階へ向かぃます。」

「それからやっぱり念の為に地下も調べるわ。
今エレベータを調べたら、どうやら地下が100階くらいあることが判明したわ。もしかすると地上までの直通エレベーターがあるのかもしれない。
カエルの足のスピードならなんとかなるわよね。」

ルッカはリュックから無線機を取り出した。

ルッカ
「一応、カエルには無線機を預けておくわ。これで離れていても会話できるから」







クロノ達は4つに別れて上階へ向かった。カエルは地下へと向かった。

キーノとエイラは最上階へ到達した。
エレベーターを降り、隣の塔へ続く渡り廊下を抜けていくとアザーラが拳銃を持ち、エイラ達を迎え入れた。


アザーラ
「ようやく来たか、猿共…。ここがお前達の最後の墓場になるのだ。

エイラ
「エイラ死なない! キーノとクロノ達と一緒に帰る!

アザーラ
「どのみち逃げ場なんてないのだよ。」

エイラ
「…? どのみち逃げ場がない?

アザーラ
「この城がなぜ今でも生きているか分かるか? この城は単なる石でできてない。物なんかじゃないんだ。我ら先祖が生み出した尊い生き物なんだよ。それが死んでしまうんだ。」


エイラが喋ろうとするとキーノが割って入った。

キーノ
「アザーラ、僕を誘拐しておいて殺さなかったのはなぜだ? 僕を殺したとしても、ここに皆を閉じ込める事はできたはずだ。何故なんだアザーラ」

アザーラ
「…

キーノ
「アザーラ、君はここで何をしている? 人間を疎ましく思うなら、どうして先祖の遺産である場所に人間なんかを連れてきた? ここは尊い場所ではなかったのか?

アザーラ
「…

キーノ
「アザーラ、君は何を隠しているんだ。人間にも恐竜人にも…

アザーラ
「…私は…

エイラ
「もういい、キーノ。こいつは大地のオキテによってここで死ぬんだ。エイラと戦って死ぬんだ。

アザーラ
「そうだな…私は死ぬ…だかな
 私は一人では死なん!

アザーラの背後にある塔から動く石像のティラノサウルスが現れた。その巨体はゆうに10mはある。
アザーラが手を動かすと
石像ティラノが身をかがめ、アザーラを乗せた。

アザーラが指示を出すと
石像ティラノは雄叫びをし、口から火を吐き、廊下を火の海に変えた。
クロノ達はその雄叫びを聞き、最上階へ向かった。

 

廊下は火の海で、クロノ達はエイラに近づけない。

ルッカはカエルに最上階に向かう様に指示をした。


火の海になりエイラは廊下を戻る事はできない。天井は見えないバリアで覆われていてプテラは助けに来れない。


キーノ
「どうしてこんな事をする! ここは大切な場所ではなかったのか?



アザーラ
「そうだ! 大切な場所だ! 大切な私の場所だ!だから壊すんだ!」


火を吹き続ける。
エイラはキーノを抱え、ジャンプし、ティラノの尻尾に乗り背まで登る。

アザーラはエイラ達に気にもせず、塔を破壊した。渡り廊下の壁も破壊し、
衝撃で屋根が崩れ落ちる。

エイラはアザーラの首根っこを掴んだ。
「アザーラ、キーノの言うおりだ! なぜこんな事をする! 殺したいのはエイラ達じゃないのか!」

アザーラ
「あぁ、殺したいさ。殺したかったさ。だけどもう意味かないんだ。終わるんだ。

エイラ
「わけがわからないぞ」

「もうすぐ…わかるさ」
アザーラはそう言って空を見つめていた。
放心状態でアザーラの目に浮かぶ赤色にエイラもキーノもまだ気づいてなかった。

ロボのセンサーがラヴォスを探知した。

ロボ
「皆さん大変です。空に…ラヴォスがいます。

クロノ達は、上空に小さな赤い光りを発見した。

ロボ
「予測約、直径1km、質量80万トン、時速1万キロ。ラヴォスがここへ落ちてきます。
このあたり、直径10kmが吹き飛ぶ計算です。」

ルッカ
「え!? どういうこと、? ラヴォスって隕石かなにかなの??

ロボ 
「グズグズしているヒマはありません!
ラヴォス衝突まで後40秒しかありません

エイラは口笛を吹いた。ラヴォスの危険を察知していたのか、プテラ達は既にエイラの上空を旋回していた。


プテラ達が着陸し、クロノ達は皆乗りこんだ。


エイラ
「アザーラ! お前もこい!」

キーノ
「エイラ! プテラの様子がおかしい。」

キーノ
プテラ、危険の合図している。ただ事じゃない危険、迫っている。ここに居たら危ない!」

この場所に危険が迫っている。エイラにとっては尚更アザーラを見捨てる事ができなかった。

人間と会話ができる恐竜人はアザーラしかいない。アザーラが恐竜人を纏めなければ、人間はいつまでも無益な争いをしなければいけない。



アザーラはピストルを取り出し、エイラに向けた。

キーノ
「エイラもうダメ、時間がない!」

プテラは危険を察知し、エイラの指示を聞かずに飛び立った。
アザーラがエイラの視界から消えていく。

アザーラはピストルを天に向けて放った。

「いい、音だな…」
アザーラの声はどもっていた。
泣いていたのか、それとも声を出す気力がなかっただけか。

いずにせよ、アザーラはこの城と共に消滅した。
ラヴォスは地球深くにえぐり込む様に侵入し、巨大なクレーターを生み出した。

クロノ達はラヴォス衝突の衝撃波に煽られた。
プテラに振り落とされない様にしがみつくので精一杯で、何がなんだか訳が判らないままだった。

ラヴォスの衝突で地表の灰が上空に巻き上げられる。
クロノ達はその灰に巻かれながら、何も見えなくなる。




気付いたときには最初にプテラが飛び立っていた北の山頂にいた。

エイラ
プテラ達ありがとう。皆、無事で良かった。

エイラはプテラに一体ずつ、頭を撫で回した後、
湖に連れて行き、体を洗っていた。


クロノ達はその光景を見ながら考えていた。

何気なく発したエイラの言葉

「エイラ、なんだかラヴォスが落ちてから急に寒くなった気がする」


アザーラは恐竜種が絶滅する未来を知っていたのかもしれない。未来には恐竜の影すらない世界が存在していて、敵対していた人類が繁栄を謳歌している。
その上で、恐竜人の辿った衰退する歴史を人間も辿ることをもしかしたら知っていたのかもしれない。
知っていて、でも言いたくても誰にも言えなかったのではないか。
近い将来に恐竜人が絶滅する。そんなネガティブ公約を王が語れる筈がない。敵対する人間に対しても恐竜人が絶滅するなんて話、無駄に喜ばせるたけになる。
それでもアザーラはエイラ達に何かを伝えたかった。それは自身の弱さや孤独、寂しさかもしれないし、あるいは弱い気持ちを伝えたくないという意地かもしれない。




「クロ達これからどうするんだ?

 ラヴォスやっつけに行くんだろう?

 だったらエイラも連れてけ!

 エイラは戦うの好き!」


エイラの気持ちは起承転結にクロノ達に伝わった。

エイラを先頭に再びプテラにまたがったクロノ達。ラヴォスが衝突した跡地クレーターに向かった。
倒せるかどうか全く判らない異次元の生物ラヴォス
ラヴォスと最初の出会いの場所に何かヒントになるものがあるかもしれない。

高い位置からでも目視できる巨大な時空の揺らぎを発見した。

早速、ルッカのドローンでゲートの先を調べてみると、そこは一面、真っ白な吹雪の世界だった。


-

別の物語「クロノと古代人トリガー」にてアザーラの真相が少しだけ垣間見える描写をしています。
ガッシュとアザーラの先祖が交流をしていた設定を加えました。

――――――――――――――――――――――――――――

■11話 古代ジール王国編



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吹雪の中を進む7人、
「エイラ寒いの苦手…
ぷるぷる震えるエイラ。寒いのが苦手というより、縄文的な薄着なものだから寒くて当然である。
「ファイア!」
「あー、ルッカ温かーい」
力をセーブした状態での魔法。ファイアの技が今までで一番役に立っているという嬉しさと虚しさを噛み締めながら、7人は歩いていた。

歩けども人は見つからず、見渡してもケモノ一匹いない。これが氷河期なら今は何年頃になるのだろうか。

ロボ
紀元前1万年くらいです。」

マール
「そういえばボッシュが古代に訪れたら自分も連れてけと言ってたけど…」

ルッカ「今からは無理ね。ここからゲートまで戻るの大変だもの」 

ボッシュ
「こら! 影が薄いからって忘れるでない。」

マール
「えー、だって、キーノがさらわれたとき、来なかったじゃん。

ルッカ
「そうよねー、あんなに薄情だとは思わなかったわ。

ボッシュ
「だから、なん回もいったじゃろう。あれはクロノの回復に魔力を多く使ったからであって。」

マール
「嘘よ。魔方陣を使えば無い魔力を補填できるというじゃない。

ルッカ
「魔族が言ってたわよ。ラヴォスからエネルギーを抽出できるって。

ボッシュ
「あの時はどういう訳か魔方陣が機能せんかったんじゃ。まさかラヴォスがあの時点で存在しとらんとはワシも知らんかったし。

ルッカ
「ホントかな~。ラヴォスいなくても魔方陣使えばラヴォス以外の自然のエネルギーからもパワー貰えたりするんじゃないのー?

ボッシュ
(ギクッ)

マール
「今、ボッシュ、ギクッってならなかった?

ボッシュ
「そ、そんかことありません!(自然のエネルギー、とても手間かかるけどできる…できるけど、ワシ、戦場は嫌じゃ。)

カエル
「うぇっくしゅん!ゲロ」

マール
「カエル大丈夫? 冬眠しなくて大丈夫?」

カエルの鼻水がつららになっていた。

マール
「なんでファイアかけて貰ってないの?」

カエル
「ロボがかけられてないのに、負けるワケにはいかん!」 

カエルはロボをグランドリオンより強い者だと思い、ロボをライバル視していた。 


クロノ達の前方に天にまで伸びる光の柱が現れる。

何か判らないが、好奇心が擽られる一行は、光を目指した。

吹雪をかき分けて進んだ7人は、そこだけ吹雪が当たらない場所だと気付いた。

光の柱まで辿り着いても都市らしきものは見えなかった。

光の下には色彩豊かな絨毯が意味深に敷いてある。

マールがひょいと乗った瞬間、マールは光の柱に沿ってあっという間に上空へと消えていった。
クロノ達はマールに続いた。


7人は雲の上にいた。
魔法王国ジール、魔法工学を追求した都市

空に浮かぶ大地が、雲を挟んで、幾つか浮いている。雲を挟んで数キロ離れた先には、大都市の町並みが点在していて、山頂には権威の象徴の様に宮殿がそびえ立つ。

クロノ達は道なりに進むと、似た絨毯を見つけて飛び乗った。
どこに進むのかと思いきや雲の下の大地、吹雪の世界へと戻ってきた。

ガッカリした7人。

マール
「思わせぶり? なんなのー?」

吹雪中、再び歩かされる。

ボッシュ
「今のが別名、「ふるい落としの土地」じゃ。
天空都市への入り口は大陸の随所にあるんじゃが、本入り口を複数置いてしまうと、地上人と戦争したとき、敵が四方八方から流れ込むことになって、王国側の負担が大きくなるからのう。王国の権威がまだ弱かった頃は、必要なやり方じゃったんじゃ。」

「ここから北に進むと本入り口になるはずじゃ。」


大陸の各地にあるワープポイントは最終的この1つの大陸に導かれる様になっている。地上人が一度でも天空都市チラ見すれば、そこに住みたいと思うようになる。地上にいる全ての人が天空都市に移住できるシステムが作られた。

「じゃが、天空都市は全ての人間を受けいれる体制をあるときからやめた」

ルッカ
「それってやっぱり戦争?」

ボッシュ
「そうじゃ。人間は愚かで、どこまで幸福を追求しようとも満足せんかった。。天空でもいつの時代と同じ様に戦争が起こった。

マール
「それでどうなったの?」

ボッシュ
「色々あったが、ワシのいた頃は民族史上主義だったのう。魔力の劣る者から順に下の世界に追いやられていった。

マール
「えー、こんな寒い世界に放り出されるの?

ルッカ
「普通に死ぬでしょ。

ボッシュ
「そうじゃろ。だから現代でいうボランティア的な人が下の世界に降りて救済したんじゃ。
たぶん、王宮はそうなる事も見越してたんじゃないかのう。

ルッカ
「どういう意味?

ボッシュ
「魔力がないのは罪ではない事はわかっておった。それをあえて罪人かの様に扱う事で、本当の罪人達、いわゆる戦争をやる者に対して、もっと大きな罰を与えるられる正当性を作ったんじゃ。いわゆる拷問とかよのう。

それが犯罪への抑止力、そのまま戦争の抑止力として捉え、また王宮自らも慈悲もない様な怖くておどろおどろしい象徴に見られたいとして、民の反感を買った。」

マール
「なんで? なんでワザと怖がれるのを正当化しようとするの?」

ボッシュ
「王宮を民にとっての共通の敵とする事で、民同士の争いを防ぎたかったんじゃ。ほら、敵の敵は仲間というじゃろ。王宮が民にとっての共通の敵となる事での争い抑止を狙ったんじゃのう。」

ルッカ
「馬鹿よね。そんなことしても、争いは無くならない。

ボッシュ
「その通りじゃ。結局、民族史上主義である事には変わらない。魔力のない者を差別する文化が生まれ、差別する事が当たり前の中で育った人々は人格が崩れおった。特に一番酷いのが王宮じゃったかもしれん。民を差別することが当たり前の様に育ったジール王は徹底した権威史上主義に走った。

マール
「権威史上じゅぎ?

ボッシュ
「簡単にいえば暴君じゃな。権力に溺れてしまい、全ての人や物を自分の支配物の様に解釈しておった。家族であれ、息子であれ娘であれ…


王宮はとにかく殺伐としていた。皆が哀れでならんかった。

特にワシは王子様が哀れでなぁ。
王宮はそそうをするだけで命を落としかねない場所だったから、王子様に近づく者は誰もおらんかった。

幼いながら友達一人いない。いても形だけ。ワシはなんとかして、王子様に心の通う同年代の友達を作ってやりたかった。」

ルッカ
ボッシュってやけに王宮に詳しいわね…

マール
「まるで王子様の教育係みたいな視点だね

ボッシュ
「あれ? 言わなかったっけ? ワシは王宮で王子様の教育(教科目、命の魔学)をやってましたけど。

ルッカ.マール
「「聞いてないわ」」


ボッシュ
「それでな。ワシは王宮に内緒で王子様を見すぼらしい姿に変えての、一緒に地の民にボランティアをしにいったのよ。
身分を隠してやれば、わんぱくな子供達は気を使うことなく友達になってくれるかなと。

実際、それでうまく行った。
ジャキ様は笑顔になり、友達ができた事を喜んでおった。」

ルッカ
「へー、良かったじゃないの

ボッシュ
「じゃが、ワシは馬鹿だった。年齢のせいもあるのう。頭がもうろくしとった。
ワシも王宮も知らない内に、ジャキ様は地に降りて子供達と遊んでおった。

ジャキ様はある日、何の悪びれもなく、王宮の衣を纏ったまま遊びに行き、王子だと名乗られた。

『王宮は悪いところ、そこに住む者は悪』地の民に住む子供達は親からその様に教えられとった。

ジャキ様は虐められ、ボロボロの衣服で戻られた。

母上のジール様はひどく怒りになり、ジャキ様を責めなすった。
【下界の者と遊ぶとは何事だ】【下賤な者に触れた下賤者】と

ジール様の一声でジャキ様に手を上げた者への
死刑が決まり、王子様の出入りをを監視していなかった者達への死刑が決まった。

マール
「そんなことで…

ボッシュ
「勿論、それがおかしい事は多くの識者は理解しておる。だから死刑の手続きも実際はふりだけ。魔学で生み出したその人そっくりな人形を作り遺体偽装することで、ジール様の目を欺いたのじゃ。」 

ルッカ
「やるわね、識者の人達」

ボッシュ
「とはいえ、そういった王宮の仕組みの中で育ったジャキ様の心は、正常に成長する筈もなく、ジール様の様に心が捻れていきおった。

マール
「なんか可哀想…

ボッシュ
「それでもジャキ様には心の拠り所になる者が存在した。

ルッカ
「まさが自分って言う訳じゃないわよね…

ボッシュ
「自分って言えないのがツライのう…ワシはワシで頑張っておったんじゃがなぁ…

マール
「で、誰なの?

ボッシュ
「姉のサラ様じゃ。サラ様はジール様の夫であるクト様がまだ健在であった頃にお生まれになられた方で、クト様の精神を濃くお継がれになられた。

マール
「クトさま?

ボッシュ
「サラ様を語るにはクト様抜きでは語れません。クト様は私の魔学の教え子でもあり、地の民へのボランティア仲間でもありました。クト様は名家の血筋でありながら、民族史上主義にも染まらない…、要するに愛される人じゃった。そのカリスマ性がジール様の心を射止めたといえるが、少々浮気症なところがあり、それが原因で地に追いやられる事になり…

ルッカ
ボッシュ、話がずれてる。

ボッシュ
「とにかく、弟のジャキ様と違い、姉のサラ様は、クト様という、とてもまともな人に愛された事で心が真っ直ぐに育てられました。サラ様はジャキ様を我が子の様に愛し、ジャキ様はサラ様を本当の母上の様に慕いました。」

マール
「なんかほっとする…

ルッカ
「ジャキはジール、本当の母親の事はどう思っていたのかしら?

ボッシュ
「言葉にはしませんが、おそらくは憎んでいたでしょう。もしかしたら、殺したいくらいに…

ルッカ
「流石にそれは言い過ぎなんじゃ…

ボッシュ
ジール様は浮気したクト様にどことなく似ているサラ様を嫌っておったのかもしれんと、今は思うが、ジール様はサラ様を魔神機の制御をするアイテムの様に扱っていたのじゃ。

ルッカ
「魔神機? ラヴォスのエネルギーを抽出するという?

ボッシュ
「当時はラヴォスエネルギー需要が高まっておった時期で、都市はより多くのエネルギーを必要としておった。魔神機の出力を上げていってラヴォスが目覚めたらどんなリスクがあるか分からぬから、サラ様はラヴォスを目覚めさせない様に抑える役どころを担っておった。

ルッカ
「それってサラ様にしかできなかったの?

ボッシュ
「そうなんじゃ。ラヴォスをコントロールできる魔術師はサラ様だけじゃった。

マール
「なんでよ!

ボッシュ
「なんでと言われてもワシにもわからん。
 とにかく、サラ様は都市を支える為、ジール様の不老不死を叶える為に奴隷の様に扱われとった。魔力が枯れるまで働きずめで、そんなサラ様を見ておられたジャキ様は母上をどう見ておられたかは、こころ察するところで…

ルッカ
「たしかに、親であろうと殺したくなるわね。




7人は天空都市へのワープポイントに到着した。
「ここからが本当の入り口じゃ」

「恐らく入国審査で魔力が足りない言われて拒否されるだろうが、ワシがいるから大丈夫だと思う)

ルッカ
「ねえ? もし、もう一人の自分と会ったらどうするの?

ボッシュ
「構わんじゃろう。魔学研究で時を操る論文も書いておったし、ワシが現われても、すんなり受け入れるじゃろうて

ルッカ
「そうじゃなくて、過去の貴方にラヴォスのタイムゲートに飛ばされない様にアドバイスなんかして、現代に貴方が存在しなかった事になったらどうするの? 貴方と出会う私達の運命も無かった事になって、今の私達の存在は…

ボッシュ
「お前さん、細かい事を気にするんだのう。もしワシがいなかったとして、どんな悪い方向に運命が変わるというんじゃ? ワシがハッシュを助けて時の最果てが存在しなくなったとして問題あるのか? 未来が大きく変化したとして、そなたの今の現代それほど守る価値があるものなのか?
この国を今救い、サラ様を救えれば、ラヴォスが1999年に目覚めないかもしれないのじゃぞ」


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――――――――――――――――――――――――――――

■12話



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6人とロボは入国審査を受けた。

担当者
「ロボさんは…魔具ですね。魔力が無いのは…カエルさんですね。残念ですがカエルさんは入国できません。」

ボッシュ
「ワシ、生命魔学の賢者、ボッシュじゃぞ? 王宮おかかえの魔学師にして王子様の教育係じゃぞ?」

担当者
ボッシュ? ボッシュ?(そんな超有名がこんなところに…?)

ボッシュ
「ほら、ちょい老け気味のボッシュじゃ。

担当者
「そ、そん、な…

 失礼しました!



ボッシュの顔パスで入国審査を抜けたクロノ達

王宮に行くと、
ジャキもサラも健在だった。



ジャキ
「この中に近く死ぬ人がいるよ。

ルッカ
「何言ってんのこの子?

ボッシュ
「こら! 王宮での粗相は危険だと言うたばかりだろうが。

ルッカ
「え?」

ボッシュ
「この子が王子様のジャキ様じゃ。跪づいて礼くらいせんと死ぬぞ。


クロノ達は跪づいた。

ジャキ
「おいジイ、この者たち見ない顔だな。

ボッシュ
「はい、この者達は私の親戚の者達でごさいます。今日は王宮の従事に関して…

ジャキ
「この魔具(ロボ)はなんだ? やけに存在感のある形をしているな。

ボッシュ
「これはボッシュ特性のおしゃべり魔具にございます。

ジャキ
「なぬ? ことばを喋るのか? それは面白い。おい魔具よ。何か申してみよ。

ロボ
「こんにちは。私の名前はロボです。王子様、ヨロシクおねがいます。

ジャキ
「うーん。なんかいまいち。何か他にできないの?

ロボは踊った。エイラの踊りを覚えていてそれを真似した。

ジャキ
「うーん。微妙だな。他には?


ロボは歌った。エイラの歌を覚えていて真似をした。

ジャキ
「…

ロボはロケットパンチを繰り出した。壁に腕がめり込む。
従者質から悲鳴があがった。

ジャキ
「こりゃ最高だ! お前、家来にしてやる。こっちこい。」


ロボはルッカと顔を見合わせている、

ジャキ
「あとそこのミドリのやつ。ぷにぷにして気持ち良さそうだから、お前もこい。


ボッシュ
(すまんのう、二人共しばらくに付き合ってやってくれんか。)


ボッシュ
「ではジャキ様、私達はサラ様にご挨拶に参りますのでこれにて…



ーサラの部屋ー

サラ
「え? まさか貴方ボッシュ? 幽閉されていた筈では?」

サラの驚きに釣られてボッシュも驚いた。

ボッシュ
「そうか! この時のワシ、ジール様にラヴォスエネルギー利用の継続の危険性を進言したんじゃ!   

それが反抗的態度だと思われて、北の山に幽閉されとったわ。あの時はサラ様がこっそり助けて下さったのだが…」

ボッシュはクロノ達に言った。
自分が未来から来た事を証明するには北の山で幽閉されたボッシュを助けて2人でやればいい。


ルッカ
「それならもうジールに直接会ったら? 山に連れていかれて、もう一人の自分がいたら流石に気付くでしょう。

ボッシュ
「ちょっと怖いけど、それもいいかなぁ…


ボッシュジールのいる王広間へと向かった。

ジー
ボッシュ? そなた何故ここにおるのだ!


かくかくしかじか

ジー
「かくかくしかじかで未来から来ただと? しかもかくかくしかじかでラヴォス神が暴走して大変な事になるだと?」


かくかく

ジー
「そこまで言うなら、お前を幽閉した山へ行こうではないか。



ジー
「まさが、ボッシュ、お前の言う事が本当だったとは…

未来には私は存在せず、未来にはジール王国も存在しない。信じるしかないのか、
不老不死も手に入らぬのか…

ボッシュ
「一つだけ手はあります。時の最果てという場所です。そこはハッシュの意識が生み出した思念世界でハッシュは時の流れが止まり、不老不死を得ています。ジール様も肉体を切り離して意識体となれば不死を得る事ができるでしょう。

ジー
「意味がよくわからんな。肉体を捨てたら魔力はどうなる? 失うのではないのか? 

ボッシュ
「百聞は一見にしかずです、時の最果てに行ってみましょう


ジー
「なるほど。思念の中で生きるということか…
 たしかに、不可能ではなさそうだ。

ボッシュ
「では…

ジー
「ああ、ラヴォスエネルギーの使用削減を考慮しよう。そしてボッシュ、お前には思念魔学の研究の陣頭指揮をとって貰う。




ダルトン
「どういうことですか、陛下!

ジー
「私の意に背くのか?

ダルトン
「いえ、海底神殿に相応の予算を当てたもので、その回収にはなんとしても他の事業を拡大して採算の調整をしなければと…

ジー
「要するにラヴォスエネルギーが必要ということか?

ダルトン
「恐れながら…

ジー
「だがラヴォスは駄目だ。事業拡大ではなく、国家の支出を削ろうではないか

ダルトン
「それでは我々は地上に住む事なります。ジール様、地上はお嫌いなのでは?

ジー
「そうだな。確かに地上は嫌いだ。同じ景色ばかりだからな。だか未来は凄い、原始時代も中世もある。我らに相応しい棲家はここ以外に沢山ある。

ダルトン
「そ…そうですか…

ジー
「分かったなダルトン。海底神殿も天空都市も取り止めだ! 我々の一先ずの目標は地におりること。時の最果てを作戦の本拠地、臨時対策室とすること。」


もしボッシュがこの時代に来ずにラヴォスエネルギーを使っていたら、ラヴォスは人間を敵視し、光の攻撃で天空都市を破壊し、都市が海に落ち、その衝撃で大津波が起こり、多くの命を失ったたろう。
しかしボッシュの力ででこの悲劇は回避された。
めでたし…


ルッカ
「ねえ? 私達が元の時代に戻ったらどうなってるんだろう?

ロボ
「きっと未来が大きく変わっていて皆存在してないと思います

マール
「じゃあ、なんで私達消えないの? 中世で私の先祖リーネ様が死にそうになったとき、私世界から消えたよ

ルッカ
「あれ? ボッシュがいない? もしかしてボッシュだけ消えた?

マール
「そうよ! 古代の人達は最果ての様な世界、想念の世界を作たんだよ。その世界で生きてるから地上にはいないだよ。

ロボ
「古代はどのみち滅ぶ運命にあった。その為、古代以降が地球に与える生態系への影響は限定的だったということですね。




 ルッカ
「でも、腑に落ちない。
 想念の世界なんてありなの?

マール
「あっていいんじゃない? ラヴォスなんていう無茶な生き物がいるんだし。

ロボ
「1999年に相変わらず未来は破滅します。

ルッカ
「そうよ、未来はどうするの?

マール
「私達もジール様に頼んで想念体になるとか?

ロボ
「現代の皆さんが想念体になって肉体の子孫を作らなければ、未来でラヴォスが暴れても問題ありません。

ルッカ
「可能なのかな? 私達魔力あんまりないけど。

マール
「わかんない。そもそも私達魔法使えなかったし、魔力増やせる可能性はまだあるんじゃない?

ロボ
「魔法について、私達はほとんど何も知りません。

ルッカ
「そうね。また何も言い切れないわよね。

マール
「もっと前向き考えよう!練」

ロボ
「では、シール王国に骨を埋めましょうか

めでたしめでたし〜
と、ボッシュはこんな感じで全てが上手くいくと思い込んでいた。


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――――――――――――――――――――――――――――

■13話



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という話の流れになるのがボッシュの思惑だった。しかし実際そうはならなかった。ボッシュとクロノ達がジャキに会ったあと、サラに会いに奥の廊下へと向かった瞬間、ボッシュが光に包まれた。


マール
「こ、これって…

ボッシュ
「な、何か起こっておるのじゃ…。この冷たくて暗い感じは…」

クロノ達は見覚えがあった。中世時代にマールの祖先リーネが死にそうになった際、子孫であるマールが世界から消えた。

ルッカ
「…もしかするとボッシュラヴォスゲートに飲み込まれない未来をこれから作ってしまうからじゃ…」

マール
「どういうこと?

ルッカ
「歴史を弄る結果、ボッシュは私達とは出会わない歴史になってしまって、そしてそうなる私達もここに存在してい…

ルッカが考察していると、ルッカやクロノ達の身体も光に包まれ、消え始めた。

ルッカ
「いけない! 何か手を打たないと私達、消えてしまう!」

ルッカは消えかけたボッシュの手を取り王宮の外へと走った。それに続くようにクロノ達も走った。

王宮の外へ出るとクロノ達を包んでいた光は消え、殆ど消えていたボッシュも浮かび上がってきた。

「な、なんじゃったんじゃ今のは??」

ボッシュが一息つくと、ルッカは歴史を変えた際に起こりうる矛盾点を説明した。

ルッカ
ボッシュ、残念だけど未来を変える事はできないわ」

ボッシュ
「そんな…。我ながら良いアイデアじゃったのに。

ルッカ
「恐らく、この都はラヴォスによって消滅する運命から逃れられないのかもしれない。歴史のどこにも古代文明の痕跡が無かったから、きっと未来の様に滅亡してしまう。

ボッシュ
「お主らが見てきた未来の事か…
 
ルッカは考えこんだ。

ルッカ
「この空中浮遊の大陸がもしラヴォスによって落ちるのだとしたら…」

大壊滅する。浮かぶ大地だけではない。海に落ちれば海面の水位は一気に上昇する。それだけでなく衝撃から、大津波が発生して海岸沿いに住む人々はそれに巻き込まれてしまうだろう。

ボッシュ
「そんな…古代に住む人々を助ける事ができぬのか…」



マール
「諦めちゃ駄目だよ! ラヴォスが暴走しても大丈夫な様に人々を避難誘導すればいいんだよ。」


ルッカ
「そうよね…。この時代の人が生き残った分、歴史を大きく変えてしまう恐れはあるけど、その方法なら可能性があるかもしれない。
私達が誰かを助けようとして、私達がさっきみたいに消えそうになれば、やめればいいのだから。

マール
「それって、助けられる人がいても見捨てるってこと?

ルッカ
「しょうが無いじゃない。私達が存在しない事になったら、どのみち誰も助けられないのだから。」


エイラ
「エイラ、難しくて良く分からない。けど何となくわかる。みんな助けよう、みんな助けよう


ルッカ
「ここで、こうしてても仕方ないわね。ボッシュ、いつラヴォスは暴走をし始めるの?

ボッシュ
「ワシが嘆きの山に幽閉されてサラ様に助け出されたのが10月の30日じゃから…。ラヴォス暴走まではあと10日じゃな。」

ルッカ
「あまり時間がないわね…ここと海岸沿いの地上には人口ってどのくらいいるの?

ボッシュ
「現代みたいな統計はとっておらんから何ともいえんが、海岸には20万人はおるのう。天空都市では2000万人のくらいかのう…

ルッカ
「私達では到底フォローできるレベルじゃないわね…

マール
「中世のガルディア軍に協力をお願いできないかな

ルッカ
「そうね…彼らならタイムゲートの存在はもう知ってるから、説明もしやすい。

マール
「ガルディア軍て全部で5000人くらいいたよね?


ルッカ
「南の魔王軍は弱体化しているとはいえ、東西北との魔族戦に備えるだろうから、せいぜい動かせるガルディアは1000くらいじゃないかしら。

マール
「1000人で2020万人の避難誘導…

ルッカ
「一人あたり20200人の避難誘導になるわ。一人あたり一日2020人を誘導…

マール
「絶対無理とは言えないけど、難しそうだね…。そもそも住民が素直に話を聞いてくれるかとうか

ボッシュ
「それならワシの力でなんとななるかもしれん。ワシはこの時代では現代よりも遥かに有名人じゃからのう。

マール
「でもどうやって? ボッシュは幽閉されている事になっているのでしょう? ボッシュが表に出たら、そっくりさんだと思われておしまいじゃない?」



エイラ
「エイラ、良くわかないけどラヴォス、暴走したらやっつけるのはダメなんか? 暴走するの最初から分かっているのなら、待ち伏せて打てばいい。」

ルッカ
「どうなのボッシュ? ラヴォスは倒せないって前にも言ってたけど、

ボッシュ
「あの時はラヴォスから恐ろしい殆のエネルギー量にビビッたままタイムゲートに飲まれたから、きっと倒せないと思ったんじゃが、もしたら…


ボッシュは戦争で使われた魔導兵器の存在を語った。
魔力を溜め込み、発射する装置で、あまりに強力で戦争では一度も実践される事が無かったという。現代でいうところの核兵器の様なものであるが、攻撃範囲を固定でき、周囲に破壊の影響を与えない効果があるとのこと。
それがラヴォスに効果があるかもしれないという。

ボッシュ
「魔導兵器は破壊する対象物を囲む様に設置して起動する。多ければ多いほど威力は強力になる。たとえば7つ魔導兵器を使うなら、ラヴォスの周りを取り囲んで7人で同時にスイッチを押す必要がある。ちなみに同時にというのは安全装置みたいなもんじゃの。」


ルッカ
「つまり、私達には選択肢としてもう一つの、『闘う』があるのね。この時代のボッシュラヴォスのタイムゲートに飲まれたあと、その魔導兵器をラヴォスの周囲に設置して起動する。」

マール
「なんか、怖い…。兵器を設置する前に私達もタイムゲートに飲まれる恐れがあるんじゃ…

ルッカ
「そうね…
ただ、もしかしたら、私たちは無事なんじゃないかしら。」

魔王城がラヴォスのゲートに取り込まれたとき、ガルディア軍はハッシュの配慮で中世に行きついた。

ルッカ
「時の迷い人を保護する為に時の賢者ハッシュによって、ガルディアの人々はそこへ誘導されたんじゃないかしら。だから私達もきっと、時の最果てに行く可能性がある。」

ボッシュ
「ちょっとまて、じゃあ、今の時代に存在しているハッシュはどうなる? 時の最果てはもうあるのだから、そこに行くというのか?」

ルッカ
「そこのところは分からないわ。ハッシュはもう一つの時の果てを生み出すのかもしれなし、時の最果てにもう一人のハッシュが現れるのかもしれない。」

ルッカには思うところがあった。

「時の最果ては、迷い人の行くべき時代に配慮しているのかもしれない。」

「最果てにあるゲートもそうだし、魔王城がゲートに飲まこれたときもそうだけど、私達は原始時代に行くように仕向けられた。

私達が現代に生きる者として、現代へと飛ばされててもおかしくなかったのに…


「つまりね、ラヴォスゲートで飛ばされても、貴方も私達も本来この時代に生きる者ではないから、
『別の時代に生きている存在』として正しくあるべき時代へと導いてくれるのではないかしら。行き先が時の最果てか、別の時代へかは分からないけど、きっと安全性が担保されているのではないかしら」
 

ボッシュ
「…そうか…記憶なきハッシュにはその様に陰ながら人々を導く役割があったのか…」


クロノ達の進路は決まった。
ラヴォス暴走のタイムリミットが迫るまでは、ボッシュ、ガルディア軍を主軸にして避難誘導をする。ラヴォス暴走の直前、ボッシュと共に海底神殿の底、ラヴォスが眠る間へ行き、魔導兵器を起動する。


クロノ達が王宮の外で話合っているその頃、魔王はビネガー達と共に王の間でダルトンと戦っていた。
魔王達はラヴォスのタイムゲートに飲み込まれ、古代へと来ていた。


相当なダメージを受けているダルトン

「き、貴様らは一体…

ビネガー
「この国は我々の王、魔王様が支配する事となった。」

マヨネー
「やっぱり人間って脆いや。魔法が使えても心操ちゃえば簡単なんだもの。

ソイソー
「我が主に仕えられる事を誇りに思うがいい。

魔王は王座の前にいる母、ジールに語りかけた。ジールはマヨネーに動き封じられている。
王の間にいる全ての従者はマヨネーに心を一瞬奪われた隙にソイソーの攻撃で気絶させられていた。


「お久しぶりです。母上様…」

ジー
(母上? お前、何を言っているのだ?)

「私の顔をお忘れですか? 私ですよ。ジャキですよ。

ジー
「な、何を言っている…ジャキは私の息子…


「そうです! 貴方の息子です。
 私は貴方のせいで失った。姉上も私自身の心も!」


魔王はこの時代で姉サラと再会し、近くない未来にラヴォスが暴走してタイムゲートが発生し、ジャキと生き別れになる事を告げようとした。けれど光に包まれ、存在が消えそうな事態となった。

目前にいる最愛の姉に近ずこうとすると自身が消える。ボッシュの様に時の矛盾点に妨害された魔王は、ラヴォスが暴走する運命が変えられないのなら、せめて自身の手でラヴォスを暴走させようと思い、ジールをその手にかけようとした。

しかし、上手くはいかなかった。ジールを殺そうとした瞬間、魔王達は光に包まれ消えはじめた。

魔王
「クソっ!」

マヨネー
「なによ、また私達薄くなっちゃった。

ソイソー
「…

ビネガー
(魔王様の話と全然違う。魔王様がこの国の王となって、領土をくれるというからついた来たのに!)


魔王がジール殺害を諦め、王の間を出ると、次第に元と姿へと戻った。

後を追うようにビネガー達がついていく、彼らもまた同じように消えかけた身体が元に戻った。

魔王は王宮の窓から飛び立ち去っていく。続くようにビネガー達も去っていった。


ジー
「い、今のは何だったのじゃ…幽霊か、幻か…


ダルトン
「…違います。あれは紛れもなく実体があった。きっと、どこかの組織が開発した魔同兵器の類かもしれません。

ジー
「し、しかし、あの様なこと、王宮の魔学技術部では一度も聞いた事がない。ほんとうにあれは、兵器なのか?? それにあの者、自身をジャキと名乗ったのだぞ…

ダルトン
「ジャキ様?(まさかジャキ様が謀反を? そんな馬鹿な。まだ彼は子供だぞ…) 


ダルトンは魔法で部下に信号を送った。
王族を警護監視している隊員と連絡をとった。

ダルトン
「ジャキ様の様子どうだ? 何か異変はないか?」

警護 
「特に異常ありません。ジャキ様が喋るペットや魔具と遊んでいる以外は特に。あ、しかし、ただそのペットと魔具、一度光って消える様な現象がありましたが…。ジャキ様が遊びで魔法を使われたと思って気にも止めませんでしたが、ジャキ様もそのペットも魔法を使った様子はなく…」

ダルトンは以前からジャキの秘められた才能を捜していた。サラの様なラヴォスを制御する様な特異な力があるのでは思い、護衛にチェックさせていた。もしあれば、政権を自身に有利に動かせる材料になるかもしれないと思っていた。もしジャキがジールに謀反を起こす意図があって先程の様な現象を起こしたなら、それも利用できと考えていた。


ダルトン
「ペットと魔具が消えかけただと? その時間は?

警護
「……てすが…

ダルトン
「さっきの現象とほぼ同時刻か…

ダルトン
「喋る魔具とペットは今どうしてる?

警護
「喋る魔具は王宮の外に。今はペットだけです。

ダルトンは警護への通信を切ると、別の場所に信号を送った。

「ジャキ様の部屋にいるペットを見張れ。そのペットの行動を記録し、私に報告しろ。これは極秘事項だ。決してペットとそれに関連する者達には気付かれるなよ。」




カエル
「ふう、王子様の気まぐれにまいるぜ。こんなにももぐられたのはいつ以来だっけ、げろろ」

カエルがジャキから開放され、クロノ達の元に戻った。途中、背筋がぴりっとしたが気にしなかった。

カエル
「あの王子様やばいぞ。オレにロボパンチを避ける遊びさせるんだからな。内蔵が飛び出たらオレの負けとか、んなこと言われても内蔵飛び出たら死んじまうぞ俺。」

ルッカ
「大丈夫よ。その時はきっとボッシュが治してくれるから。

ボッシュ
「いや、流石に内蔵飛び立ったら、ワシでも自信ないわ。


ルッカ
「ところで、カエル、貴方が王子の相手をしている間に当面の方針が決まったわ。私達は…

この時、カエルはダルトンに頭の中を覗かれた。小型の思考監視魔具をつけられていた。
魔具は言葉等の言語の違いを超えて思考そのものを読み取れる。


ダルトン
「まさか未来人がこの世界に来ていたとは…しかも歴史を変えようとする者が光に包まれて消えるような事が…だとすればジャキ様がジール様の命を狙おうと未来からやって来た事も、ある意味で納得できるが…」

ダルトン
「しかし、この天空都市が崩壊するだと…
そんな事になったら王の権威なんぞ、塵の様に吹き飛ぶぞ。私も今の官職を失うかもしれん。
我々が海底神殿の建設にどれだけ国庫を注ぎ込んだと思っている。奴らには死んでもラヴォスのコントロールに成功して貰わないとな…
でなければ今まで積み上げたコネクションが…」


ダルトンはこれまで国務を裏で牛耳ってきた。
王族や官職達をいつでも殺して成り代われる程の力をダルトンが属する組織は持っていた。
そのダルトン派の関係者がどれほど王宮内に潜むかジールやボッシュも知らない。
ただ、ジールは薄々と知っていた。

王宮ではいつ王族に謀反が起こってもおかしくなかった。
ラヴォスから大量の魔力を抽出する行為、魔神機によるラヴォスの利用は、そんな王宮の危機の中で生まれた。計画に大きな夢を抱いたダルトンとその勢力は計画を続行し続ける間だけは謀反を起こさない。ラヴォスのコントロールに必要なサラは国の要であり殺せない。サラを思い通りに動かすにもその血族は人質にする事はできても殺す事はできない。

ジールが計画のリスクを知りながら強行実行しているのは、王宮を守るためだった。

ジールが些細な事で失敗する者への大きな罰を与えるのも理由があった。ボッシュ達が裏で死刑を無かった事にしているのもスパイを使って知っていたし、些細なミスをした従者を王宮から追い出すのも、王宮がクーデーターで血に染まった場合に備えてだった。
王宮の従者を極力減らしたかったジールは暴君と成り果てるしかなかった。

魔力の無い者を地に追いやる政策も、元々、王権の意向に反目する派閥の提案だった。
ダルトンが王宮にいない頃から王宮内部には魔力で格付する差別主義者が多くいた。
ジールが生まれる前から差別体制が作られ
ジールの夫クトはその様な差別体制の中でジールと婚約し王宮に入った。
とはいえ、王族になるというのは死と隣り合わせである為、ジールは最初から浮気等の理由をつけて追い出すつもりだった。

魔法学的にいえば妊娠はセックスをしなくても作れた。危険と隣り合わせの王宮に命を生み出す事に大きな抵抗があったジールだったが、もし子供を作らなかったら、このまま跡継ぎは差別体制主義者に移行してしまい、ボッシュの様に裏で民を救済している者達もいずれ殺されてしまう。そうなれば本当の意味での魔力無き民への弾圧が始まってしまう。

ジールがジャキに冷たく当たり散らしたのも
愛してない姿を見せ、人質として交渉には使えないのだとダルトン派に思い知らせる為だった。

暴君ジール、誰もに気付かれることないが、誰よりも国の未来を考えていた。
ダルトンは誰よりもの保身を考えていた。



ダルトン
「暴君ジールは魔神機で民を危険に陥れる。しかし、それはある意味、私にとっては好都合か…」

ラヴォスが暴走して都市が消滅したとしても、それまでに人々を救出した実績を残せばダルトン自身の権威は保たれる。

ジール王は暴君として王宮からも民からも人望がない。ダルトンが海底神殿の陣頭指揮をとっているとはいえ、国民から見れば暴君ジールの命令に従わされている様にしか見えない。国民は救出実績を作ったダルトンを肯定的に見るはず。



〜念波〜

この時代、自身のメッセージを念にして飛ばせる距離は通常1m以内であるが、増幅装置を使えば不特定多数の誰かにも届けられる。
また念の質、つまりはボッシュの念の識別コードを載せて飛ばせる事もできる。
不特定多数とはいえ、念波を飛ばせる範囲は調節できる。


ボッシュは避難誘導に必要な念を込め、それを念波として使える魔具を沢山用意し、避難誘導に使った。

クロノ達、ガルディア軍もその魔具使った。。

ルッカ
「なんだ…。私、無線機必要かと思って沢山用意したけど不要じゃないの」


ボッシュ
「そんな事ないぞ、魔具は盗聴される心配あるが現代の無線機は大丈夫じゃて。ワシらがラヴォスに攻撃する計画を知られる様なことになれば、ワシらは邪魔されかねんからのう。」

ルッカ
「じゃあ、この魔具を使って直接連絡を取り合うのは危険ね。会話するのは無線機で。ということね。」




マヨネー
「なにこれ? 頭になにか入ってくる。」

ソイソー
「…

ビネガー
「魔神機の実験が失敗して都市が崩れるかもしれない? どういう意味ですか魔王様?


魔王は空を飛んで建物を駆け上がって、下を見た。
地上に避難していく人間達を見つめた。


魔王は地上に降りて、人々が向かう先へと自身も向かった。
雪が降る中、大陸の中央に集まる人々。
魔学的につくられた魔法シェルターに人々が避難している。雪を凌げ、温度も快適に調節された空間に、地の民と天の民が仕切りを作る様に2つに分けてそこにいた。
地の民への差別心を持つ天の民
天の民への恐怖心を持つ地の民
2つがクッキリ区別されるように別けられている。

しかし、天の民の中には少数であるものの、地の民に「心配ないよ」と声をかけたり、天地関係なく、子供同士が遊んでいたりする。
大人達はそれをみて怒ったりするものの、わんぱくな子供達は聞く耳を持たず、しかり疲れするパターンもあった。
羨ましそうに眺める子供、親の言い付けを絶対に守ろうと子供、地の民を虐める子に、それを止める天の民、多様な光景が入り乱れた。

 



ボッシュ! ボッシュ!」
10日目、嘆きの山に幽閉されたボッシュがサラに救助された。氷漬けにされていたボッシュが解凍されるとゲホゲホと嘔吐した。

サラは魔法でそれを癒やした。

サラ
「大変です。まもなく海底神殿でラヴォスが覚めてしまいます。一緒に止めに来てください!」

ボッシ
「やはり、強行されますか…ですがサラ様が行かなければ丸く収まるのではないでしょうか。

サラ
「今の母上はまるで別人格が取り憑いているかの様です。私の魔力で動きを封じることもできません。

ボッシュ
「まさか!ラヴォス神がジール様を操っておるのか!

サラ
「私がいなくても母上はラヴォスを目覚めさせます。もう私の力だけでは止められません。私と共に一緒に来て下さい。

サラはボッシュを抱えると山を飛び立った。


サラ
「ところでボッシュ、あなたの偽物が街にいるという噂が…、これはどういう…」

クロノ達の避難誘導の噂が王宮のサラに届いていた。


ボッシュ
「なに? ワシが民を下界に避難誘導しとるだと?」 

サラ
「貴方が呼びかけたものではないのですか?」

ボッシュ
「ワシは知らん!
 知らんが…


ボッシュ
「今はそれどころではない!
 誰か知らんが避難誘導をしてくれるというのなら願ったりじゃ。、ワシの偽物は取りあえず、ほおっておきましょう。」




〜海底神殿〜

海底神殿はラヴォスのいる地層へと掘り進める為に建設された。建設業者は普段、最寄りの施設からワープして神殿にて掘削作業にあたる。現在はラヴォス深層まで掘り進んでいて作業者はいない


ジー
「さあ、ラヴォス神よ! わらわに永遠の命をもたらせー!」

ジールが呪文を唱え終えると魔神機が起動した。 
魔神機がラヴォスからエネルギーを吸い込み、ラヴォスが唸りを上げる。


ボッシュ
「遅れてすまん!」

ガッシュ
ボッシュ、お前、あの山から抜け出たのか!

ボッシュ
「ああ、いまどうなっておるのじゃ?

ガッシュ
「無謀にもサラ様無しで魔神機を起動しおった。あれではラヴォス神が目覚めるのは時間の問題だ。

ハッシュ
ジール様はバリアをはられていて、近づけん。もはやジール様を止める事は我らにもできん…」

サラがラヴォスの背に乗り魔力を込めた。
ラヴォスが目覚めない様に魔力を注ぎ込む。  

ボッシュはこの時の為に作っておいた赤い剣を取り出して魔神機に刺した。魔神機を破壊できる剣だが、刺してもそれ以上は動かなかった。ジールが魔法をかけ、剣がそれ以上動かせない様にしていた。

三賢者達はジールの魔力に対抗して剣に力を注いだ。

ラヴォスの地響きと唸り声と共に、赤い剣が形を変えた。後の世に聖剣として語り継がれるグランドオンの姿になる。



ボッシュ
「この後じゃ、この後、ワシがタイムゲートに飲まれるんじゃ」
 
魔神機は止まらず、サラ様よるラヴォス制御も力足らず、時空が歪んだ。


ハッシュ
「ま、まさかこれはタイムゲート? いかん! ボッシュ、今すぐ、そこから逃げろ!」

空間が避け、ボッシュはゲートに飲み込まれた。

ハッシュ
ガッシュ! サラ様! もうだめじゃ!ここから逃げて下さい!」

言った瞬間、2つのゲートが同時にでき、ハッシュとガッシュも飲み込まれた。





ボッシュ
ガッシュまで…」

せめてガッシュは助けたかったボッシュ
悔しい思いを振りきり、クロノ達に魔導兵器の使用合図を出した。


マール
「まって! まだサラさんがラヴォスに!」

合図を取りやめたボッシュ

そこにジャキが走ってきた。

「姉様!、危険です!ここから直ぐに逃げて下さい!


「なぜ、なぜ、貴方がここに…
サラは弟に叫んだ。
「ダメよ! 来ては!」

サラの叫びも虚しく、ジャキはラヴォスゲートに飲み込まれた。
サラの悲痛な叫びが発せられた瞬間、ラヴォスが目覚めた。
サラの集中力がジャキが消えたことで途切れた。その瞬間だった。

そのとき、ラヴォスは突然、鎮まった。
身体にエネルギーを貯め始めた。
クロノ達はそれを理解せずとも悟った。この後、ラヴォスから光の柱が飛び出して天を貫き、大地を砂の大地に変える。未来で起こった同様のことが起きる。
天空都市が落ちる、またその前に海底神殿に穴が空いて水没する。
クロノの達も死ぬ未来を悟った。
今すぐにでも魔導兵器を使用しないといけない。

諦めかけたとき、魔王が上から降りてサラを抱き、ラヴォスからから離れていった。


ルッカ
「な、なぜ、ここに魔王がいるの? 

ボッシュ
「とにかく、今チャンスじゃ!」


クロノ達は魔導兵器を起動した。
7つの魔具から光が発射され、ラヴォスを包みこみ、ラヴォスから悲鳴がほとばしる。

ラヴォスはガムシャラに抵抗しているようで、その作用か大きな地場が発生した。

7人はその地場に吸い寄せられる様に、魔導兵器の中に吸い寄せられる。


「いかん! まさかこんなことが…

ボッシュは魔法を使い、クロノ達と自分をラヴォスの地場から離した。

魔導兵器も地場に取られ、ラヴォスの内側にめり込んでいく。

魔導兵器はラヴォスに押し潰され壊れた。




7人はラヴォスの正面に立っていた。

ラヴォス正面の目玉にエネルギーが溜まっていくいく。

ロボが光の光線を受けて消滅した。


次にボッシュが光を受けて消滅した。

エイラは消滅する二人をみて腰が抜けた。逃げようと後ろを向いた瞬間、ラヴォスからレーザーが放たれ消滅した。

ラヴォスの目玉は標準をクロノに合わせている

逃げようとしても目玉が追いかけてくる。

クロノが逃げている隙にラヴォスの視界から逃れたカエル、マール、ルッカ

ラヴォスはレーザーをクロノに発射した。
避けるクロノ
何度も発射するラヴォス

真横に走り視界から抜けようとしても、ラヴォスは一キロメートルはある巨体を動かしてクロノの正面に立とうとする。

ルッカ
「クロノ! ジールよ! ジールがラヴォスを操ってる!」

クロノはジールに向かって走った。

ジールの前に立つとラヴォスは攻撃を辞めた。

だがジールが念力でクロノを高く持ち上げ始めた。、ラヴォスの標準がクロノ合い、光が発射される。瞬間、カエルがジャンプしてクロノを抱えて救出した。

カエルはクロノを抱えてフロアを出るとクロノをワープ台においた。 
カエルはマールとルッカもすかさず助けて、ワープ台に乗った。



ターゲットを見失ったラヴォスの目は動かなくなり、しばらく鎮まった後、
光を全身に集め始めた。
光の柱が身体の表皮から飛び出し、海底神殿の天上を貫き、世界を包みこんだ。
光は成層圏まで到達するゆっくりと落下し、加速していき、天空都市を貫いた。いくつもの光が拡散し、落下していき、都市が割れ、大陸こど海へと落ちてく。
地上に降り注ぐ光は、人々が避難をしているシェルターまで降り注ぐも、魔術師達がバリアを張って耐え忍んでいる。

地面を覆う雪は光の熱でとけ、地表が顕になる。



海底神殿の天上には穴があき、海水が流入してくる。
ラヴォスも海水に飲まれ、水没していくが、ジールの思念とラヴォスのエネルギーが共鳴、呼応し、海底神殿はジールと融合をし始めた。


海底神殿は生き物の様に変異し、ラヴォスを下から包み込むように浮上をし始めた。
神殿の底には無数の穴が空き、海水を排出しながら浮上する。
ジール神殿は海面を上に抜けると、上空へと浮上していく。

クロノ達は破壊され落下していく天空都市と
ラヴォスと共に浮上するジール神殿を見ていた。

突如、クロノ達の体が光輝き消滅しはじめた。

何が起きてるのか分からなかった。
何が原因で消えようとするのか、その原因が判らないと防げない。

消えようとしているのはクロノ達だけではなかった。この国の人々も消えようとしている。
皆がパニックに陥いりながら消滅した。


次の瞬間、見覚えのある光景がそこにあった。

ジールが念力でクロノを高く持ち上げ始めた。、ラヴォスの標準がクロノに合い、光が発射される。瞬間、カエルがジャンプしてクロノを抱えて救出した。

カエルはクロノを抱えてフロアを出るとクロノをワープ台においた。
カエルはマールとルッカもすかさず助けてワープ台に追いた。

ターゲットを見失ったラヴォスの目は動かなくなり、しばらく鎮まった後、
光を全身に集め始めた。

このままでは光の柱が世界に降り注ぐ。その事を知っていたカエルは動いた。
カエルは咄嗟にグランドリオンでラヴォスの目を攻撃した。
攻め込み、ラヴォスの照準に合わない角度から聖剣を突き立てる。
ビームは飛ぶもののカエルは寸前で当たらない。
ラヴォスの目玉をくり抜きかけたとき、ラヴォスから光のエネルギーが消えた。


ラヴォスの目玉の奥まで剣を侵入させ、えぐりだした。

ラヴォスは倒され、反応がない。

カエルはラヴォスがある程度空洞になっている事に気付いて奥に入った。

その先でもうひとつの生き物を見つけた。
ラヴォスの外殻から血管が伸びてそれに繋がる上半身だけの何かがいる。

カエルは咄嗟に攻撃を加えるも上半身の何かからエネルギー派を受けて近づけない。
剣を振りまくるが、衝撃波で近づけない


そこに魔王が現れて、上半身の何かを魔法で巨氷漬けにすると火で燃やし、爆発を起こし、落雷を落とした。

魔王の攻撃で怯んだその隙にソイソーが現れ連続斬りを浴びせ、上半身の何かがのけゾッた瞬間、カエルのグランドリオンによる攻撃が入る。

上半身の何かは倒れた。ラヴォス外殻と繋がる血管と上半身がちぎれ、管の穴から泡が吹くと、上半身から脱皮するように、更に何かが現れた。

まるで宇宙服を纏ったかの様な人型が現われると、人型はラヴォス外殻を突き破り、天空と登り宇宙へと消え去った。

人型は何処へ行ったのか、ラヴォス外殻の残骸のみがラヴォスの亡骸として地球に残った…



ラヴォスを倒して未来を平和にしてしまうと、クロノ達は荒廃した未来の世界には行かないシナリオになり、時の最果てにも行かないシナリオになり、これまでの全ての冒険、行動もなかった事になるだろう。
ラヴォスが消失したその瞬間から、この時代でのカエルの活躍も魔王の活躍も無かった事になる筈である。

だがクロノ達は消えなかった。

消えない原因があるとすればクロノ達が今倒したラヴォスは未来を滅ぼしたラヴォスではなかったということ。
古代のラヴォスとは異なるもう一体のラヴォスが地殻に存在していることになる。

クロノ達の役目はまだ終わっていない…






-

ジールがラヴォスに操れているなら、なぜ魔神機を守ろうとしたのか、ラヴォスを封印するかの様に神殿と同化して抱えたのか、この答えを矛盾なく成立させるには、もう一体のラヴォスジールを操り、ラヴォスに圧力を掛けていた等の理由が必要になる。

たとえばラヴォスラヴォス同士で互いにエネルギーを奪い合う関係にあり、互いに敵同士だったとする。
知恵の働いたもう一体のラヴォスが地球の裏側からジールを操ったりしたのかもしれない。

そのラヴォスの目的はラヴォスの死か、あるいはエネルギーを使い果たして眠りについて貰う事を希望していた。という設定にしてみた。


――――――――――――――――――――――――――――

クロノトリガー



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タイムリープ

クロノ達はタイムリープに巻き込まれることで結果的にラヴォスを撃退することができた。ロボ、エイラ、ボッシュの犠牲を出したが…

天空都市はラヴォスというエネルギー動力源を失い、落下していくものと思われたがもう一体のラヴォスの存在で天空都市は落下する事なく維持された。


ジールは国民に対して土下座をした。
危険だと承知していながら、計画を強行したこと。
ジャキの人生に多大な迷惑を与えた事を謝罪した。

暴君ではないジールの姿が国民にどう見えるかは様々であるが、ジールは王冠をダルトンに差し出した。
だがダルトンは拒んだ。

ダルトンは言った。
ラヴォス神を敬い、コントロールできるのはジール様とその一族しかありえません』

『今後はラヴォス神をもっと敬い。我々は謙虚にならないといけません』

ダルトンによる演説で国民は納得し、都市へと戻っていった。

ダルトンは最初から二体目のラヴォスの存在に気付いていたから冷静だった。



〜時の最果て〜

ルッカ
「みんな覚えてる? 光に包まれた私達がタイムリープしたこと。」

マール
「覚えてるよ。私達みんなあれで過去に戻ったもの。ジール国の人々も光ってたし。

ルッカ
「ただ過去に戻った訳じゃなかった。戻る前の記憶もあったし、未来の記憶もあった。

マール
「私達、ジールのみんなも、あの時一度死んだよね…
 ラヴォスの光を防ぎきれず、みんな、死んだ。山もなくなるくらいに壊されて、バリアの外は10mの崖ができたみたいになって、全てが無くなって、みんな、みんな、殺された。


ルッカ
「あの時の悲劇をジールの人々が覚えていたからこそ、その後、ジール王国はひとつに纏まってくれた.。歴史の変化にも気を配ってくれて私達が生まれない世界にならない様に配慮してくれた。

マール
「全てはあの光のお陰なんだよね…

ルッカ
「だけど光がなぜエイラ達が死ぬ前の時間に戻してくれなかったのか…

マール
「ロボやボッシュ、エイラには私達、もう会えないのかな…

ルッカ
「私は会えると思う。あの光に時を戻す力があるなら、私達も時を戻せるかもしれない。エイラ達を助けられるかもしれない。その方法があるとすれば、やっぱりあの光しかないと思うの…


ルッカ 
「私達、未来に行ってみない?」

ルッカ
「古代ジールが破滅しなかった分、未来は大きく変わったはず、もう一体のラヴォスジールの人々が抑え込んでたり、倒してくれているかもしれないし、私達の現代も魔族に支配されてないかもしれない。もしかしたら、光の正体も解明されているかもしれない。光の謎が解ければエイラ達を助ける事ができるかもしれない…


クロノ達は未来へ飛んだ。

ゲートを出ると、そこは博物館になっていた。

古代の魔法文明と人間の科学が融合した果てにできた超高度文明の歴史を辿れる博物館ができていた。

グランドリオンが展示されていたり、蟻より小さいのスパイロボが展示されていたり、目玉の展示物にはタイムマシンがあった。

意識のみを過去の自分へとダイブするタイムリープマシンから始まり、三人乗りの小型のタイムマシン(シルバード)から、旅客機の様なタイムマシンが開発の歴史順に展示されている。

だが、どのタイムマシンも過去にはいけるが、世界に干渉できないという代物だった。
過去の世界を見たり聞いたりできるが、決して世界のものに触れることができない。また過去の時代の人からも、こちらの存在は見えず触れられない。

タイムマシンは過去は変えられず、未来は変えられれるというルールがあった。そのルールは作ったというよりも、科学の超えられない壁の様なものであるそう。

光のタイムリープ現象も展示されていたが、レプリカであり、正体不明であった。

未来人はこの謎を追い求めるべく、地球を離れ、宇宙へと旅立っていた。
この博物館はジール王国を救った英雄を記念しても作られていて、時の最果てに続くゲートも展示品の1つとして守られていた。

マザー
「…とういうことで、分かっていただけましたか?」

マザーは未来のAIシステムであり、この時代にクロノ達が来ることを予めタイムトラベルして知っていた。

マザー
「貴方達が歴史を変えたおかげで私は生まれた様なものです。わたしは貴方達が来ることをずっと待ちわびていました。」

「ですが、私は、とても言いにくい事も告げなければいけません。それは私に最初からインプットされた事柄で、私はその為に作られたともいえます。

皆さんはラヴォスをご存知ですよね? 世界を破滅に導く存在、その中身が私にインプットしたのです。

 ラヴォスの中身が人型をしているのは、皆さんご存知だと思いますが、ラヴォスは知的生命体であり、人間でいうところの赤ん坊の様な存在です。超高度文明を用い躾けなければ、世界を破滅に追いやる存在ですが、教育すれば、人と共に生きていけます

ラヴォスは宇宙の壁にある穴からきます。ブラックホールとは真逆の白い穴から、やってきます。


その白い穴にはブラックホールと逆の反重力性があり、近づくことができません。現在でもその先は未解明のままであり、私達の祖先はその謎を追うべく、宇宙の壁を調査研究しています。

問題が発生したのは多くの人間が宇宙に旅立ったことで、地球を監視、監督する者が不在になったことです。奇しくも、この世界も皆さんが未来で見たのと同じ、人間が存在していない世界になっています。
唯一存在するのがガッシュで、彼はラヴォスを教育する事に成功した最初の人でした。彼は古代でラヴォスゲートに飲み込まれこの時代に来たあと、ラヴォスに同情しました。

ラヴォスが人間にエネルギーを取られるだけの存在に成り果てている時代を変え、ラヴォスに愛を組み込みました。
愛を知ったラヴォスは地球の過去を洗いざらい調べ、同族のラヴォスに皆さんの仲間達が殺された事を強く悲しみました。 

悲しんだからといって、皆さんの仲間を助けられる訳でないのですが、皆さんの悲しみを少しでも癒やしてあげたいそうで、皆さんの脳内を操作し、悲しみの感情を取り除いてあげたいと申しています。

皆さんに問います、エイラ、ロボ、ボッシュを失った悲しみを取り除いて欲しいですか?」

クロノ達は断った。悲しくても、思い出を捨てたくない。自分達はエイラ達を助ける方法を探している、と。

ラヴォスはその答えを受け取る事を想定していた。その上で、クロノ達を騙す偽りの世界を用意した。

クロノトリガー』そのアイテムを使うと過去の世界へ行き、時を止められる。つまり、死ぬ寸前の人間とそっくりな人形をすり替えて未来に連れて帰れば、過去の歴史を変えずに時の矛盾を成立させことができる。

しかし、そんな都合の良いアイテムはなかった。時が止まる世界を動くということ。それは止まった側の世界では光を超える様な速度で人がすり替えられるということ。膨大なエネルギーがその空間を飛び交い、すり替える前にそこに居る全ての者が破壊される。
壊れない様にバリアを作ったり、バリアを作るところを見られない様にこっそりと自分は透明にならないといけなかったり、光を超える早業で誰にも気付かれずに立ち回り、ばれたら記憶を消したり…

要するにクロノトリガーなんてものはなく、時を止める方法は無く、止まったかの様に見せかけてラヴォスが頑張るということ。

ラヴォスが頑張ればエイラ達を助けられる。

でもラヴォスにとっては、エイラ達を助けるよりも、複製する方が遥かに簡単だった。

たとえばラヴォスがエイラを助けにタイムトラベルする場合、まず原始時代のタイムゲートに入ってから、古代の時代にラヴォスが暴走するまで待たなければいけない。誰にも気付かれず、歴史に影響を与えない様に、ひっそりと森の中で暮らしたり、地面の中に隠れたりして、エイラをすり替えるその時まで待たなければならない。忍耐力が必要になる。

エイラと人形をすり替えた後は、光を超えるスピードで動きながら周りに影響を与えない様に配慮しながら、時の最果てゲートをくぐったりして、クロノ達に届ける必要がある。これも忍耐力が必要である。

未来のタイムマシンも同じ仕組みである。世界のどこかのゲートからラヴォスがタイムマシンの形をした乗り物を担いで、あたかもタイムトラベルしている様に見せかけている。

全ては子供達の夢を壊さない為に、ラヴォスが考えたアイデアだった。そのやり方が他のラヴォスにも受け入れられたという事もあって、先駆者のラヴォスは、今更、子供達の夢が壊すというのは他のラヴォスに示しがつかない。
そういう込み入った事情から、エイラ達を助けるのはとても面倒くさかった。

クロノ達にはエイラ達を助けることを諦めて欲しかった。

ラヴォスは泣いていた。
クロノ達が強がりを言っているのを聞いて泣いているのではない。これから仕事しなければいけないから泣いているのだ。全ては自分が決めた事。  

『俺の○道は絶対、曲げねえ!』
ラヴォスお気に入りのアニメのセリフ。ラヴォスはその言葉を胸に今日も空を飛んだ。
苦労する鳥の様に…
クロノトリガー
苦労のトリガー







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■クロノの正体



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クロノは中世時代、マールが消滅する現場に立ち会った。
それをクロノの時間軸一周目とするなら、これは0周目の話になる。

クロノ0周目ではマールを救出できず、ルッカとクロノは人々の記憶から消失してしまった現代の王女マールを救う為に奮闘して、時代を駆け回った。

2300年の世界でガッシュが開発した試作機タイムマシン『精神ダイブシステム』を使い、マールが消失した直後のクロノの精神に入り込む事に成功した。
クロノは、その時間からもう一度マール救出をやり直そうとした。
だが上手くはいかなかった。

マールを助けようとするとクロノ自身が消滅する事態となったのである。

精神ダイブはその副作用としてダイブされている間の記憶が宿主には残らず、宿主の脳神経にダメージを与えてしまう。

マールを救えば未来にてクロノが精神ダイブをしてマールを救う歴史が成立しなくなる。

クロノは時の矛盾にハマり、幾度となく過去の自分にダイブしては諦めるという事を繰り返した。

過去の時代のクロノから2時間の記憶が消失し、脳に少なからずのダメージを与えられた瞬間、クロノはマールと同じ様に消失した。
クロノだけではなく、その場にいたルッカ、ロボ、エイラも消滅した。

結果的に時の流れが『マールが助かる歴史』に修正された。

この0回目の時間軸ではクロノは魔王ともカエルとも出会わない歴史を辿っていた。

マノリア教会でカエルに出会うには、王室の中で2時間何もしない事が必須だった。
マール消失後、部屋から出ると直ぐに衛兵に捕まり牢屋に入れられる。
衛兵の目を逃れたとしても、ルッカと行き違いになりはぐれてしまう。
マノリア修道院まで辿り着いても、蛇女は奥の隠し部屋にいて、シスターに成り済ます準備をしていたり、リーネの悲鳴を聞いて助けに向かっても一人ではどうにもならなかったり、マールが助かる為には小さな成功要因が幾つも重なっていなければならかった。

その上で、歴史を変えることができない主問題を偶発的にクロノは飛び越えて解決した。

クロノを起点とした偶発さは古代にも強い影響を与えている。

クロノ達が存在していなければ、後のジール王国は存在していない。ジールに住む人々は、何らかのきっかけで、クロノ達の歴史を変えてしまうような出来事に直面すると光り輝き消滅しそうになった。

特徴的なのはクロノ達が古代からゲートに戻った瞬間、天空大陸その物が光り輝いて消滅しようとした事だった。

天空都市が浮かび続ければ、それを見る地上人の歴史に大きな影響を与え、クロノ達が生まれなくなる。
古代人は天空都市を誰にも視認されず、干渉もできないように隠す必要性に迫られた。

クロノ達無しでは世界そのものが維持できない状況になっていた。

クロノの偶発的イレギュラーさは、その髪の毛の色にも隠されていた。

クロノの赤髪は染めたものではなかった。
クロノは赤髪一族の末裔で故郷は地球外惑星にあった。
その惑星はラヴォスにより滅びの運命を辿るが、その前に宇宙船を使い、人々は宇宙各地の惑星に避難した。

クロノの祖先はDC900年にガルディアの地に降りた。100年前、第二次世界大戦前の
地球であるが、その頃、地球人の間でウイルスが蔓延していた。

当時、スペインを除く多くの国では第一次世界大戦の名残りで、軍国強化の道に舵を向けていた。その為、国力を示す人口統計を国防の観点から公表せず、唯一、中立平和を宣言するスペインだけは積極的にウイルスによる死者統計を発表していた。識者は世界にウイルスの脅威に晒されている事をスペインの新聞、ラジオ等を通して知る事になる。

僅か二年の間に世界中で1億人以上の死者を出したウイルスであるが、死者の多くは若者であった。

体力のある若者から死んでいく未知の流行り病
当時の人々がもし熱心に情報を集めていたら、30年後には人類は滅ぶものと想定していただろう。

クロノの祖先もその脅威を例外なく受ける立場であり、母船に救援を要請した。

未開惑星保護条約に沿って、クロノの祖先はその遺伝子に伝染性の高い、抗体増殖ウイルスを入れる事で対応した。

抗体ウイルスは、クロノ一族の身体を通して人間の間で飛び火する様に伝染し、人々はウイルスを克服するのだが、クロノの祖先にとってはまだ地球の問題は山積みだった。

惑星保護条約では戦争を止める事はできない。
絶滅するような自然災害や人災以外は手を貸してはいけないというルールの元、クロノ一族は地球に住むのを諦め、別の星に移住をした。クロノの先祖、一人だけを残して。

クロノのひい婆ちゃんは、地球人の男と恋に落ちガルディアの地に残った。
ひい婆ちゃんの記録は殆ど残されていない。
クロノの母ジナが子供頃の事をすこし覚えているくらいで、天真爛漫で明るい人だったということくらい。

クロノ達は未来の博物館に展示されているタイムマシンを使い、クロノ一族の歴史を垣間見ることができる。

だがマールを助けにクロノ達が消滅した歴史については観測する事はできない。


マール
「ね? せっかくだから私達、クロノの故郷惑星に行ってみない? エイラ達も助かったことだし。

ルッカ
「宇宙船が必要になるわね。マザー、宇宙船は貸して貰えるのかしら?


マザー
「宇宙船は必要ありません。館内に設置されているテレポート装置に乗って頂ければ。

ルッカ
「マザー、宇宙船に乗って行くのがロマンというものよ。

マザー
「では危険が及ぶ事を想定して、こちらを…」

マザーはタイムトラベル機能付きの宇宙船をクロノ達に与えた。





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■赤髪一族、ゼータ星人



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宇宙船内の装置を操作し、クロノの祖先、ゼータ星に座標を合わせるルッカ
設定を終えると自動で目的地に連れていってくれる。

「いくわよ、惑星ゼータ」

地球から勢い良く飛び出した宇宙船、光の速度を超える。

宇宙空間に飛び交う沢山の星の光に大量に衝突する格好になり、宇宙船の中から外の光景は眩しくて何も見えなくなる。

天の川銀河、地球から1527光年先に惑星ゼータがある。

ゼータに近付くと光るライン。光るヒモの様なものが無数に絡んでいた。
ヒモは宇宙船の進行を邪魔するでもなく、惑星ゼータを丸ごと覆いかぶさる様にグルグル巻きにされている。

クロノの先祖の故郷、惑星ゼータはラヴォスによって滅亡した。クロノ達が想定していた滅亡の具合はDC2300の様なものであったが、惑星ゼータを襲ったラヴォスはクロノ達が知る星に巣食うラヴォスとは形も色も大きさも異なっていた。
透明かつカラフルな虹色をしたもの。目がなく、口が大きく、ある種の鯨の様な形をしていてる。宇宙をフワフワと泳ぎ、惑星ゼータは巣食われたというより、その鯨様生物に飲み込まれていた。
惑星ゼータはバラバラにくだかれ腹の中にあり、人は住む事はできない。

このカラフルな生物もラヴォスと同じ様にエネルギーを抽出されていた。
このラヴォスは、あたかも魚の生簀の様な形をした籠のバリアに閉じ込められている。籠の直径は凡そ140万kmで地球を照らす太陽と同じくらいの大きさ。ラヴォスの直径は13万5421kmで木星くらいの大きさである。

生簀を監視する人口惑星。そこにクロノ達はいた。

生簀と人口惑星は地球文明によって作られ、監視しているのはゼータ人だった。




ゼータ人「よくぞお越しくださいました。我々は貴方達の到着を心待ちにしていました」


マール「な、なんで来るのが分かって…

ゼータ人「我々は未来予知ができる様に改造されてます。皆さんが来ることは4年前から把握していました。

ルッカ「よ、年前…。しかも未来予知…

マール「か、歓迎してくれるのは有り難いですが…

ゼータ人は喜びのあまり踊り回転している。高速で前や後ろに回転していて落ち着きがない。

ラヴォスに一矢報いて、今のゼータ人がこうしていられるのは地球人、つまりクロノ様方のお陰であります。しかもクロノ様は、我々のご先祖様でもあります。どうか皆さん、おもてなしをさせてください。」

ゼータ人のもてなしはクロノ達の常識を超えていた。

『クロノ様御一行専用遊園地計画』

計画は4年前から始まり、建設に着手されていた。

ラヴォスの生簀の中にある総合遊園地。メリーゴーランド、観覧車、ジェットコースター等。
クロノ達がここへ来る際に目撃した光るヒモ状のものはジェットコースターのレールであった。

各乗り物はラヴォスの攻撃を予測して避ける様にプログラムされていて、ラヴォスに食べられそうで食べられないスリルが味わえる。

ゼータ人お勧めの見どころはジェットコースターで、ラヴォスを避けると見せかけて最終的に食べられてしまう。
安全性は保証されているものの、所見でやると死んだかと思うようなドッキリに巻き込まれる。

クロノ達がもてなしをされている頃、地球の衛生である月の内部から信号が飛ばされた。信号はクロノ達がラヴォスを倒す前の時代へと送られ、クロノの脳内を書き換える。

ラヴォスが目覚め、エイラやボッシュ、ロボが殺される前の時点のクロノに司令が送られる。

光る現象、タイムリープが起きるかどうかの再現実験が行われた。

この実験にはエイラの存在が深く関わっていた。クロノ達の先祖にあたるエイラ、そのエイラが死んだにも関わらずクロノ達の存在は消えなかった。

エイラが死ねば古代の多くの血筋に変化をきたし、歴史が大きく変化するはずだった。ジール王国は存在せず、古代の世界の姿が全く違う形になる可能性が高い。

エイラを生かした場合にも同様にタイムリープ現象が起こるかどうかの検証である。もし起こらなければ、タイムリープの現象にとある仮説が成り立つ。



〜B.C12000〜

魔道兵器がラヴォスに破壊され、ラヴォスの目からレーザー光が発射される直前、クロノが刀を投げた。
「今すぐ逃げろ!」

刀がラヴォスの目に突き刺さり、その隙に全員がテレポート装置まで走り脱出した。

ラヴォスの光は古代人のバリアシェルターを貫き、多くの人々を死滅させた。

メンバーも同様に攻撃を避けきれず死んでいく。


だがエイラとクロノは助かった。クロノはエイラを抱えるとラヴォスの光が落ちてくる座標を避けた。ラヴォスの光が次にどの地点に落ちてくるか、未来の月からの司令にて知っていた。クロノ自身の意や心は考慮されないままに。

我に返ったクロノは古代の惨状を見て腰を抜かした。
クロノは操作されていた時間の記憶が無かった。

エイラはクロノの横で泣き崩れた。







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■光の正体



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D.C2300年はクロノ達が最初に見た世界に戻っていた。ラヴォスにより滅び、人が存在しない。

クロノはエイラを元の時代に戻し、未来の世界を探索していた。死に場所を求める様に彷徨い続けた。
「クロノ!」
どこかでマールとルッカの声が聞こえた様な気がした。振り返ると、ロボットが一体追いかけくる。レースロボットだろうか。

「もしやそなたはクロノか!?」

機械音声の主はクロノを知っていた。

「ワシはガッシュという者。こんな姿をしているが、古代ジールにいた者じゃ。お前さん、ボッシュとハッシュを知っておるじゃろ? ワシはその兄じゃ。」

「何から説明したらいいか…

「そなたがこの時代に来た頃、誰かが時越えしてきた事にワシは直ぐに気付いた。ワシを誰かが迎えに来てくれたと。そう思い追いかけたんじゃが、お前さんらは既にゲートを越えて向こうの世界に行ってしもうた。直ぐに追いかけ様とも思ったんじゃんが、お主らデータベースノアにアクセスしておったじゃろ? そこに残された無限エネルギーのアイデアを見つけてワシはそれどころじゃのうなった。」

「ワシは興奮した。これでタイムマシンは完成すると。」

「タイムマシンを完成させ、元の時代に帰る事に成功はしたんじゃが、ラヴォスの暴走を止める事はできんかった。しかしお主らが現れて人々を助ける様に誘導してくれ、ラヴォスからの被害を抑えようとしているのを見たんじゃ。
生きている時代の異なるお主らがラヴォスの被害を受けて死んでしまう。。こんな馬鹿げた話があってたまるものか。」

「ワシのタイムマシンを使って仲間を助けにいけ。」

「え? 過去を変える事はできんじゃと? 変えようとすると時の矛盾に巻き込まれて消えそうになるじゃと?」

「なるほど。そなたも同じ様な現象に…

「だがやるだけやってみれば良かろう?」  

「何? 時の卵クロノトリガーなら可能じゃと? 

「ハッシュが昔、その様なものを研究しとったのう…。たしか時を止めてその隙に死ぬ寸前の人間をそっくりな人形とすり替えると歴史に影響を与ないとかなんとか

「というか、なぜ、お主は時の卵の事を知っておるのじゃ? ハッシュは最果てでボケとったはず。

「はぁ? ラヴォスが倒されて平和な未来に行ってきた? しかも宇宙船に乗り込み、遊園地で遊んでいたじゃと?」





「そなたの申す事が本当なら、その世界は消えて無くなった訳ではなく、別の世界線パラレルワールドとして存在しているということになるのかの…」

「にしてもお主、なぜ、その様な現象に巻きこまれたのじゃ? 何か心当たりはないのか?」




ラヴォスが世界を破壊している時間の記憶が消失しているじゃと?」

ガッシュはクロノをタイムマシンのある場所に案内した。

「どのあたりの記憶が曖昧なのか案内してくれるか?」

クロノとガッシュはタイムマシン(シルバード)に乗り、過去へ飛んだ。

同時間軸にクロノが二人存在している。過去に強い影響を与える存在のクロノとタイムマシンは光輝くと共に、その時代の人から視認もされず、こちらからも干渉もできない様に幽霊の様な存在になっていた。ガッシュも同様に幽霊の様な存在になっていた。

ガッシュは魔具を取り出し、過去のクロノの脳内をスキャンし拡大した。

「な、なんじゃこれは!」

脳神経パターンが、ラヴォスとの戦いの前後で大きく変化している事に気付いたガッシュ

ガッシュは注意深くその変化の瞬間を探した。
時間にして約12秒間。その間にクロノは別人とも言える程にシナプスの配列が変化していた。

「こ、これはワシが未来で作った試作機タイムマシン(精神ダイブシステム)が脳に与える作用に似ている様な…」

「この様な物が作れる者がワシ以外におるのか?」

「いや、居るわけない。」

「お主の見てきた未来では他に気になる事はなかったか?」

クロノは説明した。
人は皆、宇宙に旅立ち、光の謎を追っている。ラヴォスが時の卵を用意してくれ、死んだ人間を過去から救ってくれた。自身は赤髪一族の末裔で宇宙人だった事を話した。


「お前さんが、宇宙人!?? しかもラヴォスの中身が人を助けるじゃと?」

予想斜めな答えにガッシュはしばらく考えた。

「これはあくまでも推論じゃが、何者かがワシと似たような精神ダイブ機械、かなり高機能で誰の過去の脳内でも書き換えるものを持っていて、お主の脳内を書き換えた。その目的は判らぬが、地球文明の発展とは何ら利害も関係もないだろう文明の異星人が関与した可能じゃ。過去の歴史を操作しても、光の抵抗を受けない程の技術力を持っていたか、あるいは地球の歴史に関係ない者の仕業故に光の抵抗を受け付けないとか…」

「地球の時間の流れ、地球の外の時間の流れ、其々時の質が異なるのなら、地球の外からタイムマシンを起動すればまた違う現象が起こりうるか…? だとしても…」

ガッシュは混乱してきた。もう一度クロノの脳内を調べた。
スキャンレベルを拡大し、電子よりも小さなスケールレベルに拡大する。

「な、なんじゃこれは…」

クロノの脳内に電子よりも小さな機械が埋め込まれていた。。

「こ、これは脳神経の配列を書き換える為の魔具じゃ…。ジール王国で研究が中止されたはずの物がなぜ、お主の頭の中に…」

「じゃが、この魔具は実用性がなくてのう。脳のシナプスパターンは複雑すぎたんじゃ。生物をコントロールするにしても、それをどうすれば良いのか判らず仕舞いじゃった。」




ガッシュは念の為にクロノ以外の脳内も調べた。
ルッカ、マール、カエル、エイラ。其々の脳内にも同じ魔具が入れられていた。

「お主、ジール王国には何日滞在したのじゃ?」


クロノ達が滞在した時間は10日だった。

ガッシュは10日間のクロノ達の行動を監視した。クロノ達、其々が就寝している間に、何者かが魔具を脳内に入れた。

時間を少しずつ戻し、誰が犯人なのか突き止め様とするガッシュ

犯人は透明マントを羽織っていた。
犯人の正体はダルトンだった。

ガッシュダルトンの行動を追いかけた。
ダルトンルッカのリュックからゲートホルダーを盗んだ後、クロノ達に混じって人々を避難させる行動をし、ゲートを抜け原始時代へ向かった。空を飛び、山を越え、もう一つのゲートから時の最果てに行き、色んな時代を観光した後、ラヴォスが古代を破壊した後に戻ってきた。人々からの同情を得る為に、服をボロボロにして。

崩壊したシェルターに向かい。瀕死の人々に回復薬や回復魔法をかけていく。
ダルトンは人々を救済した後、演説をした。

ダルトン「皆さん、ラヴォスは覚醒し、ジール王陛下は海底神殿と共に異形な存在になられました。こうなったのも全ては私が不甲斐ないからです。危険性をもっと王陛下に進言していればこんな事には…

ダルトンは目を濡らして同情を得ようとした。

ダルトンラヴォス神により、天空都市は破壊されてしまいましたが、我々にはまだ太陽石があります。」

クロノは疑問した。太陽石とは何だろうか。

ガッシュ「太陽石というのは天空大陸が空に浮かぶ為のエネルギー装置のことじゃ。」

ガッシュ「元々は天空大陸は太陽石というものを使っておった。効率の良いラヴォスエネルギーを使う様になって非常時用のエネルギーとして神殿に祀られとった。」


太陽石のエネルギーを使えば以前の様な暮らしができるのだとダルトンは言った。

ガッシュ「確かに可能じゃろうな…。今の少ない人口を支えるのなら…

ダルトンの指揮の元、小さな天空都市の建設が始まった。

ガッシュは考えていた。脳内を書き換えるインプラント魔具をダルトンがクロノ達に取り付けることの目的を。
実用性のないアイテムを無意もなく取り付けるはずはないだろうが、脳内を都合良く操る技術はない。

そもそも、なぜダルトンはクロノ達にその様な事をしたのか。ダルトンの過去の行動を調べた。

調査の結果、ダルトン自身にもクロノ達と同様に脳内にインプラントが埋め込まれていた。
ダルトンだけではない。古代人の約半数、ガッシュの脳内にさえ、インプラントが埋め込まれていた。

人々にインプラントが埋め込まれた時期はインプラントの研究が始まった直後からだった。
動物実験にてインプラントが埋め込まれたタイミングから始まる。その動物は人間の様な知性を持つと同時に人目を避ける様に人間にインプラントを埋め込んだ。埋め込まれた人間は同様に誰かにインプラントを埋め込む様に行動した。

ガッシュは推論を述べた。
最終的に何者かがダルトンを操り、クロノ達にインプラントを埋め込んだ。そして未来2300年からクロノのインプラントに電波を飛ばして歴史を書き換え変えさせた。

クロノは落胆した。原因はどうでもいいから平和な時代に戻りたかった…




ーー

クロノは自暴自棄になり、逮捕覚悟で現代に戻った。

親はどうしているだろうか。テロリストの罪で逮捕された息子を憂いて早まった行動をしているかもしれない。
世間からのかぜあたりを考えると親も一緒に中世へと連れて逃げた方が良かったかもしれない。魔族が蔓延る世界とはいえ、現代にも魔族はいて人間に成りすまし人を食料としている。現代が安全とはいえない。

クロノは家へと帰った。

ジナは涙を流して出迎えた。

脱獄してから凡そ一ヶ月。千年祭も終盤に差し掛かっていた。
全てはテレポート装置から始まった。
ルッカもマールも死んでしまった。あんな装置さえなければこんな目に合わなかった。

ジナは塞ぎ込んでいるクロノから話を聞いた。

「あまり自分を攻めないで。きっと何か良い方法がある筈よ」

「私をタイムマシンに乗せて頂戴!」

ジナには思う所があった。過去を変える事ができないなら、過去を変える事ができる技術が生み出された未来へと行けばいい。
2300年の平和な世界にはラヴォスが時の卵で死んだ人間を生き返えらせた。地球の未来に、そんなラヴォスがいないとしても、宇宙のどこかにはいるはず。

「過去を変えられないという話、どうも嘘くさいわ。現に魔族は400年前の時代へ行き、未来を都合良く変えたのでしょう? きっと歴史を変える方法があるはずよ」


クロノとジナは未来1万年へと向かった。

地球歴1万年。人間は存在しないが緑豊かな世界になっていた。動植物が繁栄し、その手入れをするロボ達。
ロボに組み込まれたAIは一万年の間に進化を遂げていた。

ロボはクロノ達に教えた
この世界を真の意味で支配しているのは、目に見えないもの。魂、精霊の様な存在だと。

クロノはデナドロ山で出会ったカラス剣士の事を思い出した。次男のカラス魔族は山に精霊がいると言っていた。死ぬかもしれないので近付くなと。

クロノはデナドロ山に向かった。

山頂にいる精霊は顔や目がなく、ただ黒いシルエットをしている。クロノが近付くと、その黒は声を荒げた。

黒いシルエットはクロノの心の弱さに攻撃を加える。
クロノは憑依され、苦悶し、喉を掻きむしり始めた。

精霊がクロノに見せたものは未来でこれから無念の死を遂げる者と過去に無念の死を遂げた者達の気持ち、絶望だった。
ある種の衝動的な自殺思念に囚われたクロノは刀を抜き、自らに突き刺そうとする。

間一髪、カラス魔族がクロノの顔面に蹴りを入れ、正気に返る。

次男「な、なんでここにいるんだよ! 行くなと言ったのに!」

カラスの声は届いていなかった。

歴史を変えるヒントを精霊に触れた事で気付いたクロノ。
精霊がクロノに送ったメッセージは
エイラを殺すことだった。

エイラを殺せば未来に繋がる子孫は存在しない。自身を含めて子孫の絶望は無かった事にできる。

エイラが死ねばクロノは存在せずエイラを殺せない。通常、光の抵抗を受けて、エイラを殺す事はできない。
だが今のクロノはエイラを殺すことができる。
黒い精霊に触れた事で闇の力を得たクロノは、光の力を相殺してエイラを殺すことができる。

闇に囚われたクロノを元に戻す方法はない。

次男「山頂上にいる精霊の所には行くなと言ったのに…

長男「惜しい人間を失ったな…。もう以前の様に刀を相まみえる事もないのか…

次男「殺してあげた方がいいよね…

長男「…。ここで死なせるのが武士の情け…。

ジナ「まって。

ガッシュ「待つんじゃ」

クロノが死ぬ事で不利益を被る魂。クロノがエイラを殺せない場合に生まれる6500万年分の救われない魂。その魂がクロノに味方をした。クロノに闇のエネルギーが貯まり、カラス達の攻撃が全く効かなくなる。

クロノを邪魔する者はいない。クロノはエイラを殺そうとする。



だがエイラが存在しないと、クロノは生まれて来れない。クロノが存在しない世界になれば、この先クロノがタイムトラベルしてラヴォスから古代人を守れる可能性は完全に0になる。
ラヴォスに滅ぼされた古代人の無念の魂がクロノから闇のエネルギーを取り除こうとしていた。


古代人の魂2000万による未来への希望と、エイラから始まる原始6500万年分の無念なる魂がせめぎ合う。











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■中世602年



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古代人の魂2000万による未来への希望と、
エイラから始まる原始6500万年分の無念の魂がせめぎ合う。

無念の魂による絶望の闇はどこまでも深く、光の力は太刀打ちできなかった。

ルッカとマールの魂が現れてクロノを止めようとするも、クロノは闇に飲み込まれた。

空を飛んだクロノ。テナドロ山から高速で飛び立つとタイムゲートを越えて、エイラの元へ向かった。
クロノがエイラを殺そうとしたとき、光がエイラを包み込んだ。

光が盾となりエイラを守った。
だが絶望の闇に対して希望の光は勝ち目がなく、防戦一方になる。

光にはエイラを守りきれる力は無かった。
光にとってエイラを生かす方法は一つしかなかった。

ジナを消す事。
闇のパワーを持つクロノは強く、光はクロノを消す事はできない。
光は止む終えずジナを消滅させる事でクロノの存在を消滅させた。

さっきまでエイラを殺そうとしていたクロノが突如消失する。

そんな光景がエイラに観測できるなら、新たな世界線が生み出された事になるだろうが、この場合、エイラからクロノの記憶は消えるだけでは済まない。クロノの存在自体が無いものとして歴史が修正される。

ルッカはクロノとは出会わず、マールもクロノと出会わない。千年祭のタイムゲートに飲み込まれたマールも助からない。

全てが無かった事になり、クロノ達の冒険も無かった事になる。 

ルッカの話〜

ルッカはタイムゲートがテレポッドにより偶発的に生み出されたものではない事を証明する為、元々時空の歪がその場所にあったことを証明しようとして、タイムゲートを探すドローンを開発して、未来へと辿り着く。

そこでラヴォスの存在を知り、その情報を世界に発表する。世界は1999年までにラヴォスから身を守る為のシェルター及びラヴォス倒す為の兵器を開発すると共に、ラヴォスが倒せない事を想定し、2300年の世界を復興しそこに避難移住する計画を同時に進行した。

光はクロノが存在していた事を記憶していないが、あたかもクロノの無念を汲み取るかの様に力が使われた。

たとえばルッカがタイムマシン(精神ダイブシステム)を使ってリーネを救出、マールを救出しようと歴史改変を試みるも光は邪魔せずに黙認にした。

リーネが救出され、マールが助かった二年後、中世602年にて、魔族合同連合、北南西東の魔族が同時にガルディアに進行した。

未来のデータベースノアによると西側魔族は戦場の混乱に乗じて、兵士や王族に成りすまして王宮に侵入し、内側から攻める戦略である。 西側魔族は王族のそばで兵士に成りすまし、大臣や政務官を脅迫する。「いつでも王族をコロス用意ができているから今後は従え」と。

魔族連合はその作戦が成功するものと思い込みガルディアに進行してくるが、西側魔族は裏切り、北南東の魔族の能力と勢力配置をリークしてガルディアに勝ちをもたらす予定である。

ルッカ「つまり、私たちは西魔族が東南北魔族の情報をリークするまで待った後、行動すればいいの。私達は頃合いを見て、王族のそばにいる兵士に片っ端から喧嘩をふっかける。私達以外にも協力してくれる人が必要よ。

 

マール「協力って誰が?

 

ルッカ「誰でもいいの。酒場にいる人でもいいし、宿屋の人でもいい。

 

マール「私達の話、ちゃんと聞いてくれるかな。」

 
ルッカ「大丈夫よ。貴方はこの国ではリーネ王女そっくりなんだから。リーネのふりして頼めば皆、話を信用してくれるよ。

 
マール「本当に大丈夫かな…


ルッカ「カエルはマールの護衛ね。騎士がいてこそ、マールの信用性があがるから。」


マール「ルッカはどうするの?


ルッカ「私はロボの戦闘データを収集する為に前線で戦う!」


マール「駄目だよそんなの!


ルッカ「うそうそ、本当は王宮に入ってロボに出入りする人を監視して貰うわ。人間に擬態化できるといっても、そっくりな顔や背丈を完璧にコピーできないはず。だからロボには兵士達の顔や背丈を完璧に覚えて貰って、人間成りすましてる魔族かどうかを見極めて貰う。」

 
マール「なるほど。完璧だね。


ルッカ「後は私達が二年かけて習得した反作用ボムをお見舞いしてやるだけだわ。

マール「回復魔法なら任せて。」


ルッカ「そうね。いざって時は頼むわ!」

ボッシュ「こら! ワシを忘れるでない。回復担当はワシしかおらんじゃろが。

エイラ「エイラの鉄拳、みんなやっつける!」


こうしてルッカ主導による対西側魔族のガルディア防衛作戦がスタートした。









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*1:o(´∀`)o

二次創作 『クロノブレイク』クロノトリガー

ネットに出回っている創作動画『クロノブレイク』

https://youtu.be/w3SU5dDBwCI

からインスピレーションを得て書いたもの。

■ジャキのタイムトラベル

時の最果てに滞在している間はどの時代からもクロノ達は消失している。世界はクロノ無しで時が進んでいる。
たとえば古代でクロノが殺された後、最果てに滞在している間は、母ジナの人生はクロノ無しで生涯を終える。クロノを助けに未来の死の山に行くなら、その間にジナは哀れな人生を送ったということになる。

他にも問題がある。
クロノ達が古代でラヴォスを倒したなら、983年に生まれるクロノはラヴォスに出会わない人生を歩む事になる。、だが古代にてクロノ達がジャキに出会った歴史は事実として成立している。もしこの世界線にて中世時代のジャキが古代BC12000のラヴォスが生きていた時代にタイムスリップしたとするなら、クロノ達がラヴォスと戦っている姿を観測できるだろう。この物語はそんな物語。

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 ジャキは小石を投げた。
 空間の歪に石が吸い込まれる。歪が消えてしばらくして、またそこに歪が現れて先ほど投げ入れた石が帰ってくれば石は未来へと飛んだ事になるだろう。

中世時代、少年魔王ジャキは暗黒系魔法(ダークマター)の応用実験をしていた。小さいながら時空を歪ませる作用があり、この技術からタイムゲートを生み出せないかと思案していた。

「だめだ、できない…」

ジャキの仮説では擬似的なタイムゲートなら作れた。

空間に速度変化(ヘイストやスロウ)をかけるとその空間だけ時間の流れが変化する。

空間をスロウ化させると、その空間の時の流れが遅くなり、そと側の時間と比べて置き去りになる。つまり、その空間から外の世界は未来になっている。

理論上、過去に戻ることはできない技術ではあるものの、やり方次第で未来に飛ぶ事はできる。

(時を遅くしたり早回しできる魔法はあるのに、なぜ巻き戻せる魔法が存在しないのだろうか…)

ジャキにはなんとなく答えが見えていた。
今の自分を一秒前にタイムトラベルさせたとしたら、その世界にはもう一人の自分がいてその時自分と重なり合う。物理的にいえば突然衝突し合う格好になり、爆発したりして死ぬかもしれない。

時を進めるのと戻す行為は構造的に反作用関係にあるから、どちらか一方ができるなら反対もできるはず。ジャキはそう考えていた。

時を進められるのなら戻せるはず。だからと、やろうとしても全く魔法が発動する気配はない。


時を戻す行為について、たった一秒だけ戻せるとしても本能的に身体が危険だと察知しているのかもしれない。人間の身では防衛本能的に過去に行く事は不可能なのかもしれない。

ジャキは考えた。一秒前に戻るとしてその時の自分と重なり合う危険性がないこと。つまり『一秒前の自分と重なり合わない安全』が保証されているのであれば、時戻しの魔法を観測できるかもしれない。

走ったり移動したりの最中に一秒前の過去に飛ぶなら、もう一人の自分と重なり合う危険性は大きく下がり、時戻しの魔法を発動させられるかもしれない。

練習の結果、ちょっとしたテレポートの様な現象を生み出す事はできたが、そこからが難問だった。
数秒の時戻しならともかく、何年も過去へ行くとなると大量の魔力が必要になる。魔法陣から魔力の供給を得るとしても魔法陣を含めて高速に移動しながらでないと成立しない。だが魔法陣そのものを空間や地面に固着させた状態で高速移動させるにも大量の魔力が必要であり、実行は現実的ではなかった。

できれば過去に戻てやり直したいジャキだが、その方法は見当もつかなかった。

(もし過去に戻る技術があるのなら、未来から自分が戻ってきてそのやり方を教えてくれるのではないか?)

ジャキは過去へ行って姉を探すのは諦め、未来へ行く方向から姉を探せないかと考えた。
姉も自身と同じ様にタイムゲートに飲み込まれ、未来に飛ばされているかもしれない。

(姉はラヴォスの生み出した時空の歪みに飲み込まれて死んだのか、それとも自分の様に別時代に飛ばされたのか、もし生きているなら助けたい…もし死んでいるなら…)

ジャキは特大の魔法陣を描いた。
大きな魔力が継続的に必要であること。誰にも邪魔されず、物理的な干渉も受けず、視認すらされない様、術式を施した。

ジャキの発動した擬似的タイムゲートにより、ジャキの周りの時が急速に進む。
日が登り日が沈みを一秒単位で繰り返される。

ジャキはどのタイミングでゲートから出れば良いか判らなかった。

サラが近くにいるなら魔力を感知できるだろう。サラが自身を探してるなら感知して貰えるだろう。ジャキはそう思い辛抱強く待った。

何年、何十年、、景色が大きく変わっていく。
長い時の中で魔王城は朽ち果てる。人間達が来て破壊していき、森の大半は伐採され、海面は上昇しジャキの足元の陸地は殆どが海に沈んだ。

ジャキが施した魔法陣は空間に固着されて描かれている。足場が無くなったとしても問題がない。

数百年経ち、ある時から人々は何もない海辺に船の停留所を作り始めた。
ただの停留所ではなく、近隣の大陸との交易を効率的にする為の取引所の様なものだろうか。
ただそれだけでもなく、鉄の生き物が出入りを始めた。
ジャキにはその鉄の生物に見覚えがあった。

ラヴォスに飛ばされる前に出会ったクロノ達、そのメンバーの中にロボがいた。
クロノの存在はジャキにとって特別に記憶に残っていた。ジャキにとってクロノ達の風貌は不可解かつ異質な存在。どこから来たのかも判らない。疑問せずにはいられない存在だった。

人の運命、特に死期がある程度わかるジャキだった。
古代にてクロノの死期は感じとれても、サラの死期は感じ取れなかった。ジャキにとってこのことが唯一サラがとこかで生きていると信じる材料になっていた。

ジャキは過去を懐かしむでもなく、ただ未来を見据えていた。
そしてこの時に降りる。
鉄の生物の存在。単純にこの時代に何か手がかりがある気がした。
この場所がサラへと繋がらない時代だとしても、クロノへの疑問が一つでも解ければ、何らかの道が見つかるかもしれない。

ジャキは1050年、千年祭から50年後の未来へと来ていた。






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ー大まかなシナリオー

ジャキはクロノが生まれなかった世界、1050年に来ていた。ジャキが古代にてクロノ達に出会った歴史は成立しながら、未来ではクロノが存在していない状態が成立するβ世界線にジャキは関わる事になる。


〜まえがき〜

本文はプラス一万文字くらいあったのですがそのデータを無くしてしまい、殆どプロットのみの投稿になります。書く気力を無くしたのです。


ー本文ー

ジャキが到着した場所はルッカが作り出した海上工業都市である。海産物を缶詰にしたり冷凍加工して世界中に出荷するのを主産業として、都市を維持する為のインフラ製造や掃除ロボット製造、その他衣食住全般をフォローしている。

海上都市は地震や災害に対しシェルターにもなる設計で、将来的には戦争を想定して都市まるごとスーパーロボに変形して戦ったり、走って逃げる都市計画を構想している。

ジャキは缶詰め工場内部の受付ポイントから出現する。掃除ロボに興味を惹かれて弄っていると、工場長から社会見学者だと勘違いされる。

ジャキは鉄の生き物(ロボット)について工場長に問うが、知識格差が有りすぎて話が噛み合わない。工場長はロボットを作ったのがルッカだと言うと、ルッカの写真、若かりし頃を見せた。

ジール王国にてルッカの顔に見覚えのあったジャキはルッカに会わせる様に催促するが、ルッカは超有名人であり一般人が簡単に会うことはできないという。

しかし工場長はルッカの親戚であり、コネで会わせる事ができるという。だがジャキの無礼な態度を問題とし、大人の説教をして会わせなかった。

ジャキは魔法陣に隠していた鎌で脅すと、工場長は施設内のセキュリティシステムを作動させた。
ロボット達が一斉にジャキを取り囲むと網を飛ばした。ジャキは突然の事で反応できず動きを封じられた。
ジャキは電気や火炎、冷を込めて網を壊そうとするが、網は丈夫で壊れない。

工場長はジャキの能力を見て、他にも凶器を隠し持っていると思い、セキュリティレベルを上げた。
施設内のジャッターが降りて、催眠ガスでジャキは眠らされそうになる。
ジャキはバリアを張り、何事もなくやり過ごした。

警備隊が到着して、ジャキを取り囲むと、ジャキは電気ショックの魔法を浴びせて制圧する。

警備隊が倒れたところに、ルッカ特性の戦闘ロボが到着する。
ロボットが倒されると、ジャキは工場長の元へ行き、もう一度脅しにかける。

ルッカに連絡を取り次ぎジャキとルッカは対面した。

ジャキは過去のジール王国で出会った話をするがこの世界線ルッカジールを知らない。
ルッカは魔法もクロノもラヴォスも知らない。マールをタイムスリップして助けた事はあったが、未来や原始時代にも行く事はなかった。

共通に知っているのはタイムゲートの存在で、そこから話のすり合わせがはじまる。

ジャキが古代の時代に帰りたいのを理解したルッカはタイムマシンの研究を始めた。
ジャキが使う魔法の仕組みと科学を融合させれば可能性があると思い、ルッカはタイムマシンの研究を始めた。

飛行機タイプのマシンが完成し、ルッカとジャキは古代にタイムトラベルするが、その瞬間、時空の裂け目が開いて攻撃を受ける。

ルッカは咄嗟に元の時代に帰るが、元の時代ではなく、時の最果てへ行き着いた。時の最果ては時の迷い人が来る場所で、タイムマシンが故障したまま時超えしたのが原因だった。

時の最果てにはハッシュはいなかった。
クロノ達の世界線よりも50年進んだ時間軸の最果てであり、ハッシュは寿命で亡くなっている。スペッキオはハッシュ仕事を継いで時の迷い人を案内していた。

最果てのゲートは中世650年、現代1050年、未来2350年へと繋がっている。

スペッキオによると未来の世界は1999年にラヴォスにより破壊されていたが、ハッシュが亡くなった後に突如として世界が変化したという。

未来2350年に行くと、クロノ達の世界線とは違い、ラヴォスに滅ぼされていなかった。人々は皆カプセルの様なものに入り眠っていた。動いている者はロボットだけだった。
ロボット達はルッカ達を歓迎した。500年ぶりに生きた人間と出会ったという。

ロボ達は説明した。1800年に突如として全人類が意識を失いそのまま目覚めなくなったという。ロボ達はいつ人間達が目覚めても良いように都市を整備し、人々を低温保存し、身の回りの世話等をしていた。同時に人々がなぜ目覚めなくなったのか原因を調査していたという。

人間が意識を失った原因はラヴォスにあると感じたジャキ。2350年にはラヴォスの気配がなかったからだ。

ロボット達は時代を越えてきたジャキ達に望みを託し、自分たちも協力したいという。

未来のロボを仲間に加え、ジャキ達は真相究明の為に最果てに戻った。
1800年に行くには最果てから1050年のリーネ広場へ行き、そこからジャキによる擬似的タイムトラベルが必要になる。

ルッカはタイムマシンの整備に、ロボはその手伝いをし、ジャキは一人で擬似的タイムトラベルをした。

1200年までタイムトラベルしたとき、ラヴォスの気配が地中から外に這い出ている事に気付いたジャキ。

ジャキは空を飛び、気配の行方を追いかけると、ガルディア国首都、ガルディア王39世の邸宅にたどり着く。

セキュリティを突破して王に対面すると、王からラヴォスの気配がした。
ラヴォスが王に成りすましているのだと察知したジャキ。
ジャキに気付いたラヴォスはタイムゲートを作り、ジャキを永遠の時の狭間に追いやろうとしたが、スペッキオのチカラでジャキは時の最果てに飛ばされた。

ジャキはスペッキオの頭の上に落ちて助かる。

ラヴォスはガルディア王に成りすまして何をするのか。
未来で人々が意識を失うの事に関係があるのか。

ジャキが擬似的トラベルをしている間に、ルッカはタイムマシンの整備を終わっていた。
タイムマシンで1800年に行くと、そこにはジール王国の天空大陸を思わせる様な都市があった。
ジールとは違い、魔法では浮いていない。機械の力で浮いていた。

掘削機械が世界の各地にあり、それがラヴォス深層にまで掘られている。。数十のラヴォスがバイオ液に浸され、機械で繋がれている。ラヴォス達は天空都市の動力になる為にエネルギー奪われていた。
気配の性質が異なるのか、ジャキはそれらのラヴォスから気配を感じる事ができなかった。

案内センターによると天空大陸はいくつも層になっていて、中層には科学者の集まる都市がある。タイムマシンを普及した博士がいるらしくルッカはそこを尋ねた。

受付けにて、あぽナシでは通して貰えないものの、担当者はタイムマシンの始祖であるルッカだと気付き博士に取り次いでくれる。
博士はルッカ達を歓迎した。

ルッカはタイムマシンで過去に行こうとして攻撃された事を話した。。
博士によると過去を変える行為は、それがどれだけ小さな事象であったとして遠い未来へ大きな影響を与える。それゆえ、過去に行く事を心良く思わない者が多くいて妨害してくるそう。

過去に行けば無差別的に攻撃を受けるだろうが、ルッカが死ねば未来でタイムマシンが作られなくて、未来が大きく変わってしまいかねない。博士は時代を代表してルッカに謝罪した。

未来では全ての人間が意識を喪失しているのだと話すと、そんな未来は存在しないという。
確かめるとジャキ達が見てきた未来は既に大きく変わり存在せず、この天空大陸の平和な世界が維持されていた。

天空大陸の最上層、成層圏からラヴォスの気配を感じたジャキ。飛んで向かおとするが酸素の濃度の問題で空を飛んではいけない。

最上層に行くには、専用の飛行機で行くかワープシステムを使うしかなかった。ワープシステムの周りにはセキュリティロボが配備されていて、専用の飛行機の周りにもセキュリティロボが配備されていて、たどりつけない。

タイムマシンでセキュリティが配備される前の時代に向かうも、タイムマシンが追いかけて来てルッカ達を攻撃してくる。

時の最果てに逃れ、ジャキはもう一度1050年から擬似的タイムトラベルをする。今度はルッカとロボも連れて行く。

1200年にはもう一人のジャキがいて、ガルディア王に成りすましているラヴォスと対峙していた。そのジャキがタイムゲートに飲み込まれた後、ジャキとルッカラヴォスの前に現れた。


ラヴォスについて〜
ラヴォスは983年、クロノを身ごもった母の気配を感じると、クロノに殺される未来を予知してラヴォスの分身スパイを送り込み、ジナもろとも殺害した。

未来予知で死を知ったラヴォスはクロノを破壊しただけでは安心できなかった。クロノに代わる第二第三のクロノが人間世界から現れるかもしれないと恐怖した。

人間を抹殺しようと思うものの、何人殺そうが世界のどこか、宇宙のどこかに人間はいる。殺しても不安は一生解消されないと思ったラヴォスは、1200年に地表に這い出てきた。人間を侮れないと思っていたラヴォスは人間に敵意を向けられたくなかった。人間に成りすまして生きる為にガルディア王に寄生した。

ラヴォス自身も知らなかったが、他生物に長きにわたり寄生すると、その生物の思考に染まる性質を持っていた。人間に寄生し続けた事で、人間特有の孤独や寂しさを知り、生きる事がままならなくなっていた。

『人間よりも強いのに人間に殺される不安が解消されない』

不安を与える人間の存在に次第に人間への怨みを募らせていったラヴォスは人間として有りたい自分とラヴォスとして有りたい自分との境目で自我を保てなくなっていった。

ラヴォスラヴォスとして、また人間として生きたかった。全ての人間として生きたかった。

ラヴォスは人間と一つになり究極の生命体になろうと決意した。
全ての人間の意識を束て自分の精神と同化させる。その為の装置を作る必要があった。ガルディアの研究者達はラヴォスの意は汲み取らなかったが、ラヴォスの意に従う振りをした。

研究者達は【全ての人間の意識が一つになり融合する】事については、ある種の理想郷へ繋がるものと信じた。

研究者達は地球上の全ての人から意識を抜き取り束ねる機械を極秘に開発し、1800年に実行した。ジャキ達は未来2300年にてその成れの果てを見てきた。

だがジャキがタイムスリップしてラヴォスに会う事で状況が変わった。

ラヴォスの正体を知る者の存在ジャキ。ラヴォスが人間として生きる為には正体を知るジャキの存在が邪魔になると思い、咄嗟にタイムゲート作り追いやった。

だがラヴォスには疑念が残った。ジャキの存在は一体なんなのか。突然の事で思わず聞きそびれてしまったラヴォスはタイムゲートに乗り込みジャキの後を追った。
ラヴォスはタイムゲートの出口までは作る事はできない。時の狭間に追いやる力しかなかった。
ジャキは時の狭間の何処かに彷徨っているものだと思っていた。しかしジャキはスペッキオに救助され探しても見つからない。

1200年、ラヴォスは人間として生きる事に加え、、ジャキに対する疑念と共に生きる事になる。
ラヴォスはジャキが何処かの時代に偶発的にたどり着いかもしれないと思い、タイムマシンを開発させた。ガルディアの研究部は、ルッカの残した遺産の中に開発のヒントを見つけた。
ラヴォスは過去と未来を調べ、ジャキの気配が古代ジールと中世に存在している事に気付いた。
ジャキが自身と縁深い間柄なのだと気付くと共に、魔法技術を使いタイムトラベルしてきたのだと知る。

ラヴォスにも魔力はあったが、ラヴォスはその力を深くは知らなかった。
自身に備わる魔力についてガルディアの研究者と共に解明し、魔学と科学を融合してジール王国の様な天空大陸を作り出した。

【人間の意識を統一する】その様な野望が生まれる事のない世界が生み出されていた。
変わりに【今の超文明を失いたくない。誰かがタイムトラベルして歴史を変えたら困る】という信念の元、タイムマシンで過去の時代へ行こうするタイムトラベラーを阻止する様になる。
ジャキが古代ジールに関わりを持ち歴史を変えようとするのは判っていた。
ラヴォスの組織はジャキにスパイロボを取り付けて動きを監視していた。

ジャキとルッカはガルディア王に寄生したばかりのラヴォスに2度目の対面をしようとしていた。

ラヴォスはどうするべきか悩んだ。ややこしい事になる前に、二人を処分するべきかと考えた。
未来のラヴォスは人の心を持ち慈悲深くもなっていた。
ジャキをキッカケにして今の自分がある様なものであり、殺す事はもう考えられなかった。

ラヴォスルッカとジャキが1200年のラヴォスに会う直前、自分以外の空間を止めた。スロウを重ねかげして、ルッカとジャキをタイムマシンに載せ、天空大陸へと運んだ。

ラヴォスはジャキに敵意が無い事を伝えると共に、サラを助けてくれるという。
サラがラヴォスの災害に巻きこまれる前に未来の天空大陸に連れてきてくれるという。


〜BC12000〜

サラはラヴォスを覚醒させない様に魔力を注ぎこみ、制御しようとしていた。
そこへ幼年時代のジャキが現れラヴォスの生み出したタイムゲートに飲み込まれる。
ジャキが飲み込まれたショックでサラの集中力が途切れてしまう。ラヴォスはその隙に覚醒した。

クロノ達は覚醒したラヴォスと戦うも
ラヴォスの世界を破壊するエネルギーに巻き込まれ倒れてしまう。

クロノは消滅の攻撃を受ける。
時が止まる。
クロノトリガーが使われ世界の時間が止まっている隙に未来からマールが現れてクロノを救出して未来に戻っていく。

ラヴォスは破壊のエネルギーを使い尽くし、再び地殻を掘り地面に潜り込んだ。



サラは倒れているクロノ不在のメンバーにアレイズをかける。

ラヴォスが開けた地殻の穴がら溶岩が湧き出ている。海底神殿の天井からはラヴォスの光で穴が空き、海水が流入している。

ラヴォスは覚醒してしまい、魔神機はラヴォスからエネルギーをもう吸い取れず、海底神殿から地上に通ずる脱出口のテレポートシステムは機能しなかった。

サラは魔力を使い果たしていた。
サラは死を悟った。

サラは残された少ない魔力でクロノ不在のメンバー達を海底神殿からテレポートさせて逃がした。
自身は戻れる力は残っていない。


諦めたかけた頃、β世界線のジャキがタイムマシンで駆けつけた。

『姉様! 早く乗ってください!』




『あ、あなたは!? まさかジャキ!?




『急いでください! ここはもう直ぐ…』

サラが呆然としていると、ジャキはサラを抱えてタイムマシンに乗せる。


その瞬間、溶岩に飲み込まれる海底神殿。


海水と溶岩が混じり合う頃、ジールはラヴォスの力を借りてバリアに守られていた。

ジールの不老不死への執着、思念がラヴォスエネルギーを引き出す事に成功していた。ラヴォスジールの執着の中にラヴォス自身を守ろうとしてくれる優しさを見つけ、共鳴していた。ラヴォスにとって誰にかに守られる感覚は始めてで新鮮だった。

望みどおりに不老不死に必要なエネルギーがジールに貯まる。

ジールは余ったエネルギーをラヴォスを守る為の防衛要塞を作ることにした。
神殿に術式を描き、神殿を浮上させる。

空に浮かびラヴォスを護る黒の夢になる。

ジールは蘇ったクロノとそのメンバーが倒すが、ラヴォスジールを消された事に怒りを覚えた。
クロノ達に戦いを挑むべく、海面からジャンプしてくる。

ラヴォスは戦いの末、倒されて海底神殿と共に海に落ちていくが、クロノ達は、ラヴォスの気配が全く死んでない事に違和感を覚えた。ラヴォスの目から内部に入り、海水が流入しない様にバリアで蓋をした。



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この後ラヴォス本体は倒されるが、この出来事を察知したラヴォスは983年のタイミングでクロノを抹殺した。

クロノは生まれては来れず、古代でジャキには会えない筈だが、その事象に関係なく、ジャキとクロノ達は会う歴史が成立した。過去に戻りサラを救う事もできた。

【クロノ達がラヴォスを倒した世界線a】

ラヴォスがクロノを殺した世界線c】

aとcが同時に成立しつつ、古代の世界でのみaとcの世界線が重なり合う不思議な世界。それがβ世界線である。



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■中世650年



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中世650年


〜あらすじ〜
最果てのゲートから中世650年。魔族は衰退し、人間による魔族狩りが横行していた。

本文

『嘘でしょ伯父さん!』

サイラスが魔王に殺されなかった世界線。グランドリオンと勇者バッジはサイラスの遺産として子孫に受け継がれていた。

「魔族が悪さしてたのは昔の話だ。今はこんな剣、大事に持ってても宝の持ち腐れにしかならないんだよ」

「だからって売らなくってもいいだろう?
サイラスの子孫がカネに困ってるなんて思われたら当家の恥だよ」

「世間体なんて知るかよ! オレは売ると決めたんだ。」

「カネに困ってるならオレが貸すから!」

「うるさい! 相続権はオレにある。部外者が口を出すんじゃない!」


グランドリオンはオークションに出品された。落札したのはどこぞの金持ち親子だった。

親子は魔族狩りを楽しむ為、魔王城跡地の森へと向かった。

ジャキはオークションを見学に来ていた。
グランドリオンから懐かしい気配に誘われる様にそこにいた。

ボッシュは赤い剣(グランドリオン)を錬成する際、自身の魔力を注ぎ込んでいた。そのボッシュの魔力の気配を感じてジャキはオークション会場で立ち止まっていた。

ジャキはグランドリオンの行方に誘われる様に親子の後を追いかけた。

親子は魔物が潜むかもしれない森にずかずかと入り込んでいく。グランドリオンさえあれば怖い物はないと思っているのだろう。

ジャキは森の中の気配を探した。
魔物が1体近くに潜んでいる。
だが魔物は親子を襲うつもりはない様で、隠れてやり過ごそうとしている。

親子に黒い風が漂うなら助けるのもやむ無しと思っていたジャキ。

親子が諦めて帰った後、魔物はゆっくりとジャキの前に姿を表した。

どことなくビネガーに似た風貌の女の子だった。

「あなた…人間に似ているけど人間じゃないわよね…。魔力の気配あるし…」

ビネガーに気配が似ている気がした。ビネガーの子孫なのだろうか?

「え? 貴方、おじいちゃんの事知っているの?」


「昔、世話になった…。」


ジャキにとってビネガーはこの世界で最初に出会った魔族だった。
ラヴォスゲートに飛ばされて直ぐ、人間に間違われ、目の前にいたビネガー率いる魔族達に襲われた。

魔法を使って応戦した事で直ぐに人間ではない事が伝わり、争いは避けられたが、ビネガーは魔法の存在に強く興味を示し、ジャキを魔王城へと招いた。

ビネガーはその頃の魔王でマヨネーやソイソーとはまだ手を組んでいなかった。

低級魔族のみを支配下に置いていたビネガーは人間世界に攻め込む為の人材を集めている最中だった。

ビネガーはジャキのチカラを研究すると共に、将来魔族の役に立つと思い魔王城に住まわせた。

ビネガーによるジャキへの待遇は悪くなく、ジャキは生活の雑務の殆ど城の使用人に任せて、サラを探し回った。

人間の村へサラを探しに行くと、ジャキの耳のカタチが尖っていていたのが原因で魔族に間違えられ、人間に襲われる経験をしたジャキ。
ビネガーはそんなジャキに「お前の姉上も人間界に居場所はないだろう」そう言って、姉探しを諦める様に促した。

ジャキもビネガーの言葉に一理あると思った。姉がこの世界にいるとすれば人間界ではなく、自分の様に魔族世界で保護されているだろう。魔族王ビネガーの情報網に頼る方が懸命だと思い。人間界でのサラ探しを諦めると共に、過去に帰る為の魔術研究に没頭した。

ビネガーはその研究を人間に戦争を仕掛ける為のものだと思い、ジャキを温かく応援してくれた。ジャキはそんなビネガーを裏切り、未来へと飛んでしまった。
そうしてビネガーの子孫に出会ったジャキ

「昔、世話になった…。」

「名前はなんていうの?

「…ジャキだ。」

「ふーん、ジャキ君ね。私の名前は…」


『そこの少年! 化物に手を焼いているなら私が手を貸そうか?』

さっき帰った筈の親子だった。親はグランドリオンを構え、こどもの前で魔族狩りの手本を見せようとしていた。


少女は戦闘態勢に入り、蹴りを手首に攻撃し、親子を追っ払った。

「あのまま帰してもいいのか? あの親子、人を呼んでくるぞ」

「そうだよね…。でも親子連れだし、あまり酷いことはしたくないし…」

居場所がバレたから魔族狩り目的の人間達が押し寄せてくる。どこか逃げられる場所はないのか?

「東の大陸に魔族達が住む村があるという噂を聞いたけど、でも私、泳ぐの苦手だし…」

ジャキは少女を抱えて空を飛んだ。



最果てのゲートから1050年。ジャキはふと立ち寄った店でビネガーに似た少女がレストランでウエイトレスをしているのに気付いた。

400年の間に何があったのか判らないが魔族への偏見は無くなっていた。

ウエイトレスがジャキを見て話しかけた。絵の中の人にそっくりだとという。

ウエイトレスによると、昔、一族祖先を守ってくれた魔族がいたという。先祖は助けてくれた恩人を忘れない様にと絵を書いたという。その絵は代々伝わり、今でも家に飾ってあるという。

ジャキは自分とそっくりなその絵を見せてもらった。

絵には少ないが魔力が残っていた。400年前に助けただろう少女の気配。
ジャキはしばらくその絵を眺めた…







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■古代ダルトン王国



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サラを助けた後、古代ジールの行く末がどうなったのかを確認に向かったジャキ。

崩壊した筈の天空都市は再建され新たな国王はダルトンになっていた。

天空都市の動力源は太陽石である。崩壊と共に海に沈んだものを回収し、再運用していた。

相変わらず魔力無き人間は差別され、地の民と天の民は別けられていた。

太陽石の仕組み上、太陽に近ければ近い殆、エネルギーが得られる。ダルトンは事業拡大の為に、天空都市を遥か上空、成層圏まで登らせた。

空気の薄さの問題は都市にバリアを張り空気を溜め込む事で解決された。

ラヴォスの光で古代人の多くが死滅し、天空都市の住人は少数だった。皮肉な事に太陽石のエネルギーは多く余り多様な用途へと使う事ができた。

無重力の宇宙空間にまで出てしまうと、大陸の重さを支えるエネルギーは不要になり、代わりに宇宙空間の絶対0度に対する気温調節にエネルギーを割り当てる様になる。

ダルトン王国はエネルギー不足を回収する為、太陽へより近づいていった。

こうして魔法が使える古代人は地球からいなくなり、魔力の無い人間と、生まれたばかりの魔族達が繁栄した。



〜原始時代について〜

慈悲深さを知ったラヴォスは、自分のせいで恐竜人が絶滅した事を悔やんでいた。
氷河期が来る前に、恐竜人をタイムマシンに乗せ、未来へ連れて帰る計画をたてた。

ラヴォスとその研究者達は恐竜人をどうやって管理するかを悩んだ。
教育や職業を割り当てるにしても、課題は多くある。
ひとまず、軍人として雇い、国の防衛に当たらせる事にした。

天空都市を浮かせる機械。そこを壊されると困るシステムになっていた。
これまではロボットによるセキュリティシステムを配備していたが、常駐してロボットをメンテナンスする者や非常時に動ける人材がいなかった。

地殻に眠るラヴォス達から効率良くエネルギー取り出す為に、掘削作業員も必要だった。
ラヴォスを目覚めさせない様に監視したり、部外者を排除する為の人材が必要だった。
竜人にそれらの仕事を与える為、ラヴォスは奮闘した。



〜DC600〜
ジャキはタイムマシンにて、中世の世界を見てまわった。

ソイソーはデナドロ山で修行をしていた。
グランとリオンの精霊に戦いを挑み鍛錬していて、デナドロを住処にしている魔族はソイソーの剣技に憧れを持ちソイソーに弟子入りしていた。

マヨネーはパリポレの村で人間に化けて男をはべらせていた。

ビネガーは人材集めの為、二人を誘うが、二人は人間との争いに興味を示さなかった。

落ち込んでいるビネガーにジャキは声をかけた。

「お、お前はまさかジャキか?」

ビネガーの視点においてジャキは突然消えた存在。20年間行方不明扱いにされていた。

「一体今までどこに…。いや、それより20年も経っているのに姿が変わってない??」

「とにかく、戻ってくれたのだな。さあ、一緒に人間界に攻め込もうではないか!」

「え! 断る!? 突然居なくなって申し訳ないから、挨拶だけはしとこうと思ってやってきただと!?」

「恩知らずがー!」

ビネガーはキレてジャキを襲ったが、返り討ちに。

ジャキ「いい忘れたがオレは人間だ。魔法が使える少し変わった人間なんだ。人間を甘く見ない方がいいぞ…

ビネガー「人間…に負けたのか? 私は…

ジャキ「人間に勝てないのに人間界に攻め込むつもりなのか?」

ビネガー「人間支配は魔族の悲願。諦めるつもりはない」

ジャキ「ならなぜ力ずくで従わせないのだ? お前は今、私を力ずくで従わせようとした。あの二人に戦いを挑んで従わせればいいだろう?」

ビネガー「ソイソーとマヨネーの事か…。アイツらは強い。まともにやりあえば私も向こうも無事では済まないだろう」

ジャキ「…お前の野望とはその程度なのか…

ビネガー「何が言いたいのだ?

ジャキ「私に戦いを挑んだのは、私を下に見ていたからだろう? 下にいる者にしか戦いを挑まないのなら、自分より強者が現れたらお前は部下を見捨てて逃げるのではないか?」

「お前なら部下を見捨てる様な者の下に就きたいと思うか?」

ビネガーは気付いた。弱い者にしか戦いを挑まない腰抜けなんかに部下はついてこない。

ビネガーはソイソーに戦いを挑んだ。

ソイソーの攻撃にバリアを張る。

ビネガーはバリア中は動けなかった。ソイソーはビネガーを無視した。

ビネガーが骸骨兵士を操り戦いを挑んだ。

骸骨を操っている間はバリアができなかった。

ソイソーはその隙をついてビネガーを倒した。

ビネガーは一旦ソイソーを諦め、マヨネーを狙ったが、精神攻撃で混乱させられて相手にすらならなかった。

ジャキはビネガーの戦いを見届けていた。


ビネガーは何度も戦いを挑んでは負ける日々を繰り返した。

ソイソー「ビネガー! お前しつこいぞ! 諦めない根性は称えるが、礼儀しらずだそ。」

マヨネー「あんたもう私のストーカーやめなよ。あたしは誰にも従わないんだから!」


ある時、ビネガーは提案した。

「ソイソーよ…。強い剣士と戦いたいのであれば、山に篭もるよりも、人間と戦って名を上げた方がいい。向こうの方から強い剣士がやってくるぞ…」

ある時、ビネガーがマヨネーに提案した。

「マヨネーよ…。こんな辺境な村ではなくガルディアの地にはもっとイケメンがいるぞ。一緒にガルディアに攻め込もうではないか…」


こうしてビネガーは二人を仲間に引き入れた。人間と魔族のパワーバランスは整い、長い戦乱の世が続いた…




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キンタマシュート

ジュンイチはゴールキーパー。どんなタマも止めてみせる。
 勝又が自分のキンタマをもぎとって、ゴールに向かって投げた。
「うわっきたねっ」
 キンタマはゴールした。ジュンイチがよけたのだ。生まれて初めてのゴールである。
 ジュンイチは勝又に言った。
「お前なかなかやるじゃん」
「へへっまあな。けど、キンタマが一個になっちまった」
「任せとけ」
 ジュンイチは接着剤でキンタマを所定の位置につけた。
「これでよしと」
「ありがと」
「いえいえ」
 ジュンイチと勝又はゲーセンに行った。